異世界転生と『天賦(ギフト)』で最強になったが親友に裏切られ追放されたので、銀狼少女と『双星』として成り上がる!

月影 朔

文字の大きさ
58 / 150
第11章:敗者の塔と魂のディーラー

​第58話:鏡の迷路の突破口

しおりを挟む
「さあ、始めましょうか。
あなた方の絆が本物か、それともただのもろい幻想か。
この私とのチーム戦で、証明していただきますぞ」

 マスター・ディーラーのその言葉は、もはや拒否のできない最終宣告だった。

 俺たちの魂を賭けた、悪魔のゲーム。
その幕が、観客たちの熱狂的な歓声に包まれて、今まさに上がろうとしていた。

◇ ◇ ◇

「……ケント、本当にやるのか?」

 俺の隣に立ったルナが、不安そうな声で尋ねる。
その琥珀色こはくいろの瞳は、俺を心から心配していた。

「こいつの相手は、アタシ一人で十分だ。
あんたたちを、危険な目に遭わせるわけには……」

「いいや、ルナ」

 俺は、彼女の言葉を静かにさえぎった。

「これは、お前一人では勝てない戦いだ。俺だけでも、エルゴ殿だけでも勝てない。
……だが、三人なら勝てる」

 俺は、仲間たちの顔を順番に見つめた。

 最強の「剣」である、ルナ。
頼れる「道標」である、エルゴ。
そして、二人を率いる「頭脳」である、俺。
俺たち《アケボシ》の真価が、今、試されるのだ。

「……分かった」

 ルナは、俺の決意を悟り固く頷いた。

「あんたがそう言うなら、アタシは信じる。
アタシの牙と魂は、いつだってあんたと共にある」

「うむ。
儂のこの老いぼれの知恵と力が、お主たちの未来を照らす一助となるのなら、本望じゃわい」

 エルゴもまた、静かに覚悟を決めてくれた。

「結構。
チームの結束は固いようですな」

 ディーラーは、満足そうに頷いた。

「では、ゲームをご説明いたしましょう。これから行うのは『ソウル・バウト』。
魂の三本勝負でございます」

 彼がそう言うと、ステージの床から三つの小さなテーブルがせり上がってきた。

 一つはカードゲーム用、一つはダイスゲーム用、そして最後の一つは……
ただのコインが一つ置かれているだけだった。

「まず、あなた方三人の中から一人、私と一対一のゲームで勝負していただきます。
それに勝利した者は、次の者へと交代。
三連勝すれば、あなた方の勝ち。
一度でも敗北すれば、その時点であなた方三人の魂は、私のものとなります」

「……なるほどな」

 俺は、そのルールの裏にある悪意を瞬時に見抜いた。
これは、俺たちの絆を試すゲームだ。
誰か一人が負ければ、連帯責任で全員が魂を奪われる。

 そのプレッシャーは、挑戦者の精神を確実にむしばんでいくだろう。

「最初のゲームは、カード。二番手は、ダイス。
そして最後は、ただのコイン投げ。
……さあ、誰から参りますかな?」

 ディーラーは、楽しそうに俺たちを値踏みする。

 俺は、迷わず一歩前に出た。

「一番手は、俺がやる」

 この狂ったゲームの盤上で、最初に奴と対峙するのは軍師である俺の役目だ。
俺が、奴の魂の物語を完全に丸裸にする。

◇ ◇ ◇

 ゲームが、始まった。
ディーラーは、もはやその力を隠そうともしない。

 「百年に一人の記憶力」と「絶対的な計算能力」。
その二つの盗まれた才能を駆使し、彼は完璧な確率の支配者として俺の前に君臨していた。

 俺のどんな心理的な揺さぶりも、絶対的な数字の前では意味をなさない。
俺は、防戦一方だった。

 だが、俺の本当の狙いはゲームの勝利ではない。
奴の、魂の観測だ。

(……見つけ出す……。
必ず、見つけ出してやる……)

(お前の魂を覆う、その鏡の迷路の、たった一つの出口を……!)

 俺は、ゲームの盤面には最低限の意識だけを残し、その精神力のほとんどを《物語の観測者ストーリー・ウォッチャー》に注ぎ込んだ。

 俺の意識は、鋭い針となってディーラーの魂の壁を執拗しつように突き続ける。
反射してくる俺自身の復讐心に思考を焼かれながらも、俺は決して諦めなかった。

 ルナが、エルゴが、俺を信じて背後で待っているのだ。
ここで俺が折れるわけにはいかない。

 ゲームは、進んでいく。
俺のチップは、みるみるうちに減っていく。
観客席からは、「あの男も、もう終わりだな」という嘲笑ちょうしょうが聞こえてくる。

 ディーラーは、勝利を確信していた。
その魂が、ほんの一瞬だけ、ほんのわずかだけ油断した。

 俺は、その一瞬のすきを見逃さなかった。

(―――今だッ!)

 俺の意識が、鏡の迷路にできたわずかな亀裂から、その内側へと滑り込む。

 やった。
ついに、奴の魂の深層へとたどり着いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

家族と魔法と異世界ライフ!〜お父さん、転生したら無職だったよ〜

三瀬夕
ファンタジー
「俺は加藤陽介、36歳。普通のサラリーマンだ。日本のある町で、家族5人、慎ましく暮らしている。どこにでいる一般家庭…のはずだったんだけど……ある朝、玄関を開けたら、そこは異世界だった。一体、何が起きたんだ?転生?転移?てか、タイトル何これ?誰が考えたの?」 「えー、可愛いし、いいじゃん!ぴったりじゃない?私は楽しいし」 「あなたはね、魔導師だもん。異世界満喫できるじゃん。俺の職業が何か言える?」 「………無職」 「サブタイトルで傷、えぐらないでよ」 「だって、哀愁すごかったから。それに、私のことだけだと、寂しいし…」 「あれ?理沙が考えてくれたの?」 「そうだよ、一生懸命考えました」 「ありがとな……気持ちは嬉しいんだけど、タイトルで俺のキャリア終わっちゃってる気がするんだよな」 「陽介の分まで、私が頑張るね」 「いや、絶対、“職業”を手に入れてみせる」 突然、異世界に放り込まれた加藤家。 これから先、一体、何が待ち受けているのか。 無職になっちゃったお父さんとその家族が織りなす、異世界コメディー? 愛する妻、まだ幼い子どもたち…みんなの笑顔を守れるのは俺しかいない。 ──家族は俺が、守る!

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

「元」面倒くさがりの異世界無双

空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。 「カイ=マールス」と。 よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界おっさん一人飯

SILVER・BACK(アマゴリオ)
ファンタジー
 サラリーマンのおっさんが事故に遭って異世界転生。  秀でた才能もチートもないが、出世欲もなく虚栄心もない。安全第一で冒険者として過ごし生き残る日々。  それは前世からの趣味である美味しいご飯を異世界でも食べ歩くためだった。  

推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる

ケイちゃん
ファンタジー
ゲームに熱中していた彼は、シナリオで現れたラスボスを好きになってしまう。 彼はその好意にラスボスを倒さず何度もリトライを重ねて会いに行くという狂気の推し活をしていた。 だがある日、ストーリーのエンディングが気になりラスボスを倒してしまう。 結果、ラスボスのいない平和な世界というエンドで幕を閉じ、推しのいない世界の悲しみから倒れて死んでしまう。 そんな彼が次に目を開けるとゲームの中の主人公に転生していた! 主人公となれば必ず最後にはラスボスに辿り着く、ラスボスを倒すという未来を変えて救いだす事を目的に彼は冒険者達と旅に出る。 ラスボスを倒し世界を救うという定められたストーリーをねじ曲げ、彼はラスボスを救う事が出来るのか…?

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...