23 / 33
第23話 快復のきざしと逃亡
しおりを挟む
レイゼが目を覚ましたことへの嬉しさのせいか気分が高揚し、思わずミロウは彼へ飛び込んだ。
「うっぐ…?!み、ミロウ!?傷がいたた痛いちょっと待っ」
「ほら、これ食べて!」
レイゼに馬乗りになってミロウが差し出すそのスプーンには、すり潰したトルマリンのリンゴが載せられていた。
「は、はぁ…」
弱々しく開いたレイゼの口に、ゆっくりとリンゴを運ぶ。
即効性の薬でもあるため、食べていくうちにみるみる彼の顔色は良くなっていった。
「凄い、傷が一瞬で塞がってる…」
「でしょ!…良かった…レイゼが目を覚まして」
「ごめんね、いつの間にか気絶してたみたい…」
レイゼは不安定な椅子の寝台から起き上がろうとするも、治ったばかりでうまく体が動かせなかった。
それゆえに体が落ちかけたが、すんでのところでミロウが支える。
「まだ起きたばっかりなんだから無理しないの!…って」
すると、何やら応接間の外が騒がしくなり始めている。
崩壊した地下のせいだろうか。
「そんなこと言ってる場合じゃ無いかも…」
「…もしかして、ミロウが強制的に僕を連れてきたの?」
「当たり!」
びしっと指を立てて得意げにするミロウの顔には、途方もない疲労がにじみ出ていた。
レイゼは助けてくれたことに感謝しながら、どうにか起き上がろうと体を捻る。
「レイゼ?!もし誰かに捕まえられそうでも、わたしが何とかするから…無理しないで」
「い…や、大丈夫。あのリンゴのお陰で一瞬で体調が良くなったんだ。変な色だって敬遠してちゃ駄目だね…」
ミロウに寄り、頭を撫でる。爛れていた手は跡すら残らず綺麗になっていた。
彼女はひどく嬉しそうな顔をしてはにかんだ。
「助けてくれたし、僕も頑張らなきゃな」
「魔物討伐でだいぶ頑張ってたと思うけど…」
呆れるミロウを余所目に、レイゼは響素を編み始める。
「ねぇ、リンゴを過信しない方が良いよ?」
「大丈夫。さ、この中に入って」
レイゼの目の前には、三本程の糸が連なる輪のようなものが出来ていた。
「早くしよう。それにしても、首都を隣国の国境沿いにするなんて無防備だね」
「この輪っかは?」
「簡易転移式だよ。空間に含まれる響素が一定以上無いと組めないんだ。幸い、ここには何故か響素が多いからすぐに組めたよ」
「よく分かんないけど凄い!ログフラクタまで行けるの?」
「王宮の出口までだけどね。そこからすぐ出て逃げよう」
爛々と話すシアンの瞳は、完全に快復していないのか若干濁っている。
ミロウはそんなレイゼを心配そうにするが、ついに応接間の扉が叩かれたことで焦りが生まれる。
「分かった。行こ!」
「うっぐ…?!み、ミロウ!?傷がいたた痛いちょっと待っ」
「ほら、これ食べて!」
レイゼに馬乗りになってミロウが差し出すそのスプーンには、すり潰したトルマリンのリンゴが載せられていた。
「は、はぁ…」
弱々しく開いたレイゼの口に、ゆっくりとリンゴを運ぶ。
即効性の薬でもあるため、食べていくうちにみるみる彼の顔色は良くなっていった。
「凄い、傷が一瞬で塞がってる…」
「でしょ!…良かった…レイゼが目を覚まして」
「ごめんね、いつの間にか気絶してたみたい…」
レイゼは不安定な椅子の寝台から起き上がろうとするも、治ったばかりでうまく体が動かせなかった。
それゆえに体が落ちかけたが、すんでのところでミロウが支える。
「まだ起きたばっかりなんだから無理しないの!…って」
すると、何やら応接間の外が騒がしくなり始めている。
崩壊した地下のせいだろうか。
「そんなこと言ってる場合じゃ無いかも…」
「…もしかして、ミロウが強制的に僕を連れてきたの?」
「当たり!」
びしっと指を立てて得意げにするミロウの顔には、途方もない疲労がにじみ出ていた。
レイゼは助けてくれたことに感謝しながら、どうにか起き上がろうと体を捻る。
「レイゼ?!もし誰かに捕まえられそうでも、わたしが何とかするから…無理しないで」
「い…や、大丈夫。あのリンゴのお陰で一瞬で体調が良くなったんだ。変な色だって敬遠してちゃ駄目だね…」
ミロウに寄り、頭を撫でる。爛れていた手は跡すら残らず綺麗になっていた。
彼女はひどく嬉しそうな顔をしてはにかんだ。
「助けてくれたし、僕も頑張らなきゃな」
「魔物討伐でだいぶ頑張ってたと思うけど…」
呆れるミロウを余所目に、レイゼは響素を編み始める。
「ねぇ、リンゴを過信しない方が良いよ?」
「大丈夫。さ、この中に入って」
レイゼの目の前には、三本程の糸が連なる輪のようなものが出来ていた。
「早くしよう。それにしても、首都を隣国の国境沿いにするなんて無防備だね」
「この輪っかは?」
「簡易転移式だよ。空間に含まれる響素が一定以上無いと組めないんだ。幸い、ここには何故か響素が多いからすぐに組めたよ」
「よく分かんないけど凄い!ログフラクタまで行けるの?」
「王宮の出口までだけどね。そこからすぐ出て逃げよう」
爛々と話すシアンの瞳は、完全に快復していないのか若干濁っている。
ミロウはそんなレイゼを心配そうにするが、ついに応接間の扉が叩かれたことで焦りが生まれる。
「分かった。行こ!」
0
あなたにおすすめの小説
おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様
あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。
死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。
「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」
だが、その世界はダークファンタジーばりばり。
人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。
こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。
あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。
ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。
様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。
世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。
地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
無属性魔法使いの下剋上~現代日本の知識を持つ魔導書と契約したら、俺だけが使える「科学魔法」で学園の英雄に成り上がりました~
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は今日から、俺の主(マスター)だ」――魔力を持たない“無能”と蔑まれる落ちこぼれ貴族、ユキナリ。彼が手にした一冊の古びた魔導書。そこに宿っていたのは、異世界日本の知識を持つ生意気な魂、カイだった!
「俺の知識とお前の魔力があれば、最強だって夢じゃない」
主従契約から始まる、二人の秘密の特訓。科学的知識で魔法の常識を覆し、落ちこぼれが天才たちに成り上がる! 無自覚に甘い主従関係と、胸がすくような下剋上劇が今、幕を開ける!
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる