2 / 41
俺の番には大切な人がいる②
しおりを挟む翌日になっても案の定、直人は帰って来なかった。
夕方まで待って、今夜も帰らないと気付いた俺は、古くからの友人を食事に誘って気晴らししようと決めた。
目的地は二人で行くつもりで予約をしていた人気のイタリアン。
評価では最高とされていたメインの肉料理はなんの味もしなかった。
「もう別れちゃえば良いのに」
同じオメガのユキは頬を膨らませてそう言う。
「そんな簡単じゃないんだよ」
そう言って俺の言葉を代弁してくれたのはアルファの晃。
この2人とは家が近いこともあり、子供の頃からの腐れ縁だ。
「匠ならすぐ良い人見つかるよ。なんなら紹介しようか?」
「ユキ!」
晃に怒られてユキがぺろっと舌を出した。
こんな仕草も可愛らしいユキは、どこから見てもオメガらしい美しい容姿をしている。
常に沢山の恋人をはべらし人生を楽しんでいて少し羨ましい。
「でも直人が好きなんだ。他の人なんて考えられないよ」
そういう俺になんとも言えない表情をするユキと晃。
ダメだ気分転換に出てきたのにこれじゃ二人にも申し訳ない。
「ごめんな!折角付き合ってもらったのに。話変えよ!」
「そうだな!ユキ最近楽しいことあった?」
「僕の最近びっくりした話聞く?」
「また変な男に引っかかったの?」
「ひどっ!」
そう言いながら面白おかしくちょっとエッチなハプニングを話し出すユキ。
俺と晃は周りの迷惑にならないように必死で笑いを堪えて話に聞きいった。
こうしていると昔に戻ったみたいだ。
まだ恋も知らない学生時代。
3人でいつか出会う恋人の話をした。
結局そんな人に出会う前に俺の結婚は決められてしまったわけだけど。
「晃はまだ恋人できないのか?
「カッコいいしアルファなのに理想が高いの?」
常々思ってたことを酒の勢いで聞いてみる。
途端に晃の顔がさっと赤く染まった。
「あーだめだめ晃はロマンチストだからね」
「ユキ!」
「だってそーじゃん。運命の番以外はいらないんだって」
「へえ……真面目な晃らしいな」
そんな人に出会ったら晃ならきっと何より大切に一生かけて守り通すんだろう。
「早く会えるといいな」
本心からの俺の言葉に晃は一瞬眉を寄せて黙り込んだ。
え?悪いこと言った?
「はいはいこの話もここでおしまい。ボトルでワイン頼も?白と赤どっち?はい!白にしまーす」
「なんだそれ!もう決まってんじゃん!」
突然話に割り込んできたユキの強引な言葉に思わず爆笑する。
そしてそのまま誰が一番酒が強いかの話になった。
その挙句、三人で夜がふけるまで浴びるように飲み、何もかも忘れてふざけ合った。
目が覚めたのは明け方。
どうやって家に辿り着いたのかも覚えていない。
人の気配にふと横を見ると帰宅した直人が眠っていた。
家にいる時は本当の夫婦のように過ごしているので眠るベッドも同じだ。
いや本当の夫婦なんだ
俺が・・・俺の方が法的にも世間的にもれっきとしたパートナーだ。
なのにどうして気持ちのかけらさえ貰えないんだろう。
安らかに眠る優しいばかりの直人の頬にそっと口付ける。
腕の中に潜り込むといつまでも馴染めない違う家の匂いがした。
50
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
8/16番外編出しました!!!!!
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭
4/29 3000❤️ありがとうございます😭
8/13 4000❤️ありがとうございます😭
【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない
天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。
ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。
運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった――――
※他サイトにも掲載中
★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★
「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」
が、レジーナブックスさまより発売中です。
どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m
【完結】初恋のアルファには番がいた—番までの距離—
水樹りと
BL
蛍は三度、運命を感じたことがある。
幼い日、高校、そして大学。
高校で再会した初恋の人は匂いのないアルファ――そのとき彼に番がいると知る。
運命に選ばれなかったオメガの俺は、それでも“自分で選ぶ恋”を始める。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
《完結》僕の彼氏は僕のことを好きじゃないⅠ
MITARASI_
BL
彼氏に愛されているはずなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう。
「好き」と言ってほしくて、でも返ってくるのは沈黙ばかり。
揺れる心を支えてくれたのは、ずっと隣にいた幼なじみだった――。
不器用な彼氏とのすれ違い、そして幼なじみの静かな想い。
すべてを失ったときに初めて気づく、本当に欲しかった温もりとは。
切なくて、やさしくて、最後には救いに包まれる救済BLストーリー。
続編執筆中
【完結】選ばれない僕の生きる道
谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。
選ばれない僕が幸せを選ぶ話。
※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです
※設定は独自のものです
※Rシーンを追加した加筆修正版をムーンライトノベルズに掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる