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第六話『暴走暴発暴虐ガールズ!』
その6 暴走暴発暴虐ガールズ!
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★第六話『暴走暴発暴虐ガールズ!』
その6 暴走暴発暴虐ガールズ!
teller:ダリア=リッジウェイ
「だからっ!! ドロッセルがそんな意味ねえことするわけねえだろ!?」
突如、臨時ニュースでセントラルエリアほぼ全域に発表された連続爆破予告テロ。
その容疑者としてバトル・ロボイヤル運営上層部に任意同行を求められているのが、私と同い年の女性ファイター・ドロッセル=リデルだった。
ドロッセルとは話したことがない。
いつも彼女はサポーターの恵夢=チェンバーズさんにべったりで、他人を寄せ付けない空気というか、恵夢さん以外の他人をはっきり拒絶する空気を纏っているから。
カーバンクル寮玄関ロビーにて上層部からの通達を伝えにきた政府職員二人に対し、ドロッセルはつまらなそうに自分のツインテールを弄ったまま、一言も発さなかった。
まるで全部、他人事みたいに。
対して感情を、怒りを露にしたのはドロッセルのパートナーの恵夢さん。
職員さんは結構なガタイの男性だったがそんなの気にも留めずに恵夢さんは躊躇なく彼らに掴みかかり、ドロッセルの無罪を主張している。
困惑する職員さんたちの様子を見てドロッセルは溜息を吐き、恵夢さんの背中に心なしか優しく触れた。
「いいよ、恵夢。わたし、わかってもらいたい人にわかってもらえればいいから。この人たちも、もっと偉い人たちも、すぐにみんな気付くよ……自分たちがいかに愚かな判断したのかって」
「でもよ……っ」
「ま、気付いた時にはたっくさん、ヒトが死んじゃってるかもしれないけど?」
ぞ、と背筋が粟立つほどにドロッセルが妖艶に笑う。
あどけなさを残す容姿からは想像も出来ない、冷たい色香を含んだ笑み。
私は一瞬固まってしまったが、黙ってばかりにもいられない。
ドロッセルはたった今、この状況で人の命を軽んじる台詞を吐いた。
それを私は、見過ごせない。
「別にいいんじゃねえの、ソイツが犯人でも。オレにはどうでもいいし関係ねーよ」
静寂を切り崩すように、涼やかな声が響いた。
どこか不機嫌そうな色を含む声を放ったその少女は、笹巳=デラクール。
たまたまロビーに居合わせた、私とドロッセルと同じ、18歳の女性ファイター。
笹巳とも、話したことがない。
ドロッセル以上に他人を拒絶する空気を隠さず、暴力的な刺々しい言動で寮からも少々浮いた存在。
恵夢さんにべったりなドロッセルと違って、笹巳は普段はサポーターの麓重=バラードさんの近くに寄ろうとすらしないけれど。
「ふーん? どうでもいいのに、わたしが犯人だって思うんだぁ?」
くすくす、と面白そうにドロッセルが笑いながら、ふら、と軽やかに踊るように笹巳に対して距離を詰める。
笹巳はそんなドロッセルを見下ろし、彼女を鋭く睨みつけると吐き捨てるように言った。
「オマエの機体――『コノハナサクヤ』のメインウェポンは爆弾だろ。オマエに爆発物の知識があることも、端末の簡易プロフィールに書いてある。……上層部直々にご指名ってことは、疑われる理由はあんだろ」
「……ふぅん?」
にた、とドロッセルが笑みを深める。
笹巳はそれが気に食わなかったのか、ますます険しく眉を顰めた。
「……んだよ」
「いや? ただ……救いようがないなあって」
「あ?」
「笹巳ちゃんって、脆いだけじゃなくて結構おバカさんなんだなあって。可哀想になっちゃっただけ」
重く、低い音がした。
笹巳が地団太を踏むように床をどん、と踏み落とし、ドロッセルに掴みかかる。
「テメェ……どういう意味だ」
だけどドロッセルは一切動じない。どこまでも愉しそうに笑ったまま。
それどころか、もっともっと笹巳の怒りを引き出すように、挑発的に笑って言った。
「ホントのことでしょ? ……オトコがいないと生きていけないくらい、脆いくせに」
「ッ、てめェ……!!」
笹巳の顔色が変わり、彼女の脚が動く。
あれはさっきの地団太とは違う。
確実にドロッセルに危害を加える為の蹴りだ。
恵夢さんがドロッセルの腕を引っ掴んで引き離そうとする前に、私は手持ちの杖を一振りした。
「っ、ハリントン流拘束魔法! いばら姫!」
一瞬にして、鎖の形をした光が笹巳とドロッセルそれぞれの手首に伸び、強い力でお互いを反対方向に引っ張ることで、彼女たち二人の距離を強制的に引き離す。
少し驚いている二人と恵夢さん、それから政府職員さんたちの元に割って入るように、私は駆け出した。
レイヴン先生から教わっている魔法。
私はビッグバンダーに乗っていない生身の状態だとこういう、気休め程度の拘束魔法・防御魔法しか使えないけど、それでも。
私は私の正義の為に、学んだ魔法を使いたい。
私はドロッセルと笹巳の手首を自分の両手で握り、職員さんたちに向き直る。
「あのっ! 少し待ってもらえませんか?」
「ま、待つ?」
「本当の犯人が捕まれば、ドロッセルが疑われることもなくなるんですよね? ……じゃあ、私とドロッセルと笹巳が、犯人グループを突き止めます! この連続爆破テロ、止めてみせます!」
「はぁ!?」
不快そうに声を荒げたのは、笹巳。
ドロッセルは先程までの笑顔とは裏腹に無表情で、冷たい目で私を見ている。
職員さんたちは困惑していた……けど。
今日も私の心に灯る正義の炎は、やっぱり止まってはくれない。
何よりも。
ちゃんと、話してみたかったのだ。
私と同い年の、この二人の女の子と。
その6 暴走暴発暴虐ガールズ!
teller:ダリア=リッジウェイ
「だからっ!! ドロッセルがそんな意味ねえことするわけねえだろ!?」
突如、臨時ニュースでセントラルエリアほぼ全域に発表された連続爆破予告テロ。
その容疑者としてバトル・ロボイヤル運営上層部に任意同行を求められているのが、私と同い年の女性ファイター・ドロッセル=リデルだった。
ドロッセルとは話したことがない。
いつも彼女はサポーターの恵夢=チェンバーズさんにべったりで、他人を寄せ付けない空気というか、恵夢さん以外の他人をはっきり拒絶する空気を纏っているから。
カーバンクル寮玄関ロビーにて上層部からの通達を伝えにきた政府職員二人に対し、ドロッセルはつまらなそうに自分のツインテールを弄ったまま、一言も発さなかった。
まるで全部、他人事みたいに。
対して感情を、怒りを露にしたのはドロッセルのパートナーの恵夢さん。
職員さんは結構なガタイの男性だったがそんなの気にも留めずに恵夢さんは躊躇なく彼らに掴みかかり、ドロッセルの無罪を主張している。
困惑する職員さんたちの様子を見てドロッセルは溜息を吐き、恵夢さんの背中に心なしか優しく触れた。
「いいよ、恵夢。わたし、わかってもらいたい人にわかってもらえればいいから。この人たちも、もっと偉い人たちも、すぐにみんな気付くよ……自分たちがいかに愚かな判断したのかって」
「でもよ……っ」
「ま、気付いた時にはたっくさん、ヒトが死んじゃってるかもしれないけど?」
ぞ、と背筋が粟立つほどにドロッセルが妖艶に笑う。
あどけなさを残す容姿からは想像も出来ない、冷たい色香を含んだ笑み。
私は一瞬固まってしまったが、黙ってばかりにもいられない。
ドロッセルはたった今、この状況で人の命を軽んじる台詞を吐いた。
それを私は、見過ごせない。
「別にいいんじゃねえの、ソイツが犯人でも。オレにはどうでもいいし関係ねーよ」
静寂を切り崩すように、涼やかな声が響いた。
どこか不機嫌そうな色を含む声を放ったその少女は、笹巳=デラクール。
たまたまロビーに居合わせた、私とドロッセルと同じ、18歳の女性ファイター。
笹巳とも、話したことがない。
ドロッセル以上に他人を拒絶する空気を隠さず、暴力的な刺々しい言動で寮からも少々浮いた存在。
恵夢さんにべったりなドロッセルと違って、笹巳は普段はサポーターの麓重=バラードさんの近くに寄ろうとすらしないけれど。
「ふーん? どうでもいいのに、わたしが犯人だって思うんだぁ?」
くすくす、と面白そうにドロッセルが笑いながら、ふら、と軽やかに踊るように笹巳に対して距離を詰める。
笹巳はそんなドロッセルを見下ろし、彼女を鋭く睨みつけると吐き捨てるように言った。
「オマエの機体――『コノハナサクヤ』のメインウェポンは爆弾だろ。オマエに爆発物の知識があることも、端末の簡易プロフィールに書いてある。……上層部直々にご指名ってことは、疑われる理由はあんだろ」
「……ふぅん?」
にた、とドロッセルが笑みを深める。
笹巳はそれが気に食わなかったのか、ますます険しく眉を顰めた。
「……んだよ」
「いや? ただ……救いようがないなあって」
「あ?」
「笹巳ちゃんって、脆いだけじゃなくて結構おバカさんなんだなあって。可哀想になっちゃっただけ」
重く、低い音がした。
笹巳が地団太を踏むように床をどん、と踏み落とし、ドロッセルに掴みかかる。
「テメェ……どういう意味だ」
だけどドロッセルは一切動じない。どこまでも愉しそうに笑ったまま。
それどころか、もっともっと笹巳の怒りを引き出すように、挑発的に笑って言った。
「ホントのことでしょ? ……オトコがいないと生きていけないくらい、脆いくせに」
「ッ、てめェ……!!」
笹巳の顔色が変わり、彼女の脚が動く。
あれはさっきの地団太とは違う。
確実にドロッセルに危害を加える為の蹴りだ。
恵夢さんがドロッセルの腕を引っ掴んで引き離そうとする前に、私は手持ちの杖を一振りした。
「っ、ハリントン流拘束魔法! いばら姫!」
一瞬にして、鎖の形をした光が笹巳とドロッセルそれぞれの手首に伸び、強い力でお互いを反対方向に引っ張ることで、彼女たち二人の距離を強制的に引き離す。
少し驚いている二人と恵夢さん、それから政府職員さんたちの元に割って入るように、私は駆け出した。
レイヴン先生から教わっている魔法。
私はビッグバンダーに乗っていない生身の状態だとこういう、気休め程度の拘束魔法・防御魔法しか使えないけど、それでも。
私は私の正義の為に、学んだ魔法を使いたい。
私はドロッセルと笹巳の手首を自分の両手で握り、職員さんたちに向き直る。
「あのっ! 少し待ってもらえませんか?」
「ま、待つ?」
「本当の犯人が捕まれば、ドロッセルが疑われることもなくなるんですよね? ……じゃあ、私とドロッセルと笹巳が、犯人グループを突き止めます! この連続爆破テロ、止めてみせます!」
「はぁ!?」
不快そうに声を荒げたのは、笹巳。
ドロッセルは先程までの笑顔とは裏腹に無表情で、冷たい目で私を見ている。
職員さんたちは困惑していた……けど。
今日も私の心に灯る正義の炎は、やっぱり止まってはくれない。
何よりも。
ちゃんと、話してみたかったのだ。
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