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わたくしがセシリオの『苦行日誌』を発見し
その内容をお父様へ報告するのを阻止しようと 必死の攻防を繰り広げてから数日。
わたくしとセシリオの間には 奇妙な緊張感が漂っていた。
「……」
「……」
わたくしがジロリと睨めば セシリオは無表情で受け流す。
わたくしが「その日誌を寄越しなさい!」と迫れば
「業務ですので」と一言で撃退される。
おのれ朴念仁!
わたくしのポンコツ…いえ 華麗なる悪役令嬢ライフの記録を
お父様に知られるわけにはいかないというのに!
「(キーッ!)」
わたくしは自室で一人 苛立ちながら刺繍(という名の布への攻撃)に勤しんでいた。
もちろん 聖女様(笑)と呼ばれるようになった領民たちへの『悪の計画③』を練るためだ。
(こうなったら 次こそは本格的な悪事を…
例えば 領地の川の流れを無理やり変えて 水害を引き起こすとか…)
「お嬢様」
「ひゃっ!?」
わたくしは悪事がバレたかのように飛び上がった。
いつの間にか セシリオが扉の前に立っている。
「ノックくらいなさいよ ノックを!」
「三回いたしましたが。
お嬢様が刺繍布に穴を開けるのに夢中でいらっしゃったので」
「(グサッ!)…何の用ですの!
わたくしは今 忙しい(悪だくみで)のよ!」
「王都から お嬢様宛に手紙が届いております」
「王都から?」
わたくしは手を止めた。
お父様からだろうか。いや お父様なら叔父上宛に連絡するはず。
(まさか…!)
わたくしは一つの可能性に思い至り ニヤリと笑みを浮かべた。
(エドワードね!
わたくしを追放したことを後悔して
『カタリナ 帰ってきてくれ』という謝罪の手紙に違いないわ!)
(フン!遅いのよ!
でも まあ 悪役令嬢として 復讐の第一歩が相手の降伏とは 悪くないわね!)
わたくしはセシリオから手紙をひったくるように受け取った。
差出人の名前は…
「…エドワード第二王子。
(連名)リリア・ブラウン」
(…は?)
なぜあの女狐の名前まであるのよ。
わたくしは眉をひそめながら 封を切った。
中からは 便箋が二枚。
一枚はエドワードの妙に力強い筆跡。
もう一枚は リリアの丸っこくて可愛らしい(腹立たしい)筆跡だ。
まず エドワードの手紙から。
『拝啓 カタリナ・フォン・ヴォルフ嬢
辺境での暮らしはどうだろうか。
王都の華やかさとは無縁の土地で お前のその歪んだ性根を叩き直していることと思う。
さて この手紙はほかでもない。
私とリリアが 近々ささやかな婚約披露のパーティーを開くことになったという報告だ。
これも全て お前という障害が消え去ったおかげだ。
リリアは毎日幸せそうに笑っている。
真実の愛は やはり何物にも代えがたいな! 敬具』
ピキッ。
わたくしの額に 青筋が浮き出たのが分かった。
(こ の…お花畑脳筋王子が!)
(誰のおかげで婚約破棄がスムーズに進んだ(?)と思っているのよ!)
(しかも『障害が消え去った』ですって!?)
わたくしは怒りに震える手で もう一枚の手紙を広げる。
リリアからだ。
『カタリナ様 お元気ですか?
辺境の空気は美味しいですか?
私は今 とっても幸せです!
エドワード様が 私のために毎日お花を摘んできてくださるんです。
この間は 王宮の庭師さんが大切に育てていた『百年物の薔薇』を引っこ抜いてきてくれて
庭師さんは泣いていたけれど エドワード様の愛を感じました!
カタリナ様も 辺境で素敵な『愛』を見つけてくださいね!
追伸:エドワード様のお妃様になるための勉強は大変ですが 毎日が充実しています!』
ブチッ。
わたくしの中で 何かが切れる音がした。
「(スーーーーーッ…)」
わたくしは手紙を二枚まとめて くしゃりと握りつぶした。
「セシリオ」
「…はい」
わたくしは地を這うような低い声で 護衛騎士を見上げる。
その顔は きっと今 悪役令嬢史上 最高に邪悪な笑みを浮かべていたに違いない。
「わたくし 決めましたわ」
「…何をでございましょう」
「あの馬鹿(エドワード)とあの女狐(リリア)に
わたくしの恐ろしさを 思い知らせてやらなくてはならないと!」
わたくしはくしゃくしゃの手紙を暖炉に投げ込む。
炎が 一瞬激しく燃え上がった。
「『ささやかな婚約披露パーティー』ですって?
『百年物の薔薇』ですって?」
「フン!笑わせてくれるわ!」
「こうなったら!わたくしも この辺境で パーティーを開きますわ!」
「…パーティー ですか」
セシリオの無表情が わずかに怪訝なものに変わる。
「そうよ!
あの王都の貧相なパーティーなんかより
ずっとずっと豪華で 盛大で 贅沢の限りを尽くした
悪役令嬢(わたくし)による 悪の晩餐会をよ!」
わたくしは高らかに宣言する。
「王都から一流の楽団を呼び!
大陸中から最高級の食材を取り寄せ!
館の庭には 黄金の噴水でも作らせましょう!」
「そして!そのパーティーの様子を 絵師に(大袈裟に)描かせ
あの馬鹿王子と女狐の鼻先に 送りつけてやるのよ!」
(どうだ!わたくしの復讐は この程度では終わらないわよ!)
わたくしが興奮冷めやらぬ様子でセシリオを見やると
彼は静かに 暖炉の火を見つめていた。
「セシリオ!聞いているの!
さっそく準備を…!」
「お嬢様」
セシリオはゆっくりと わたくしに向き直った。
その目は いつにも増して冷徹な光を宿している。
「一つ 根本的な問題がございます」
「なによ!わたくしの完璧な計画に
またケチをつける気!?」
「いえ 事実を申し上げるまでです」
セシリオは間を置かず 言い放った。
「予算がありません」
「……」
「……はい?」
わたくしは一瞬 言われた意味が分からなかった。
「よさん…?」
「はい。予算。
すなわち お金でございます」
「な にを…」
わたくしは思わず後ずさる。
「わたくしは!あの『嘆き』の商談で 莫大な利益を得たはずよ!
あのお金があるでしょう!」
「あのお金は すでに叔父上が
『カタリナが領民のために使ってくれと言っていた』と解釈され
領地の新しい橋の建設費用と 孤児院の改築費用に全額充当されました」
「(ガーン!)」
(あの脳筋熊オヤジ!余計なことを!)
(わたくしが一言でもそんなこと言った!?)
「では!わたくしの公爵家からの仕送りは!」
「お嬢様は現在 謹慎中の身。
旦那様(公爵)からの送金は
『カタリナが反省するまで最低限の生活費のみ』と固く止められております」
「そん…な…」
「ちなみに お嬢様の今月の残りの生活費(お小遣い)は
銀貨五枚でございます」
「ぎ ん か ご ま い」
(それじゃあ 豪華なパーティーどころか
市場の『嘆き』一樽さえ買えないじゃないの!)
わたくしは膝から崩れ落ちた。
「そん…な…
わたくしの復讐が…わたくしの悪の晩餐会が…」
「黄金の噴水どころか
井戸の修理代も出せませんね」
セシリオが(絶対に楽しんで)とどめを刺してくる。
「くっ…!くううううう!」
わたくしは床に突っ伏し 悔し涙に暮れる。
(見てなさいよエドワード…リリア…!)
(そしてセシリオ!)
(お金がないなら!
お金をかけずに あなたたちをギャフンと言わせる
もっと陰湿で 邪悪な悪事を考えてやるんだから!)
わたくしの新たな(そして恐らくポンコツな)計画が
予算ゼロという厳しい現実の中から 産声を上げようとしていた。
その内容をお父様へ報告するのを阻止しようと 必死の攻防を繰り広げてから数日。
わたくしとセシリオの間には 奇妙な緊張感が漂っていた。
「……」
「……」
わたくしがジロリと睨めば セシリオは無表情で受け流す。
わたくしが「その日誌を寄越しなさい!」と迫れば
「業務ですので」と一言で撃退される。
おのれ朴念仁!
わたくしのポンコツ…いえ 華麗なる悪役令嬢ライフの記録を
お父様に知られるわけにはいかないというのに!
「(キーッ!)」
わたくしは自室で一人 苛立ちながら刺繍(という名の布への攻撃)に勤しんでいた。
もちろん 聖女様(笑)と呼ばれるようになった領民たちへの『悪の計画③』を練るためだ。
(こうなったら 次こそは本格的な悪事を…
例えば 領地の川の流れを無理やり変えて 水害を引き起こすとか…)
「お嬢様」
「ひゃっ!?」
わたくしは悪事がバレたかのように飛び上がった。
いつの間にか セシリオが扉の前に立っている。
「ノックくらいなさいよ ノックを!」
「三回いたしましたが。
お嬢様が刺繍布に穴を開けるのに夢中でいらっしゃったので」
「(グサッ!)…何の用ですの!
わたくしは今 忙しい(悪だくみで)のよ!」
「王都から お嬢様宛に手紙が届いております」
「王都から?」
わたくしは手を止めた。
お父様からだろうか。いや お父様なら叔父上宛に連絡するはず。
(まさか…!)
わたくしは一つの可能性に思い至り ニヤリと笑みを浮かべた。
(エドワードね!
わたくしを追放したことを後悔して
『カタリナ 帰ってきてくれ』という謝罪の手紙に違いないわ!)
(フン!遅いのよ!
でも まあ 悪役令嬢として 復讐の第一歩が相手の降伏とは 悪くないわね!)
わたくしはセシリオから手紙をひったくるように受け取った。
差出人の名前は…
「…エドワード第二王子。
(連名)リリア・ブラウン」
(…は?)
なぜあの女狐の名前まであるのよ。
わたくしは眉をひそめながら 封を切った。
中からは 便箋が二枚。
一枚はエドワードの妙に力強い筆跡。
もう一枚は リリアの丸っこくて可愛らしい(腹立たしい)筆跡だ。
まず エドワードの手紙から。
『拝啓 カタリナ・フォン・ヴォルフ嬢
辺境での暮らしはどうだろうか。
王都の華やかさとは無縁の土地で お前のその歪んだ性根を叩き直していることと思う。
さて この手紙はほかでもない。
私とリリアが 近々ささやかな婚約披露のパーティーを開くことになったという報告だ。
これも全て お前という障害が消え去ったおかげだ。
リリアは毎日幸せそうに笑っている。
真実の愛は やはり何物にも代えがたいな! 敬具』
ピキッ。
わたくしの額に 青筋が浮き出たのが分かった。
(こ の…お花畑脳筋王子が!)
(誰のおかげで婚約破棄がスムーズに進んだ(?)と思っているのよ!)
(しかも『障害が消え去った』ですって!?)
わたくしは怒りに震える手で もう一枚の手紙を広げる。
リリアからだ。
『カタリナ様 お元気ですか?
辺境の空気は美味しいですか?
私は今 とっても幸せです!
エドワード様が 私のために毎日お花を摘んできてくださるんです。
この間は 王宮の庭師さんが大切に育てていた『百年物の薔薇』を引っこ抜いてきてくれて
庭師さんは泣いていたけれど エドワード様の愛を感じました!
カタリナ様も 辺境で素敵な『愛』を見つけてくださいね!
追伸:エドワード様のお妃様になるための勉強は大変ですが 毎日が充実しています!』
ブチッ。
わたくしの中で 何かが切れる音がした。
「(スーーーーーッ…)」
わたくしは手紙を二枚まとめて くしゃりと握りつぶした。
「セシリオ」
「…はい」
わたくしは地を這うような低い声で 護衛騎士を見上げる。
その顔は きっと今 悪役令嬢史上 最高に邪悪な笑みを浮かべていたに違いない。
「わたくし 決めましたわ」
「…何をでございましょう」
「あの馬鹿(エドワード)とあの女狐(リリア)に
わたくしの恐ろしさを 思い知らせてやらなくてはならないと!」
わたくしはくしゃくしゃの手紙を暖炉に投げ込む。
炎が 一瞬激しく燃え上がった。
「『ささやかな婚約披露パーティー』ですって?
『百年物の薔薇』ですって?」
「フン!笑わせてくれるわ!」
「こうなったら!わたくしも この辺境で パーティーを開きますわ!」
「…パーティー ですか」
セシリオの無表情が わずかに怪訝なものに変わる。
「そうよ!
あの王都の貧相なパーティーなんかより
ずっとずっと豪華で 盛大で 贅沢の限りを尽くした
悪役令嬢(わたくし)による 悪の晩餐会をよ!」
わたくしは高らかに宣言する。
「王都から一流の楽団を呼び!
大陸中から最高級の食材を取り寄せ!
館の庭には 黄金の噴水でも作らせましょう!」
「そして!そのパーティーの様子を 絵師に(大袈裟に)描かせ
あの馬鹿王子と女狐の鼻先に 送りつけてやるのよ!」
(どうだ!わたくしの復讐は この程度では終わらないわよ!)
わたくしが興奮冷めやらぬ様子でセシリオを見やると
彼は静かに 暖炉の火を見つめていた。
「セシリオ!聞いているの!
さっそく準備を…!」
「お嬢様」
セシリオはゆっくりと わたくしに向き直った。
その目は いつにも増して冷徹な光を宿している。
「一つ 根本的な問題がございます」
「なによ!わたくしの完璧な計画に
またケチをつける気!?」
「いえ 事実を申し上げるまでです」
セシリオは間を置かず 言い放った。
「予算がありません」
「……」
「……はい?」
わたくしは一瞬 言われた意味が分からなかった。
「よさん…?」
「はい。予算。
すなわち お金でございます」
「な にを…」
わたくしは思わず後ずさる。
「わたくしは!あの『嘆き』の商談で 莫大な利益を得たはずよ!
あのお金があるでしょう!」
「あのお金は すでに叔父上が
『カタリナが領民のために使ってくれと言っていた』と解釈され
領地の新しい橋の建設費用と 孤児院の改築費用に全額充当されました」
「(ガーン!)」
(あの脳筋熊オヤジ!余計なことを!)
(わたくしが一言でもそんなこと言った!?)
「では!わたくしの公爵家からの仕送りは!」
「お嬢様は現在 謹慎中の身。
旦那様(公爵)からの送金は
『カタリナが反省するまで最低限の生活費のみ』と固く止められております」
「そん…な…」
「ちなみに お嬢様の今月の残りの生活費(お小遣い)は
銀貨五枚でございます」
「ぎ ん か ご ま い」
(それじゃあ 豪華なパーティーどころか
市場の『嘆き』一樽さえ買えないじゃないの!)
わたくしは膝から崩れ落ちた。
「そん…な…
わたくしの復讐が…わたくしの悪の晩餐会が…」
「黄金の噴水どころか
井戸の修理代も出せませんね」
セシリオが(絶対に楽しんで)とどめを刺してくる。
「くっ…!くううううう!」
わたくしは床に突っ伏し 悔し涙に暮れる。
(見てなさいよエドワード…リリア…!)
(そしてセシリオ!)
(お金がないなら!
お金をかけずに あなたたちをギャフンと言わせる
もっと陰湿で 邪悪な悪事を考えてやるんだから!)
わたくしの新たな(そして恐らくポンコツな)計画が
予算ゼロという厳しい現実の中から 産声を上げようとしていた。
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