伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ

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第53話 : 遺跡の真実

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一団は地下の扉の前にいた。
ホールとは、まるで空気の質がが違い、肌寒さを感じる。

「それでは、皆さん、鍵を使います」
レオンが鍵を扉の鍵穴へゆっくり差し込み、慎重にまわす。

「ガシャンッ」

重い金属音が響き、扉の施錠が解除された。

「よし!やはり、この鍵でしたね。では、先へ進みましょう。扉を開きます。」

兵士2人が、扉を左右に開く。

慎重に一団は扉を抜けて、部屋へと入る。
部屋は暗く、魔道具では全体を照らす事はできないので、アリシアがホールの時と同様に、光の光球を上昇させ、部屋のなかを照らし出す。

光が広がり、部屋の様子が明らかになる。
この部屋も、1階のホールの様に、かなり広々としていた。
壁側には、さらに扉が4つ、等間隔で配置されている。
部屋の中央には台座があり、水晶の様な物が嵌め込まれていた。

「台座から、何か感じる。みんな、気をつけて」

台座の水晶が発光し、次第に赤く明滅し始める。
ど、その時、台座の影から金属の球体が飛び出してきた。
球体は空中に静止し浮かんでいる。
こちらを観察している様な、そんな雰囲気だ。

「魔物⁈いや、人工的なもの⁈
警備ゴーレム⁈」
アリシアが叫んだ。

やがて
「ビィー!ビィー!ビィー!」

けたたましく警報音が鳴り響く。
空中で静止していたゴーレムは、ふわりと高度を上げると、勢いよく、急降下して体当たりしてきた。
「危ない!みんなよけて!」

いきなりの、攻撃に皆、必死に逃げ惑う。

「アリシア様、どうすりゃ良い⁈逃げ続けるのは厳しい!」
子爵が叫ぶ。

「台座を調べるから、子爵とレオン君は、フォローして頂戴!」
アリシアが隙をみて、台座へ駆け寄る。

「了解しました!」
レオンが突っ込んできたゴーレムを、剣で弾き軌道をそらす。

ゴーレムの狙いは、台座の側にいる3人に絞られた様だ。

更に上昇したゴーレムが、ブーメランの様に弧を描き、アリシアへ突っ込んできた。

「土の盾!」
子爵がエリシアの前に土魔法で壁を出現させた。

「ドガン!」
と激しい音を立ててゴーレムが跳ね返る。

「この台座が、この施設を管理する為の何かかしら⁈」
エリシアが、台座に何やら彫られている事に気付いた。
「…転移…制御用水晶球…」

エリシアは水晶に触れて、魔力を注ぐ。
すると、

「認証完了致しました」
台座から、感情のない声が発せられた。

水晶の赤い明滅は止み、明るい色に変わる。
いつのまにか、警告音も鳴り止み、ゴーレムも元の位置、台座の裏にしっかりと戻っていた。

「ふぅ、2人ともありがとう。助かったわ。
…ここでも虹色の魔力が必要だったようね」
アリシアが子爵とレオンに礼を告げ、気付いた事を伝える。

「この台座のプレートには転移制御用水晶球と記されているわ。驚きだけど、ここは転移施設みたいね。」

「転移⁈あの伝説の⁈」
この場にいる全員がアリシアの言葉に驚く。

「何はともあれ、隅々まで調査してみなければ、ハッキリとは分からないわ。続けましょう」

-----

調査を続けた結果、それぞれの扉には、転移先と思われる大陸名が記されており、それぞれの部屋の中央には、大きな魔法陣が床に刻まれていた。
「アニマ」「タルク」「ドラム」そして「デノン」。
魔族の大陸であるデノンのみならず、各大陸と行来できるのである。

日記にあったように、魔族に知られてしまった以上、ここを封じるしかなかったのだろう。
この施設がいつから存在するのか、何の目的で誰が造ったのか、そして管理していたエリシアの先祖が何者なのか。
謎だらけではあるが、一旦調査は王国に引き継ぎ、エリシアとクラインの調査団は先に引き上げる事になった。













  
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