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第11話 二つの青は王を見る
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「それで、この二人は?」
強い眼光でレイゼとミロウを見るアネモネ。赤に近い瞳と溢れ出る威厳に、彼らは竦み上がってしまう。
リタヤータは二人を自分の前へと出し、強制的に前を向かせた。
「例の件について、元"勇者"シオンから推薦された者達でございます」
「へぇ、シオンから…アレらもやっと片付くのね」
「いえ…ただ、まだ実力は見れておりませんので、勇者シオンの推薦だとしても、完全に能力を信用することは出来ないかと」
王宮に向かっていた時とは打って変わっていやに慎重だ。アネモネはてきとうだと言っていたのは何だったのかと言いそうになるほど、リタヤータは緊張の糸を張っていた。
「そう…」
残念そうな顔をしながら、ゆっくりと二人へ顔を合わせる。彼女は華やかな容姿ではあるが、どこかやつれた風貌をしていた。
「御前達、名は?」
朱色の透明なガラスの杖を向けられたレイゼとミロウは、その輝きに目を奪われる。
「わたしはラディアス・ミロウ・アスターと申します。先日は魔法構造学の御提案、有難うございました」
「貴方がアスター…しっかりしていると思ったけれど、随分と幼いのね。今度からは技術報告は用紙ではなく、王宮に来なさい。共に語ってみたいわ」
「王女様とお話!…んんっ、考えさせて頂きます」
紫紺の瞳をぱっと輝かせかけたが、失礼にならないようすんでのところで理性を保った。
アネモネは小動物を見る温かい目をしてミロウを見た後、緊張のせいか萎んでいくレイゼの方を向いた。
「そちらの赤い御前は?」
「あ、赤い…はい、僕はレイゼと申します。響素という物質の研究をしております」
「響素……出身地はどこ?」
「……ら、ライカリライク市ですが…」
レイゼの返答に納得行っていないようで、アネモネは深く首を傾げた。
「おかしいわね、アイノウン国民は響素を扱えない筈よ」
「え…っ?」
「何か言えない事情でもあるのかしら?詮索はしないけれど…姓だけ聞きたいわ」
「…すみません、今は遠慮させて頂きます」
ひどく返事を濁すレイゼに、王女だけでなくミロウまでも反応する。
まぁいいわ、と言い、アネモネは玉座に座り直した。
「本題なのだけれど、御前達は魔物討伐の件で来てくれたのよね?」
「はい。何なりとご協力させて頂きます」
「それは助かるわ。けれど、城に閉じ込めている魔物は魔法も物理攻撃も効かない性質があるのよ」
「やっぱり…駅で戦ったのと同じだ」
ミロウがボソリと呟くと、アネモネは目を丸くして尋ねる。
「ライカリライクにもいたの?それは倒したのかしら?なら話は早いのだけれど…」
「はい、倒しました」
レイゼの返答に王女は一層目を丸くした。
「まぁ!やっと解決の糸口が見えて来たわ…では、早速行きましょう。良いかしら?」
立ち上がって着いてこいと言うアネモネに、ミロウはレイゼの裾を掴んで懇願する。
「…レイゼ、わたしは役立てないかも…どうすれば良い?」
「ううん。さっきも言ったけど、ミロウにもしてほしいことがあるんだ。だから着いてきて。大丈夫だよ」
真摯な彼の眼差しにミロウは安心したのか、手を離して王女の後へ着いていく。
それに続いてレイゼも何か考えながら、後を追った。
強い眼光でレイゼとミロウを見るアネモネ。赤に近い瞳と溢れ出る威厳に、彼らは竦み上がってしまう。
リタヤータは二人を自分の前へと出し、強制的に前を向かせた。
「例の件について、元"勇者"シオンから推薦された者達でございます」
「へぇ、シオンから…アレらもやっと片付くのね」
「いえ…ただ、まだ実力は見れておりませんので、勇者シオンの推薦だとしても、完全に能力を信用することは出来ないかと」
王宮に向かっていた時とは打って変わっていやに慎重だ。アネモネはてきとうだと言っていたのは何だったのかと言いそうになるほど、リタヤータは緊張の糸を張っていた。
「そう…」
残念そうな顔をしながら、ゆっくりと二人へ顔を合わせる。彼女は華やかな容姿ではあるが、どこかやつれた風貌をしていた。
「御前達、名は?」
朱色の透明なガラスの杖を向けられたレイゼとミロウは、その輝きに目を奪われる。
「わたしはラディアス・ミロウ・アスターと申します。先日は魔法構造学の御提案、有難うございました」
「貴方がアスター…しっかりしていると思ったけれど、随分と幼いのね。今度からは技術報告は用紙ではなく、王宮に来なさい。共に語ってみたいわ」
「王女様とお話!…んんっ、考えさせて頂きます」
紫紺の瞳をぱっと輝かせかけたが、失礼にならないようすんでのところで理性を保った。
アネモネは小動物を見る温かい目をしてミロウを見た後、緊張のせいか萎んでいくレイゼの方を向いた。
「そちらの赤い御前は?」
「あ、赤い…はい、僕はレイゼと申します。響素という物質の研究をしております」
「響素……出身地はどこ?」
「……ら、ライカリライク市ですが…」
レイゼの返答に納得行っていないようで、アネモネは深く首を傾げた。
「おかしいわね、アイノウン国民は響素を扱えない筈よ」
「え…っ?」
「何か言えない事情でもあるのかしら?詮索はしないけれど…姓だけ聞きたいわ」
「…すみません、今は遠慮させて頂きます」
ひどく返事を濁すレイゼに、王女だけでなくミロウまでも反応する。
まぁいいわ、と言い、アネモネは玉座に座り直した。
「本題なのだけれど、御前達は魔物討伐の件で来てくれたのよね?」
「はい。何なりとご協力させて頂きます」
「それは助かるわ。けれど、城に閉じ込めている魔物は魔法も物理攻撃も効かない性質があるのよ」
「やっぱり…駅で戦ったのと同じだ」
ミロウがボソリと呟くと、アネモネは目を丸くして尋ねる。
「ライカリライクにもいたの?それは倒したのかしら?なら話は早いのだけれど…」
「はい、倒しました」
レイゼの返答に王女は一層目を丸くした。
「まぁ!やっと解決の糸口が見えて来たわ…では、早速行きましょう。良いかしら?」
立ち上がって着いてこいと言うアネモネに、ミロウはレイゼの裾を掴んで懇願する。
「…レイゼ、わたしは役立てないかも…どうすれば良い?」
「ううん。さっきも言ったけど、ミロウにもしてほしいことがあるんだ。だから着いてきて。大丈夫だよ」
真摯な彼の眼差しにミロウは安心したのか、手を離して王女の後へ着いていく。
それに続いてレイゼも何か考えながら、後を追った。
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