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第29話 夢寐の芯は瞬きの内
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ミロウの体調があまり優れないため、レイゼはミロウと手を繋いで歩こうと提案した。
国境の門はすぐそこに見えていた。
「やっとログフラクタに近づいてきた…」
「そこまで時間は経ってないはずなのに…なんだか長い旅路だったねえ…」
国境門付近は青い花が一面に咲いている花畑しか存在せず、どこか別世界のような雰囲気を醸し出していた。
ふとミロウは立ち止まり、今までずっと考えていたことをレイゼに尋ねる。
「レイゼ、どうして身を投げ売ってまでそのフロウリーグラムって人に会いたいの?」
「"僕"にも、ぼくにも、生きるには響素を学ぶしかないんだ。だからだよ」
「生き……?わたしが守ってあげるよ?」
ミロウは被っていた魔女帽を外し、レイゼの頭に乗せる。
物理的な敵じゃないんだ、とレイゼは眉を下げた。
被る穴は冷涼な空間だ。
「何をしても駄目だったぼく達が、掴める唯一なんだ」
「もー、分かりづらいよ!」
「……うーん、まあ…ただ好きなだけってこと」
ミロウに受け入れられてから、彼は玲とレイゼを独立させて考えるようになっていた。それに何の意味があるのかは、自身でも分かっていないのだが。
「それに、魔法と響素の共存を創る為もあるかな」
「共存……」
前は代替だとレイゼは言っていたが、今は独善的な思考を払拭して、魔法との関係について考えている。
それにミロウは勘付くと、どうしてか嬉しそうな顔をする。
「ふふ。魔法のことなら何でも聞いて!」
「国一番の魔法使い…頼もし過ぎるな」
徐にミロウは道端にしゃがみ、青い花をひと房摘む。
その青は、他の花よりも若干くすんでいるように見えた。
そしてレイゼに渡し、花びらを一枚千切る。
「レイゼみたいな花。昔のレイゼはね…ちょっと怖かったけど、優しかったんだよ」
「…ぼくがいた所のオオイヌノフグリって花に似てるね」
優しくミロウの頭に手を置くと、彼女は一瞬驚いたが、すぐに目を細めた。
暫く歩くと、門がすぐそこまで近づいて来ていた。
「あれ?案外門番の人少ないね」
ミロウが言う通り、門には一人の人影だけが見えている。
周辺を見渡すも、やはりその影は一つだけだった。
「本当だ。何かあったのかな…とにかく、行ってみよう」
足早に二人は門へ着くと、そこには銀髪の男──アーゼワルドが立っていた。
「アーゼ?!何でここに…って何回やるのこのやりとり…」
「は?ラディアス?…よくもそんなに堂々と逃げられるな」
アーゼワルドはレイゼの方も一瞥したが、興味無さげにまたミロウに向き直る。
彼の左手には、青く輝く水晶が握られていた。
「えーと…この人は?ミロウの知り合い?」
「知り合いというか腐れ縁というか…それよりも、ここを通してくれない?門の人もいないし、どうしたら良いかわかんなくて」
「無理に決まってんだろ。アイノウンとログフラクタの情勢が分かってねーのか?」
むっとミロウは頬を膨らませ、一歩アーゼワルドに詰め寄った。
レイゼは彼の持っているものを知っているのか、じっと凝視している。
「…それ、"蕾"ですか?」
「……何でお前が知ってんだ」
アーゼワルドは限りなく低い声を出すと、レイゼとミロウは二人の背後に彼ではない誰かが立つ気配を感じる。
「これじゃあ──対象は"君だけ"だ」
その気配──声は、あの時ミロウに眠らされた翡翠の女──クハーネだった。
国境の門はすぐそこに見えていた。
「やっとログフラクタに近づいてきた…」
「そこまで時間は経ってないはずなのに…なんだか長い旅路だったねえ…」
国境門付近は青い花が一面に咲いている花畑しか存在せず、どこか別世界のような雰囲気を醸し出していた。
ふとミロウは立ち止まり、今までずっと考えていたことをレイゼに尋ねる。
「レイゼ、どうして身を投げ売ってまでそのフロウリーグラムって人に会いたいの?」
「"僕"にも、ぼくにも、生きるには響素を学ぶしかないんだ。だからだよ」
「生き……?わたしが守ってあげるよ?」
ミロウは被っていた魔女帽を外し、レイゼの頭に乗せる。
物理的な敵じゃないんだ、とレイゼは眉を下げた。
被る穴は冷涼な空間だ。
「何をしても駄目だったぼく達が、掴める唯一なんだ」
「もー、分かりづらいよ!」
「……うーん、まあ…ただ好きなだけってこと」
ミロウに受け入れられてから、彼は玲とレイゼを独立させて考えるようになっていた。それに何の意味があるのかは、自身でも分かっていないのだが。
「それに、魔法と響素の共存を創る為もあるかな」
「共存……」
前は代替だとレイゼは言っていたが、今は独善的な思考を払拭して、魔法との関係について考えている。
それにミロウは勘付くと、どうしてか嬉しそうな顔をする。
「ふふ。魔法のことなら何でも聞いて!」
「国一番の魔法使い…頼もし過ぎるな」
徐にミロウは道端にしゃがみ、青い花をひと房摘む。
その青は、他の花よりも若干くすんでいるように見えた。
そしてレイゼに渡し、花びらを一枚千切る。
「レイゼみたいな花。昔のレイゼはね…ちょっと怖かったけど、優しかったんだよ」
「…ぼくがいた所のオオイヌノフグリって花に似てるね」
優しくミロウの頭に手を置くと、彼女は一瞬驚いたが、すぐに目を細めた。
暫く歩くと、門がすぐそこまで近づいて来ていた。
「あれ?案外門番の人少ないね」
ミロウが言う通り、門には一人の人影だけが見えている。
周辺を見渡すも、やはりその影は一つだけだった。
「本当だ。何かあったのかな…とにかく、行ってみよう」
足早に二人は門へ着くと、そこには銀髪の男──アーゼワルドが立っていた。
「アーゼ?!何でここに…って何回やるのこのやりとり…」
「は?ラディアス?…よくもそんなに堂々と逃げられるな」
アーゼワルドはレイゼの方も一瞥したが、興味無さげにまたミロウに向き直る。
彼の左手には、青く輝く水晶が握られていた。
「えーと…この人は?ミロウの知り合い?」
「知り合いというか腐れ縁というか…それよりも、ここを通してくれない?門の人もいないし、どうしたら良いかわかんなくて」
「無理に決まってんだろ。アイノウンとログフラクタの情勢が分かってねーのか?」
むっとミロウは頬を膨らませ、一歩アーゼワルドに詰め寄った。
レイゼは彼の持っているものを知っているのか、じっと凝視している。
「…それ、"蕾"ですか?」
「……何でお前が知ってんだ」
アーゼワルドは限りなく低い声を出すと、レイゼとミロウは二人の背後に彼ではない誰かが立つ気配を感じる。
「これじゃあ──対象は"君だけ"だ」
その気配──声は、あの時ミロウに眠らされた翡翠の女──クハーネだった。
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