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一章
③
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ディアンヌがシャーリーにメリーティー男爵家の状況とドレスを貸して欲しいということを手紙で頼むとすぐに返事が返ってきた。
承諾を得たディアンヌはカシス伯爵邸に向かう。
「シャーリー!」
「久しぶりね、ディアンヌ。相変わらず……地味ねぇ?」
「シャーリーは本当に綺麗ね!」
「当たり前よ! 努力しているんだもの」
シャーリーはネックレスやイヤリング、指輪など大きな宝石を身につけている。
ミルクティー色の髪はグルグルに巻いており、派手なドレスを身に纏っていた。
ライトグリーンの瞳はこちらを見て細まる。
化粧も以前よりも濃いからか、シャーリーからは威圧感を感じていた。
(シャーリー、すっかり綺麗になってしまって別人みたいだわ)
カシス伯爵邸は、一年前よりも豪華に建て替えされている。
侍女や従者たちが深々と腰を折っている姿を見て、ディアンヌは目を輝かせて見ていた。
「シャーリー、すごいのね……! まるでお姫様みたい」
「ふふっ……大袈裟よ」
そう言いつつも、シャーリーは嬉しそうに髪を払った。
ディアンヌはいつものおさげ髪にくたびれたワンピースを着ている。
カシス伯爵邸では浮いてしまっているのは間違いないだろう。
ディアンヌはシャーリーの後ろに続いて赤い絨毯の上を歩いていく。
部屋いっぱいにドレスがある部屋に案内されたディアンヌは呆然としていた。
「……す、すごいわ!」
「そうよ? あなたとわたくしはもう格が違うのよ。身の程を知るがいい」
「え……?」
「ふふっ、なんでもないわ」
シャーリーが小声で何か言ったような気もするが、ディアンヌは煌びやかなドレスに夢中にだった。
眩しいくらいにギラギラと輝くドレスはどれも高級だとわかる。
「ここにあるのは、わたくしがもう使わないドレスなの」
「こ、こんなにたくさん……?」
爵位が違うだけで、こんなにも生活が違うのだと思うと驚きだった。
一面に並んでいるドレスは目立つ色のドレスばかり。
シャーリーには似合うのだろうが、ディアンヌに着こなせる自信はありはしない。
しかし今更、借りなくてもいいとは言えずにディアンヌは一番シンプルなドレスはないか問いかけることにした。
「この中で一番シンプルなものはある?」
「シンプルなドレスですって!? このわたくしに地味なドレスが似合うと思っているということっ!?」
突然、シャーリーの怒鳴り声が聞こえてディアンヌは肩を揺らす。
以前も怒りっぽい部分はあったが、その勢いは増しているような気がした。
ディアンヌは自分の言葉が足りなかったかもしれないと理由を説明する。
「着こなせる自信がないの。どれも素敵で豪華だから……わたしには似合わないかなって」
「ああ、なによ! そういうことね。まぁ、当然よねぇ?」
シャーリーは機嫌が直ったようだ。
怒りに歪めていた顔がにっこりと笑顔になる。
「あなたに似合うドレスは……そうだわ! フフッ、これなんかどうかしら」
「……!」
「今のあなたにはピッタリよねぇ?」
濃い紫色のドレスは装飾は少なくシンプルだ。
艶やかでトロミのある生地に胸元も開いて露出度も高く、デザインも大人っぽい。
ディアンヌの想像していたドレスとは真逆なものだった。
「これならコルセットも必要ないし、侍女がいないあなたでも着られるでしょう?」
「…………え?」
「あと……これもわたくしには似合わないから、あなたにあげるわ」
シャーリーはニタリと唇に歪めながら、ハイヒールと濃い紫色のドレスを渡す。
有無を言わせない態度にディアンヌは折角の好意を無下にできないと受け取るしかない。
「あ、ありがとう。シャーリー……このドレス、ちゃんと返すわね」
「あら、こんな安物いらないわ……だってあなたのために用意した特別なものなんだから」
「……何か言った?」
シャーリーの呟くように言った声が聞こえずに、彼女に問いかける。
「またドレスを貸してあげるから遠慮なく言ってちょうだい?」
「ううん……今回だけで大丈夫よ。シャーリー、ありがとう」
「あら、そう? どういたしまして」
承諾を得たディアンヌはカシス伯爵邸に向かう。
「シャーリー!」
「久しぶりね、ディアンヌ。相変わらず……地味ねぇ?」
「シャーリーは本当に綺麗ね!」
「当たり前よ! 努力しているんだもの」
シャーリーはネックレスやイヤリング、指輪など大きな宝石を身につけている。
ミルクティー色の髪はグルグルに巻いており、派手なドレスを身に纏っていた。
ライトグリーンの瞳はこちらを見て細まる。
化粧も以前よりも濃いからか、シャーリーからは威圧感を感じていた。
(シャーリー、すっかり綺麗になってしまって別人みたいだわ)
カシス伯爵邸は、一年前よりも豪華に建て替えされている。
侍女や従者たちが深々と腰を折っている姿を見て、ディアンヌは目を輝かせて見ていた。
「シャーリー、すごいのね……! まるでお姫様みたい」
「ふふっ……大袈裟よ」
そう言いつつも、シャーリーは嬉しそうに髪を払った。
ディアンヌはいつものおさげ髪にくたびれたワンピースを着ている。
カシス伯爵邸では浮いてしまっているのは間違いないだろう。
ディアンヌはシャーリーの後ろに続いて赤い絨毯の上を歩いていく。
部屋いっぱいにドレスがある部屋に案内されたディアンヌは呆然としていた。
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「そうよ? あなたとわたくしはもう格が違うのよ。身の程を知るがいい」
「え……?」
「ふふっ、なんでもないわ」
シャーリーが小声で何か言ったような気もするが、ディアンヌは煌びやかなドレスに夢中にだった。
眩しいくらいにギラギラと輝くドレスはどれも高級だとわかる。
「ここにあるのは、わたくしがもう使わないドレスなの」
「こ、こんなにたくさん……?」
爵位が違うだけで、こんなにも生活が違うのだと思うと驚きだった。
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しかし今更、借りなくてもいいとは言えずにディアンヌは一番シンプルなドレスはないか問いかけることにした。
「この中で一番シンプルなものはある?」
「シンプルなドレスですって!? このわたくしに地味なドレスが似合うと思っているということっ!?」
突然、シャーリーの怒鳴り声が聞こえてディアンヌは肩を揺らす。
以前も怒りっぽい部分はあったが、その勢いは増しているような気がした。
ディアンヌは自分の言葉が足りなかったかもしれないと理由を説明する。
「着こなせる自信がないの。どれも素敵で豪華だから……わたしには似合わないかなって」
「ああ、なによ! そういうことね。まぁ、当然よねぇ?」
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怒りに歪めていた顔がにっこりと笑顔になる。
「あなたに似合うドレスは……そうだわ! フフッ、これなんかどうかしら」
「……!」
「今のあなたにはピッタリよねぇ?」
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「…………え?」
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「あら、そう? どういたしまして」
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