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第六話『暴走暴発暴虐ガールズ!』
その16 残機ゼロで楽園を目指す
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★第六話『暴走暴発暴虐ガールズ!』
その16 残機ゼロで楽園を目指す
teller:愁水=アンダーソン
「お前、自己犠牲は嫌いじゃなかったのか」
「んあ?」
突然のオリーヴの質問に、馬鹿スが気の抜けた、と言うより間の抜けた声を上げる。
馬鹿スが間抜けなのはいつものことだけど。
問題は、馬鹿スに質問をした男の容姿。
「オリーヴてめえ……いつまでモヒカンのガワなんだよ。もう潜入とか関係ねえんだから普通に解けや」
「解き方がわからん。あと、これはこれでなかなか気に入った」
「気に入らないでオリーヴくん?? オリーヴくんの売りは見た目美少年くらいなとこしかないんだからそれを失ったらもうアウトよ??」
「テメーも素でひでえこと言うなよ花楓……」
花楓が焦った様子で電子端末をぽちぽちと操作すると、オリーヴの全身を纏っていたホログラムのモヒカン男の偶像が剥がれる。
目の前にはいつも通り、すました顔した白髪の小柄な可愛くないガキ。中身はジジイ。
ああ、いつものオリーヴだ。
オリーヴはぱちぱちと目を瞬かせて自分自身の姿を確認してから、再び馬鹿スを見上げる。
馬鹿スはどこから仕入れたのか、もそもそとハンバーガーを食べていた。
こいつほんと食ってばっかだないつも。
「で、自己犠牲が嫌いだと、無理だと、前に俺に言ってなかったか。バッカス」
「え? え? おれ、いつ自己犠牲した??」
「花楓がナイフを突きつけられていた時だ。お前、自ら鉄骨を手放して落ちただろう」
オリーヴの声には、責めるような感情が含まれていた気がした。
表情こそ変わらないが、その赤い瞳は真っ直ぐに馬鹿スを捉えている。
馬鹿スも馬鹿スで、ハンバーガーを食いながらオリーヴを真っ直ぐに見つめ返す。
人と話す時ぐらい食うのをやめろ。
「いや、あれ自己犠牲じゃねえよ? ほら、ダリアちゃんが突入してくれたおかげで下に人いっぱい集まってたし。まあ人が居なくても落ちたらヤバいくらい痛かったろうけど、死ぬほどじゃないっしょ」
「ダリアと言ったか……あの娘がビッグバンダーを召喚するまでは、随分と慌てていただろう」
「そりゃね、オリーヴ氏と同じ理屈なのよね」
馬鹿スの言葉に、オリーヴが首を傾げる。
それは俺も花楓も同様。
なお俺は馬鹿スを容赦なく見捨てた側だが、特に俺からは馬鹿スを慮る類の弁明はない。
状況的にも普段の馬鹿スの人権的にも、色々威厳も感謝もないので。
そんな間抜けなくせにいつも俺らの一番近くに陣取っているメタボは、のんびりした調子でこんなことを言う。
「慣れてるのと得意になるのは違うじゃん? おれ、痛いのは慣れてるけど苦手だよ。あそこから落ちたら絶対めっちゃ痛かっただろうし。……みんなは知らないかもしれないけど、普段ピアスにボコられてるおれから言わせてもらうね。ヒールで蹴られるのはマジで痛い。つらい。痛いの辛い」
「途中で話が脱線してんじゃねえかデブ」
「あいたっ、愁ちゃん蹴らないで! 愁ちゃんの蹴りもなかなか容赦なくて毎回痛いよ!?」
いつものノリのまま俺から後ずさる馬鹿スを見てオリーヴが、溜息をつく。
その横顔には、その瞳からは。
何故かどこか、安堵のような色を感じた。
「と、言うわけでごはんいこー! このあとおれは無茶したせいでピアスにボコられるのが確定してるから、痛みに負けない無敵の脂肪を作るのだ! 一件落着記念に食いまくるぞー!」
「……そう言えば、あの18歳ファイター三人娘も食事に向かっていたな」
「ねー、女の子の友情って微笑ましいよねー、オリーヴ氏、カエちゃんも愁ちゃんも! おれたちも仲良くしようぜ!」
「にゃはは、おれたちじゃ絵面最悪だけどねー」
オリーヴを引きずっていつもの飲食街エリアに向かう馬鹿スについていこうとした花楓の首ねっこを、俺はふと掴んだ。
花楓は目を丸くして振り返る。
その表情に悪意が微塵もなかったものだから、俺は何だか腹が立って、花楓のキャスケット帽越しに手刀を一発叩き込んだ。
「あいたっ! ……もー、何すんの愁ちゃん?」
「今日無茶した、と言う話だとお前が真っ先に浮かぶんだよ俺は。爆弾に吹っ飛ばされそうになるわ潜入捜査とか言い出すわ、単独行動してピンチになって落ちてくるわ。お前今日やりたい放題すぎるわふざけんな。心臓いくつあっても足りねえよ」
「にゃー、愁ちゃんやさしー。心配してくれたんだ?」
腹立つくらいのにやにやした笑顔でそんなことを言われたものだから、手刀をもう一発追加でお見舞いする。
痛いだろうに、花楓はそれでも顔をくしゃくしゃにして嬉しそうに笑っている。
「……だって、腹立っちゃったんだよねえ」
かと思えば、花楓はどこか静かな声でそんなことを言い出す。
「おれね、一応ちゃんとわかってるよ。愁ちゃんがおれを心配してくれてることも……バッカスがおれについてきてくれたり、オリーヴくんがおれの為に怒ってくれたり、みんながおれを大事に思ってくれてること、一応ちゃんとわかってる。だからさ、みんなでご飯食べたり遊んだりする時間、おれは結構気に入ってんの。誰にも奪われたくないの。それを変なトラブルで邪魔されちゃ、むかつかない?」
「……ろくでもない時間気に入りやがって」
「にゃはは、だってほんとに好きなんだよ。ろくでもない大人たちと遊ぶ、ろくでもない時間、おれはもう大好きになっちゃったの」
花楓が頭の後ろで手を組みながら、遠くなりつつある馬鹿スとオリーヴの背中を追うように歩き出す。
「……おれね、みんなが好きだよ。バッカスとオリーヴくんは、一緒に歩いてくれるからすき。愁ちゃんは、守ってくれるから、すき。……大好き」
そんな花楓が、ふらりと、まるで風の流れに身を任せるようにこちらを振り返る。
子どもらしい大きな瞳は今、俺だけを映している。
「愁ちゃんだけ『大好き』な理由、愁ちゃんはわかる?」
「知らん。っつーか好き好き連呼すんな。そういうのは――」
「愁ちゃんにだけは、絶対に死ねない理由があるからだよ」
俺の言葉を遮るように、花楓はそう言い切った。
花楓の言葉に心当たりがありすぎて、俺は思わず言いかけた内容を途中で止める。
「愁ちゃんは、聖歌お姉ちゃんが大好きで、お姉ちゃんとの未来を一番大事にしてる。だから、何が何でも死ねないでしょ? 愁ちゃんはおれを絶対に守ってくれるけど、愁ちゃんは自分の命も絶対に大切にできる人だから。意地でも自分が生きることにしがみつける人だから。だからおれ、愁ちゃんのこと信じてるの」
死ねない理由。
俺の全ての行動原理。
聖歌と生きたい。
あいつと共に在りたい。
俺が今、ここに居る理由。
その理由を述べて、その理由を愛おしむように花楓は笑って、言った。
「……だから、愁ちゃん。おれたちとずっと一緒に居てほしいけど……『こっち側』には来ちゃだめだよ」
「……は?」
「絶対だめ。……愁ちゃんだけは、絶対、来ちゃだめ」
花楓の言う『こっち側』が、どんな世界かはわからなかった。
花楓がどこの境界線を指しているのかも、わからなかった。
でも。
「……それが、まともかまともじゃないって話なら、お前らがこっち側来ればいいだろ」
俺の意見に、花楓はぱちっと目を見開く。
宿す色をコロコロと変える大きな瞳を見据えて、俺は更に言った。
「俺の側にだってお前らは来れるだろ。いくらでも」
来れるはずだろ、お前らは。
普段うざったいくらいに俺の周りを三人でうろちょろするくせに、嫌でも近づいてくるくせに。
何で変なとこだけ線引きしようとするんだ。
来ればいいだろ、いつもみてえに、遠慮もクソもなく。
花楓は何も言わなかった。
何度か、何かを言おうとして、ずっと俺から逸らさなかった視線を一度だけ逸らして、俯いて。
――そして、俺にタックルするように、抱きついた。
「…………いってえな。これマジで痛いやつだぞテメェ。骨どっかやられるわ」
「にゃははっ! そういうこと言っちゃうから、おれ、愁ちゃん大好きだよ!!」
「どういうことだよ……つか、くっつくな纏わりつくな歩きにくい。大体、大好きってなあ……」
文句を散々垂れながら、自分にしがみつく花楓を引きずるように馬鹿スとオリーヴの後を追う。
俺も花楓も含め、色んな意味でろくでもない連中だと思う。
絵面もひどいし、統一性が無いし、ノリもひどい。
出来ればこいつらと関わりたくないと、俺は未だに思ってる。
だけど、今の俺が花楓から感じているような命の温度が、こいつらが抱えるもんが、知りたくないくらいに重すぎて、自分から完全に突き放すことは何となくできなくて。
死ねない理由なら、ある。
とっくに、あるんだ。
花楓にしがみつかれてない自分の右手に、何となく視線を落とす。
聖歌。
俺は――。
一瞬、自分の右手に深い切り傷が見えた気がした。
とっくに癒えてるから、それは俺にとって一瞬の幻でしかない。
だけど俺には誓いがある。
あいつと、聖歌と誓ったことがある。
俺は聖歌が好きで、その気持ちは決して軽いもんなんかじゃなくて。
――それは花楓の言うところの、俺が命にしがみつく理由に、確かに繋がっていたんだ。
その16 残機ゼロで楽園を目指す
teller:愁水=アンダーソン
「お前、自己犠牲は嫌いじゃなかったのか」
「んあ?」
突然のオリーヴの質問に、馬鹿スが気の抜けた、と言うより間の抜けた声を上げる。
馬鹿スが間抜けなのはいつものことだけど。
問題は、馬鹿スに質問をした男の容姿。
「オリーヴてめえ……いつまでモヒカンのガワなんだよ。もう潜入とか関係ねえんだから普通に解けや」
「解き方がわからん。あと、これはこれでなかなか気に入った」
「気に入らないでオリーヴくん?? オリーヴくんの売りは見た目美少年くらいなとこしかないんだからそれを失ったらもうアウトよ??」
「テメーも素でひでえこと言うなよ花楓……」
花楓が焦った様子で電子端末をぽちぽちと操作すると、オリーヴの全身を纏っていたホログラムのモヒカン男の偶像が剥がれる。
目の前にはいつも通り、すました顔した白髪の小柄な可愛くないガキ。中身はジジイ。
ああ、いつものオリーヴだ。
オリーヴはぱちぱちと目を瞬かせて自分自身の姿を確認してから、再び馬鹿スを見上げる。
馬鹿スはどこから仕入れたのか、もそもそとハンバーガーを食べていた。
こいつほんと食ってばっかだないつも。
「で、自己犠牲が嫌いだと、無理だと、前に俺に言ってなかったか。バッカス」
「え? え? おれ、いつ自己犠牲した??」
「花楓がナイフを突きつけられていた時だ。お前、自ら鉄骨を手放して落ちただろう」
オリーヴの声には、責めるような感情が含まれていた気がした。
表情こそ変わらないが、その赤い瞳は真っ直ぐに馬鹿スを捉えている。
馬鹿スも馬鹿スで、ハンバーガーを食いながらオリーヴを真っ直ぐに見つめ返す。
人と話す時ぐらい食うのをやめろ。
「いや、あれ自己犠牲じゃねえよ? ほら、ダリアちゃんが突入してくれたおかげで下に人いっぱい集まってたし。まあ人が居なくても落ちたらヤバいくらい痛かったろうけど、死ぬほどじゃないっしょ」
「ダリアと言ったか……あの娘がビッグバンダーを召喚するまでは、随分と慌てていただろう」
「そりゃね、オリーヴ氏と同じ理屈なのよね」
馬鹿スの言葉に、オリーヴが首を傾げる。
それは俺も花楓も同様。
なお俺は馬鹿スを容赦なく見捨てた側だが、特に俺からは馬鹿スを慮る類の弁明はない。
状況的にも普段の馬鹿スの人権的にも、色々威厳も感謝もないので。
そんな間抜けなくせにいつも俺らの一番近くに陣取っているメタボは、のんびりした調子でこんなことを言う。
「慣れてるのと得意になるのは違うじゃん? おれ、痛いのは慣れてるけど苦手だよ。あそこから落ちたら絶対めっちゃ痛かっただろうし。……みんなは知らないかもしれないけど、普段ピアスにボコられてるおれから言わせてもらうね。ヒールで蹴られるのはマジで痛い。つらい。痛いの辛い」
「途中で話が脱線してんじゃねえかデブ」
「あいたっ、愁ちゃん蹴らないで! 愁ちゃんの蹴りもなかなか容赦なくて毎回痛いよ!?」
いつものノリのまま俺から後ずさる馬鹿スを見てオリーヴが、溜息をつく。
その横顔には、その瞳からは。
何故かどこか、安堵のような色を感じた。
「と、言うわけでごはんいこー! このあとおれは無茶したせいでピアスにボコられるのが確定してるから、痛みに負けない無敵の脂肪を作るのだ! 一件落着記念に食いまくるぞー!」
「……そう言えば、あの18歳ファイター三人娘も食事に向かっていたな」
「ねー、女の子の友情って微笑ましいよねー、オリーヴ氏、カエちゃんも愁ちゃんも! おれたちも仲良くしようぜ!」
「にゃはは、おれたちじゃ絵面最悪だけどねー」
オリーヴを引きずっていつもの飲食街エリアに向かう馬鹿スについていこうとした花楓の首ねっこを、俺はふと掴んだ。
花楓は目を丸くして振り返る。
その表情に悪意が微塵もなかったものだから、俺は何だか腹が立って、花楓のキャスケット帽越しに手刀を一発叩き込んだ。
「あいたっ! ……もー、何すんの愁ちゃん?」
「今日無茶した、と言う話だとお前が真っ先に浮かぶんだよ俺は。爆弾に吹っ飛ばされそうになるわ潜入捜査とか言い出すわ、単独行動してピンチになって落ちてくるわ。お前今日やりたい放題すぎるわふざけんな。心臓いくつあっても足りねえよ」
「にゃー、愁ちゃんやさしー。心配してくれたんだ?」
腹立つくらいのにやにやした笑顔でそんなことを言われたものだから、手刀をもう一発追加でお見舞いする。
痛いだろうに、花楓はそれでも顔をくしゃくしゃにして嬉しそうに笑っている。
「……だって、腹立っちゃったんだよねえ」
かと思えば、花楓はどこか静かな声でそんなことを言い出す。
「おれね、一応ちゃんとわかってるよ。愁ちゃんがおれを心配してくれてることも……バッカスがおれについてきてくれたり、オリーヴくんがおれの為に怒ってくれたり、みんながおれを大事に思ってくれてること、一応ちゃんとわかってる。だからさ、みんなでご飯食べたり遊んだりする時間、おれは結構気に入ってんの。誰にも奪われたくないの。それを変なトラブルで邪魔されちゃ、むかつかない?」
「……ろくでもない時間気に入りやがって」
「にゃはは、だってほんとに好きなんだよ。ろくでもない大人たちと遊ぶ、ろくでもない時間、おれはもう大好きになっちゃったの」
花楓が頭の後ろで手を組みながら、遠くなりつつある馬鹿スとオリーヴの背中を追うように歩き出す。
「……おれね、みんなが好きだよ。バッカスとオリーヴくんは、一緒に歩いてくれるからすき。愁ちゃんは、守ってくれるから、すき。……大好き」
そんな花楓が、ふらりと、まるで風の流れに身を任せるようにこちらを振り返る。
子どもらしい大きな瞳は今、俺だけを映している。
「愁ちゃんだけ『大好き』な理由、愁ちゃんはわかる?」
「知らん。っつーか好き好き連呼すんな。そういうのは――」
「愁ちゃんにだけは、絶対に死ねない理由があるからだよ」
俺の言葉を遮るように、花楓はそう言い切った。
花楓の言葉に心当たりがありすぎて、俺は思わず言いかけた内容を途中で止める。
「愁ちゃんは、聖歌お姉ちゃんが大好きで、お姉ちゃんとの未来を一番大事にしてる。だから、何が何でも死ねないでしょ? 愁ちゃんはおれを絶対に守ってくれるけど、愁ちゃんは自分の命も絶対に大切にできる人だから。意地でも自分が生きることにしがみつける人だから。だからおれ、愁ちゃんのこと信じてるの」
死ねない理由。
俺の全ての行動原理。
聖歌と生きたい。
あいつと共に在りたい。
俺が今、ここに居る理由。
その理由を述べて、その理由を愛おしむように花楓は笑って、言った。
「……だから、愁ちゃん。おれたちとずっと一緒に居てほしいけど……『こっち側』には来ちゃだめだよ」
「……は?」
「絶対だめ。……愁ちゃんだけは、絶対、来ちゃだめ」
花楓の言う『こっち側』が、どんな世界かはわからなかった。
花楓がどこの境界線を指しているのかも、わからなかった。
でも。
「……それが、まともかまともじゃないって話なら、お前らがこっち側来ればいいだろ」
俺の意見に、花楓はぱちっと目を見開く。
宿す色をコロコロと変える大きな瞳を見据えて、俺は更に言った。
「俺の側にだってお前らは来れるだろ。いくらでも」
来れるはずだろ、お前らは。
普段うざったいくらいに俺の周りを三人でうろちょろするくせに、嫌でも近づいてくるくせに。
何で変なとこだけ線引きしようとするんだ。
来ればいいだろ、いつもみてえに、遠慮もクソもなく。
花楓は何も言わなかった。
何度か、何かを言おうとして、ずっと俺から逸らさなかった視線を一度だけ逸らして、俯いて。
――そして、俺にタックルするように、抱きついた。
「…………いってえな。これマジで痛いやつだぞテメェ。骨どっかやられるわ」
「にゃははっ! そういうこと言っちゃうから、おれ、愁ちゃん大好きだよ!!」
「どういうことだよ……つか、くっつくな纏わりつくな歩きにくい。大体、大好きってなあ……」
文句を散々垂れながら、自分にしがみつく花楓を引きずるように馬鹿スとオリーヴの後を追う。
俺も花楓も含め、色んな意味でろくでもない連中だと思う。
絵面もひどいし、統一性が無いし、ノリもひどい。
出来ればこいつらと関わりたくないと、俺は未だに思ってる。
だけど、今の俺が花楓から感じているような命の温度が、こいつらが抱えるもんが、知りたくないくらいに重すぎて、自分から完全に突き放すことは何となくできなくて。
死ねない理由なら、ある。
とっくに、あるんだ。
花楓にしがみつかれてない自分の右手に、何となく視線を落とす。
聖歌。
俺は――。
一瞬、自分の右手に深い切り傷が見えた気がした。
とっくに癒えてるから、それは俺にとって一瞬の幻でしかない。
だけど俺には誓いがある。
あいつと、聖歌と誓ったことがある。
俺は聖歌が好きで、その気持ちは決して軽いもんなんかじゃなくて。
――それは花楓の言うところの、俺が命にしがみつく理由に、確かに繋がっていたんだ。
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