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「わたくしのカリスマを見せつける」と宣言した翌日。
わたくしは早速 行動を開始していた。
「いいこと セシリオ!
人心掌握の第一歩は『胃袋を掴む』ことよ!」
わたくしは領主の館の巨大な厨房で 腕まくりをしながら言い放った。
「『パンとサーカス』という言葉を知っているでしょう。
領民など 美味しい食べ物を与えておけば 簡単にわたくしにひれ伏すわ!」
「お嬢様。それはローマ帝国の愚民政策です。
この領地の領民は 愚民ではございませんが」
セシリオが無表情で(そして正確に)わたくしの知識の穴を突いてくる。
「う うるさいわね!
要は わたくしの寛大さ(という名の権力)を見せつければいいのでしょう!」
わたくしは料理長にビシッと指を突きつける。
「いいこと!今から『炊き出し』の準備をしますわよ!」
「はあ 炊き出しでございますか。
飢饉でもないのに なぜまた…」
料理長が困惑した顔で 巨大な寸胴鍋を見つめる。
「フン 愚かね。
これはただの炊き出しではありませんわ。
わたくしカタリナ・フォン・ヴォルフによる
『有り余る富の再分配(という名の見せびらかし)』よ!」
「はあ…」
「昨夜の晩餐会!随分と料理が余っていたじゃありませんか!」
(叔父上が『嘆き』の商談成立祝いとか言って 盛大にパーティーを開いたせいだわ)
「あの最高級のローストビーフ!
手付かずの七面鳥のパイ!
豪華絢爛な海の幸のテリーヌ!」
「あれを!今から!
広場で飢えた領民たち(別に飢えてないけど)に施してやろうと言うのよ!」
わたくしの完璧な計画(悪役令嬢心得ノート『人心掌握術』初級編より)に
厨房の料理人たちがざわめく。
「お嬢様…!なんと慈悲深い!」
「余り物とはいえ あれはA5ランクの牛肉…」
「もったいない…」
(そうよ!もったいないほどの施しこそが わたくしのカリスマの源泉となるのよ!)
「さあ!ぐずぐずしない!
わたくし自ら 指揮を執って差し上げますわ!
冷めないうちに 広場へ運ぶのよ!」
わたくしは(悪役令嬢らしく)ふんぞり返って指示を出す。
セシリオだけが 遠い目をして首を小さく振っていた。
---
領主の館の前の広場。
わたくしはテーブルに並べられた豪華な料理(の残り物)の前に仁王立ちしていた。
「領民たちを集めなさい セシリオ!」
「…すでに集まっておりますが」
セシリオが指差す先を見ると 領民たちが遠巻きに
わたくしたち(と料理)を眺めていた。
「あれは…昨夜の晩餐会の残りでは?」
「本当だ!なんて美味そうな…」
「だが なぜ広場に?」
(フフン…いいわ いいわ 注目が集まってきたわね)
わたくしは咳払いを一つして 拡声器(魔法具ではない ただの声)で叫んだ。
「お集まりの愚かな領民たち!」
「(シーン…)」
領民たちがキョトンとしている。
「き 聞こえていますわよね!
わたくしは カタリナ・フォン・ヴォルフ公爵令嬢!」
「知ってるー!」
どこかの子供が元気よく手を挙げた。
(調子が狂うわね…!)
「よ よく聞きなさい!
お前たちのような平民が 一生に一度も口にできないような
この豪華な料理の数々!」
わたくしは銀のトングで ローストビーフの塊を掴み上げる。
「これを!このわたくしが!
特別に お前たちに下げ渡してやろうと言うのです!」
(さあ!ひれ伏しなさい!
『カタリナ様!ありがとうございます!』と
わたくしの足元にすがりつくがいいわ!)
わたくしは完璧な悪役令嬢スマイル(のつもり)で 領民たちを見下ろす。
領民たちは 顔を見合わせている。
「…下げ渡す?」
「俺たちにくれるってことか?」
「でも あれ残り物だよな…」
「馬鹿!残り物でも あの肉だぞ!」
一人の少年が おずおずと前に出てきた。
「あ あの…お嬢様。
本当に これ 食べていいのか?」
「フン!いいでしょう 許しますわ。
ただし!わたくしへの感謝を 決して忘れないことですわね!」
わたくしがそう言うと 少年はパアッと顔を輝かせた。
「やったー!ありがとう お嬢様!」
少年が駆け寄って ローストビーフの皿を受け取る。
それを皮切りに 領民たちがわっと押し寄せてきた。
「わあ!こっちのパイも美味しい!」
「信じられない!貴族様と同じものが食べられるなんて!」
「カタリナ様!なんてお優しい方なんだ!」
(…ん?)
(何か 思っていた反応と違うわね…)
領民たちは わたくしにひれ伏すどころか
満面の笑みで料理を頬張り わたくしに手を振ってくる。
「お嬢様!最高です!」
「このご恩は忘れません!」
(違う…)
わたくしは狼狽した。
(わたくしは 権力を見せつけに来たのよ!)
(『さすがカタリナ様は恐ろしいお方だ…こんな贅沢を…』と
畏怖されるはずだったのよ!)
「ち 違う!わたくしは!」
わたくしが叫ぼうとした時 一人の老婆がわたくしの前に進み出て 深々と頭を下げた。
「カタリナお嬢様…。
このような素晴らしいお心遣い 誠にありがとうございます」
「は…?心遣い…?」
「はい。わたくしたち領民は 領主様の残り物を頂戴するなど
滅相もないことと思っておりました」
「そ そうでしょう!だからこれは…」
「ですが お嬢様は
『残り物だからこそ 領民に気兼ねなく食べてほしい』と
こうしてご自身で振る舞ってくださった」
(え?そんなつもり 一ミクロンもなかったわ)
「お嬢様の そのお優しさ…
わたくしたち 辺境の民は 一生忘れませんぞ…!」
老婆はそう言うと わたくしの手を握り 涙ぐみ始めた。
「「「カタリナ様は聖女だ!」」」
「「「辺境の聖女様だ!」」」
誰かが叫んだ。
それが号令になったかのように 領民たちが一斉にわたくしを称え始めた。
「カタリナ様!バンザーイ!」
「バンザーイ!」
(やめて…)
(やめてよ…!)
(わたくしは悪役令嬢なのよ!)
(聖女なんて 真逆の存在じゃないの!)
「違いますわ!」
わたくしはついに絶叫した。
「わたくしは!お前たちに施しをして
わたくしの権力を見せつけるために…!」
「知っております!」
先ほどの老婆が 力強く頷いた。
「お嬢様の『権力(優しさ)』!
しかと この胸に受け取りましたぞ!」
「だから違うって言ってるでしょーーー!!」
わたくしの悲痛な叫びは
領民たちの「ありがとう」コールによって 虚しくかき消されていった。
わたくしが(料理が全て無くなった)広場の真ん中で 燃え尽きたように真っ白になっていると
いつの間にか隣に来ていたセシリオが 静かにハンカチを差し出してきた。
「お嬢様。お疲れ様でした」
「……」
「見事に 領民の胃袋(と心)を掴んだではございませんか。
素晴らしい『カリスマ』です」
「(グサッ!)」
セシリオの言葉が 瀕死のわたくしにとどめを刺した。
その無表情な顔が 今日だけは 悪魔のように見えた。
「(…クスクス)」
「今 笑ったわね!!絶対に笑ったわね!!」
「いいえ。お嬢様の『人心掌握術』の鮮やかさに 感服しておりました」
「嘘おっしゃい!」
わたくしの「悪の計画 その②」もまた
領民たちに『辺境の聖女』という
悪役令嬢として最も不名誉な称号を与えられるという
最悪の結末を迎えたのだった。
わたくしは早速 行動を開始していた。
「いいこと セシリオ!
人心掌握の第一歩は『胃袋を掴む』ことよ!」
わたくしは領主の館の巨大な厨房で 腕まくりをしながら言い放った。
「『パンとサーカス』という言葉を知っているでしょう。
領民など 美味しい食べ物を与えておけば 簡単にわたくしにひれ伏すわ!」
「お嬢様。それはローマ帝国の愚民政策です。
この領地の領民は 愚民ではございませんが」
セシリオが無表情で(そして正確に)わたくしの知識の穴を突いてくる。
「う うるさいわね!
要は わたくしの寛大さ(という名の権力)を見せつければいいのでしょう!」
わたくしは料理長にビシッと指を突きつける。
「いいこと!今から『炊き出し』の準備をしますわよ!」
「はあ 炊き出しでございますか。
飢饉でもないのに なぜまた…」
料理長が困惑した顔で 巨大な寸胴鍋を見つめる。
「フン 愚かね。
これはただの炊き出しではありませんわ。
わたくしカタリナ・フォン・ヴォルフによる
『有り余る富の再分配(という名の見せびらかし)』よ!」
「はあ…」
「昨夜の晩餐会!随分と料理が余っていたじゃありませんか!」
(叔父上が『嘆き』の商談成立祝いとか言って 盛大にパーティーを開いたせいだわ)
「あの最高級のローストビーフ!
手付かずの七面鳥のパイ!
豪華絢爛な海の幸のテリーヌ!」
「あれを!今から!
広場で飢えた領民たち(別に飢えてないけど)に施してやろうと言うのよ!」
わたくしの完璧な計画(悪役令嬢心得ノート『人心掌握術』初級編より)に
厨房の料理人たちがざわめく。
「お嬢様…!なんと慈悲深い!」
「余り物とはいえ あれはA5ランクの牛肉…」
「もったいない…」
(そうよ!もったいないほどの施しこそが わたくしのカリスマの源泉となるのよ!)
「さあ!ぐずぐずしない!
わたくし自ら 指揮を執って差し上げますわ!
冷めないうちに 広場へ運ぶのよ!」
わたくしは(悪役令嬢らしく)ふんぞり返って指示を出す。
セシリオだけが 遠い目をして首を小さく振っていた。
---
領主の館の前の広場。
わたくしはテーブルに並べられた豪華な料理(の残り物)の前に仁王立ちしていた。
「領民たちを集めなさい セシリオ!」
「…すでに集まっておりますが」
セシリオが指差す先を見ると 領民たちが遠巻きに
わたくしたち(と料理)を眺めていた。
「あれは…昨夜の晩餐会の残りでは?」
「本当だ!なんて美味そうな…」
「だが なぜ広場に?」
(フフン…いいわ いいわ 注目が集まってきたわね)
わたくしは咳払いを一つして 拡声器(魔法具ではない ただの声)で叫んだ。
「お集まりの愚かな領民たち!」
「(シーン…)」
領民たちがキョトンとしている。
「き 聞こえていますわよね!
わたくしは カタリナ・フォン・ヴォルフ公爵令嬢!」
「知ってるー!」
どこかの子供が元気よく手を挙げた。
(調子が狂うわね…!)
「よ よく聞きなさい!
お前たちのような平民が 一生に一度も口にできないような
この豪華な料理の数々!」
わたくしは銀のトングで ローストビーフの塊を掴み上げる。
「これを!このわたくしが!
特別に お前たちに下げ渡してやろうと言うのです!」
(さあ!ひれ伏しなさい!
『カタリナ様!ありがとうございます!』と
わたくしの足元にすがりつくがいいわ!)
わたくしは完璧な悪役令嬢スマイル(のつもり)で 領民たちを見下ろす。
領民たちは 顔を見合わせている。
「…下げ渡す?」
「俺たちにくれるってことか?」
「でも あれ残り物だよな…」
「馬鹿!残り物でも あの肉だぞ!」
一人の少年が おずおずと前に出てきた。
「あ あの…お嬢様。
本当に これ 食べていいのか?」
「フン!いいでしょう 許しますわ。
ただし!わたくしへの感謝を 決して忘れないことですわね!」
わたくしがそう言うと 少年はパアッと顔を輝かせた。
「やったー!ありがとう お嬢様!」
少年が駆け寄って ローストビーフの皿を受け取る。
それを皮切りに 領民たちがわっと押し寄せてきた。
「わあ!こっちのパイも美味しい!」
「信じられない!貴族様と同じものが食べられるなんて!」
「カタリナ様!なんてお優しい方なんだ!」
(…ん?)
(何か 思っていた反応と違うわね…)
領民たちは わたくしにひれ伏すどころか
満面の笑みで料理を頬張り わたくしに手を振ってくる。
「お嬢様!最高です!」
「このご恩は忘れません!」
(違う…)
わたくしは狼狽した。
(わたくしは 権力を見せつけに来たのよ!)
(『さすがカタリナ様は恐ろしいお方だ…こんな贅沢を…』と
畏怖されるはずだったのよ!)
「ち 違う!わたくしは!」
わたくしが叫ぼうとした時 一人の老婆がわたくしの前に進み出て 深々と頭を下げた。
「カタリナお嬢様…。
このような素晴らしいお心遣い 誠にありがとうございます」
「は…?心遣い…?」
「はい。わたくしたち領民は 領主様の残り物を頂戴するなど
滅相もないことと思っておりました」
「そ そうでしょう!だからこれは…」
「ですが お嬢様は
『残り物だからこそ 領民に気兼ねなく食べてほしい』と
こうしてご自身で振る舞ってくださった」
(え?そんなつもり 一ミクロンもなかったわ)
「お嬢様の そのお優しさ…
わたくしたち 辺境の民は 一生忘れませんぞ…!」
老婆はそう言うと わたくしの手を握り 涙ぐみ始めた。
「「「カタリナ様は聖女だ!」」」
「「「辺境の聖女様だ!」」」
誰かが叫んだ。
それが号令になったかのように 領民たちが一斉にわたくしを称え始めた。
「カタリナ様!バンザーイ!」
「バンザーイ!」
(やめて…)
(やめてよ…!)
(わたくしは悪役令嬢なのよ!)
(聖女なんて 真逆の存在じゃないの!)
「違いますわ!」
わたくしはついに絶叫した。
「わたくしは!お前たちに施しをして
わたくしの権力を見せつけるために…!」
「知っております!」
先ほどの老婆が 力強く頷いた。
「お嬢様の『権力(優しさ)』!
しかと この胸に受け取りましたぞ!」
「だから違うって言ってるでしょーーー!!」
わたくしの悲痛な叫びは
領民たちの「ありがとう」コールによって 虚しくかき消されていった。
わたくしが(料理が全て無くなった)広場の真ん中で 燃え尽きたように真っ白になっていると
いつの間にか隣に来ていたセシリオが 静かにハンカチを差し出してきた。
「お嬢様。お疲れ様でした」
「……」
「見事に 領民の胃袋(と心)を掴んだではございませんか。
素晴らしい『カリスマ』です」
「(グサッ!)」
セシリオの言葉が 瀕死のわたくしにとどめを刺した。
その無表情な顔が 今日だけは 悪魔のように見えた。
「(…クスクス)」
「今 笑ったわね!!絶対に笑ったわね!!」
「いいえ。お嬢様の『人心掌握術』の鮮やかさに 感服しておりました」
「嘘おっしゃい!」
わたくしの「悪の計画 その②」もまた
領民たちに『辺境の聖女』という
悪役令嬢として最も不名誉な称号を与えられるという
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