俺の番には大切な人がいる

ivy

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俺の番には大切な人がいる②

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翌日になっても案の定、直人は帰って来なかった。
夕方まで待って、今夜も帰らないと気付いた俺は、古くからの友人を食事に誘って気晴らししようと決めた。


目的地は二人で行くつもりで予約をしていた人気のイタリアン。
評価では最高とされていたメインの肉料理はなんの味もしなかった。




「もう別れちゃえば良いのに」

同じオメガのユキは頬を膨らませてそう言う。

「そんな簡単じゃないんだよ」

そう言って俺の言葉を代弁してくれたのはアルファの晃。
この2人とは家が近いこともあり、子供の頃からの腐れ縁だ。

「匠ならすぐ良い人見つかるよ。なんなら紹介しようか?」

「ユキ!」

晃に怒られてユキがぺろっと舌を出した。

こんな仕草も可愛らしいユキは、どこから見てもオメガらしい美しい容姿をしている。
常に沢山の恋人をはべらし人生を楽しんでいて少し羨ましい。

「でも直人が好きなんだ。他の人なんて考えられないよ」

そういう俺になんとも言えない表情をするユキと晃。
ダメだ気分転換に出てきたのにこれじゃ二人にも申し訳ない。

「ごめんな!折角付き合ってもらったのに。話変えよ!」

「そうだな!ユキ最近楽しいことあった?」

「僕の最近びっくりした話聞く?」

「また変な男に引っかかったの?」

「ひどっ!」

そう言いながら面白おかしくちょっとエッチなハプニングを話し出すユキ。
俺と晃は周りの迷惑にならないように必死で笑いを堪えて話に聞きいった。



こうしていると昔に戻ったみたいだ。
まだ恋も知らない学生時代。
3人でいつか出会う恋人の話をした。

結局そんな人に出会う前に俺の結婚は決められてしまったわけだけど。




「晃はまだ恋人できないのか?

「カッコいいしアルファなのに理想が高いの?」

常々思ってたことを酒の勢いで聞いてみる。
途端に晃の顔がさっと赤く染まった。

「あーだめだめ晃はロマンチストだからね」

「ユキ!」

「だってそーじゃん。運命の番以外はいらないんだって」

「へえ……真面目な晃らしいな」

そんな人に出会ったら晃ならきっと何より大切に一生かけて守り通すんだろう。

「早く会えるといいな」

本心からの俺の言葉に晃は一瞬眉を寄せて黙り込んだ。
え?悪いこと言った?

「はいはいこの話もここでおしまい。ボトルでワイン頼も?白と赤どっち?はい!白にしまーす」

「なんだそれ!もう決まってんじゃん!」

突然話に割り込んできたユキの強引な言葉に思わず爆笑する。
そしてそのまま誰が一番酒が強いかの話になった。
その挙句、三人で夜がふけるまで浴びるように飲み、何もかも忘れてふざけ合った。




目が覚めたのは明け方。
どうやって家に辿り着いたのかも覚えていない。
人の気配にふと横を見ると帰宅した直人が眠っていた。

家にいる時は本当の夫婦のように過ごしているので眠るベッドも同じだ。

いや本当の夫婦なんだ
俺が・・・俺の方が法的にも世間的にもれっきとしたパートナーだ。
なのにどうして気持ちのかけらさえ貰えないんだろう。

安らかに眠る優しいばかりの直人の頬にそっと口付ける。
腕の中に潜り込むといつまでも馴染めない違う家の匂いがした。






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