修理屋の俺は穴掘りとごみ拾いで快適な生活を目指そうと思う~気が付いたら文明崩壊後のファンタジー世界だった件~

うみ

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第37話 お家完成

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 豆腐型住居が3棟完成した。いや、完成したとはまだ言えないか。箱だけはできたが、窓と扉がまだない。
「窓と扉をどうやったら簡単に作れそうかなあ」
「窓は光を通し、風通しも確保できるものですよね」
「そうだなあ。扉も当たり前だが開くことができないといけない」
「扉も窓も湖の下から拾ってこれないかな」
 正直自作できる気がしない。今の俺は木の板お工作さえ難しいのだ。真空刃の魔法でスパンと丸太を切ればいけなくはないだろうけど、そのあとカンナで削ったりといったことはできない。大工道具だったらペネロペの積み上げた山の中にありそうだけど、カンナをつかったことがないからさ。
「勝手ながらペネロペ殿が集めた道具の中から大工道具を拝借した」
 ペネロペとお悩み相談をしていたら、料理を終えたラージャが手招きしながら話に入ってきた。
 んー。いい香りだ。いつもながら彼女の作るごはんは香りだけでも食欲を誘う。
「大工道具って、大工道具を使えるの?」
「多少だが。窓枠くらいなら作ることはできる」
「おお、そいつはすげえ。扉はやっぱ難しいのかな」
「引き戸でいいならば可能だ。溝をどうするか応相談だな」
 溝って何だろう? ああ、扉をスライドさせるレール部分ってことか。石材の床を削って溝にする? もしくは支える板を置くのもいいかも。
「料理に加え大工仕事までできるなんて、なんでもござれだな」
「私が眠っていた場所は村ではなく、周囲に住んでいる者はいなかった」
「そうだった。だから何でも作らなきゃいけなかったんだっけ」
「何でもというわけでもないが、外から仕入れるにしてもなかなか大変でな。できるものは作る」
 魔道具を掘り返して快適生活を、とか安易に考えていた俺とは根本からして違う。そうだよな、生きていくためにはなんでも自分でやらなきゃならない。
 おいしい食事を諦め、できないことはやらず生きていくだけなら魔道車を住処に魔法陣魔法を使えば俺だけでもここで暮らすこともできる。
 しかし、家やら快適な生活を求めたいってのが人の性というものだ。
 何が言いたいかよくわからなくなってきた。つまり――。
「扉や窓枠は木製のつもりだよな?」
 出てきた言葉がそれかよってやつである。
「そのつもりだ。二人の魔法で木を乾燥させることはできるか?」
「できなくはないけど、急激に乾燥させるから割れてしまうかも。やってみようか」
 その前にご飯だ、ご飯。
 
 食事の後、さっそく木を魔法陣魔法でスパンと根本の方で横に切り、適当に枝を落として丸太を真っ二つにした。
 真空の刃でこの辺りはお手軽一発である。
「そんじゃ、試すぞ。術式構築 ドライ」
 ドライはまんまの意味で乾燥させる効果を持つ魔法である。ご想像の通り、ドライヤーに仕込まれた魔術回路を拝借した。
 自分で魔法陣魔法をかけるときは規模の調整もできる。
 ゴオオオオオ。
 真っ二つにした丸太全体に温風が降り注ぎ、水分を飛ばしていく。温風だけじゃ中の水分を蒸発させることなんてできないのだけど、そこは魔法、不思議パワーがある。
 パキキキ。
「あ……」
 派手にひび割れしてしまった。じわじわいくと行けるのかもしれないけど、ドライヤーのように風量調節なんてできないんだよな。
 魔法陣の作りからして、魔力の出力調整を行っても風量は変わらない。
 魔道具のドライヤーは風量調節ができる。ええと、魔術回路はどうなっていたっけ。
 あ、単純なことだった。魔術回路……魔法陣が三つあるだけだ。それぞれ出力される風量が異なるから、スイッチで風量の切り替えができる仕組みである。
「加減を調整しながらならいけるのかなあ」
「いや、乾燥させずにしよう。様子を見るに一息に乾かすとどこかしらひび割れするはずだ」
「分かった。何本か丸太を用意するよ」
「二本でお願いできるか? 枝も落としてくれるとありがたい」
 ラージャに言われるがままに作業を行い、この後は彼女に任せることにした。
 俺たちは俺たちでできることをやろう。
 
「お、これも使えそうだな」
「そうですね。魔法で加工した素材は劣化しないのでしょうか」
「しているのかもしれないけど、使用するに支障はないよな」
「そうですね」
 などと会話しつつ、ガラスをさがすついでに使えそうなものを振り分けている。
 布製品であっても魔法が付与されていれば劣化していないから、ものによっては布団なんかも使えそうだ。
 魔法が付与されている布製品に使われている糸は地球で言うところのレーヨンみたいな合成繊維に近い。
「ガラスは溶かして伸ばせばいいんだったか」
「単に溶かすだけでは、整える技術が私たちにはありません」
「そうだ。プレスの魔法を使えばいいんじゃないか?」
「試してみる価値はありそうです」
 ペネロペの言葉になるほどと膝を打つ。プレスの魔法陣魔法は服のしわを伸ばすアイロンのような効果を持つものだ。俺の中ではアイロンという発想しかなかったから、熱したガラスを均一に伸ばすためとは浮かばなかったよ。
「よっし、やってみよう」
 大理石のテーブルの上へ集めたガラスを置き、魔法で熱し溶かす。
 続いて、プレスの魔法で圧縮してみたら見事、均一な板ガラスになった!
「問題なさそうですね」
「うん! これで窓ガラスも解決だな」
 大きな板ガラスを何枚か作っておいて、窓枠に合わせて魔法で板ガラスをカットすれば窓の完成だ。
 
 四日後、ついに家が完成した! 家具も運び込み、窓も扉もバッチリになったぞ。
「これで今日から家に住むことができるな」
「これほどの短期間で堅牢な家が完成するとは魔法の力とは偉大だな」
 小さめの豆腐型住居はラージャの個室にして、大き目の豆腐型住居のうち一つは俺とペネロペが使う。ペネロペが石材を切り出すのが超速だったから、もう一棟作ろうかとの話もあったんだけど、まずは最低限だけ作ろうと彼女が申し出たので追加の住居は作らなかったんだ。
 残り一つはダイニングキッチンと風呂、トイレにした。この住居のみ仕切りの壁を備えていて、トイレ、風呂、ダイニングキッチンはそれぞれ部屋になっている。
 ペネロペが湖の底から引き揚げてくれた家具類で全ての部屋の家具をそろえることもできた。
 洗濯機、トイレ、冷蔵庫、大型キッチン、と必須の生活型家電も修理し設置完了している。
「それじゃあ、最後、魔道車から荷物を各々運んで終わりにしよう」
「お持ちしました」
 いないなと思っていたペネロペが魔道車から荷物を抱えて出てきたではないか。
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