【完結】初恋は君にあげない

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20.終業日:修二視点

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 浮かれて眠れないなんて、遠足の前日の小学生じゃあるまいし……
 ため息と共に起きた俺は、洗面所に向かい顔を洗った。
 これくらいなら目立たないよな?
 日焼け止めと、薄くできたクマにコンシーラーを少し塗る。朝食を食べ、準備を整えるとハルを迎えに行った。

「おはよう」
「おはよう、ハル……」
「うん、母さんには修二がうちで夕飯食べることも泊まることも言ったよ」
「そうか」
 俺は何も言ってないのに、ハルの名前を呼んだだけでハルは気づいてくれた。
 ハルはすごいな。俺なんか全然敵わない。隣にいるのにやっぱり遠い。

 寝そうになりながら終業式を過ごし、夏休みの注意事項なんかが担任から伝えられた。

「なあ風間、花火大会さ宇乃も呼べば?」
 早野のやつ、余計なことを……
 ハルは早野の言葉に少し迷う素振りを見せた後、帰り支度をしている宇乃の所へ行った。
 周りがうるさすぎてハルが何を話しているのかは聞こえない。だが見ていると、宇乃はうんうんと頷いたり、スマホで何かを確認する仕草を見せた。

「俺、恋のキューピットじゃね?」
 調子に乗った早野を睨みつけると、ごめんごめんと謝られた。
 それは何に対しての謝罪だと苛々したが、今日はハルと一緒に夕飯を食べてプラネタリウムを見るという楽しみが待っている。こんな些細なことで苛々している場合じゃないんだ。

 しばらくするとハルと宇乃の話は終わったのか、ハルが戻ってきた。
「週末の花火大会は行けるけど、再来週の隣町のは行けないって。八月終わりのは行けるかもしれない。その返事は週末の花火大会の時に教えてくれます」
 最後だけ丁寧な言葉になってしまうハルが可愛い。

「浴衣で来ることも言ってくれた?」
「うん。たぶん家にあるって言ってた」
 そんなのはどうでもいい。俺はハルの浴衣姿が見たい。
 みんなが帰りにどこかに寄ろうというのを断って、俺はハルと家路を急いだ。
 ハルの家で夕飯を食べるのは久しぶりだ。高校に入った頃からハルが俺と目を合わさなくなって、遠慮してしまった。それ以来だから一年以上前だ。

 家に帰って着替えると、鏡の前に立つ。この格好、おかしくないよな?
 この髪、変じゃないよな?
 目の下のクマ、ちゃんと隠れてるよな?
 ハルの前に立つのだと思うと途端に自信がなくなる。情けなくてハルの後ろに隠れていた頃の幼い自分が出てくるんだ。

 女子からは格好いいと言われ、告白も何度もされた。だけどハルには一度も格好いいと言われたことはないし、服装や髪型を褒められたこともない。
 世界史の試験対策ノートはいつもありがとうと感謝してくれるが、俺は感謝より、好意がほしい。それは贅沢だろうか?

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