熱血豪傑ビッグバンダー!

ハリエンジュ

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第二話『永遠少年殺人事件』

その3 いつかの敵は、きっといつものメシトモに。

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★第二話『永遠少年ピーターパン殺人事件』
その3 いつかの敵は、きっといつものメシトモに。

teller:バッカス=リュボフ

 朝ごはんを誰かと食べよう、と思い立って。
 おれは先ほどから、ある男の部屋のドアを執拗にどんどこどんどこと叩いていた。

 おれがアテにしたのは、第22地区代表ファイターの愁水しゅうすい=アンダーソン。
 26歳男性。
 パートナーのサポーターが23歳の女の子なので、カーバンクル寮では一人部屋を使っている。
 と、おれがピアスに持たされた電子端末は語る。

 ここカーバンクル寮は、結構お若いティーンエイジャーが揃っていて、そうじゃないかと思えば俺より少し、もしくは極端に大人な人々が集まっている。

 そんな中、愁水くんは貴重なおれと歳の近い男だった。
 じゃあせっかくだし、と愁水くんの部屋のドアをがんがんがんがん叩き続けたら、いよいよドアがおれを押し潰しかねない勢いで乱暴に開かれた。
 脂肪のおかげでおれは無傷。ありがとう脂肪。

「うるっせーな、朝っぱらから!! 普通に迷惑だわ!! なんなんだよ!!」

 わあ、ヤンキーだ。
 それが第一印象。
 まだ寝癖がついた金髪の、目つきとガラの悪い若者が、スウェット姿でおれの目の前に現れた。
 いやまあ、おれが呼び出したんだけど。

 早速ごはんのお誘いを、とおれは片手を挙げて笑う。

「や。おれ、第29地区代表ファイターのバッカスです。朝ごはん、一緒に食べに行こうぜ! 愁水くんや」

「……………………は?」

 長い長い沈黙のあと、愁水くんは空気に抵抗しかねない程の、理解を拒む感情剥き出しの声を喉の奥底から出し、心底呆れ返った顔でおれを見た。

「……それで、なんで俺のとこに来るんだよ」

「だってティーンエイジャーに声かけるの気まずいし」

「ティーンエイジャーって……いや、朝飯くらい一人で食いに行けよ」

「誰かと食べた方がおれは美味しいし楽しいからさあ」

「自分のサポーターと行けばいいだろ」

「フラれた!!」

「晴れやかな笑顔で言う台詞じゃねーぞ、それ」

 ぽんぽんと軽快な会話のあと、愁水くんは大きな溜息を吐き出し、がりがりと自分の頭を掻いた。
 面倒そうな感情を滲ませた、狼みたいな三白眼がおれを捉える。

「……大体一緒に飯って……俺ら一応敵同士だろ」

「バトロボ終わったら同じ星に住む仲間っしょ?」

「バトロボとか勝手に略称作ってんじゃねえ」

「え、じゃあ……っと、おーい! そこのしょうねーん!」

「てめえ、自分から吹っ掛けといて会話を勝手に中断させてんじゃねえ」

「あだっ」

 愁水くんに足の脛を思い切り蹴られる。
 おれはバランスを崩しそうになるも、持ち前の重量感でやり過ごし、通りすがりの白髪赤目の、幼い少年に向かって手を振り声をかける。
 狙いを愁水くんだけに絞ってたから、この子の名前がわからん。後で聞こう。

 少年はきょとんとこちらを見つめ、素直におれたちの傍に寄って来てくれる。
 愁水くんは、おれをじっとりと不服そうに睨みつけていた。

「ってか、ティーンエイジャーに声かけるの気まずいっつってたのはどこのどいつだ」

「いや、おれは寂しそうにぼっち行動してるちびっ子は放っておけないんで」

「意味わからん……」

 がっくりと肩を落とす愁水くんを横目に、おれは少年と目線を合わせる為に屈みこむ。

「少年少年、おれたちこれから朝ごはん食べに行くんだけど少年も来る?」 

「待て、勝手に俺をパーティインさせんな」

「あがっ」

 愁水くんに背中を踏まれた。
 しかし、白髪の少年はポーカーフェイスのまま、こくりと小さく頷き。

「……奢りなら、行くが」

 そう、言ってくれた。あと意外と声がかっこよかった。
 おれは勢い良く立ち上がり、愁水くんと少年の手を取り高々と掲げる。

「よっしゃー!! ごはん友達確保ー!!」

「人の話聞けよおっさん!!」

「ごふっ」

 愁水くんの渾身の蹴りを今度はモロに食らってしまった。
 壁に叩きつけられてずるずると崩れ落ちるけど、まだ意識はある。
 ならごはんは食べに行ける。
 そんならオッケーオッケー。

 さてさて、じゃあ今日は何を食べようかな。
 あと、おれはおっさんじゃなくおにーさんです。まだ。ギリ。
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