13 / 27
一章
①③
しおりを挟む「パーティーは終わったが……なんだ。ピーターは寝てしまったのか」
「……はい。申し訳ありませんでした」
「いいや、構わん。だが、屋敷で待っていればよかったのではないか?」
「私がいなければ陛下が何をするかわかりませんから」
「ははっ、それもそうだな!」
笑っているロウナリー国王とリュドヴィックを交互に見たままディアンヌは動けずにいる。
リュドヴィックはロウナリー国王にこの状況を説明すると共に、ディアンヌの身にあったことを話していく。
ディアンヌが令嬢たちに囲まれており、嫌がらせを受けて、この場に一人で招待されたことも……。
「そうか、それは災難だったな」
「い、いえ……!」
「それにしても結婚相手を探して、わざわざこのような場に招くとは意地が悪いな」
「招待状も盗んだことにされてしまい……きっと皆さんに誤解されてしまいましたよね」
ディアンヌは眉を寄せながら、ピーターの頭を優しく撫でていた。
この噂が広まってしまえば、働き口がなくなってしまうのではないかという不安が頭を過ぎる。
「結婚……ふむ、結婚か」
すると、何かをブツブツと呟いているロウナリー国王と目が合った。
ロウナリー国王はディアンヌを見て頷いている。
「ところでどこの家の令嬢だ? 社交界では見ない顔だが……」
「申し遅れました! わたしはディアンヌ・メリーティーと申します」
ディアンヌはロウナリー国王に問われて思いきり頭を下げた。
ピーターを抱えているためカーテシーはできそうにない。
「メリーティー……? メリーティー男爵家か。ああ、俺が小さな頃に大好きだった果実を栽培していたとこだな。懐かしい……! 久しぶりにあの果実を食べたいなぁ」
ロウナリー国王は顎を押さえながら考え込んでいる。
ディアンヌはその言葉を聞いて、大チャンスだと思った。
(メリーティー男爵があるのは、今の陛下が子どもの頃に、うちのフルーツを気に入ってくれたからだとお父様に聞いたことがあるわ……!)
地獄に仏とは、まさにこのことだと思った。
それに、こんな貴重な機会を逃せば国王に直談判できることなど二度とないかもしれない。
ディアンヌは自らを落ち着かせるように深呼吸をする。
家族のためにできることをしなければと口を開く。
「国王陛下にそう言っていただき、大変嬉しいのですが……長雨でほとんどの木がダメになってしまったのです!」
「なんだと……?」
「お父様は領民たちのために爵位を返上しようと考えているようです。それで図々しい考えではありますが……助けていただける方を探すためにここに来ました」
「……そうだったか」
ディアンヌは今のメリーティー男爵領の状況について控えめに、けれど大胆に話していく。
ロランや三つ子のことを思う姉の気持ちをそれはもう大袈裟に……。
「弟は王立学園で国のために学びたいことがあると……! そんな弟と幼い三つ子のためにわたしががんばらねばいけませんからっ」
迫真の演技にロウナリー国王は鼻を啜り、涙を浮かべながら感動しているようだ。
拍手をしながら、何度も頷いている。
リュドヴィックはディアンヌの演技を見透かしているのか、冷めた視線が気になるところだ。
しかし今はこのチャンスと可能性に賭けるしかない。
「そうかそうか……! 熱い思いが伝わってくるなっ! もうすぐ生まれる子にも、オレが子どもの頃に好きだったフルーツを食べさせてやりたいな」
「わたしもお父様も、国王陛下のお気持ちに、是非とも応えたいのです……!」
するとロウナリー国王はハンカチでビーンと鼻をかんだ後に、リュドヴィックに視線を送っている。
ディアンヌも潤んだ瞳で彼を見つめて、懸命に『助けて欲しい』と、アピールしていた。
リュドヴィックの眉がピクリと動く。
その後に大きく咳払いをする。
「ゴホン……わかりました。メリーティー男爵領に関してはすぐに対策を考えます」
「おお、そうか! そういえば最近あの味が恋しいと思っていたんだ」
ディアンヌは眠っているピーターを抱えながら、深々と頭を下げていた。
パーティーであんなことがあったので、どうなることかと思ったが、ディアンヌは神に見捨てられたわけではなかったようだ。
(神様、国王様、リュドヴィック様……! 本当に本当にありがとうございますっ!)
彼らへの感謝から、ディアンヌの目には涙が滲む。
神はまだディアンヌを見捨てていなかったらしい。
ロウナリー国王が昔、メリーティー男爵家で育てているフルーツを気に入ってくれていて本当によかったと思った。
195
あなたにおすすめの小説
円満離婚に持ち込むはずが。~『冷酷皇帝の最愛妃』
みこと。
恋愛
「あなたと子を作るつもりはない」
皇帝シュテファンに嫁いだエリザは、初夜に夫から宣言されて首をかしげる。
(これは"愛することのない"の亜種?)
前世を思い出したばかりの彼女は、ここが小説『冷酷皇帝の最愛妃』の中だと気づき、冷静に状況を分析していた。
エリザの役どころは、公爵家が皇帝に押し付けた花嫁で、彼の恋路の邪魔をするモブ皇妃。小説のシュテファンは、最終的には運命の恋人アンネと結ばれる。
それは確かに、子どもが出来たら困るだろう。
速やかな"円満離婚"を前提にシュテファンと契約を結んだエリザだったが、とあるキッカケで彼の子を身ごもることになってしまい──?
シュテファンとの契約違反におののき、思わず逃走したエリザに「やっと見つけた」と追いすがる夫。
どうやら彼はエリザ一筋だったらしく。あれ? あなたの恋人アンネはどうしたの?
※小説家になろう様でも掲載しています
※表紙イラスト:あさぎかな先生にコラージュアートをいただきました
※毎朝7時に更新していく予定です→2月15日からはランダム更新となります。ご了承ください
【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します
咲楽えび@改名しました(旧 佐倉えび)
恋愛
断罪→偽装結婚(離婚)→契約結婚
不遇の人生を繰り返してきた令嬢の物語。
私はきっとまた、二十歳を越えられないーー
一周目、王立学園にて、第二王子ヴィヴィアン殿下の婚約者である公爵令嬢マイナに罪を被せたという、身に覚えのない罪で断罪され、修道院へ。
二周目、学園卒業後、夜会で助けてくれた公爵令息レイと結婚するも「あなたを愛することはない」と初夜を拒否された偽装結婚だった。後に離婚。
三周目、学園への入学は回避。しかし評判の悪い王太子の妾にされる。その後、下賜されることになったが、手渡された契約書を見て、契約結婚だと理解する。そうして、怖いと評判の宰相との結婚生活が始まったのだが――?
*ムーンライトノベルズにも掲載
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
旦那様、彼は仕事において必要不可欠なパートナーなのです
ましゅぺちーの
恋愛
伯爵夫人フルールは、夫である伯爵と愛人の秘書に長年頭を悩ませていた。
何度夫に苦言を呈しても「彼女は仕事において必要不可欠なパートナーだから」と一切聞く耳を持たない。
困り果てていたそのとき、彼女は突然前世の記憶を取り戻した。
このままだと夫と愛人の真実の愛の犠牲になってしまう。
それだけは御免だ。
結婚五年目にして、彼女はようやく夫を見限り、新たな事業を立ち上げた。
そして事業を成功させたフルールの隣には、いつも同じ男が立っていた。
その男は誰なのかと問い詰める夫に、フルールはニッコリ笑って言った。
「彼は仕事において必要不可欠なパートナーなのです」と。
愛されないはずの契約花嫁は、なぜか今宵も溺愛されています!
香取鞠里
恋愛
マリアは子爵家の長女。
ある日、父親から
「すまないが、二人のどちらかにウインド公爵家に嫁いでもらう必要がある」
と告げられる。
伯爵家でありながら家は貧しく、父親が事業に失敗してしまった。
その借金返済をウインド公爵家に伯爵家の借金返済を肩代わりしてもらったことから、
伯爵家の姉妹のうちどちらかを公爵家の一人息子、ライアンの嫁にほしいと要求されたのだそうだ。
親に溺愛されるワガママな妹、デイジーが心底嫌がったことから、姉のマリアは必然的に自分が嫁ぐことに決まってしまう。
ライアンは、冷酷と噂されている。
さらには、借金返済の肩代わりをしてもらったことから決まった契約結婚だ。
決して愛されることはないと思っていたのに、なぜか溺愛されて──!?
そして、ライアンのマリアへの待遇が羨ましくなった妹のデイジーがライアンに突如アプローチをはじめて──!?
一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。
木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」
結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。
彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。
身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。
こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。
マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。
「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」
一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。
それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。
それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。
夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
追放された悪役令嬢は辺境にて隠し子を養育する
3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)
恋愛
婚約者である王太子からの突然の断罪!
それは自分の婚約者を奪おうとする義妹に嫉妬してイジメをしていたエステルを糾弾するものだった。
しかしこれは義妹に仕組まれた罠であったのだ。
味方のいないエステルは理不尽にも王城の敷地の端にある粗末な離れへと幽閉される。
「あぁ……。私は一生涯ここから出ることは叶わず、この場所で独り朽ち果ててしまうのね」
エステルは絶望の中で高い塀からのぞく狭い空を見上げた。
そこでの生活も数ヵ月が経って落ち着いてきた頃に突然の来訪者が。
「お姉様。ここから出してさし上げましょうか? そのかわり……」
義妹はエステルに悪魔の様な契約を押し付けようとしてくるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる