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一章
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特に弟のロランは今年、王立学園への入学が控えていた。
なんとかメリーティー男爵領を盛り立てようと、今まで努力していたロラン。
彼は爵位の高低に関係なく学ぶ機会が与えられるロウナリー王立学園に行くことをとても楽しみにしていた。
ロウナリー王立学園に入学する条件は貴族であること。
学費を払えたら、最高の学びが得られるのだ。
ディアンヌはまだなんとか王立学園に入学することができた。
毎日、制服なのもディアンヌにとっては助かったといえるだろう。
パーティーやお茶会などの話ばかりで、肩身の狭い思いをすることも多かったが、令嬢として最低限のマナーや振る舞いを学べたのは大きい。
身分が低い令嬢同士、肩を寄せ合いながら学園で過ごしていたが、肩肘張らないで過ごせた。
今ではいい思い出だ。
幼い頃から教育を受けている令嬢たちは退屈そうだったが、講師を雇える余裕がないディアンヌにとっては貴重な場となる。
何もかもが煌びやかで別世界に見えたが、ディアンヌにとってはいい経験だった。
ディアンヌは今年卒業することもできたが、ロランはどうだろうか。
ロランはメリーティー男爵家を継ぐために努力してきたことを知っているからこそ、諦めたくはなかった。
(このままだとロランの努力が……!)
話の深刻さがわからないライとルイとレイの三人は楽しげに部屋の中を走り回っている。
食べ盛りの三人を育てていくためにもお金が必要だ。
憔悴している両親の姿を見ながら、ディアンヌは考えていた。
(……わたしがどうにかしないと!)
王立学園では、さまざまな理由で婚約関係にある人たちを見てきた。
そこには名誉や家を守るために、嫁いでお金を援助してもらう人もいたことを思い出す。
(わたしがもしどこかに嫁げたら、メリーティー男爵家を援助してくれるかもしれないわ!)
しかしディアンヌは自分の身なりを思い出す。
今はストロベリーブラウンの癖のある髪を抑えるために三つ編みをしていた。
薄いピンク色の瞳とほんのりとそばかすがある。
化粧品も買うお金もなく、髪や肌の手入れも満足にできていない。
ディアンヌは他の令嬢たちのように美しくもなく、目立つような容姿ではない。
特にディアンヌと結婚するメリットも、自慢できるような特技もなかった。
ディアンヌの頭によぎる不安。
(でも、こんなわたしを娶ってくださる方なんているのかしら……)
パーティーもお茶会もほとんど出たことがなく、これだと半年後に控えた社交界デビューも無理だろう。
悩んだディアンヌは、学園の時に友人だったシャーリー・カシスを頼ることにした。
ワインレッドの髪はクルクルに巻いて降り、吊り目でブラウンの瞳。
昔からおしゃれで大人びていた。
ディアンヌと同じ男爵令嬢だった彼女は、学園で十二歳から十五歳まで一緒にいた仲のいい友人だ。
しかしカシス男爵は領地内にある鉱山から宝石を掘り当てた。
カシスと名付けられた赤い宝石は王都で流行っているそうだ。
その宝石が高値で売れたため功績を認められたことや、爵位を金で買い伯爵となったのだ。
それが一年前のこと。
そこからシャーリーの振る舞いは一変してしまった。
ディアンヌと距離を置くようになりシャーリーは友人も変えて身なりも派手になってしまう。
連日、パーティーやお茶会に行っているそうで関わる機会が少なくなる。
だが、ディアンヌはシャーリーのことを今でも友だちだと思っていた。
シャーリーと仲良くなったのは、メリーティー男爵領とカシス男爵領とが隣にあったことが大きい。
その下には二つの領を合わせても、まったく足りないくらい大きなベルトルテ公爵領がある。
そしてベルトルテ公爵領の南に王都があるのだ。
ベルトルテ公爵家は王家を宰相として代々支えている。
三年前、先代ベルトルテ公爵は表舞台を退いた。
それは国王が代わり、戴冠式が行われたからだ。
そのタイミングでベルトルテ公爵が宰相に任命されたそうだ。
なんとかメリーティー男爵領を盛り立てようと、今まで努力していたロラン。
彼は爵位の高低に関係なく学ぶ機会が与えられるロウナリー王立学園に行くことをとても楽しみにしていた。
ロウナリー王立学園に入学する条件は貴族であること。
学費を払えたら、最高の学びが得られるのだ。
ディアンヌはまだなんとか王立学園に入学することができた。
毎日、制服なのもディアンヌにとっては助かったといえるだろう。
パーティーやお茶会などの話ばかりで、肩身の狭い思いをすることも多かったが、令嬢として最低限のマナーや振る舞いを学べたのは大きい。
身分が低い令嬢同士、肩を寄せ合いながら学園で過ごしていたが、肩肘張らないで過ごせた。
今ではいい思い出だ。
幼い頃から教育を受けている令嬢たちは退屈そうだったが、講師を雇える余裕がないディアンヌにとっては貴重な場となる。
何もかもが煌びやかで別世界に見えたが、ディアンヌにとってはいい経験だった。
ディアンヌは今年卒業することもできたが、ロランはどうだろうか。
ロランはメリーティー男爵家を継ぐために努力してきたことを知っているからこそ、諦めたくはなかった。
(このままだとロランの努力が……!)
話の深刻さがわからないライとルイとレイの三人は楽しげに部屋の中を走り回っている。
食べ盛りの三人を育てていくためにもお金が必要だ。
憔悴している両親の姿を見ながら、ディアンヌは考えていた。
(……わたしがどうにかしないと!)
王立学園では、さまざまな理由で婚約関係にある人たちを見てきた。
そこには名誉や家を守るために、嫁いでお金を援助してもらう人もいたことを思い出す。
(わたしがもしどこかに嫁げたら、メリーティー男爵家を援助してくれるかもしれないわ!)
しかしディアンヌは自分の身なりを思い出す。
今はストロベリーブラウンの癖のある髪を抑えるために三つ編みをしていた。
薄いピンク色の瞳とほんのりとそばかすがある。
化粧品も買うお金もなく、髪や肌の手入れも満足にできていない。
ディアンヌは他の令嬢たちのように美しくもなく、目立つような容姿ではない。
特にディアンヌと結婚するメリットも、自慢できるような特技もなかった。
ディアンヌの頭によぎる不安。
(でも、こんなわたしを娶ってくださる方なんているのかしら……)
パーティーもお茶会もほとんど出たことがなく、これだと半年後に控えた社交界デビューも無理だろう。
悩んだディアンヌは、学園の時に友人だったシャーリー・カシスを頼ることにした。
ワインレッドの髪はクルクルに巻いて降り、吊り目でブラウンの瞳。
昔からおしゃれで大人びていた。
ディアンヌと同じ男爵令嬢だった彼女は、学園で十二歳から十五歳まで一緒にいた仲のいい友人だ。
しかしカシス男爵は領地内にある鉱山から宝石を掘り当てた。
カシスと名付けられた赤い宝石は王都で流行っているそうだ。
その宝石が高値で売れたため功績を認められたことや、爵位を金で買い伯爵となったのだ。
それが一年前のこと。
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ディアンヌと距離を置くようになりシャーリーは友人も変えて身なりも派手になってしまう。
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だが、ディアンヌはシャーリーのことを今でも友だちだと思っていた。
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