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第11章:敗者の塔と魂のディーラー
第58話:鏡の迷路の突破口
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「さあ、始めましょうか。
あなた方の絆が本物か、それともただのもろい幻想か。
この私とのチーム戦で、証明していただきますぞ」
マスター・ディーラーのその言葉は、もはや拒否のできない最終宣告だった。
俺たちの魂を賭けた、悪魔のゲーム。
その幕が、観客たちの熱狂的な歓声に包まれて、今まさに上がろうとしていた。
◇ ◇ ◇
「……ケント、本当にやるのか?」
俺の隣に立ったルナが、不安そうな声で尋ねる。
その琥珀色の瞳は、俺を心から心配していた。
「こいつの相手は、アタシ一人で十分だ。
あんたたちを、危険な目に遭わせるわけには……」
「いいや、ルナ」
俺は、彼女の言葉を静かに遮った。
「これは、お前一人では勝てない戦いだ。俺だけでも、エルゴ殿だけでも勝てない。
……だが、三人なら勝てる」
俺は、仲間たちの顔を順番に見つめた。
最強の「剣」である、ルナ。
頼れる「道標」である、エルゴ。
そして、二人を率いる「頭脳」である、俺。
俺たち《アケボシ》の真価が、今、試されるのだ。
「……分かった」
ルナは、俺の決意を悟り固く頷いた。
「あんたがそう言うなら、アタシは信じる。
アタシの牙と魂は、いつだってあんたと共にある」
「うむ。
儂のこの老いぼれの知恵と力が、お主たちの未来を照らす一助となるのなら、本望じゃわい」
エルゴもまた、静かに覚悟を決めてくれた。
「結構。
チームの結束は固いようですな」
ディーラーは、満足そうに頷いた。
「では、ゲームをご説明いたしましょう。これから行うのは『ソウル・バウト』。
魂の三本勝負でございます」
彼がそう言うと、ステージの床から三つの小さなテーブルがせり上がってきた。
一つはカードゲーム用、一つはダイスゲーム用、そして最後の一つは……
ただのコインが一つ置かれているだけだった。
「まず、あなた方三人の中から一人、私と一対一のゲームで勝負していただきます。
それに勝利した者は、次の者へと交代。
三連勝すれば、あなた方の勝ち。
一度でも敗北すれば、その時点であなた方三人の魂は、私のものとなります」
「……なるほどな」
俺は、そのルールの裏にある悪意を瞬時に見抜いた。
これは、俺たちの絆を試すゲームだ。
誰か一人が負ければ、連帯責任で全員が魂を奪われる。
そのプレッシャーは、挑戦者の精神を確実に蝕んでいくだろう。
「最初のゲームは、カード。二番手は、ダイス。
そして最後は、ただのコイン投げ。
……さあ、誰から参りますかな?」
ディーラーは、楽しそうに俺たちを値踏みする。
俺は、迷わず一歩前に出た。
「一番手は、俺がやる」
この狂ったゲームの盤上で、最初に奴と対峙するのは軍師である俺の役目だ。
俺が、奴の魂の物語を完全に丸裸にする。
◇ ◇ ◇
ゲームが、始まった。
ディーラーは、もはやその力を隠そうともしない。
「百年に一人の記憶力」と「絶対的な計算能力」。
その二つの盗まれた才能を駆使し、彼は完璧な確率の支配者として俺の前に君臨していた。
俺のどんな心理的な揺さぶりも、絶対的な数字の前では意味をなさない。
俺は、防戦一方だった。
だが、俺の本当の狙いはゲームの勝利ではない。
奴の、魂の観測だ。
(……見つけ出す……。
必ず、見つけ出してやる……)
(お前の魂を覆う、その鏡の迷路の、たった一つの出口を……!)
俺は、ゲームの盤面には最低限の意識だけを残し、その精神力のほとんどを《物語の観測者》に注ぎ込んだ。
俺の意識は、鋭い針となってディーラーの魂の壁を執拗に突き続ける。
反射してくる俺自身の復讐心に思考を焼かれながらも、俺は決して諦めなかった。
ルナが、エルゴが、俺を信じて背後で待っているのだ。
ここで俺が折れるわけにはいかない。
ゲームは、進んでいく。
俺のチップは、みるみるうちに減っていく。
観客席からは、「あの男も、もう終わりだな」という嘲笑が聞こえてくる。
ディーラーは、勝利を確信していた。
その魂が、ほんの一瞬だけ、ほんのわずかだけ油断した。
俺は、その一瞬の隙を見逃さなかった。
(―――今だッ!)
俺の意識が、鏡の迷路にできたわずかな亀裂から、その内側へと滑り込む。
やった。
ついに、奴の魂の深層へとたどり着いた。
あなた方の絆が本物か、それともただのもろい幻想か。
この私とのチーム戦で、証明していただきますぞ」
マスター・ディーラーのその言葉は、もはや拒否のできない最終宣告だった。
俺たちの魂を賭けた、悪魔のゲーム。
その幕が、観客たちの熱狂的な歓声に包まれて、今まさに上がろうとしていた。
◇ ◇ ◇
「……ケント、本当にやるのか?」
俺の隣に立ったルナが、不安そうな声で尋ねる。
その琥珀色の瞳は、俺を心から心配していた。
「こいつの相手は、アタシ一人で十分だ。
あんたたちを、危険な目に遭わせるわけには……」
「いいや、ルナ」
俺は、彼女の言葉を静かに遮った。
「これは、お前一人では勝てない戦いだ。俺だけでも、エルゴ殿だけでも勝てない。
……だが、三人なら勝てる」
俺は、仲間たちの顔を順番に見つめた。
最強の「剣」である、ルナ。
頼れる「道標」である、エルゴ。
そして、二人を率いる「頭脳」である、俺。
俺たち《アケボシ》の真価が、今、試されるのだ。
「……分かった」
ルナは、俺の決意を悟り固く頷いた。
「あんたがそう言うなら、アタシは信じる。
アタシの牙と魂は、いつだってあんたと共にある」
「うむ。
儂のこの老いぼれの知恵と力が、お主たちの未来を照らす一助となるのなら、本望じゃわい」
エルゴもまた、静かに覚悟を決めてくれた。
「結構。
チームの結束は固いようですな」
ディーラーは、満足そうに頷いた。
「では、ゲームをご説明いたしましょう。これから行うのは『ソウル・バウト』。
魂の三本勝負でございます」
彼がそう言うと、ステージの床から三つの小さなテーブルがせり上がってきた。
一つはカードゲーム用、一つはダイスゲーム用、そして最後の一つは……
ただのコインが一つ置かれているだけだった。
「まず、あなた方三人の中から一人、私と一対一のゲームで勝負していただきます。
それに勝利した者は、次の者へと交代。
三連勝すれば、あなた方の勝ち。
一度でも敗北すれば、その時点であなた方三人の魂は、私のものとなります」
「……なるほどな」
俺は、そのルールの裏にある悪意を瞬時に見抜いた。
これは、俺たちの絆を試すゲームだ。
誰か一人が負ければ、連帯責任で全員が魂を奪われる。
そのプレッシャーは、挑戦者の精神を確実に蝕んでいくだろう。
「最初のゲームは、カード。二番手は、ダイス。
そして最後は、ただのコイン投げ。
……さあ、誰から参りますかな?」
ディーラーは、楽しそうに俺たちを値踏みする。
俺は、迷わず一歩前に出た。
「一番手は、俺がやる」
この狂ったゲームの盤上で、最初に奴と対峙するのは軍師である俺の役目だ。
俺が、奴の魂の物語を完全に丸裸にする。
◇ ◇ ◇
ゲームが、始まった。
ディーラーは、もはやその力を隠そうともしない。
「百年に一人の記憶力」と「絶対的な計算能力」。
その二つの盗まれた才能を駆使し、彼は完璧な確率の支配者として俺の前に君臨していた。
俺のどんな心理的な揺さぶりも、絶対的な数字の前では意味をなさない。
俺は、防戦一方だった。
だが、俺の本当の狙いはゲームの勝利ではない。
奴の、魂の観測だ。
(……見つけ出す……。
必ず、見つけ出してやる……)
(お前の魂を覆う、その鏡の迷路の、たった一つの出口を……!)
俺は、ゲームの盤面には最低限の意識だけを残し、その精神力のほとんどを《物語の観測者》に注ぎ込んだ。
俺の意識は、鋭い針となってディーラーの魂の壁を執拗に突き続ける。
反射してくる俺自身の復讐心に思考を焼かれながらも、俺は決して諦めなかった。
ルナが、エルゴが、俺を信じて背後で待っているのだ。
ここで俺が折れるわけにはいかない。
ゲームは、進んでいく。
俺のチップは、みるみるうちに減っていく。
観客席からは、「あの男も、もう終わりだな」という嘲笑が聞こえてくる。
ディーラーは、勝利を確信していた。
その魂が、ほんの一瞬だけ、ほんのわずかだけ油断した。
俺は、その一瞬の隙を見逃さなかった。
(―――今だッ!)
俺の意識が、鏡の迷路にできたわずかな亀裂から、その内側へと滑り込む。
やった。
ついに、奴の魂の深層へとたどり着いた。
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