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第1章:希望という名の再会
第5話:双星の誓い
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俺の心は、もう決まっていた。
前世で俺はずっと、誰かの指示を待つだけの歯車だった。
自分の意志で何かを成し遂げたことなんて、一度もなかった。
だが、今は違う。
最高の親友が最高の舞台を用意して、俺を「必要だ」と言ってくれている。
断る理由なんて、どこにもなかった。
「……ああ。
やろう、リュウガ」
俺はリュウガが差し出した手を、力強く握り返した。
「もう一度、二人で最強のチームを組もう。
俺がお前の力になる」
その瞬間、リュウガの顔が心の底から嬉しそうな笑顔に変わった。
「本当か、ケント! やってくれるか!」
「当たり前だろ。親友の頼みだからな」
俺たちが固く握手を交わすと、部屋の空気が確かな熱を帯びたように感じられた。
失われたと思っていた絆が、今この異世界で再び結ばれたのだ。
「ありがとう、ケント。
本当に……。これで百人力だ」
リュウガは感慨深げに頷くと、俺の手を離し部屋の隅にある豪奢な棚へと向かった。
彼が取り出したのは、水晶玉のような透明な球体だった。
「さて、と。
それじゃあ早速、お前の力を確かめてみようじゃないか」
「俺の力……
《天賦》か」
リュウガが言っていた、この世界に転生した者が授かるという特別な力。
一体、俺にはどんな力が眠っているというのだろうか。
「この『真実の宝珠』に意識を集中させてみろ。
そうすれば、お前の魂に刻まれた天賦がその姿を現すはずだ」
リュウガから、ひんやりとした宝珠を手渡された。
見た目はただのガラス玉のようだが、掌に乗せると心臓の鼓動に呼応するかのように、微かに脈打っているのが分かった。
(意識を、集中させる……)
前世で会議中に上司のつまらない長話を聞き流すためにやっていた精神統一が、こんなところで役に立つとは思わなかった。
俺はソファに座り直し、宝珠を両手で包み込むように持つと、ゆっくりと目を閉じた。
深く、深く呼吸を繰り返す。
思考を無に。 意識をこの掌の中の一点だけに。
すると、どうだろう。
自分の体の中から温かい何かが、掌へと流れ込んでいく感覚があった。
それは宝珠の中で渦を巻き、やがて眩い光を放ち始めた。
「―――ッ!」
思わず目を開ける。
宝珠はまるで小さな太陽のように輝き、その光が部屋全体を白く染め上げていた。
そして俺の目の前の空間に光の粒子が集まり、半透明のウィンドウを形作った。
(うおっ、本当に出た!
小説で読んだステータス画面ってやつか!)
あまりの非現実的な光景に、思わず声が出そうになるのを必死で堪える。
ウィンドウには淡い光を放つ文字が、浮かび上がっていた。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
名前 : ケント(相馬 健人)
種族 : ヒューマン
天賦 :《物語の観測者》 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「……《物語の観測者》……?」
俺はそこに表示された文字を、呆然と呟くように読み上げた。
なんだ、これは。
一体、どんな能力なんだ……?
「……ほう。
『物語の観測者』、か。なるほどな……」
俺の隣でリュウガが、感心したように頷いた。
彼の表情は驚きと、それ以上に深い納得に満ちているように見えた。
「すごいじゃないか、ケント。
やっぱりお前は最高の頭脳だ」
「どういうことだ?
この力が何だって言うんだ?」
俺の問いに、リュウガは興奮を隠せないといった様子で語り始めた。
「それはおそらく、究極の情報収集能力だ。
この世界のあらゆる事象、あらゆる人間の魂には固有の『物語』が宿っている。
お前の天賦は、その『物語』――つまり相手の過去、能力、弱点、隠している本心、その全てを読み解き、観測することができる力なんだ!」
観測……。
情報を、読み解く力。
「考えてもみろよ、ケント。
外交交渉では相手の嘘や狙いを完全に見抜くことができる。
戦闘では敵の能力や弱点を瞬時に分析し、最適な戦略を立てられる。
俺の《絶対王の勅令》が人々を導き、従わせる『王の力』だとするなら、お前の《物語の観測者》は、その王が下す判断の全てを完全な正解へと導く『賢者の力』だ!」
リュウガの言葉に、俺の心臓が大きく高鳴った。
前世で俺がやっていたことは、何だった?
営業として顧客の顔色を窺い、その言葉の裏にある本心を探る。
企画として市場のデータを分析し、ヒットする商品の法則性を見つけ出す。
それはある意味、物語を「観測」する行為だったのかもしれない。
俺が何の価値もないと思っていた、サラリーマンとして培った経験。
それがこの世界では唯一無二の、最強の力になるというのか。
「すごい……。
そんな力が、俺に……」
「すごいなんてもんじゃない。
これ以上ないくらいお前にぴったりの力だ。
まさに俺が求めていた最後のピースだよ」
リュウガは、俺の肩を力強く掴んだ。
「俺が剣となり、お前が頭脳となる。
俺が人々を率い、お前が進むべき道を示す。
この二つの力が合わされば、俺たちの理想を阻むものなんて、もう何もない」
そうだ。
彼の言う通りだ。
これほどの力が俺にあるのなら、もう何も恐れることはない。
前世のように誰かに使われるだけの歯車じゃない。
俺自身の意志で、この世界を俺たちの手で作り変えることができるんだ。
「リュウガ……」
俺は目の前の親友の顔を、改めて見つめた。
絶望の淵にいた俺を救い出し、新たな生きる意味と最高の力を与えてくれた、たった一人の親友。
彼となら、やれる。
いや、彼とだからこそ、やれるんだ。
「ああ、やろう。
俺たちの手で、この世界に争いも悲しみもない、完璧な理想の国を創り上げるんだ」
俺はリュウガの手を、再び固く握りしめた。
それは新たな人生の始まりを告げる、魂の誓いだった。
二つの星が再び巡り合い、一つの輝きとなった瞬間。
俺はこの時の高揚と、リュウガへの絶対的な信頼を、生涯忘れることはないだろうと思っていた。
窓の外に広がる壮麗な王都の夜景を見ながら、リュウガが満足そうに呟いた。
「決まりだな。
……よし、ケント。
明日、お前に見せてやるよ」
「何をだ?」
「俺たちがこれから創る、理想郷の姿をな。
光に満ちた、完璧な世界を」
その言葉に、俺たちの輝かしい未来を確信し、胸を膨らませるのだった。
前世で俺はずっと、誰かの指示を待つだけの歯車だった。
自分の意志で何かを成し遂げたことなんて、一度もなかった。
だが、今は違う。
最高の親友が最高の舞台を用意して、俺を「必要だ」と言ってくれている。
断る理由なんて、どこにもなかった。
「……ああ。
やろう、リュウガ」
俺はリュウガが差し出した手を、力強く握り返した。
「もう一度、二人で最強のチームを組もう。
俺がお前の力になる」
その瞬間、リュウガの顔が心の底から嬉しそうな笑顔に変わった。
「本当か、ケント! やってくれるか!」
「当たり前だろ。親友の頼みだからな」
俺たちが固く握手を交わすと、部屋の空気が確かな熱を帯びたように感じられた。
失われたと思っていた絆が、今この異世界で再び結ばれたのだ。
「ありがとう、ケント。
本当に……。これで百人力だ」
リュウガは感慨深げに頷くと、俺の手を離し部屋の隅にある豪奢な棚へと向かった。
彼が取り出したのは、水晶玉のような透明な球体だった。
「さて、と。
それじゃあ早速、お前の力を確かめてみようじゃないか」
「俺の力……
《天賦》か」
リュウガが言っていた、この世界に転生した者が授かるという特別な力。
一体、俺にはどんな力が眠っているというのだろうか。
「この『真実の宝珠』に意識を集中させてみろ。
そうすれば、お前の魂に刻まれた天賦がその姿を現すはずだ」
リュウガから、ひんやりとした宝珠を手渡された。
見た目はただのガラス玉のようだが、掌に乗せると心臓の鼓動に呼応するかのように、微かに脈打っているのが分かった。
(意識を、集中させる……)
前世で会議中に上司のつまらない長話を聞き流すためにやっていた精神統一が、こんなところで役に立つとは思わなかった。
俺はソファに座り直し、宝珠を両手で包み込むように持つと、ゆっくりと目を閉じた。
深く、深く呼吸を繰り返す。
思考を無に。 意識をこの掌の中の一点だけに。
すると、どうだろう。
自分の体の中から温かい何かが、掌へと流れ込んでいく感覚があった。
それは宝珠の中で渦を巻き、やがて眩い光を放ち始めた。
「―――ッ!」
思わず目を開ける。
宝珠はまるで小さな太陽のように輝き、その光が部屋全体を白く染め上げていた。
そして俺の目の前の空間に光の粒子が集まり、半透明のウィンドウを形作った。
(うおっ、本当に出た!
小説で読んだステータス画面ってやつか!)
あまりの非現実的な光景に、思わず声が出そうになるのを必死で堪える。
ウィンドウには淡い光を放つ文字が、浮かび上がっていた。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
名前 : ケント(相馬 健人)
種族 : ヒューマン
天賦 :《物語の観測者》 ‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
「……《物語の観測者》……?」
俺はそこに表示された文字を、呆然と呟くように読み上げた。
なんだ、これは。
一体、どんな能力なんだ……?
「……ほう。
『物語の観測者』、か。なるほどな……」
俺の隣でリュウガが、感心したように頷いた。
彼の表情は驚きと、それ以上に深い納得に満ちているように見えた。
「すごいじゃないか、ケント。
やっぱりお前は最高の頭脳だ」
「どういうことだ?
この力が何だって言うんだ?」
俺の問いに、リュウガは興奮を隠せないといった様子で語り始めた。
「それはおそらく、究極の情報収集能力だ。
この世界のあらゆる事象、あらゆる人間の魂には固有の『物語』が宿っている。
お前の天賦は、その『物語』――つまり相手の過去、能力、弱点、隠している本心、その全てを読み解き、観測することができる力なんだ!」
観測……。
情報を、読み解く力。
「考えてもみろよ、ケント。
外交交渉では相手の嘘や狙いを完全に見抜くことができる。
戦闘では敵の能力や弱点を瞬時に分析し、最適な戦略を立てられる。
俺の《絶対王の勅令》が人々を導き、従わせる『王の力』だとするなら、お前の《物語の観測者》は、その王が下す判断の全てを完全な正解へと導く『賢者の力』だ!」
リュウガの言葉に、俺の心臓が大きく高鳴った。
前世で俺がやっていたことは、何だった?
営業として顧客の顔色を窺い、その言葉の裏にある本心を探る。
企画として市場のデータを分析し、ヒットする商品の法則性を見つけ出す。
それはある意味、物語を「観測」する行為だったのかもしれない。
俺が何の価値もないと思っていた、サラリーマンとして培った経験。
それがこの世界では唯一無二の、最強の力になるというのか。
「すごい……。
そんな力が、俺に……」
「すごいなんてもんじゃない。
これ以上ないくらいお前にぴったりの力だ。
まさに俺が求めていた最後のピースだよ」
リュウガは、俺の肩を力強く掴んだ。
「俺が剣となり、お前が頭脳となる。
俺が人々を率い、お前が進むべき道を示す。
この二つの力が合わされば、俺たちの理想を阻むものなんて、もう何もない」
そうだ。
彼の言う通りだ。
これほどの力が俺にあるのなら、もう何も恐れることはない。
前世のように誰かに使われるだけの歯車じゃない。
俺自身の意志で、この世界を俺たちの手で作り変えることができるんだ。
「リュウガ……」
俺は目の前の親友の顔を、改めて見つめた。
絶望の淵にいた俺を救い出し、新たな生きる意味と最高の力を与えてくれた、たった一人の親友。
彼となら、やれる。
いや、彼とだからこそ、やれるんだ。
「ああ、やろう。
俺たちの手で、この世界に争いも悲しみもない、完璧な理想の国を創り上げるんだ」
俺はリュウガの手を、再び固く握りしめた。
それは新たな人生の始まりを告げる、魂の誓いだった。
二つの星が再び巡り合い、一つの輝きとなった瞬間。
俺はこの時の高揚と、リュウガへの絶対的な信頼を、生涯忘れることはないだろうと思っていた。
窓の外に広がる壮麗な王都の夜景を見ながら、リュウガが満足そうに呟いた。
「決まりだな。
……よし、ケント。
明日、お前に見せてやるよ」
「何をだ?」
「俺たちがこれから創る、理想郷の姿をな。
光に満ちた、完璧な世界を」
その言葉に、俺たちの輝かしい未来を確信し、胸を膨らませるのだった。
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