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『デビル・ヴォルフ』景気に沸く辺境領は 夜も活気に満ちていた。
酒場からは 儲けた領民たちの陽気な歌声が聞こえてくる。
わたくしは自室の窓辺に立ち 忌々しそうにその喧騒を眺めていた。
手には 金貨が詰まりすぎて口が閉まらない金袋が握られている。
(儲かりすぎだわ…!)
『悪の晩餐会』を開くには十分すぎる資金。
しかし それと引き換えに わたくしは『商才の聖女』という
悪役令嬢として最も屈辱的な称号を(完全に)手に入れてしまった。
「ああ…わたくしの悪役令嬢ライフは どこへ行ってしまったの…」
わたくしが窓辺でため息をついていると
背後で(いつもの)無表情な声がした。
「お嬢様。そのような場所で黄昏れては 風邪を引かれます」
「セシリオ…!」
わたくしは振り返り 金袋を彼に投げつけそうになる。
「これも!あれも!あなたのせいよ!」
「と 申されますと?」
「あなたが『美味です』なんて言って あの『デビル』を認めるから!
わたくしの計画(貴婦人太らせ計画)が 台無しじゃないの!」
「ですが おかげで『悪の晩餐会』の資金は潤沢に集まりました。
結果オーライかと」
「(グサッ!)…わたくしは『結果』ではなく『過程』を大事にする悪役令嬢なのよ!」
「左様でございますか」
(この朴念仁!全然分かってない!)
わたくしはプンプンしながら部屋を出る。
「どこへ?」
「気分転換よ!
このままでは 聖女(笑)のストレスで お肌が荒れてしまうわ!」
「夜の外出は危険です」
「フン!この領地で わたくし(聖女様)を襲う物好きがいるというの?」
わたくしはセシリオの制止を振り切り 館の裏口から夜の町へ繰り出した。
もちろん セシリオは数歩後ろを 無表情でついてくる。
町の広場は 昼間の喧騒が嘘のように静かだった。
…が 酒場のある通りだけは別だ。
「ウィーッ!飲め飲め!」
「これも全部 カタリナ聖女様のおかげだ!」
「『デビル・ヴォルフ』万歳!」
(…やっぱり帰ろうかしら)
わたくしが踵を返そうとした その時。
酒場から よろよろと数人の男たちが出てきた。
どうやら 景気の良さで飲みすぎた 領地の兵士たちらしい。
「お?」
そのうちの一人が わたくしの姿に気づいた。
「おおー!噂をすれば!」
「あれは!我らが『商才の聖女』カタリナ様じゃねえか!」
男たちは下品な笑い声を上げ わたくしを取り囲む。
酒と『デビル・ヴォルフ』(酒の肴にも最高らしい)の匂いが ぷんぷんする。
「な なんですの あなたたち!無礼者!」
わたくしは悪役令嬢の威厳(のつもり)で 彼らを睨みつける。
「ハハ!聖女様は お怒りになってもお美しい!」
「聖女様!俺たちアンタのおかげで 懐があったけえんだ!」
「一杯 どうですかい?聖女様の奢りで!」
「奢りませんわよ!
というか わたくしは聖女じゃないと 何度言ったら…!」
わたくしが反論しようとすると 一番体の大きな男が
ニヤニヤしながら わたくしに顔を近づけてきた。
「いいじゃねえか 聖女様。
そんなツンケンしてると 婚約破棄されたみたいに
また男に逃げられちまうぜ?」
「(カチン!)」
(今…こいつ なんて言った?)
「そうだそうだ!」
「王都の王子様も あの『嘆き』の匂いに逃げ出したんじゃねえか?ガハハ!」
「(ピキピキ…)」
わたくしのこめかみに 青筋が浮かぶ。
「…あなたたち。
わたくしを誰だか分かって言ってるのかしら」
「もちろん!『聖女様』だろ?」
「違いますわ」
わたくしは扇(夜の散歩にも携帯するのが悪役令嬢のたしなみ)をピシャリと開く。
「わたくしは!カタリナ・フォン・ヴォルフ!
この地を支配する(予定の)悪役令嬢よ!」
わたくしがキメ顔で言い放つと 酔っ払いたちは一瞬きょとんとし
次の瞬間 腹を抱えて笑い出した。
「ガハハ!悪役令嬢だってよ!」
「聖女様は ご冗談がお上手だ!」
「こんな可愛い聖女様が 悪役なわけねえよなあ!」
「なっ…!可愛いとか言うな!
わたくしは本気で…!」
「まあまあ 聖女様」
例の大柄な男が わたくしの抗議を遮り
馴れ馴れしく わたくしの肩に手を置こうとした。
「そんな怖い顔なさらずに。
俺たちともっと楽しく…」
その手が わたくしのドレスの肩先に触れようとした。
その 瞬間。
「——っ!」
わたくしは ただ 風が吹いたようにしか見えなかった。
わたくしの目の前に立っていたはずのセシリオが
いつの間にか わたくしと男の間に割り込んでいる。
そして 男の手は わたくしに届くことなく
セシリオの鉄のような左手に掴まれ 宙で止まっていた。
「いっ…!?」
男の顔から 笑みが消える。
「な…なんだテメエ…!
聖女様の護衛のくせに…!」
男は掴まれた手を振りほどこうとするが セシリオの手は微動だにしない。
「離せ!この朴念仁騎士が!」
男の仲間たちが セシリオに掴みかかろうとする。
ドンッ。
わたくしには 何が起こったか分からなかった。
セシリオが軽く足を踏み出したかと思うと
彼に掴みかかろうとした兵士たちが
まるで人形のように 宙を舞い 広場の石畳に(怪我はしない程度に)叩きつけられていた。
「がっ…!」
「うぐっ…!」
一瞬。
ほんの一瞬の出来事だった。
「ひっ…」
手を掴まれていた大柄な男が 恐怖に顔を引きつらせる。
セシリオは掴んだ男の手を(まるで汚物でも払うかのように)振りほどくと
いつもの無表情のまま。
しかし 地の底から響くような 低い声で言った。
「お嬢様に 触れるな」
「な…な…
聖女様に ちょっと挨拶しただけじゃねえか!」
男が恐怖紛れに言い返す。
その言葉を聞いたセシリオの空気が さらに冷たくなった。
「……たとえ奇行が目立っても」
「え?」
セシリオは わたくしを一瞥(いちべつ)することなく
冷え切った目で 男たちを(ゴミでも見るかのように)見下ろした。
「この方は 俺の主だ」
「次に無礼を働けば」
セシリオはゆっくりと 腰の剣の柄に手をかける。
「命はないと思え」
「「「ひぃぃぃぃぃ!!」」」
酔っ払いたちは 文字通り這うようにして 酒場へと逃げ帰っていった。
「……」
広場には わたくしとセシリオ
そして冷たい夜風の音だけが残された。
わたくしは 目の前で起こったことに 呆然としていた。
(…奇行ですって?)
(今 さらっと『奇行が目立つ』って言ったわね!?)
わたくしは怒りに燃え セシリオに抗議しようと口を開きかけた。
…が。
(……)
わたくしを守るように立つ その背中。
いつも無表情で わたくしを『苦行日誌』で馬鹿にする朴念仁。
その彼が 今 わたくしのために 本気で怒っていた。
(『俺の主だ』…)
(…)
(…な なによ!)
(…今 ちょっと…)
(ほんのちょっとだけ…)
(キュンとした自分が許せないわ!)
わたくしは顔が熱くなるのを感じ 慌てて扇で顔を隠す。
悪役令嬢たるもの 護衛騎士に守られてキュンとするなんて!
あってはならないことよ!
「お嬢様」
セシリオが振り返る。
その顔は すでにいつもの無表情に戻っていた。
「お戻りください。
夜道は危険です(特に酔っ払いが)」
「…わ わかってますわよ!
あなたに言われなくても!」
わたくしは顔の熱を隠すように セシリオに背を向け
早足で館へと戻り始めた。
「(…奇行ですって…!
あの日誌のことといい 明日こそ 問い詰めてやるんだから!)」
わたくしは胸の(妙な)高鳴りを
酔っ払いへの怒り(とセシリオへの怒り)に
必死にすり替えながら 夜道を急ぐのだった。
酒場からは 儲けた領民たちの陽気な歌声が聞こえてくる。
わたくしは自室の窓辺に立ち 忌々しそうにその喧騒を眺めていた。
手には 金貨が詰まりすぎて口が閉まらない金袋が握られている。
(儲かりすぎだわ…!)
『悪の晩餐会』を開くには十分すぎる資金。
しかし それと引き換えに わたくしは『商才の聖女』という
悪役令嬢として最も屈辱的な称号を(完全に)手に入れてしまった。
「ああ…わたくしの悪役令嬢ライフは どこへ行ってしまったの…」
わたくしが窓辺でため息をついていると
背後で(いつもの)無表情な声がした。
「お嬢様。そのような場所で黄昏れては 風邪を引かれます」
「セシリオ…!」
わたくしは振り返り 金袋を彼に投げつけそうになる。
「これも!あれも!あなたのせいよ!」
「と 申されますと?」
「あなたが『美味です』なんて言って あの『デビル』を認めるから!
わたくしの計画(貴婦人太らせ計画)が 台無しじゃないの!」
「ですが おかげで『悪の晩餐会』の資金は潤沢に集まりました。
結果オーライかと」
「(グサッ!)…わたくしは『結果』ではなく『過程』を大事にする悪役令嬢なのよ!」
「左様でございますか」
(この朴念仁!全然分かってない!)
わたくしはプンプンしながら部屋を出る。
「どこへ?」
「気分転換よ!
このままでは 聖女(笑)のストレスで お肌が荒れてしまうわ!」
「夜の外出は危険です」
「フン!この領地で わたくし(聖女様)を襲う物好きがいるというの?」
わたくしはセシリオの制止を振り切り 館の裏口から夜の町へ繰り出した。
もちろん セシリオは数歩後ろを 無表情でついてくる。
町の広場は 昼間の喧騒が嘘のように静かだった。
…が 酒場のある通りだけは別だ。
「ウィーッ!飲め飲め!」
「これも全部 カタリナ聖女様のおかげだ!」
「『デビル・ヴォルフ』万歳!」
(…やっぱり帰ろうかしら)
わたくしが踵を返そうとした その時。
酒場から よろよろと数人の男たちが出てきた。
どうやら 景気の良さで飲みすぎた 領地の兵士たちらしい。
「お?」
そのうちの一人が わたくしの姿に気づいた。
「おおー!噂をすれば!」
「あれは!我らが『商才の聖女』カタリナ様じゃねえか!」
男たちは下品な笑い声を上げ わたくしを取り囲む。
酒と『デビル・ヴォルフ』(酒の肴にも最高らしい)の匂いが ぷんぷんする。
「な なんですの あなたたち!無礼者!」
わたくしは悪役令嬢の威厳(のつもり)で 彼らを睨みつける。
「ハハ!聖女様は お怒りになってもお美しい!」
「聖女様!俺たちアンタのおかげで 懐があったけえんだ!」
「一杯 どうですかい?聖女様の奢りで!」
「奢りませんわよ!
というか わたくしは聖女じゃないと 何度言ったら…!」
わたくしが反論しようとすると 一番体の大きな男が
ニヤニヤしながら わたくしに顔を近づけてきた。
「いいじゃねえか 聖女様。
そんなツンケンしてると 婚約破棄されたみたいに
また男に逃げられちまうぜ?」
「(カチン!)」
(今…こいつ なんて言った?)
「そうだそうだ!」
「王都の王子様も あの『嘆き』の匂いに逃げ出したんじゃねえか?ガハハ!」
「(ピキピキ…)」
わたくしのこめかみに 青筋が浮かぶ。
「…あなたたち。
わたくしを誰だか分かって言ってるのかしら」
「もちろん!『聖女様』だろ?」
「違いますわ」
わたくしは扇(夜の散歩にも携帯するのが悪役令嬢のたしなみ)をピシャリと開く。
「わたくしは!カタリナ・フォン・ヴォルフ!
この地を支配する(予定の)悪役令嬢よ!」
わたくしがキメ顔で言い放つと 酔っ払いたちは一瞬きょとんとし
次の瞬間 腹を抱えて笑い出した。
「ガハハ!悪役令嬢だってよ!」
「聖女様は ご冗談がお上手だ!」
「こんな可愛い聖女様が 悪役なわけねえよなあ!」
「なっ…!可愛いとか言うな!
わたくしは本気で…!」
「まあまあ 聖女様」
例の大柄な男が わたくしの抗議を遮り
馴れ馴れしく わたくしの肩に手を置こうとした。
「そんな怖い顔なさらずに。
俺たちともっと楽しく…」
その手が わたくしのドレスの肩先に触れようとした。
その 瞬間。
「——っ!」
わたくしは ただ 風が吹いたようにしか見えなかった。
わたくしの目の前に立っていたはずのセシリオが
いつの間にか わたくしと男の間に割り込んでいる。
そして 男の手は わたくしに届くことなく
セシリオの鉄のような左手に掴まれ 宙で止まっていた。
「いっ…!?」
男の顔から 笑みが消える。
「な…なんだテメエ…!
聖女様の護衛のくせに…!」
男は掴まれた手を振りほどこうとするが セシリオの手は微動だにしない。
「離せ!この朴念仁騎士が!」
男の仲間たちが セシリオに掴みかかろうとする。
ドンッ。
わたくしには 何が起こったか分からなかった。
セシリオが軽く足を踏み出したかと思うと
彼に掴みかかろうとした兵士たちが
まるで人形のように 宙を舞い 広場の石畳に(怪我はしない程度に)叩きつけられていた。
「がっ…!」
「うぐっ…!」
一瞬。
ほんの一瞬の出来事だった。
「ひっ…」
手を掴まれていた大柄な男が 恐怖に顔を引きつらせる。
セシリオは掴んだ男の手を(まるで汚物でも払うかのように)振りほどくと
いつもの無表情のまま。
しかし 地の底から響くような 低い声で言った。
「お嬢様に 触れるな」
「な…な…
聖女様に ちょっと挨拶しただけじゃねえか!」
男が恐怖紛れに言い返す。
その言葉を聞いたセシリオの空気が さらに冷たくなった。
「……たとえ奇行が目立っても」
「え?」
セシリオは わたくしを一瞥(いちべつ)することなく
冷え切った目で 男たちを(ゴミでも見るかのように)見下ろした。
「この方は 俺の主だ」
「次に無礼を働けば」
セシリオはゆっくりと 腰の剣の柄に手をかける。
「命はないと思え」
「「「ひぃぃぃぃぃ!!」」」
酔っ払いたちは 文字通り這うようにして 酒場へと逃げ帰っていった。
「……」
広場には わたくしとセシリオ
そして冷たい夜風の音だけが残された。
わたくしは 目の前で起こったことに 呆然としていた。
(…奇行ですって?)
(今 さらっと『奇行が目立つ』って言ったわね!?)
わたくしは怒りに燃え セシリオに抗議しようと口を開きかけた。
…が。
(……)
わたくしを守るように立つ その背中。
いつも無表情で わたくしを『苦行日誌』で馬鹿にする朴念仁。
その彼が 今 わたくしのために 本気で怒っていた。
(『俺の主だ』…)
(…)
(…な なによ!)
(…今 ちょっと…)
(ほんのちょっとだけ…)
(キュンとした自分が許せないわ!)
わたくしは顔が熱くなるのを感じ 慌てて扇で顔を隠す。
悪役令嬢たるもの 護衛騎士に守られてキュンとするなんて!
あってはならないことよ!
「お嬢様」
セシリオが振り返る。
その顔は すでにいつもの無表情に戻っていた。
「お戻りください。
夜道は危険です(特に酔っ払いが)」
「…わ わかってますわよ!
あなたに言われなくても!」
わたくしは顔の熱を隠すように セシリオに背を向け
早足で館へと戻り始めた。
「(…奇行ですって…!
あの日誌のことといい 明日こそ 問い詰めてやるんだから!)」
わたくしは胸の(妙な)高鳴りを
酔っ払いへの怒り(とセシリオへの怒り)に
必死にすり替えながら 夜道を急ぐのだった。
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