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第八話『ラブ&ピース』
その11 セブンティーン×セブンティーン
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★第八話『ラブ&ピース』
その11 セブンティーン×セブンティーン
teller:咲斗 =ガルシア
「あっははは! サポーターの女の子に片想い拗らせすぎて戦闘中の通信まで普段オフにしてもらってるって……バカじゃん!!」
「う、うるせえなあ!! 年季入った片想いナメんなよ!! 4歳の頃からおれはジゼルのこと好きなんだぞ!」
「……うっわ。それは流石に引くわー」
「いや引くなよ!?」
先日の脱獄囚との戦闘で、おれが不意打ちで届いたジゼルの声に動揺してドブ川に機体『アポロン』ごと突っ込んだのを壱叶と柚葉に引き上げてもらって以来、この二人には正直にジゼルへの片想いを打ち明けた。
と言うより、察した壱叶の質問攻めが鬱陶しかったので泣く泣く白状した次第だ。
おれの気持ちを知った途端、壱叶がさっきから凄い勢いでからかってくるから参っている。
壱叶が強引に連れ出してきたらしい柚葉は自販機で買ったらしいカフェラテを無言で飲み下しており、柚葉からの助けは期待できない。詰んだ。
おれが頭を抱えそうになっていると、壱叶がしれっと言った。
「ま、オレは自分のサポーターとはっきり付き合ってるけどね」
「は?」
「いやー、ごめんなー、勝ち組でー? 咲斗がどうしてもって言うんなら彼女持ちとして恋のアドバイスしてやってもいいけど?」
彼女持ち。サポーターと付き合ってる。
なんだそれ、おれからすれば羨ましすぎる。
おれが固まっていると、壱叶がまた笑い出した。
「ははっ、すっげーアホ面」
「なっ、ほっとけよ!? 恋のアドバイス教えろください!!」
「うわー謎の立ち位置。下手に出るという概念ご存知ない?」
壱叶はにやにやと意地悪い笑みを浮かべて、おれを品定めするように眺めたあと。
ふいに真顔で、言った。
「とりあえず、ちゃんと話せるようになりな? っつーかもう告っちゃえば? 一回勇気出せば後々楽よ? 年季入った片想い誇るくらいなら両想いになる為に努力した方が良くね?」
ぐうの音も、出なかった。
アドバイスというか、冷静な意見にぶん殴られた気分だ。心が痛い。
それが出来ないのが、おれなのだけれど。
悪かったなヘタレで。
おれが崩れ落ちそうになっている中、使い物にならなくなったおれを放置して、壱叶が柚葉に構い始めた。
「なあなあ、柚葉は実際どうなのよ? 鈴芽ちゃんとの関係って」
「うるさい。おれとすずの領域に入るな」
「うわ、領域とか言い出したこの人……」
柚葉とそのサポーターの関係も、また独特だと思う。
幼馴染らしいけど、どうもそれ以上の絆の結びつきを感じるというか。
おれがまだ復活できていない間に、壱叶は柚葉にぽんぽんと話しかけていく。
「まあそう邪険にすんなって。柚葉、根っこはオレと似てる気がするよ?」
「似てたまるか。俺はお前のようなうるさすぎる奴より……おい、咲斗」
「……へ、おれ?」
急に柚葉に指名され、我に返らざるを得なくなる。
瞬きしている間に、空き缶を近くのゴミ箱に放った柚葉がおれの襟首を掴み引きずり始めた。
「シミュレータ使用の模擬戦、付き合え。俺も銃撃特化機体相手の立ち回りを覚えたい」
「あ、機体目当てね……」
それはそれでどうなんだ、と思ったが。
柚葉の壱叶への絶対零度の冷たさを見ていると、嫌われないだけマシかもしれない。
「お、二人とも模擬戦? オレも混ぜてくんない? 戦うのとかオレ超好き」
「一人でやってろ」
「いやそれは流石に難しくね?」
並んで歩き出す壱叶と話しつつ、柚葉がおれをがしりと離さずシミュレータールームに迷いのない足取りで向かっていく。
その時ようやく、おれは気付いた。
……おれ、もしかしてこの先、この二人に色々巻き込まれる運命もう決まっちゃってるのでは?
◆
teller:美桜=レイトン
先日の、脱獄囚騒ぎ以来。
「美桜ちゃん、おはよーっ! 一緒にご飯食べに行こーっ!」
「おはようございます、美桜さん。今日も晴れやかで麗しい朝ですね」
「わ、晴れやかで麗しい!? あたし、すらすらそんな言葉出てこないよ!? ジゼルちゃんすごい!」
「すごい……でしょうか? ふふ、鈴芽さんにまっすぐに褒められると、嬉しいですね」
懐かれてしまった。美少女二人に。
鈴芽さんも、ジゼルさんも、どういうわけか何かと私に構ってくる。
この二人のようなタイプとどう接すればいいやら、私は未だにわからなくて。
「……おはよう。鈴芽さん、ジゼルさん」
――心を開く勇気は、まだない。
どうしても、こんなに眩しい二人への態度はぎこちなくなる。
なのに。
「美桜ちゃん、もっと言葉遣い、荒い感じでもいーよ?」
「私のイメージとんでもないことになってない……?」
こっちは心の準備が色々できていないのに、鈴芽さんとジゼルさん側は私の心を強引にこじ開ける準備を推し進めている気がして。
……詰んだ、なあと。
私はただ、項垂れて溜息を溢すことしかできなかった。
その11 セブンティーン×セブンティーン
teller:咲斗 =ガルシア
「あっははは! サポーターの女の子に片想い拗らせすぎて戦闘中の通信まで普段オフにしてもらってるって……バカじゃん!!」
「う、うるせえなあ!! 年季入った片想いナメんなよ!! 4歳の頃からおれはジゼルのこと好きなんだぞ!」
「……うっわ。それは流石に引くわー」
「いや引くなよ!?」
先日の脱獄囚との戦闘で、おれが不意打ちで届いたジゼルの声に動揺してドブ川に機体『アポロン』ごと突っ込んだのを壱叶と柚葉に引き上げてもらって以来、この二人には正直にジゼルへの片想いを打ち明けた。
と言うより、察した壱叶の質問攻めが鬱陶しかったので泣く泣く白状した次第だ。
おれの気持ちを知った途端、壱叶がさっきから凄い勢いでからかってくるから参っている。
壱叶が強引に連れ出してきたらしい柚葉は自販機で買ったらしいカフェラテを無言で飲み下しており、柚葉からの助けは期待できない。詰んだ。
おれが頭を抱えそうになっていると、壱叶がしれっと言った。
「ま、オレは自分のサポーターとはっきり付き合ってるけどね」
「は?」
「いやー、ごめんなー、勝ち組でー? 咲斗がどうしてもって言うんなら彼女持ちとして恋のアドバイスしてやってもいいけど?」
彼女持ち。サポーターと付き合ってる。
なんだそれ、おれからすれば羨ましすぎる。
おれが固まっていると、壱叶がまた笑い出した。
「ははっ、すっげーアホ面」
「なっ、ほっとけよ!? 恋のアドバイス教えろください!!」
「うわー謎の立ち位置。下手に出るという概念ご存知ない?」
壱叶はにやにやと意地悪い笑みを浮かべて、おれを品定めするように眺めたあと。
ふいに真顔で、言った。
「とりあえず、ちゃんと話せるようになりな? っつーかもう告っちゃえば? 一回勇気出せば後々楽よ? 年季入った片想い誇るくらいなら両想いになる為に努力した方が良くね?」
ぐうの音も、出なかった。
アドバイスというか、冷静な意見にぶん殴られた気分だ。心が痛い。
それが出来ないのが、おれなのだけれど。
悪かったなヘタレで。
おれが崩れ落ちそうになっている中、使い物にならなくなったおれを放置して、壱叶が柚葉に構い始めた。
「なあなあ、柚葉は実際どうなのよ? 鈴芽ちゃんとの関係って」
「うるさい。おれとすずの領域に入るな」
「うわ、領域とか言い出したこの人……」
柚葉とそのサポーターの関係も、また独特だと思う。
幼馴染らしいけど、どうもそれ以上の絆の結びつきを感じるというか。
おれがまだ復活できていない間に、壱叶は柚葉にぽんぽんと話しかけていく。
「まあそう邪険にすんなって。柚葉、根っこはオレと似てる気がするよ?」
「似てたまるか。俺はお前のようなうるさすぎる奴より……おい、咲斗」
「……へ、おれ?」
急に柚葉に指名され、我に返らざるを得なくなる。
瞬きしている間に、空き缶を近くのゴミ箱に放った柚葉がおれの襟首を掴み引きずり始めた。
「シミュレータ使用の模擬戦、付き合え。俺も銃撃特化機体相手の立ち回りを覚えたい」
「あ、機体目当てね……」
それはそれでどうなんだ、と思ったが。
柚葉の壱叶への絶対零度の冷たさを見ていると、嫌われないだけマシかもしれない。
「お、二人とも模擬戦? オレも混ぜてくんない? 戦うのとかオレ超好き」
「一人でやってろ」
「いやそれは流石に難しくね?」
並んで歩き出す壱叶と話しつつ、柚葉がおれをがしりと離さずシミュレータールームに迷いのない足取りで向かっていく。
その時ようやく、おれは気付いた。
……おれ、もしかしてこの先、この二人に色々巻き込まれる運命もう決まっちゃってるのでは?
◆
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「わ、晴れやかで麗しい!? あたし、すらすらそんな言葉出てこないよ!? ジゼルちゃんすごい!」
「すごい……でしょうか? ふふ、鈴芽さんにまっすぐに褒められると、嬉しいですね」
懐かれてしまった。美少女二人に。
鈴芽さんも、ジゼルさんも、どういうわけか何かと私に構ってくる。
この二人のようなタイプとどう接すればいいやら、私は未だにわからなくて。
「……おはよう。鈴芽さん、ジゼルさん」
――心を開く勇気は、まだない。
どうしても、こんなに眩しい二人への態度はぎこちなくなる。
なのに。
「美桜ちゃん、もっと言葉遣い、荒い感じでもいーよ?」
「私のイメージとんでもないことになってない……?」
こっちは心の準備が色々できていないのに、鈴芽さんとジゼルさん側は私の心を強引にこじ開ける準備を推し進めている気がして。
……詰んだ、なあと。
私はただ、項垂れて溜息を溢すことしかできなかった。
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