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第八話『ラブ&ピース』
その8 一世一代の一騎討ち
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★第八話『ラブ&ピース』
その8 一世一代の一騎討ち
teller:バッカス=リュボフ
◆
――その人は、どこかの宗教の聖母の名前を持っていた。
マリア姉ちゃん。
第29地区のスラム街で生まれて、よたよたとただ生きていたおれを拾い、育ててくれた人。
おれが物心つく前から傍にいてくれた、おれより10歳は年上の姉ちゃん。
姉のようで、母のようでもあった人。
だけどおれは、そんな人に恋をした。
そんなマリア姉ちゃんはもう居ない。
笑ってた。
最期まで笑って、おれの目の前で死んだんだ。
姉ちゃんが自ら死を選んだ理由は、紛れもなく自己犠牲。
これでも短く回想しているけど、かつておれの人生の中でそんなことがあった。
それ以来おれは自己犠牲が嫌いだった。
マリア姉ちゃんの選択や最期を嫌って、否定して、拒絶してた。
でもね、姉ちゃん。
おれ本当は、嫌うんじゃなくてーー。
◆
teller:柚葉=シェリンガム
脱獄囚を探す過程でセントラルエリアの端の、汚染が進んだ川沿いを歩いていたら。
遠目に見える橋の上から轟音が聴こえた。
目を凝らすと、そこには二体のビッグバンダー。
一対一で、一騎打ちで、戦っている。
「うわ、決闘じゃん。初めて見た」
「赤い方の機体ってうちの寮のやつだよな? 見たことある。もう一体は……なんでゴミだらけ? カップ麺の容器とかへばりついてんだけど」
なし崩し的に行動を共にしていた壱叶と咲斗の好奇に満ちた声が聞こえる。
俺はと言うと、橋周辺に倒れている数人の人影を見て息を呑んだ。
「……脱獄囚だ。ニュースや警備要請の資料と体格や顔が一致する」
「うげ、マジ? オレら出番ないの?」
壱叶は大仰な仕草で残念がるが、それも一 一瞬。
二体のビッグバンダーの戦いに視線を戻すなり、壱叶は子どものように目を輝かせた。
俺も戦いに目を向ける。
端末の記録を辿るなら、赤い方はトヨウケ。俺たちが暮らすカーバンクル寮生のビッグバンダー。
ゴミまみれの方はハニヤス。
個人スペース住まいのファイターの愛機だったはず。
トヨウケが助走をつけ、勢いを加速させながらハニヤスに殴りかかる。
確かトヨウケは肉弾戦専門の機体だった。
だが、ハニヤスの身体が宙に浮いたかと思うと、丁度ハニヤスにとっての片腕の装甲が剥がれて内部からドリルが露出する。
露になったドリルをハニヤスが振り下ろすと、ハニヤスは橋を突き抜けて川沿いの地中に潜り姿を消す。
地中戦にも対応した機体らしい。
無駄に隙のある、素人同然の動きで機体を動かしつつビッグバンダー頚部をきょろきょろと動かしてハニヤスの姿を探すトヨウケ。
その隙を突くように、地中に潜んでいたハニヤスが高く跳躍する。
地表に、それもトヨウケの背後に姿を表す。
ドリル化していない方のハニヤスの片腕には鎖鎌をはじめとする暗器の数々がワイヤーで巻きつけられていて、ハニヤスが腕を一振りしただけで暗器は宙を舞い、トヨウケを切り刻むように一斉に襲いかかった。
ーーハニヤスが、強い。
ファイターの技量というより、動かす側の思考に迷いが無い。
壱叶と咲斗はさっきから完全に、ハニヤスの戦いぶりに魅入っている。
そんな時だ。
場違いな歌が聴こえた。
ハニヤスに設置されているスピーカーから、搭乗ファイターの歌声らしきものが聴こえてくる。
楽しそうに、弾むように、踊るように、ハニヤスのファイターは歌っていた。
ふざけているのかと呆れそうになった時。
攻撃を受けっぱなしだった切り傷だらけのトヨウケが、よろけながらも体勢を立て直す。
格闘技の掴み技のようにトヨウケはハニヤスに勢い良くしがみつき、共に橋の上から川に落ちる。
どろついた色の飛沫が上がった。
が、一瞬は川に沈んだ二体はまるで息継ぎをするかのようにすぐに浮上し、川に機体を半分浸からせながら、片方は渾身の殴打を、もう片方は暗器の猛攻を続け。
――また、おかしな歌が聴こえた。
だが、さっきとは声が違う。
これはーー『トヨウケ』のパイロットの声か?
「……なあ、あの二体のファイターさあ。戦ってんのに、どっちもえらく楽しそうだよな」
おかしそうに笑いながら、壱叶が言う。
俺は黙ったまま、二体を凝視してしまう。
ーー楽しむ為の戦いなんて、俺は知らなかったからだ。
◆
teller:バッカス=リュボフ
ビッグバンダーでの戦闘と言っても、今回はピアスの支援が一切ない状態だ。
おれのトヨウケはとことん肉弾戦特化で、空を飛ぶことも地を潜ることも出来ない。
水中戦だって本当は避けた方がいいくらいの一芸特化機体。
遠距離用の装備を持たず、拳だけがおれの、トヨウケの武器。
そこまでの性能の偏りをいつもカバーしてくれるのが、ピアスのシールドだった。
でも今は、判断が遅れたらハニヤスの攻撃を思い切り受ける羽目になる。
おれはビッグバンダーの感覚共有度を高めに設定している。
だから機体が傷つけられれば、感覚を共有している生身のおれの痛覚も刺激されてしまう。
さすがに、痛いなあ。
いや、痛いの慣れてるじゃん
よくピアスとか愁ちゃんに蹴られるじゃん、殴られるじゃん。
でも別に、嫌じゃないじゃん。
だって二人とも、あれこれ暴言言ったり冷たかったりするけど、おれのこと嫌いなわけじゃないでしょ。むしろ好きな方でしょ。
それくらいわかるよ。
おれだってそんな二人が、みんなが大好きだよ。
ーーああ、おれ、そっか。
人間、好きなんだ。
本質的に、根本的に。
好きがいつも受動的だって?
誰かに助けられて、誰かに出会って初めておれはようやく何かを愛せるって?
そうだよ。
まずおれは、誰かを愛してるんだよ。
人の命を、心を、愛してるんだよ。
それがどんどん派生していくんだ。
誰かと出会う度に、誰かの存在を知る度に、おれの中の『好き』は増えていくんだ。
「……ははっ」
笑い声が、上がった。
おれの声だ。
どこか弾んだ声。
太陽の光を浴びて、すくすくと伸び伸びと生まれていくような声。
生まれ変わるような、声。
戦闘に集中していたからだろうか。
凄く疲れているし汗だくだ。
この感覚は大好きだった。
ロマネスクのライブに行った時とか、思いっきり身体を動かした時とか、全力全身で何かへの愛を表現した時とか。
生きてるってわかる感覚が、おれは大好きだ。
ーー生きてる。おれは生きてるんだ。
ばくばく鳴る心臓も、全身を巡るふつふつとした血液の流れも、疲労のせいで乱れる呼吸も、戦闘で負った幻痛でさえも、愛しい。
だって、生きてるの嬉しい。
生きてる感覚が好きなんだ。
未来に希望を持てるし、そんな楽しみを抱けるってことは、今までのおれの人生が無駄じゃないってわかるから。
無駄なわけない。
今までの思い出。
ピアスと出会ってからの楽しい時間。
この寮に来てからの楽しい人生。
全部全部、幸せだったじゃないか。
モッズコートに括り付けたエコバッグに目をやる。
中身にはここまでの道中、無意識のうちに大量に買い込んだハンバーガーが各種びっしり。
そのうち一つ、特大サイズのハンバーガーに口をがあっと大きく開けてかじりついた。
食べ物、だ。
カロリーがおれの全てを満たしていくのをじわじわ感じる。
今の食事は反射じゃない、刷り込みじゃない。
生きなきゃいけないから食べたわけじゃない。
好きだから、生きたいから食べたんだ。
おいしい、な。
好きという理由だけで食べられるごはんは大好きだ。
最初から決まってたのに。
おれは美味しいごはんが好きなんだって。
それがおれの生き方だって。
別に間違ってないんだ。
だっておれ、そういう生き方も、そんなおれも好きなんだ。
何がからっぽなもんか。
こんなに水風船みたいにお腹が膨らんでいるやつがからっぽなんて、自惚れんなよ。
おれはこれからも、こんなおれのまま生きていく。
それをもう迷わないで済むくらい、強くなりたい。
からっぽじゃない。
まだ、まだまだずっと、おれは飢えている。
――ねえ、マリア姉ちゃん。
おれ、本当はさ。
嫌うんじゃなくて、許せるようになりたかったんだ。
姉ちゃんの選択も、姉ちゃんの望みも、最期も、許して受け入れたかった。
それでおれは姉ちゃんを、姉ちゃんとの思い出をぎゅーっと抱き締めたまま、嘘のない笑顔で生きていたかった。
おれは、人を愛したい。
人を許したい。姉ちゃんの選択や意志を、いつの日か許したい。
だから最初に、おれはおれを許すよ。
ずるくて道化ぶった、頼りなくて情けないおれを。
ーーおれはおれを、愛するよ。
飢えてるって言ったじゃないか。
腹減りで欲張りなんだよ、おれ。
自分の中を好きでいっぱいにしないと、満たさないとすぐに飢える。
その繰り返しだ。
ヤマネさんは、この決闘を愛を示す為の戦いだって言った。
それはおれも同じだ。
今ここに示さなきゃ、愛を歌わなきゃ。
とびっきりの笑顔で。
ハンバーガーをがつがつ食べながらも、感覚共有を利用したイメージによる操縦でハニヤスの攻撃を回避し続ける。
回避できる確率が高くなっている。よし、よし、調子が出てきた。
ハニヤスが再びドリルを振りかざし地中戦に持ち込もうとしたから、おれはコックピット内のキーボードに指を滑らせ、ビッグバンダーの機体内を駆け巡る動力エネルギーを全て拳に集中させる。
「びかーんっと光れ! 歌えはしゃげ! 輝け一番星のマイライフ! 糖度全開宝石箱! フルーツタルト・シングスイング!!!!」
「うお……っ!?」
スピーカー越しにヤマネさんから驚いた声が漏れる。
拳を振りかぶるように、トヨウケ渾身のパンチをお見舞いさせてやる。
エネルギーを集中させていて威力が普段より倍増したせいか、ヤマネさんが誇るハニヤスのドリルが粉々に砕け散る。
ふと、決闘前のヤマネさんの言葉が過ぎった。
◆
――『少なくとも、自分の口から『好き』すら言えない男を、オレは同志とは認めたくないんだなあ』
◆
そうだね、その通りだ。
だから今から、大声で!! おれは叫ぶ!!
「おれは、この世界が大好きだ! 星を、宇宙を、おれはぜーんぶ愛してる! おれはおれの人生全てを愛してる! おれの人生に関わるもの全部愛しいよ! 勿論ヤマネさんがラブ向けてるロマネスクもクラリスたんも!! 大っ好きだ!!」
「……ははっ、そーかい。いいね、いい声の張り上げ方だよ。ライブで映えそうだ。……これでようやく、同じ土俵だ」
ドリルを破壊されても、おれのやる気が最高潮に達しても、ヤマネさんの声色はむしろ楽しそうだった。
余裕を感じる、自信を感じる。
だけど、この決闘にしてもロマネスクへの愛に関しても、おれは負けたくない。
これは、おれの確かな変化。
のんびりゆるゆる、世界の命運と言う長いものにぐるぐる巻かれて呑気にへらりと生きていた、おれの変化。
ーーおれは今人生で初めて、誰かに勝ちたいと本気で願っている。
ヤマネさんのハニヤスが、ワイヤーを張り巡らせる。
操り人形みたいに各地から暗器による襲撃をおれに仕掛けようとする。
おれはそれらを全部力技で薙ぎ倒そうと、ワイヤーを丸ごと取っ払おうとタックルを浴びせようとして。
あ。
直前で、エネルギーを拳に集中させたままだったのを思い出した。
力の入らないトヨウケの胴体にぶつかられたところでワイヤーはびくともせず。
むしろワイヤーと暗器を使うまでもないと判断したのか、ハニヤスに足払いされ、おれはトヨウケごとドブ川に叩きつけられた。
汚水が機体の隙間に侵入したらしく、明らかに動きが鈍くなる。
立ち上がろうとしても、レバーをがたがた動かしても、機体はびくともしなくて。
端末から機械音声でカウントダウンが始まった。
ああ、そういう仕組みなんだ。
機体が戦闘不能と判断されたらカウントダウンが始まって、再起動の見込みがなかったらきっと。
『ーー模擬戦終了。勝者、ハニヤス』
響いたのは、おれの敗北を報せる無機質な音声。
負けた。
エネルギーが偏った隙を突かれた。
考えなしの一箇所集中強化は良くなかった。もっと戦闘中に頭を回さないと。そしたら、もっと。
……なんでだろう。
清々しいくらいに負けたのに、身体中痛いのに、コックピットに川の汚水が侵入しつつあるのに。
今日おれを絶望させていた悩みが丸ごと嘘みたいに、心臓がうきうきと弾む。高鳴る。
わくわく、する。
これが、ビッグバンダー同士の決闘。
悪意や敵意や犯罪が絡まない戦い。
今までの戦いの中で一番バトル・ロボイヤルらしい戦い。
こんな、感覚なんだ。
バトル・ロボイヤルの試合ってこんなんなのかな。
なんでだろう。
負けたばかりなのに、おれ。
これからは勝って勝って勝ちまくりたいと願える楽しみを知ってしまった。
――ふと、何も操作していないのに、突如トヨウケのコックピットのハッチが開いた。
目を丸くして操縦席から身を起こす。
というか、戦いの勢いで無意識に自分の身も相当倒れてたんだな。
「あーっ、やっぱりぼけーっと倒れてる! 汚い水に溺れちゃっても知らないよー?」
「馬鹿スはただでさえ汚らしいんだから、これ以上はやめとけこれ以上は。存在が発禁になるから」
カエちゃんが端末をかざしていて、その画面には『ロック解除』を示す文字列。
カエちゃんのサポーターの湊くんは機器操作が得意らしいから、恐らくカエちゃんが湊くんに頼んだんだろう。
カエちゃんの隣に居るのはいつも通り悪態をつく愁ちゃん。
そこで気付く。
愁ちゃんもカエちゃんも、ほぼ汚水で構成されている川に足を沈めてまでここまで来てくれたんだって。
徐々に外からの光が差し込んできて眩しさに目を細めると、近づいてきた人影に手を差し伸べられた。
「……立てるか、バッカス」
まただ。
また、オリーヴ氏が手を差し伸べてくれた。
さっきは握り返せなかった手。
弱気になりすぎて、急に自分の空虚さが怖くなって、オリーヴ氏が凄く強く見えたから自分に引け目を感じて、さっきのおれはこの手を取れなかった。
迷うこと、ないのにね。
おれたち最初から、世代を超えて仲良し全開なメシトモなんだから。
手を伸ばす。
オリーヴ氏の手を握り返し、その手を支えに、おれは起き上がり、立ち上がって。
「……たっだいまー! みんなの陽気なぽっちゃりマスコット・馬鹿ス! 無事帰りました! ハグさせてラブ振り撒かせて!」
「何がマスコットだよ調子乗んなよ図々しい」
「あいたっ、愁ちゃん、いたっ、あだっ、蹴らないで」
「こんなデカいマスコットいないにゃー」
「カエちゃん便乗しないで! つよっ、カエちゃんの蹴り意外と強い!」
「バッカスがマスコット……すまん、新手のギャグか? 俺はそういうのに疎くてな……」
「すまんと言いつつ蹴り便乗しないでオリーヴ氏!? みんながやってるからやりたくなっちゃったっしょ完全に!? あの……お三方、おれさっきまでめちゃくちゃ落ち込んでたから、もすこし優しく……」
「甘えんなおっさん」
「愁ちゃん!? おれまだギリギリおっさんじゃないからね!?」
愁ちゃんもカエちゃんもオリーヴ氏も、優しくべったり慰めるとか甘やかすとかじゃないけど。
おれと、一緒には居てくれる。
これから先、きっとおれたちには沢山の出会いや戦いがあって。
悩みも愛もいっぱい生まれて。
その度、強くなれればいい。
飢えたら満たせばいいように、おれがまた自分がからっぽだと感じたら、みんなとの日々を思い出せばいい。
そうすれば、おれは自然と愛を思い出す。
派生し伝染する愛は、おれの愛をおっきくでっかくしてーーおれが生きるパワーになる。
生きたい。
生きたいよ。
だって、生きるの楽しい。素晴らしい。
愛も世界も命も文化も食べ物も心も夢も、ぜんぶぜんぶ素晴らしい!
今なら全宇宙に触れ込みたいくらい、自信を持って愛を叫びたいくらいだった。
――おれはずっと、このボロボロで、だけど愛でいっぱい膨らんだ身体で生き抜いてやるんだ。
その8 一世一代の一騎討ち
teller:バッカス=リュボフ
◆
――その人は、どこかの宗教の聖母の名前を持っていた。
マリア姉ちゃん。
第29地区のスラム街で生まれて、よたよたとただ生きていたおれを拾い、育ててくれた人。
おれが物心つく前から傍にいてくれた、おれより10歳は年上の姉ちゃん。
姉のようで、母のようでもあった人。
だけどおれは、そんな人に恋をした。
そんなマリア姉ちゃんはもう居ない。
笑ってた。
最期まで笑って、おれの目の前で死んだんだ。
姉ちゃんが自ら死を選んだ理由は、紛れもなく自己犠牲。
これでも短く回想しているけど、かつておれの人生の中でそんなことがあった。
それ以来おれは自己犠牲が嫌いだった。
マリア姉ちゃんの選択や最期を嫌って、否定して、拒絶してた。
でもね、姉ちゃん。
おれ本当は、嫌うんじゃなくてーー。
◆
teller:柚葉=シェリンガム
脱獄囚を探す過程でセントラルエリアの端の、汚染が進んだ川沿いを歩いていたら。
遠目に見える橋の上から轟音が聴こえた。
目を凝らすと、そこには二体のビッグバンダー。
一対一で、一騎打ちで、戦っている。
「うわ、決闘じゃん。初めて見た」
「赤い方の機体ってうちの寮のやつだよな? 見たことある。もう一体は……なんでゴミだらけ? カップ麺の容器とかへばりついてんだけど」
なし崩し的に行動を共にしていた壱叶と咲斗の好奇に満ちた声が聞こえる。
俺はと言うと、橋周辺に倒れている数人の人影を見て息を呑んだ。
「……脱獄囚だ。ニュースや警備要請の資料と体格や顔が一致する」
「うげ、マジ? オレら出番ないの?」
壱叶は大仰な仕草で残念がるが、それも一 一瞬。
二体のビッグバンダーの戦いに視線を戻すなり、壱叶は子どものように目を輝かせた。
俺も戦いに目を向ける。
端末の記録を辿るなら、赤い方はトヨウケ。俺たちが暮らすカーバンクル寮生のビッグバンダー。
ゴミまみれの方はハニヤス。
個人スペース住まいのファイターの愛機だったはず。
トヨウケが助走をつけ、勢いを加速させながらハニヤスに殴りかかる。
確かトヨウケは肉弾戦専門の機体だった。
だが、ハニヤスの身体が宙に浮いたかと思うと、丁度ハニヤスにとっての片腕の装甲が剥がれて内部からドリルが露出する。
露になったドリルをハニヤスが振り下ろすと、ハニヤスは橋を突き抜けて川沿いの地中に潜り姿を消す。
地中戦にも対応した機体らしい。
無駄に隙のある、素人同然の動きで機体を動かしつつビッグバンダー頚部をきょろきょろと動かしてハニヤスの姿を探すトヨウケ。
その隙を突くように、地中に潜んでいたハニヤスが高く跳躍する。
地表に、それもトヨウケの背後に姿を表す。
ドリル化していない方のハニヤスの片腕には鎖鎌をはじめとする暗器の数々がワイヤーで巻きつけられていて、ハニヤスが腕を一振りしただけで暗器は宙を舞い、トヨウケを切り刻むように一斉に襲いかかった。
ーーハニヤスが、強い。
ファイターの技量というより、動かす側の思考に迷いが無い。
壱叶と咲斗はさっきから完全に、ハニヤスの戦いぶりに魅入っている。
そんな時だ。
場違いな歌が聴こえた。
ハニヤスに設置されているスピーカーから、搭乗ファイターの歌声らしきものが聴こえてくる。
楽しそうに、弾むように、踊るように、ハニヤスのファイターは歌っていた。
ふざけているのかと呆れそうになった時。
攻撃を受けっぱなしだった切り傷だらけのトヨウケが、よろけながらも体勢を立て直す。
格闘技の掴み技のようにトヨウケはハニヤスに勢い良くしがみつき、共に橋の上から川に落ちる。
どろついた色の飛沫が上がった。
が、一瞬は川に沈んだ二体はまるで息継ぎをするかのようにすぐに浮上し、川に機体を半分浸からせながら、片方は渾身の殴打を、もう片方は暗器の猛攻を続け。
――また、おかしな歌が聴こえた。
だが、さっきとは声が違う。
これはーー『トヨウケ』のパイロットの声か?
「……なあ、あの二体のファイターさあ。戦ってんのに、どっちもえらく楽しそうだよな」
おかしそうに笑いながら、壱叶が言う。
俺は黙ったまま、二体を凝視してしまう。
ーー楽しむ為の戦いなんて、俺は知らなかったからだ。
◆
teller:バッカス=リュボフ
ビッグバンダーでの戦闘と言っても、今回はピアスの支援が一切ない状態だ。
おれのトヨウケはとことん肉弾戦特化で、空を飛ぶことも地を潜ることも出来ない。
水中戦だって本当は避けた方がいいくらいの一芸特化機体。
遠距離用の装備を持たず、拳だけがおれの、トヨウケの武器。
そこまでの性能の偏りをいつもカバーしてくれるのが、ピアスのシールドだった。
でも今は、判断が遅れたらハニヤスの攻撃を思い切り受ける羽目になる。
おれはビッグバンダーの感覚共有度を高めに設定している。
だから機体が傷つけられれば、感覚を共有している生身のおれの痛覚も刺激されてしまう。
さすがに、痛いなあ。
いや、痛いの慣れてるじゃん
よくピアスとか愁ちゃんに蹴られるじゃん、殴られるじゃん。
でも別に、嫌じゃないじゃん。
だって二人とも、あれこれ暴言言ったり冷たかったりするけど、おれのこと嫌いなわけじゃないでしょ。むしろ好きな方でしょ。
それくらいわかるよ。
おれだってそんな二人が、みんなが大好きだよ。
ーーああ、おれ、そっか。
人間、好きなんだ。
本質的に、根本的に。
好きがいつも受動的だって?
誰かに助けられて、誰かに出会って初めておれはようやく何かを愛せるって?
そうだよ。
まずおれは、誰かを愛してるんだよ。
人の命を、心を、愛してるんだよ。
それがどんどん派生していくんだ。
誰かと出会う度に、誰かの存在を知る度に、おれの中の『好き』は増えていくんだ。
「……ははっ」
笑い声が、上がった。
おれの声だ。
どこか弾んだ声。
太陽の光を浴びて、すくすくと伸び伸びと生まれていくような声。
生まれ変わるような、声。
戦闘に集中していたからだろうか。
凄く疲れているし汗だくだ。
この感覚は大好きだった。
ロマネスクのライブに行った時とか、思いっきり身体を動かした時とか、全力全身で何かへの愛を表現した時とか。
生きてるってわかる感覚が、おれは大好きだ。
ーー生きてる。おれは生きてるんだ。
ばくばく鳴る心臓も、全身を巡るふつふつとした血液の流れも、疲労のせいで乱れる呼吸も、戦闘で負った幻痛でさえも、愛しい。
だって、生きてるの嬉しい。
生きてる感覚が好きなんだ。
未来に希望を持てるし、そんな楽しみを抱けるってことは、今までのおれの人生が無駄じゃないってわかるから。
無駄なわけない。
今までの思い出。
ピアスと出会ってからの楽しい時間。
この寮に来てからの楽しい人生。
全部全部、幸せだったじゃないか。
モッズコートに括り付けたエコバッグに目をやる。
中身にはここまでの道中、無意識のうちに大量に買い込んだハンバーガーが各種びっしり。
そのうち一つ、特大サイズのハンバーガーに口をがあっと大きく開けてかじりついた。
食べ物、だ。
カロリーがおれの全てを満たしていくのをじわじわ感じる。
今の食事は反射じゃない、刷り込みじゃない。
生きなきゃいけないから食べたわけじゃない。
好きだから、生きたいから食べたんだ。
おいしい、な。
好きという理由だけで食べられるごはんは大好きだ。
最初から決まってたのに。
おれは美味しいごはんが好きなんだって。
それがおれの生き方だって。
別に間違ってないんだ。
だっておれ、そういう生き方も、そんなおれも好きなんだ。
何がからっぽなもんか。
こんなに水風船みたいにお腹が膨らんでいるやつがからっぽなんて、自惚れんなよ。
おれはこれからも、こんなおれのまま生きていく。
それをもう迷わないで済むくらい、強くなりたい。
からっぽじゃない。
まだ、まだまだずっと、おれは飢えている。
――ねえ、マリア姉ちゃん。
おれ、本当はさ。
嫌うんじゃなくて、許せるようになりたかったんだ。
姉ちゃんの選択も、姉ちゃんの望みも、最期も、許して受け入れたかった。
それでおれは姉ちゃんを、姉ちゃんとの思い出をぎゅーっと抱き締めたまま、嘘のない笑顔で生きていたかった。
おれは、人を愛したい。
人を許したい。姉ちゃんの選択や意志を、いつの日か許したい。
だから最初に、おれはおれを許すよ。
ずるくて道化ぶった、頼りなくて情けないおれを。
ーーおれはおれを、愛するよ。
飢えてるって言ったじゃないか。
腹減りで欲張りなんだよ、おれ。
自分の中を好きでいっぱいにしないと、満たさないとすぐに飢える。
その繰り返しだ。
ヤマネさんは、この決闘を愛を示す為の戦いだって言った。
それはおれも同じだ。
今ここに示さなきゃ、愛を歌わなきゃ。
とびっきりの笑顔で。
ハンバーガーをがつがつ食べながらも、感覚共有を利用したイメージによる操縦でハニヤスの攻撃を回避し続ける。
回避できる確率が高くなっている。よし、よし、調子が出てきた。
ハニヤスが再びドリルを振りかざし地中戦に持ち込もうとしたから、おれはコックピット内のキーボードに指を滑らせ、ビッグバンダーの機体内を駆け巡る動力エネルギーを全て拳に集中させる。
「びかーんっと光れ! 歌えはしゃげ! 輝け一番星のマイライフ! 糖度全開宝石箱! フルーツタルト・シングスイング!!!!」
「うお……っ!?」
スピーカー越しにヤマネさんから驚いた声が漏れる。
拳を振りかぶるように、トヨウケ渾身のパンチをお見舞いさせてやる。
エネルギーを集中させていて威力が普段より倍増したせいか、ヤマネさんが誇るハニヤスのドリルが粉々に砕け散る。
ふと、決闘前のヤマネさんの言葉が過ぎった。
◆
――『少なくとも、自分の口から『好き』すら言えない男を、オレは同志とは認めたくないんだなあ』
◆
そうだね、その通りだ。
だから今から、大声で!! おれは叫ぶ!!
「おれは、この世界が大好きだ! 星を、宇宙を、おれはぜーんぶ愛してる! おれはおれの人生全てを愛してる! おれの人生に関わるもの全部愛しいよ! 勿論ヤマネさんがラブ向けてるロマネスクもクラリスたんも!! 大っ好きだ!!」
「……ははっ、そーかい。いいね、いい声の張り上げ方だよ。ライブで映えそうだ。……これでようやく、同じ土俵だ」
ドリルを破壊されても、おれのやる気が最高潮に達しても、ヤマネさんの声色はむしろ楽しそうだった。
余裕を感じる、自信を感じる。
だけど、この決闘にしてもロマネスクへの愛に関しても、おれは負けたくない。
これは、おれの確かな変化。
のんびりゆるゆる、世界の命運と言う長いものにぐるぐる巻かれて呑気にへらりと生きていた、おれの変化。
ーーおれは今人生で初めて、誰かに勝ちたいと本気で願っている。
ヤマネさんのハニヤスが、ワイヤーを張り巡らせる。
操り人形みたいに各地から暗器による襲撃をおれに仕掛けようとする。
おれはそれらを全部力技で薙ぎ倒そうと、ワイヤーを丸ごと取っ払おうとタックルを浴びせようとして。
あ。
直前で、エネルギーを拳に集中させたままだったのを思い出した。
力の入らないトヨウケの胴体にぶつかられたところでワイヤーはびくともせず。
むしろワイヤーと暗器を使うまでもないと判断したのか、ハニヤスに足払いされ、おれはトヨウケごとドブ川に叩きつけられた。
汚水が機体の隙間に侵入したらしく、明らかに動きが鈍くなる。
立ち上がろうとしても、レバーをがたがた動かしても、機体はびくともしなくて。
端末から機械音声でカウントダウンが始まった。
ああ、そういう仕組みなんだ。
機体が戦闘不能と判断されたらカウントダウンが始まって、再起動の見込みがなかったらきっと。
『ーー模擬戦終了。勝者、ハニヤス』
響いたのは、おれの敗北を報せる無機質な音声。
負けた。
エネルギーが偏った隙を突かれた。
考えなしの一箇所集中強化は良くなかった。もっと戦闘中に頭を回さないと。そしたら、もっと。
……なんでだろう。
清々しいくらいに負けたのに、身体中痛いのに、コックピットに川の汚水が侵入しつつあるのに。
今日おれを絶望させていた悩みが丸ごと嘘みたいに、心臓がうきうきと弾む。高鳴る。
わくわく、する。
これが、ビッグバンダー同士の決闘。
悪意や敵意や犯罪が絡まない戦い。
今までの戦いの中で一番バトル・ロボイヤルらしい戦い。
こんな、感覚なんだ。
バトル・ロボイヤルの試合ってこんなんなのかな。
なんでだろう。
負けたばかりなのに、おれ。
これからは勝って勝って勝ちまくりたいと願える楽しみを知ってしまった。
――ふと、何も操作していないのに、突如トヨウケのコックピットのハッチが開いた。
目を丸くして操縦席から身を起こす。
というか、戦いの勢いで無意識に自分の身も相当倒れてたんだな。
「あーっ、やっぱりぼけーっと倒れてる! 汚い水に溺れちゃっても知らないよー?」
「馬鹿スはただでさえ汚らしいんだから、これ以上はやめとけこれ以上は。存在が発禁になるから」
カエちゃんが端末をかざしていて、その画面には『ロック解除』を示す文字列。
カエちゃんのサポーターの湊くんは機器操作が得意らしいから、恐らくカエちゃんが湊くんに頼んだんだろう。
カエちゃんの隣に居るのはいつも通り悪態をつく愁ちゃん。
そこで気付く。
愁ちゃんもカエちゃんも、ほぼ汚水で構成されている川に足を沈めてまでここまで来てくれたんだって。
徐々に外からの光が差し込んできて眩しさに目を細めると、近づいてきた人影に手を差し伸べられた。
「……立てるか、バッカス」
まただ。
また、オリーヴ氏が手を差し伸べてくれた。
さっきは握り返せなかった手。
弱気になりすぎて、急に自分の空虚さが怖くなって、オリーヴ氏が凄く強く見えたから自分に引け目を感じて、さっきのおれはこの手を取れなかった。
迷うこと、ないのにね。
おれたち最初から、世代を超えて仲良し全開なメシトモなんだから。
手を伸ばす。
オリーヴ氏の手を握り返し、その手を支えに、おれは起き上がり、立ち上がって。
「……たっだいまー! みんなの陽気なぽっちゃりマスコット・馬鹿ス! 無事帰りました! ハグさせてラブ振り撒かせて!」
「何がマスコットだよ調子乗んなよ図々しい」
「あいたっ、愁ちゃん、いたっ、あだっ、蹴らないで」
「こんなデカいマスコットいないにゃー」
「カエちゃん便乗しないで! つよっ、カエちゃんの蹴り意外と強い!」
「バッカスがマスコット……すまん、新手のギャグか? 俺はそういうのに疎くてな……」
「すまんと言いつつ蹴り便乗しないでオリーヴ氏!? みんながやってるからやりたくなっちゃったっしょ完全に!? あの……お三方、おれさっきまでめちゃくちゃ落ち込んでたから、もすこし優しく……」
「甘えんなおっさん」
「愁ちゃん!? おれまだギリギリおっさんじゃないからね!?」
愁ちゃんもカエちゃんもオリーヴ氏も、優しくべったり慰めるとか甘やかすとかじゃないけど。
おれと、一緒には居てくれる。
これから先、きっとおれたちには沢山の出会いや戦いがあって。
悩みも愛もいっぱい生まれて。
その度、強くなれればいい。
飢えたら満たせばいいように、おれがまた自分がからっぽだと感じたら、みんなとの日々を思い出せばいい。
そうすれば、おれは自然と愛を思い出す。
派生し伝染する愛は、おれの愛をおっきくでっかくしてーーおれが生きるパワーになる。
生きたい。
生きたいよ。
だって、生きるの楽しい。素晴らしい。
愛も世界も命も文化も食べ物も心も夢も、ぜんぶぜんぶ素晴らしい!
今なら全宇宙に触れ込みたいくらい、自信を持って愛を叫びたいくらいだった。
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