婚約破棄された悪役令嬢ですが、どうにも威厳が保てません!

パリパリかぷちーの

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わたくしと『共犯者』セシリオが辺境に戻り
『デビル・ヴォルフ』商会(仮)の『悪の経済支配()』を
本格化させてから 数ヶ月が経過した。

わたくしの執務室(デビル・ヴォルフ御殿)は
今や 大陸全土の経済を(本当に)動かす 司令塔と化していた。

「ボス」

「なによ 共犯者(セシリオ)!」

わたくしは金縁の眼鏡(悪役令嬢のインテリジェンスを演出するための伊達)をクイッと上げ
報告書を持ってきたセシリオを睨み上げる。

「大陸東部の商人ギルドより
『デビル・ヴォルフ・ロワイヤル(金粉入り)』の
独占販売契約を結びたいとの 嘆願()が届いております」

「フン!今更わたくしに泣きついてきたのね!
いいでしょう!
わが商会(悪の組織)の足元を見るような真似をしたこと
後悔させてやるわ!」

わたくしは契約書に(法外な条件を書き加えて)サインする。

「それと 南方諸国からは
お嬢様考案の『悪魔の涙(激辛ソース)』が
『神の恵み』として 高値で取引されているとの報告が」

「神の恵みですって!?
わたくしは 辛さで人々を苦しめるために開発したのに!」

(なぜ また崇拝されているのよ!)

わたくしがギリギリと歯噛みしていると
セシリオは 淡々と 次の書類を差し出した。

「こちらは 王都の ヴォルフ公爵家(お父様)からの 定期連絡です」

「お父様から?
また わたくしの『奇行(ビジネス)』の報告を
催促してきたのかしら?」

(あの『苦行日誌』を 結局お父様に提出しおって…!
しかも『経済白書』とかいう 訳の分からない副題までつけて!)

わたくしは不満げに 封蝋を解く。
そこには お父様からの事務的な連絡事項と
王都の近況が記されていた。

わたくしの『強欲商法()』のおかげで
王都の経済は 完全に立ち直り
わたくしの『ガラクタ宝物庫事件()』の賠償()として
王家からヴォルフ家に 莫大な(わたくしが稼いだ金で)賠償金が支払われたらしい。

(フン…王家も わたくしの『悪』の力には屈服するしかなかったようね!)

わたくしが満足げに頷きながら 読み進めていくと
その手紙の追伸に
わたくしが(忘れかけていた)二人の名前を見つけた。

『追伸:
先日 王都から視察団が 北の修道院へ赴いた。
かの 第二王子(だった男)エドワードと
リリア・ブラウン嬢の その後の報告が上がってきたぞ』

「……」

わたくしは思わず 読む手を止めた。
あの お花畑カップル。
わたくしの『悪役令嬢』としての 人生を狂わせた(?)二人。

(あの自爆事件以来 どうしているのかしら)
(まあ わたくしの知ったことではないけれど!)

わたくしは(悪役令嬢としての好奇心で)
その報告書(お父様がご丁寧に写しを同封してくれていた)に
目を通した。

『エドワード元第二王子 及び リリア・ブラウン嬢
現状報告書』

『両名は 王都追放後
大陸北端に位置する『聖ヴォルフガング修道院』にて
謹慎および奉仕活動に従事している』

(フン…厳寒の地で 罪を償っているというわけね)

『当初 エドワード元王子は
『王族である私に なぜこのような雑務を!』と抵抗。
リリア嬢も 『私は皆を幸せにするために…』と
泣き暮らす日々であった』

(自業自得だわ)

『しかし リリア嬢
ある日 修道院の『貧しい食事(黒パンと豆のスープ)』に対し
『神よ 豊かな食事(奇跡のパン)を』と
祈りを捧げてしまう』

(…! まさか!)

わたくしはゴクリと唾を飲む。

『結果。
修道院の備蓄庫にあった
冬越しのための『貴重な黒パン』と『干し肉』の全てが
その価値を失い『食べられない石ころ()』と『ボロ切れ()』に
変貌する事件が発生』

(やっぱりーーー!!)

(あの女狐!反省してないわ!)

『この事件により
修道院(と周辺の村)が 深刻な食糧危機に直面。
院長および周辺住民が激怒』

『リリア嬢は『悪魔憑き』として 地下の独房に幽閉されかける』

(うわあ…)

『エドワード元王子
リリア嬢を庇い(『彼女は悪くない!神の力が暴走しただけだ!』)
二人で食糧危機の責任を取る と宣言』

(あの お花畑王子…
まだ目が覚めてないのね…
でも 少しは見直したわ)

『結果。
リリア嬢は『奇跡の力(価値の破壊)』を
生涯 封印することを 厳命される』

『そして 両名は
『修道院への損害賠償()』として
食糧危機を乗り切るための労働()を 課せられることとなった』

『現在
エドワード元王子は
来る日も来る日も 凍てつく畑で 鍬(くわ)を振るい
(生まれて初めての)肉体労働に 従事している』

『リリア嬢は
『無料奉仕()』として
修道院の 全ての洗濯と 掃除(特に便器磨き)を
一手に 引き受けているとのこと』

『二人とも 当初の傲慢さ(天然さ)は消え失せ
ただ黙々と 『価値を生み出す()』労働に
励んでいる模様』

『修道院長 談:
「神は あの二人に
『無償の愛』ではなく
『労働の尊さ』をお教えになろうとしているのでしょうな…(合掌)」』

「……」

わたくしは 報告書を読み終え
パタン と机の上に置いた。

(……)

(なんというか…)

(わたくしが想像していた『復讐』とは
ずいぶん 違う結末だわ…)

(もっとこう…わたくしが
『フハハハ!どうだ!わたくしの前にひれ伏せ!』
とか やるはずだったのに…)

(勝手に自爆して 勝手に追放されて
勝手に『労働の尊さ』に目覚めているなんて…)

「…お嬢様?」

わたくしが黙り込んでいるのを 不審に思ったのか
セシリオが わたくしの顔を覗き込んできた。

「…どうかなさいましたか?
王都で 何か?」

「…いいえ」

わたくしは(悪役令M嬢として)
ニヤリ と 口の端を吊り上げた。

「フン!
あの愚かな二人も
ようやく『価値』というものを 理解したようね!」

わたくしは窓の外(わたくしが『デビル・ヴォルフ』マネーで建てさせた 領民のための豪華な病院)を眺め
高らかに 宣言した。

「何はともあれ!
わたくしの 勝ち ね!」

「…(何にとは 申しませんが)」

セシリオが(絶対に聞こえる声で)
小声で ツッコミを入れたのを
わたくしは 聞こえないフリで 黙殺した。
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