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第18話 廻る者は名を明かす
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あれほど動揺していたにもかかわらず、名前を告げたレイゼの様子はやけに落ち着いていた。
アネモネは自身の勘が当たったのかどうなのか、ふむと頷いて話を続ける。
「斑鳩玲…やはり"転生者"なのね。ログフラクタの民でないことは分かったけれど…」
転生者──全く別の世界から、この世界に転生してくる者のことを指す。
アイノウンでは勇者の召喚も行っていることから、多少そのことは把握しているのだろう。シオンが最たる例である。
「この世界にも、そのような概念が把握されているのですか?」
「そうね…アイノウンの王宮関係者のみなのだけれども」
「身の潔白…王女様の依頼を遂行しただけで、悪事は働いていませんが…それは証明出来ましたし、開放していただけませんか?」
これで開放されると確信を抱きながら、レイゼは再度懇願してみる。
しかしアネモネは首を横に振っていた。
「いいえ。アイノウンにおいて響素を使われることは、非常に厄介なことなの。だから結局は、ここに一生閉じ込めておくか…処刑するしかないわ」
「……そんな」
何を言っても意味は無いのだろうと、レイゼはショックと怪我の痛みに目眩を感じた。
「名前から思うに、御前はチキュウという…世界から来たのよね?」
「…はい。あの頃の記憶はほとんど無くなってしまいましたが」
「召喚すら行っていないのに、何故なのかしら…」
もはや諦めた表情で、レイゼはふと気になったことを尋ねる。
「先ほど申されていたシアンの瞳…とは、一体どういうことですか?」
「転生者は総じてシアンに近しい色の瞳を持っているの。シオンもそうだったでしょう?」
「言われてみれば、確かにそうですね──」
不意に牢の外にある鉄の扉が叩かれ、アネモネの側近──リタヤータが顔を出してきた。
「王女さま、客人です」
「あら、もうそんな時間?…彼を見張っておいて」
返事をした後、アネモネは一目散に地下から出ていく。
リタヤータは傷まみれのレイゼを痛々しい目で見ると、そっと鉄格子を開けた。
「大丈夫かい?血まみれじゃあないか」
「そろそろ止血したいです…魔法が使えないから、治癒魔法が恋しい…」
「生憎あたしは治癒魔法に適正が無くてね…彼女なら直せると思うけど、どうもここに連れてこられないしなぁ…」
とりあえず、と言って、リタヤータは包帯と止血剤をレイゼの前に置いた。
アネモネは自身の勘が当たったのかどうなのか、ふむと頷いて話を続ける。
「斑鳩玲…やはり"転生者"なのね。ログフラクタの民でないことは分かったけれど…」
転生者──全く別の世界から、この世界に転生してくる者のことを指す。
アイノウンでは勇者の召喚も行っていることから、多少そのことは把握しているのだろう。シオンが最たる例である。
「この世界にも、そのような概念が把握されているのですか?」
「そうね…アイノウンの王宮関係者のみなのだけれども」
「身の潔白…王女様の依頼を遂行しただけで、悪事は働いていませんが…それは証明出来ましたし、開放していただけませんか?」
これで開放されると確信を抱きながら、レイゼは再度懇願してみる。
しかしアネモネは首を横に振っていた。
「いいえ。アイノウンにおいて響素を使われることは、非常に厄介なことなの。だから結局は、ここに一生閉じ込めておくか…処刑するしかないわ」
「……そんな」
何を言っても意味は無いのだろうと、レイゼはショックと怪我の痛みに目眩を感じた。
「名前から思うに、御前はチキュウという…世界から来たのよね?」
「…はい。あの頃の記憶はほとんど無くなってしまいましたが」
「召喚すら行っていないのに、何故なのかしら…」
もはや諦めた表情で、レイゼはふと気になったことを尋ねる。
「先ほど申されていたシアンの瞳…とは、一体どういうことですか?」
「転生者は総じてシアンに近しい色の瞳を持っているの。シオンもそうだったでしょう?」
「言われてみれば、確かにそうですね──」
不意に牢の外にある鉄の扉が叩かれ、アネモネの側近──リタヤータが顔を出してきた。
「王女さま、客人です」
「あら、もうそんな時間?…彼を見張っておいて」
返事をした後、アネモネは一目散に地下から出ていく。
リタヤータは傷まみれのレイゼを痛々しい目で見ると、そっと鉄格子を開けた。
「大丈夫かい?血まみれじゃあないか」
「そろそろ止血したいです…魔法が使えないから、治癒魔法が恋しい…」
「生憎あたしは治癒魔法に適正が無くてね…彼女なら直せると思うけど、どうもここに連れてこられないしなぁ…」
とりあえず、と言って、リタヤータは包帯と止血剤をレイゼの前に置いた。
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