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第23話 なんかきたモ
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ざっ、ざっ、ざっ、と土を爪で引っ掻く音が耳に届く。普段の俺ならば確実に聞こえていない音だ。まだ警戒モードを解いていないので、感覚強化の魔法陣魔法を付与しているからね。爪を引っ掻く音から推測するにかなり小型のモンスター……いや、小動物かも。
さてどんな小動物なのだろうか、と振り返ろうとしたら先に声が。
「ニンゲンかモ?」
うおお、喋った! 驚きつつも振り返ると予想した通りの小動物が後ろ脚で仁王立ちしていた。
脚の形からして歩く時は前脚も使って犬猫と同じように歩くのだろう。金色の混じった琥珀色の毛はふさふさしていて、手の先に爪があるが獲物を攻撃できるような作りではなかった。鼻から額にかけての毛の色が黒で、団子鼻にげっ歯類独特の前歯が見える。
むっちりとした体つきで思わずつまみたくなるな、こいつ。そしてなにより、顔つきが可愛くない。人によってはぶさ可愛いって思う人もいるかも?
俺、この見た目の動物知ってる。こいつはマーモットって種族だ。日本では写真で見たことがあるけど、転生してからはどうだったかなあ。
ちらりとペネロペに目をやると、両手を胸の前で合わせてじーっとマーモットのことを見つめている。無表情だが分かるぞ、俺には。彼女は相当あの変な顔に惹かれているはずだ。すぐそばにぶさ可愛いと思う人がいた。
え、ええと何か言わなきゃならんのか、こいつに。
「こ、こちらに敵意はないよ」
「そんなの知ってるモ」
こ、こいつうう。言われなくても分かってるさ。敵意がありゃすでに襲い掛かってるってんだろ。
仕方ないだろ、何か言わなきゃと焦った結果なんだから。会話を広げるやさしさをマーモットに求めるのは酷ってもんか。
俺の気持ちなんぞ露ほども知らないマーモットは鼻をひくひくさせながら、いけしゃーしゃーと要求してくる。
「ニンジン持ってないかモ?」
「持ってるわけねえだろ!」
「リンゴならありますよ、食べますか?」
こらああ。ペネロペ。見ず知らずのペットに餌を与えてはいけません。
止めようとしたが、既に彼女は光の速度で魔道車からリンゴを持って戻ってきた。
いいもん、俺は俺でハリーに昆虫をあげるんだからな。
しかし、ハリーはおなかいっぱいだったらしく、『いらないみゅ』とすげない。
魔道車の中でずっと食べてたもんな、ハリー。
あれこれとハリーと遊んでいる間にマーモットはリンゴをしゃりしゃりやっていた。ペネロペはというと、マーモットの前にしゃがんでむっちりした脇の下の肉をつんつんしている。
「ただリンゴを食べにきたわけじゃないんだろ?」
「オマエがモの住処に来ただけだモ」
「え、マーモットはここで住んでるの?」
「マーモットじゃないモ。マーモだモ」
マーモットのような小動物が超危険地帯で住んでいる? 順位付けが済んだら案外生きていけるのだろうか?
いや、何の変哲もないマーモットに見えるだけで、こいつは喋る。つまり、ただのマーモットではない……んだよな?
お、おっと、さりげなく自己紹介されたからにはこちらも応じなければ。
「俺はケンイチ、こっちはペネロペとハリーだ」
「ケンイチ、ここに来たのはモに餌を持ってくるためであってるかモ?」
「断じて違う!」
「挑戦しに来たかモ? それとも起こしに来たのかモ?」
はあはあ、ん? 突っ込みに全力を使い過ぎて続きの言葉を聞いてなかったぞ。
「挑戦?」
「オマエの上はペネロペだモ。とっととちちくりあうがいいモ」
挑戦に対する返答が俺の上がペネロペってことだよな。
「いやらしい目で見ないでいただきたいです」
「違うってば! 挑戦について考えていただけだって」
「天の山限定の強さランキングへの挑戦のことではないでしょうか」
「そうそれ。わかってるのにからかったな……」
倒したモンスターが大人しくなって、最後はベヒモスが現れてペネロペが倒した。
俺はコンチネンタルバードを無力化したのでコンチネンタルバードより上と判断されたと予想している。
「マーモ、ペネロペの上にあと何体いるんだ?」
「3体だモ。起こすのかモ?」
「起こすって、誰でも起こせるものなの?」
「モには分からんモ。見てみるかモ?」
話がまるでつながらないが、分かることを増やしていけばパズルのピースのようにいずれ繋がるはず。
現時点での情報を整理しとこう。
天の山麓はモンスターたちが我こそは頂点だとばかりに闘争し、実力による順位付けをしている。新規で入ってきたものは挑戦者として受け止められ、次から次へとモンスターが襲い掛かってきて、順位付けを拒むことはできない。ある程度強いモンスターを倒せば上位とみなされ、襲撃が止まる。
現在俺たちはペネロペが4番手、俺が5番手だとマーモが言っていた。俺はベヒモスを倒したわけじゃあないんだけど、その辺どうなってるのかは謎だ。
そして、上位三体のうちどれかが眠っているかなにかで、起こすか? ってマーモが聞いているのが今。
情報整理が間違っている可能性もあるが、その時はその時だ。そもそも情報が少ない中の推測も交じってるから仕方ない。
マーモには見るとも見ないとも答えていないのだが、前脚を地面につけてのしのしと歩き始めたので彼の後をついていく。
彼が向かっているのは祭壇の方向だ。
祭壇は半ば崩れ落ちているものの、魔力の流れを感じるからまだ動いている様子である。日時計みたいなオブジェなのだけど、半ばほどから崩れ落ちていてよくこれで動いているものだと感心する。
祭壇の裏側には地下に降りる階段があり、マーモがトコトコと中に入っていった。
ペネロペと顔を見合わせ、彼に続く。魔道具のランタンは持ってきていないから、魔法陣魔法で火の玉のような灯りを作る。
中は崩壊している箇所がなく綺麗な状態が保たれていた。中央に台座に乗った棺があり、寝かされている人がいる。
魔道具がまだ動いているのは、この部屋が無事だったからだろうな。魔術回路を見てみないと確定ではないが、魔術回路はこの部屋中に張り巡らされていると思う。部屋自体に強化の魔術回路が組まれていそうだ。落下の衝撃でびくともしないってのは考え辛いからね。
さてどんな小動物なのだろうか、と振り返ろうとしたら先に声が。
「ニンゲンかモ?」
うおお、喋った! 驚きつつも振り返ると予想した通りの小動物が後ろ脚で仁王立ちしていた。
脚の形からして歩く時は前脚も使って犬猫と同じように歩くのだろう。金色の混じった琥珀色の毛はふさふさしていて、手の先に爪があるが獲物を攻撃できるような作りではなかった。鼻から額にかけての毛の色が黒で、団子鼻にげっ歯類独特の前歯が見える。
むっちりとした体つきで思わずつまみたくなるな、こいつ。そしてなにより、顔つきが可愛くない。人によってはぶさ可愛いって思う人もいるかも?
俺、この見た目の動物知ってる。こいつはマーモットって種族だ。日本では写真で見たことがあるけど、転生してからはどうだったかなあ。
ちらりとペネロペに目をやると、両手を胸の前で合わせてじーっとマーモットのことを見つめている。無表情だが分かるぞ、俺には。彼女は相当あの変な顔に惹かれているはずだ。すぐそばにぶさ可愛いと思う人がいた。
え、ええと何か言わなきゃならんのか、こいつに。
「こ、こちらに敵意はないよ」
「そんなの知ってるモ」
こ、こいつうう。言われなくても分かってるさ。敵意がありゃすでに襲い掛かってるってんだろ。
仕方ないだろ、何か言わなきゃと焦った結果なんだから。会話を広げるやさしさをマーモットに求めるのは酷ってもんか。
俺の気持ちなんぞ露ほども知らないマーモットは鼻をひくひくさせながら、いけしゃーしゃーと要求してくる。
「ニンジン持ってないかモ?」
「持ってるわけねえだろ!」
「リンゴならありますよ、食べますか?」
こらああ。ペネロペ。見ず知らずのペットに餌を与えてはいけません。
止めようとしたが、既に彼女は光の速度で魔道車からリンゴを持って戻ってきた。
いいもん、俺は俺でハリーに昆虫をあげるんだからな。
しかし、ハリーはおなかいっぱいだったらしく、『いらないみゅ』とすげない。
魔道車の中でずっと食べてたもんな、ハリー。
あれこれとハリーと遊んでいる間にマーモットはリンゴをしゃりしゃりやっていた。ペネロペはというと、マーモットの前にしゃがんでむっちりした脇の下の肉をつんつんしている。
「ただリンゴを食べにきたわけじゃないんだろ?」
「オマエがモの住処に来ただけだモ」
「え、マーモットはここで住んでるの?」
「マーモットじゃないモ。マーモだモ」
マーモットのような小動物が超危険地帯で住んでいる? 順位付けが済んだら案外生きていけるのだろうか?
いや、何の変哲もないマーモットに見えるだけで、こいつは喋る。つまり、ただのマーモットではない……んだよな?
お、おっと、さりげなく自己紹介されたからにはこちらも応じなければ。
「俺はケンイチ、こっちはペネロペとハリーだ」
「ケンイチ、ここに来たのはモに餌を持ってくるためであってるかモ?」
「断じて違う!」
「挑戦しに来たかモ? それとも起こしに来たのかモ?」
はあはあ、ん? 突っ込みに全力を使い過ぎて続きの言葉を聞いてなかったぞ。
「挑戦?」
「オマエの上はペネロペだモ。とっととちちくりあうがいいモ」
挑戦に対する返答が俺の上がペネロペってことだよな。
「いやらしい目で見ないでいただきたいです」
「違うってば! 挑戦について考えていただけだって」
「天の山限定の強さランキングへの挑戦のことではないでしょうか」
「そうそれ。わかってるのにからかったな……」
倒したモンスターが大人しくなって、最後はベヒモスが現れてペネロペが倒した。
俺はコンチネンタルバードを無力化したのでコンチネンタルバードより上と判断されたと予想している。
「マーモ、ペネロペの上にあと何体いるんだ?」
「3体だモ。起こすのかモ?」
「起こすって、誰でも起こせるものなの?」
「モには分からんモ。見てみるかモ?」
話がまるでつながらないが、分かることを増やしていけばパズルのピースのようにいずれ繋がるはず。
現時点での情報を整理しとこう。
天の山麓はモンスターたちが我こそは頂点だとばかりに闘争し、実力による順位付けをしている。新規で入ってきたものは挑戦者として受け止められ、次から次へとモンスターが襲い掛かってきて、順位付けを拒むことはできない。ある程度強いモンスターを倒せば上位とみなされ、襲撃が止まる。
現在俺たちはペネロペが4番手、俺が5番手だとマーモが言っていた。俺はベヒモスを倒したわけじゃあないんだけど、その辺どうなってるのかは謎だ。
そして、上位三体のうちどれかが眠っているかなにかで、起こすか? ってマーモが聞いているのが今。
情報整理が間違っている可能性もあるが、その時はその時だ。そもそも情報が少ない中の推測も交じってるから仕方ない。
マーモには見るとも見ないとも答えていないのだが、前脚を地面につけてのしのしと歩き始めたので彼の後をついていく。
彼が向かっているのは祭壇の方向だ。
祭壇は半ば崩れ落ちているものの、魔力の流れを感じるからまだ動いている様子である。日時計みたいなオブジェなのだけど、半ばほどから崩れ落ちていてよくこれで動いているものだと感心する。
祭壇の裏側には地下に降りる階段があり、マーモがトコトコと中に入っていった。
ペネロペと顔を見合わせ、彼に続く。魔道具のランタンは持ってきていないから、魔法陣魔法で火の玉のような灯りを作る。
中は崩壊している箇所がなく綺麗な状態が保たれていた。中央に台座に乗った棺があり、寝かされている人がいる。
魔道具がまだ動いているのは、この部屋が無事だったからだろうな。魔術回路を見てみないと確定ではないが、魔術回路はこの部屋中に張り巡らされていると思う。部屋自体に強化の魔術回路が組まれていそうだ。落下の衝撃でびくともしないってのは考え辛いからね。
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