異世界転生と『天賦(ギフト)』で最強になったが親友に裏切られ追放されたので、銀狼少女と『双星』として成り上がる!

月影 朔

文字の大きさ
92 / 150
第15章:帝国の実験場

第92話:秘密研究施設への道

しおりを挟む
 俺たちの新たな旅は、帝国が隠す最も深い闇の核心へと迫っていく。

 その覚悟を胸に、俺たち《アケボシ》は夜陰に紛れて鉄鋼都市ヴァルハラを後にした。

◇ ◇ ◇

 旅の空気は、以前とは明らかに違っていた。

 奈落の谷から脱出したばかりの頃は、ただひたすらに張り詰めていた緊張の糸。
賭博都市では、欲望と裏切りが渦巻く狂乱の舞台。

 だが、今は違う。
俺たちの間には、確かな温もりが生まれていた。

「……ノクスの呼吸が、安定しているわ」
荷馬車の荷台で、リラが安堵あんどの声を漏らした。

 彼女の隣では、エリアーナがリュートを奏でている。
歌うのではない。ただ、穏やかで優しい音色を紡ぎ出すだけ。

 だが、その音色から放たれる《生命の揺り籠クレイドル・オブ・ライフ》の力が、意識のないノクスの魂を若草色の光で優しく包み込み、その砕け散った魂の欠片かけらを少しずつ、だが確かに繋ぎ合わせていた。

「すごい力よ、エリアーナ。あなたがいなきゃ、ノクスはもう……」
リラの潤んだ瞳に、エリアーナは静かに微笑み返した。

「いいえ。
これは、アタシだけの力じゃないわ。
あなたたちの『仲間を救いたい』という強い想いが、アタシの歌に力を与えてくれているのよ」

 彼女の言う通りだった。
エリアーナが仲間に加わったことで、俺たちのチームはただの戦闘集団ではなくなった。

 互いの傷を癒し、互いの物語を支え合う、本当の意味での「仲間」へと変わりつつあったのだ。

「――ケント」
御者台ぎょしゃだいに座る俺の隣に来たジンが、低い声で言った。

斥候せっこうから戻った。
この先の街道に、帝国の検問所がある」

「分かった。迂回しよう」
俺は、荷台のエルゴに声をかけた。

「エルゴ殿、頼めるか?」

「うむ、承知した」
エルゴは、その手に持つ古びた傘をコンパスのように掲げる。

《未来への羅針盤フューチャー・コンパス》が、風の流れと大気の揺らぎから、最も安全な獣道を俺たちに示してくれた。

 最高の「頭脳」である俺。
最強の「剣」であるルナ。
頼れる「道標」であるエルゴ。
全てを支える「影」であるジン。
失われた物語を「修復」するリラ。
そして、命を「育む」エリアーナ。

 俺たちの歯車は、確かに噛み合い始めていた。

 旅の道中、俺たちはエリアーナが、彼女の仲間たちが命がけで手に入れたという帝国の秘密研究施設に関する情報を整理していた。

「あの子たちが残してくれたのは、断片的な情報だけ……」
エリアーナは、悔しそうに唇を噛む。

「施設の正確な場所は分からない。
ただ、帝国の古い文献を調べていたあの子たちは、『忘れられた神々の眠る谷』と呼ばれる場所に、その施設がある可能性が高いと突き止めたの」

「忘れられた神々の眠る谷、か」
俺は、その地名を頭の中で反芻はんすうする。

「その谷の名なら、儂も聞いたことがあるわい」
エルゴが、険しい顔で言った。

「帝国の創世神話よりもさらに古い、古代文明の遺跡が眠ると言われる禁足地じゃ。
帝国も、よほどのことがない限りは足を踏み入れんはず……。
秘密の研究施設を隠すには、うってつけの場所じゃろうな」

「だが、その谷はあまりにも広大だ」
ジンが、冷静に付け加える。

「闇雲に探せば、何ヶ月かかるか分からん」

「だからこそ、俺たちの力が必要になる」
俺は、仲間たちの顔を見渡した。

「リラとエリアーナの力で、この谷に残された古い記憶の断片を探る。
エルゴの力で、その中から最も可能性の高い未来を予測する。
そして、ジンとルナの力で、その場所へと続く道を切り開く。
……俺たちの総力戦だ」

 俺の言葉に、仲間たちが力強く頷いてくれる。
俺たちは、一つの明確な目標に向かって突き進んでいた。

リュウガが隠す、帝国の最も深い闇の核心へ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

家族と魔法と異世界ライフ!〜お父さん、転生したら無職だったよ〜

三瀬夕
ファンタジー
「俺は加藤陽介、36歳。普通のサラリーマンだ。日本のある町で、家族5人、慎ましく暮らしている。どこにでいる一般家庭…のはずだったんだけど……ある朝、玄関を開けたら、そこは異世界だった。一体、何が起きたんだ?転生?転移?てか、タイトル何これ?誰が考えたの?」 「えー、可愛いし、いいじゃん!ぴったりじゃない?私は楽しいし」 「あなたはね、魔導師だもん。異世界満喫できるじゃん。俺の職業が何か言える?」 「………無職」 「サブタイトルで傷、えぐらないでよ」 「だって、哀愁すごかったから。それに、私のことだけだと、寂しいし…」 「あれ?理沙が考えてくれたの?」 「そうだよ、一生懸命考えました」 「ありがとな……気持ちは嬉しいんだけど、タイトルで俺のキャリア終わっちゃってる気がするんだよな」 「陽介の分まで、私が頑張るね」 「いや、絶対、“職業”を手に入れてみせる」 突然、異世界に放り込まれた加藤家。 これから先、一体、何が待ち受けているのか。 無職になっちゃったお父さんとその家族が織りなす、異世界コメディー? 愛する妻、まだ幼い子どもたち…みんなの笑顔を守れるのは俺しかいない。 ──家族は俺が、守る!

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

「元」面倒くさがりの異世界無双

空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。 「カイ=マールス」と。 よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界おっさん一人飯

SILVER・BACK(アマゴリオ)
ファンタジー
 サラリーマンのおっさんが事故に遭って異世界転生。  秀でた才能もチートもないが、出世欲もなく虚栄心もない。安全第一で冒険者として過ごし生き残る日々。  それは前世からの趣味である美味しいご飯を異世界でも食べ歩くためだった。  

推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる

ケイちゃん
ファンタジー
ゲームに熱中していた彼は、シナリオで現れたラスボスを好きになってしまう。 彼はその好意にラスボスを倒さず何度もリトライを重ねて会いに行くという狂気の推し活をしていた。 だがある日、ストーリーのエンディングが気になりラスボスを倒してしまう。 結果、ラスボスのいない平和な世界というエンドで幕を閉じ、推しのいない世界の悲しみから倒れて死んでしまう。 そんな彼が次に目を開けるとゲームの中の主人公に転生していた! 主人公となれば必ず最後にはラスボスに辿り着く、ラスボスを倒すという未来を変えて救いだす事を目的に彼は冒険者達と旅に出る。 ラスボスを倒し世界を救うという定められたストーリーをねじ曲げ、彼はラスボスを救う事が出来るのか…?

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...