貧乏令嬢のポジティブすぎる契約結婚〜継母としてもがんばります!〜

●やきいもほくほく●

文字の大きさ
17 / 27
一章

①⑦ シャーリーside2

しおりを挟む

ディアンヌのために娼婦が着るようなドレスを、侍女にわざわざ購入させた。
毒々しい濃い紫色とペラペラの生地に、はしたないほどに肌を露出させた最悪なものだ。

ディアンヌに自慢するためにクローゼットに案内する。
シンプルなドレスはないかと言うディアンヌの言葉には腹が立って仕方なかった。

(このわたくしが、そんな貧乏臭いドレスを持っているわけないじゃない!)

シャーリーが怒りを露わにすると、ディアンヌは一歩引いた返事をした。
それにはシャーリーは満足だった。
やはりメリーティー男爵家は相当、追い詰められているらしい。

そして計画通り、安い娼婦のようなドレスを渡す。
ディアンヌの引き攣った顔を見ていたら心がスッとした。
返すから、と言うディアンヌにシャーリーは腹を抱えて笑うのを堪えていた。

(こんなドレスとも呼べないクソみたいなもの、返されたっていらないわ!)

それから明らかにディアンヌが履き慣れなそうなハイヒールを渡す。
これはディアンヌが大恥をかいて二度と社交界に出られないようにするためだ。
ディアンヌはペラペラなドレスとハイヒール、そしてパートナー同伴で行かなければならないパーティーの招待状を渡す。

(これでディアンヌとメリーティー男爵家の評判は地に堕ちる。没落して、二度とわたくしの前に姿を現すことはないのよ)

──パーティー当日。
シャーリーがジェルマンと、友人たちと会場に入るとディアンヌはもうやらかした後だそうだ。
『場違いな娼婦が誰かを待っていた』
そんな話を聞いたシャーリーは立っていられないほどに笑うのを堪えていた。

シャーリーの予想通り、ハイヒールを履きこなせずに長い裾を踏んで転んだそうだ。
思いきり頭もぶつけてひどい有様で医務室に運ばれたらしい。

(あーあ、折角の出会いのチャンスも活かせないなんて……あの子らしいけどね)

パーティー会場に戻ってきたディアンヌは走ってきたのか頬は赤らんでいて、妙な色気を孕んでいる。
純朴な容姿とセクシーなドレスは、男性の視線を集めていた。
このまま放っておくことはできずにシャーリーは前に出る。

周りの令嬢やジェルマンには没落しそうだと無理矢理屋敷を訪ねてきて招待状を奪われた。
愛人になろうと一人でパーティーに乗り込んできた悪どい女だと説明していた。
学園では評判のよかったディアンヌも没落寸前で追い詰められたことで豹変したと思っている。

(フフッ……いい気味)

あっさりと騙されている友人やジェルマンは、ディアンヌを敵視しているようだ。
味方もいないこの状況でディアンヌは肩身の狭い思いをしている。
追い込むなら今だと思った。

ディアンヌの耳元でコッソリと真実を告げる。
すぐにでも泣き出すと思いきや、こちらを睨みつけたのだ。

さらにディアンヌを追い込むように自分の立場を教えてやった。
少しでも印象をよくしたいのか、その場を去ろうとするディアンヌ。
シャーリーはとどめとばかりに、こっそりとドレスの裾を踏みつける。

ディアンヌはその場で盛大に転んでしまう。
その行動にはジェルマンは驚いているようだが、令嬢たちはシャーリーと同じように吹き出していた。
絶体絶命の状況だった。
ここまで落ちぶれてしまえば這い上がることなどできはしない。
そう思っていたのに……。

「……大丈夫か?」

ディアンヌを救ったのは予想外の人物だった。
リュドヴィック・ベルトルテ。
この国の宰相でシャーリーと同じ歳くらいの令嬢たちどころか、夫人たちからも絶大な人気を誇る公爵だった。

その理由は端正な顔立ちと男性とは思えないほどの美しさにある。
それに加えて頭もよく、彼は国王の幼馴染だ。

彼と結婚したい女性がこの国にはごまんといるだろう。
それはシャーリーも同様だった。
彼の美しさはジェルマンなど足元に及ばない。
すべてを持ち合わせた手が届かない存在……それがベルトルテ公爵だった。

最近、事故で亡くなった姉の子どもを引き取ったらしい。
彼女は駆け落ちして行方不明だったと噂が流れていた。
シルバーグレーの髪と宝石のようなロイヤルブルーの瞳をただ見つめていた。
神々しさすら感じるリュドヴィックにシャーリーはうっとりしてしまう。
彼はディアンヌを抱え上げて会場を去って行ってしまった。
パートナー同伴のパーティーだが、会場の女性の視線を一瞬で奪い去ってしまう。
皆、彼の行動に賞賛の声を上げる。

(どうしてベルトルテ公爵がディアンヌを……?)

シャーリーは親指の爪を噛んだ。
最後に起きた予想外の出来事に今までのいい気分は焦りに変わっていく。

(た、たまたまよ! 何もあるわけないじゃない。あるわけないのよ……!)

シャーリーは扉を見ながら、妙な胸騒ぎを感じていたのだった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

円満離婚に持ち込むはずが。~『冷酷皇帝の最愛妃』

みこと。
恋愛
「あなたと子を作るつもりはない」 皇帝シュテファンに嫁いだエリザは、初夜に夫から宣言されて首をかしげる。 (これは"愛することのない"の亜種?) 前世を思い出したばかりの彼女は、ここが小説『冷酷皇帝の最愛妃』の中だと気づき、冷静に状況を分析していた。 エリザの役どころは、公爵家が皇帝に押し付けた花嫁で、彼の恋路の邪魔をするモブ皇妃。小説のシュテファンは、最終的には運命の恋人アンネと結ばれる。 それは確かに、子どもが出来たら困るだろう。 速やかな"円満離婚"を前提にシュテファンと契約を結んだエリザだったが、とあるキッカケで彼の子を身ごもることになってしまい──? シュテファンとの契約違反におののき、思わず逃走したエリザに「やっと見つけた」と追いすがる夫。 どうやら彼はエリザ一筋だったらしく。あれ? あなたの恋人アンネはどうしたの? ※小説家になろう様でも掲載しています ※表紙イラスト:あさぎかな先生にコラージュアートをいただきました ※毎朝7時に更新していく予定です→2月15日からはランダム更新となります。ご了承ください

【完結】余命三年ですが、怖いと評判の宰相様と契約結婚します

咲楽えび@改名しました(旧 佐倉えび)
恋愛
断罪→偽装結婚(離婚)→契約結婚 不遇の人生を繰り返してきた令嬢の物語。 私はきっとまた、二十歳を越えられないーー  一周目、王立学園にて、第二王子ヴィヴィアン殿下の婚約者である公爵令嬢マイナに罪を被せたという、身に覚えのない罪で断罪され、修道院へ。  二周目、学園卒業後、夜会で助けてくれた公爵令息レイと結婚するも「あなたを愛することはない」と初夜を拒否された偽装結婚だった。後に離婚。  三周目、学園への入学は回避。しかし評判の悪い王太子の妾にされる。その後、下賜されることになったが、手渡された契約書を見て、契約結婚だと理解する。そうして、怖いと評判の宰相との結婚生活が始まったのだが――? *ムーンライトノベルズにも掲載

ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように

柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」 笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。 夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。 幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。 王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。

旦那様、彼は仕事において必要不可欠なパートナーなのです

ましゅぺちーの
恋愛
伯爵夫人フルールは、夫である伯爵と愛人の秘書に長年頭を悩ませていた。 何度夫に苦言を呈しても「彼女は仕事において必要不可欠なパートナーだから」と一切聞く耳を持たない。 困り果てていたそのとき、彼女は突然前世の記憶を取り戻した。 このままだと夫と愛人の真実の愛の犠牲になってしまう。 それだけは御免だ。 結婚五年目にして、彼女はようやく夫を見限り、新たな事業を立ち上げた。 そして事業を成功させたフルールの隣には、いつも同じ男が立っていた。 その男は誰なのかと問い詰める夫に、フルールはニッコリ笑って言った。 「彼は仕事において必要不可欠なパートナーなのです」と。

愛されないはずの契約花嫁は、なぜか今宵も溺愛されています!

香取鞠里
恋愛
マリアは子爵家の長女。 ある日、父親から 「すまないが、二人のどちらかにウインド公爵家に嫁いでもらう必要がある」 と告げられる。 伯爵家でありながら家は貧しく、父親が事業に失敗してしまった。 その借金返済をウインド公爵家に伯爵家の借金返済を肩代わりしてもらったことから、 伯爵家の姉妹のうちどちらかを公爵家の一人息子、ライアンの嫁にほしいと要求されたのだそうだ。 親に溺愛されるワガママな妹、デイジーが心底嫌がったことから、姉のマリアは必然的に自分が嫁ぐことに決まってしまう。 ライアンは、冷酷と噂されている。 さらには、借金返済の肩代わりをしてもらったことから決まった契約結婚だ。 決して愛されることはないと思っていたのに、なぜか溺愛されて──!? そして、ライアンのマリアへの待遇が羨ましくなった妹のデイジーがライアンに突如アプローチをはじめて──!?

一年後に離婚すると言われてから三年が経ちましたが、まだその気配はありません。

木山楽斗
恋愛
「君とは一年後に離婚するつもりだ」 結婚して早々、私は夫であるマグナスからそんなことを告げられた。 彼曰く、これは親に言われて仕方なくした結婚であり、義理を果たした後は自由な独り身に戻りたいらしい。 身勝手な要求ではあったが、その気持ちが理解できない訳ではなかった。私もまた、親に言われて結婚したからだ。 こうして私は、一年間の期限付きで夫婦生活を送ることになった。 マグナスは紳士的な人物であり、最初に言ってきた要求以外は良き夫であった。故に私は、それなりに楽しい生活を送ることができた。 「もう少し様子を見たいと思っている。流石に一年では両親も納得しそうにない」 一年が経った後、マグナスはそんなことを言ってきた。 それに関しては、私も納得した。彼の言う通り、流石に離婚までが早すぎると思ったからだ。 それから一年後も、マグナスは離婚の話をしなかった。まだ様子を見たいということなのだろう。 夫がいつ離婚を切り出してくるのか、そんなことを思いながら私は日々を過ごしている。今の所、その気配はまったくないのだが。

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

追放された悪役令嬢は辺境にて隠し子を養育する

3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)
恋愛
 婚約者である王太子からの突然の断罪!  それは自分の婚約者を奪おうとする義妹に嫉妬してイジメをしていたエステルを糾弾するものだった。  しかしこれは義妹に仕組まれた罠であったのだ。  味方のいないエステルは理不尽にも王城の敷地の端にある粗末な離れへと幽閉される。 「あぁ……。私は一生涯ここから出ることは叶わず、この場所で独り朽ち果ててしまうのね」  エステルは絶望の中で高い塀からのぞく狭い空を見上げた。  そこでの生活も数ヵ月が経って落ち着いてきた頃に突然の来訪者が。 「お姉様。ここから出してさし上げましょうか? そのかわり……」  義妹はエステルに悪魔の様な契約を押し付けようとしてくるのであった。

処理中です...