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第13話 まるでおかしな爆発
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霧が濃くなると同時に、残骸の活動も活発になってくる。
それは残骸が魔力を軸として形成されている生物であり、魔力を糧にして生きているからだ。
レイゼは完全に囲まれた。しかしこの城にいる残骸は理性があるのか、すぐに襲ってくることはない。
苦悶する彼の表情を見るためか、じりじりと甚振るように近づいてくる残骸。
(見栄を張って飛び出たことだし…責任は取らなきゃな。魔力もこれだけあれば十分だ)
残骸の死臭はもはや感じないほどに嗅覚が麻痺していた。
息を一瞬吐いたレイゼは、先程使った響素の代償によって爛れた手を見る。
──まだ使える。
そうしてまた掌から響素を出し、この状況を打開するため準備していた言葉を紡ぐ──
──が、それは許されなかったのか、残骸は響素を見た途端、荒れ狂いだしていた。
「…っ!」
四方八方囲まれているため、逃げることは出来ない。
うまく防御も取れないレイゼは、襲いくる残骸の攻撃をもろに受けてしまった。
残骸が大きく動いたせいか、空間に充満している魔力が薄くなる。ミロウは既にレイゼを心配して魔力供給を止めており、声もうまく出せないため、これ以上の要求も不可能だ。
「こんなに強いのか…ここの残骸は…」
二体の残骸がレイゼの腕と背中を削る。鋭い爪は小さな少年にとっては十分なダメージとなった。
微かに見えていた彼の影の動きが止まったのを見たミロウは、隔たれた壁を壊そうと魔力をぶつけていた。
始終をじっと見ていたアネモネは、焦るでもなくただ溜め息を吐いた。
「やっぱり御前達でも無理なのね…」
「…結局わたしは魔力を送るだけ…?」
アネモネの嘆きにミロウはひどく落ち込む。
もう一度壁の方を見ると、ついにはレイゼが血を流して倒れている姿が見えた。霧はすっかり晴れており、残骸が彼の周りを囲っている。
「あ…」
「ダメね、救助を──」
アネモネが壁に響素を伝え、それを壊そうとした瞬間、レイゼがいる空間に猛烈な爆発が起こった。
「──?!」
「何が…って、壁が消えてる!」
彼が張った壁すらも消え去り、それは術者を失ったことを意味する。
砂埃が収まったかと思うと、そこにはレイゼの姿は無かった。
「……いない」
「残骸も全て消えているわね……彼が起こした爆発なのかしら」
跡形も無い。その違和感を感じ始めたのは、少し経った後だった。
「あんな大規模な爆発があったのに、壁に一つも傷がついていな…」
アネモネが言い掛けた瞬間、天井から無数の瓦礫が降ってきた。
「王女様!…『星羅の繭』!」
ミロウは咄嗟に詠唱を唱え、自身とアネモネを守るドーム状の防壁を展開する。
地下であるため瓦礫の量が多い。魔力の過度な消費に耐えながら、どうにかミロウは王女を守りきった。
「だ、大丈夫ですか?王女様…」
「少し驚いたわね…ありがとう、アスターさん。助かったわ」
「あの爆発で天井が崩れたのかな……レイゼ…」
「……」
何事かと城の兵もこちらに集まってきていた。地下の参状は、誰から見ても痛々しいものだった。
それは残骸が魔力を軸として形成されている生物であり、魔力を糧にして生きているからだ。
レイゼは完全に囲まれた。しかしこの城にいる残骸は理性があるのか、すぐに襲ってくることはない。
苦悶する彼の表情を見るためか、じりじりと甚振るように近づいてくる残骸。
(見栄を張って飛び出たことだし…責任は取らなきゃな。魔力もこれだけあれば十分だ)
残骸の死臭はもはや感じないほどに嗅覚が麻痺していた。
息を一瞬吐いたレイゼは、先程使った響素の代償によって爛れた手を見る。
──まだ使える。
そうしてまた掌から響素を出し、この状況を打開するため準備していた言葉を紡ぐ──
──が、それは許されなかったのか、残骸は響素を見た途端、荒れ狂いだしていた。
「…っ!」
四方八方囲まれているため、逃げることは出来ない。
うまく防御も取れないレイゼは、襲いくる残骸の攻撃をもろに受けてしまった。
残骸が大きく動いたせいか、空間に充満している魔力が薄くなる。ミロウは既にレイゼを心配して魔力供給を止めており、声もうまく出せないため、これ以上の要求も不可能だ。
「こんなに強いのか…ここの残骸は…」
二体の残骸がレイゼの腕と背中を削る。鋭い爪は小さな少年にとっては十分なダメージとなった。
微かに見えていた彼の影の動きが止まったのを見たミロウは、隔たれた壁を壊そうと魔力をぶつけていた。
始終をじっと見ていたアネモネは、焦るでもなくただ溜め息を吐いた。
「やっぱり御前達でも無理なのね…」
「…結局わたしは魔力を送るだけ…?」
アネモネの嘆きにミロウはひどく落ち込む。
もう一度壁の方を見ると、ついにはレイゼが血を流して倒れている姿が見えた。霧はすっかり晴れており、残骸が彼の周りを囲っている。
「あ…」
「ダメね、救助を──」
アネモネが壁に響素を伝え、それを壊そうとした瞬間、レイゼがいる空間に猛烈な爆発が起こった。
「──?!」
「何が…って、壁が消えてる!」
彼が張った壁すらも消え去り、それは術者を失ったことを意味する。
砂埃が収まったかと思うと、そこにはレイゼの姿は無かった。
「……いない」
「残骸も全て消えているわね……彼が起こした爆発なのかしら」
跡形も無い。その違和感を感じ始めたのは、少し経った後だった。
「あんな大規模な爆発があったのに、壁に一つも傷がついていな…」
アネモネが言い掛けた瞬間、天井から無数の瓦礫が降ってきた。
「王女様!…『星羅の繭』!」
ミロウは咄嗟に詠唱を唱え、自身とアネモネを守るドーム状の防壁を展開する。
地下であるため瓦礫の量が多い。魔力の過度な消費に耐えながら、どうにかミロウは王女を守りきった。
「だ、大丈夫ですか?王女様…」
「少し驚いたわね…ありがとう、アスターさん。助かったわ」
「あの爆発で天井が崩れたのかな……レイゼ…」
「……」
何事かと城の兵もこちらに集まってきていた。地下の参状は、誰から見ても痛々しいものだった。
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