フラクタル・エバーノーツ

ログリオ

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第15話 開放するための条件

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 応接間へと着き、リタヤータは部屋のりをしていた警備員を払う。
 そして荒ぶるミロウを落ち着かせるため、ソファへ座るよううながした。

「リタヤータさん、何か知ってるの?!何で急にレイゼが……生きててよかったけど…」
「…これは言って良いものなのかねえ…」

 拳を握るミロウを前に、リタヤータは何か悩んでいた。
 咄嗟にミロウは杖を手に取り、彼女の前へ突き出すと、リタヤータは降参するように両手を上げる。

「分かった分かった。言うから落ち着きなって。…今騒乱が起こってるのは知ってるだろ?」
「王女に対する騒乱でしょ?」
「まぁ、それは間違っちゃいないね。ただ、この騒動は自国民が発起したものじゃないんだ」

 それを聞いたミロウは目を丸くする。

「え…?別の国の人がやってるってこと?」
「そう。民衆の目に入る前にあたし達が鎮圧ちんあつしているから、君たちはそれを見ることは無かっただろうけど」
「確かに…言われてはいるけど、見たことは無かった」
「だけれどやってくる騒乱は時間が経つごとに増えていく。だから首都では魔物討伐と称して、響素きょうそを使える人を探してるのさ」
「…響素?……ってことは、ログフラクタの人が騒乱を起こしてるってこと?」

 響素は現在、ログフラクタでしか一般的でない物質だ。ゆえにミロウはログフラクタだと予想をつけたのだろう。
 レイゼはミロウに響素自体の概念は説明していたが、周辺の情報は語っていなかった。ミロウは手帳に記録されていたことを思い出し、反芻はんすうするようにリタヤータに尋ねる。

「そうなんだよ。さらに今、ログフラクタに宣戦布告されてる状況なんだ。また公にはしていないけどね…」
「でも、それと響素に何の関係があるの?」
「王女さまが言ってた通り、アイノウン人は響素を使えない。ログフラクタはともかく、他の国の人はどうか分からないけど…それで、響素を使える者はスパイとみなしててね。見つけ次第処刑することが決められているのさ」

 処刑と聞いた途端、ミロウの体が微かに動いた。このままではレイゼは処刑されてしまう──得体も知れない不快な感覚が彼女の全身を覆う。

(王女様、良い人だと思ったのに…話も聞かずに偏見だけでレイゼを閉じ込めて…)

 話している内に、応接間の扉がノックされる。入って来たのは軍服を身に纏った女性だ。

「リタ王宮魔導士まどうし、ご苦労さま。ワタシが変わるから、キミは王女をなだめてくれないかい?」
「こんな短期間でごねたのかい。分かったよ、じゃあ宜しく」
「あぁ」

 リタヤータと軍服の女性が入れ替わり、その女性は躊躇ためらいもなくミロウの眼の前に座った。

「初めまして、崩石ほうせきの魔女。ワタシはネメラル・ディスブロウ。…噛みそうな名前ゆえ、クハーネと呼んで頂きたい」
「崩石の魔女…久しぶりに呼ばれたな、そんな名前」

 崩石の魔女とは、過去にミロウが与えられたものだ。ドラゴンなどの大規模な魔物を単独で何度も倒し、それによって功績が認められたため、二つ名を授けられた。
 ネメラル──もとい、クハーネは深緑の髪に灰色の瞳を持っており、常に毅然きぜんとした態度をつくろっている。
 ミロウに名乗った後、クハーネはどこからか一枚の紙を出して話を続ける。

「さて、アイノウン王からの伝言がある。キミの技術を王女自身に買って出て頂いてね。もしこの王宮に仕えるのであれば、"レイゼ"を開放しても良いと」

 トントンと机ごと紙を叩く仕草でミロウはその用紙を見ると、そこには契約書の文字が見えた。

「…レイゼを開放してくれるの?」
「あぁ。ただ、応じればキミは王宮に縛られる形になるがね」
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