伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ

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第46話:ヴィンスの買い物

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雨雲はいつもより長く居座っていた。
空は厚い灰色の雲に覆われ、途切れることのない雨が地面を叩き続けていた。

学院の教室では休憩中の3人が談笑している。
「この時期は、雨ばっかりで、ほんと気が滅入るね」
エマは普段とは違い、少し元気の無い様子。

「そうだね。でも、私は雨音を聞きながら読書や、魔道具の研究をするのは好きかな?なんか集中できるんだよね」
ミアが微笑む。

「僕も雨の日は、室内で読書か、訓練場で剣を振ってるよ」
ルカが、外の土砂降りを見ながら答える。

「いや、あなたは晴れてても、同じでしょ」
エマがルカの返答に笑う。

そこに、ヴィンスがやってきた。
「やあ、今日は雨の影響で、午後の屋外訓練が
中止らしいじゃないか。良かったらミアに頼みがあるんだが、少しいいか?」

「頼みって何?」
ミアが首を傾げる。
エマもルカも、以前の様に、警戒はしていない。

「商店街の魔道具店に、少し気になる魔道具を見つけた。購入を考えているのだが、アドバイスが欲しい。一緒に見てくれないか?」

「いいよ。今日は予定もないし、ミアとルカも行くでしょ?」

2人も、問題ないと頷く。

「では、放課後にたのむ」
ヴィンスはそう言うと、去っていった。

そんなヴィンスを、眺めながらエマが呟く。
「以前のヴィンスからは想像できないよね。
ミアに頼みごとなんて」
と微笑むのだった。

-----

放課後、ミアは従者のリナに友達と商店街へ出かけると伝え、先に帰ってもらった。ミアとルカも同様にし、ヴィンスのクラメール侯爵家の馬車に乗り込む。

商店街に向かう馬車の中でヴィンスは説明を始める。
「今日は、時間をとってもらって、すまないな。実はあの対抗戦の時、自身の実力不足を痛感した。それからは、一層、剣と魔法の鍛錬に励んでいるのだが、何か、もう一手欲しくてな。いろいろと、探すうちに気になる物を見つけた。という事だ…」

ちょうど、話のキリの良い所で店に到着した。
店の外観は商店街の中でも、一際大きく、三階建の建物。
雑多な感じではあったが、日本の大型ディスカウントストアのようで、ワクワクする。希少な商品程、上の階で扱っている様だ。

一行はヴィンスの案内で3階の目当てのコーナーまで移動した。

ヴィンスが商品を指さす。
「コレだ。雷の属性を持った宝石、雷光石を腕輪に嵌め込んだ、「雷光の腕輪」という物だ。これが、どの程度の物なのか判断して欲しい。決して安い物では、ないのでな…」

おそらく、対抗戦の時に、巨大スライムに剣も魔法も効果が薄く、唯一、雷だけは通用した事を考えたのだろう。対人にも対魔獣にも一定以上の効果がありそうな事から、非常に良い判断だ。問題はその効果…

ミアはもう、能力を出し惜しみする気はないので、迷わず腕輪に鑑定魔法を使う。

「鑑定」
名前:雷光の腕輪
属性:雷
詳細:腕に装着する事で武器に雷属性を付与。大気中の魔力を使用するので使用者の負担はない。その代わりに付与能力は低い。


「ヴィンス!コレは良い物だよ!
武器に雷属性を付与できる。何より自身の魔力を使わないのは良いね。付与能力は低いけど、魔力残量を気にせずに攻撃できる。武器を交換しても、そのまま使えるのはメリットだね。」

ヴィンスは目を輝かせ、嬉しそうに頷く。
「そうか!良いものか!感謝するぞ!」

早速、店の主人に購入の旨を伝え、支払いに行ってしまった。

さて、私も気になる物を見つけたんだよね。
見た目は、ただの卵型の石、宝石という程の光沢は無く、うっすら虹色の模様が入っている。
店主に聞いてみると、先代の時から売れずに残っている、お守り的な置き物だと言う。確かに微弱な魔力を放っていて、そんな雰囲気を感じるが……私は見逃さなかった。

「鑑定」
名前:神獣シームルグの卵
詳細:神獣シームルグの卵、孵化をさせるには膨大な魔力が必要。生まれる時の姿や能力は注がれる魔力の質と量により決まる。

「すいません!これ買います!」
思いがけず、凄い掘り出し物を見つけた私は、興奮を抑えきれず、1人鼻息を荒くするのだった。

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