異世界転生と『天賦（ギフト）』で最強になったが親友に裏切られ追放されたので、銀狼少女と『双星』として成り上がる！

第11章：敗者の塔と魂のディーラー

​第60話：三位一体の勝ち筋

（―――エルゴ殿！ ルナ！）

（奴の壊れた物語を、俺たちの本当の絆で終わらせる！）

　俺の魂の叫びは、言葉を介さず仲間たちへと届いていた。

　ディーラーの仮面の下で、その魂が激しく揺れ動いているのが分かる。
俺が暴いた彼の過去の傷跡が、彼の絶対的な自信を内側から食い破り、その力の源泉である傲慢ごうまんさを崩壊させていく。

「……あり……えない……」

　ディーラーの唇から、か細い声が漏もれる。

「ボクの……私の物語を……なぜ、お前が……」

「言ったはずだ」

　俺は、冷たく言い放った。

「俺の天賦ギフトは、あらゆる物語を観測する力だ、と」

　俺は、テーブルの上に置かれた最後の勝負の舞台、三つのテーブルの一つを指さした。
コインが一つだけ置かれた、最もシンプルなゲーム。

「最後の勝負だ、ディーラー。
……いや、哀れな敗者殿」

　俺は、最後の楔くさびを打ち込む。

「あんたが最も恐れる、運命のコイン投げで、このくだらない茶番を終わらせてやる」

　俺の挑発に、ディーラーはもはや反論する力も残っていなかった。

　彼の魂は、過去の敗北の記憶に完全に囚とらわれ、目の前の現実すらもあの日の酒場と重なって見えているのかもしれない。

「……よろしい……でしょう」

　彼は、操り人形のように頷うなずいた。

「最後の……勝負を……」

　俺は、背後に控えるエルゴに視線で合図を送った。

　エルゴは、静かに頷うなずくと、その手に持つ古びた傘をコンパスのように掲げる。

《未来への羅針盤フューチャー・コンパス》――発動。

　彼の魂から、未来の可能性を読むかすかな光が放たれる。

　ディーラーの確率支配とは違う。
風の流れ、空気の揺らぎ、この場の全ての魂の渇望かつぼうが織りなす、ほんのわずかな未来の「揺らぎ」を読み解く力。

「……ケントよ」

エルゴが、静かに俺に告げた。

「儂の羅針盤コンパスが、示しておる。
この勝負、我らが勝つ未来は……限りなくゼロに近い。
だが、たった一つだけ……可能性の低い勝ち筋が、確かに存在する」

「それで、十分です」

　俺は、ルナに向き直った。
彼女は、俺の意図を完全に理解していた。
その琥珀色こはくいろの瞳には、絶対的な信頼の光が宿っている。

「――ルナ」

　俺は、彼女の腕にそっと手を触れた。

「お前の力で、その未来を『現実』にしろ」

「――任せろ、ケント！」
ルナは、俺の手を力強く握り返した。

《絆を力にソウル・リンク》――発動。

　パチッ、と俺たちの間で絆の光が弾け、エルゴが観測した「未来の可能性」が俺を通してルナの魂へと流れ込んでいく。

　ルナの全身を、淡い光のオーラが包み込んだ。

　彼女の獣としての身体能力と、エルゴの未来予測、そして俺の分析能力。
《アケボシ》の全ての力が、今、一つに束ねられた。

「さあ、始めましょう」
ディーラーが、力なくコインを弾いた。

　高く、高く舞い上がるコイン。

　観客たちが、固唾かたずを飲んでその軌跡を見守る。

「――表か、裏か」

　ディーラーの問いに、俺は答えない。
答えるのは、ルナだ。

　コインが、重力に従って落ちてくる。
その、刹那。