異世界転生と『天賦（ギフト）』で最強になったが親友に裏切られ追放されたので、銀狼少女と『双星』として成り上がる！

第17章：解放戦線と偽りの英雄

第112話：魂のない人形の街

　その夜。
俺たちは、焚き火を囲んでそれぞれの物語を語り合っていた。

　それは、ただの昔話ではない。
俺たちがこれから戦うべき敵、リュウガという男と、彼が創り上げた帝国の歪みを理解するための、重要な情報共有だった。

　エルゴは、気象院長官としてリュウガに仕えていた頃の記憶を語った。
リュウガが、いかにして天候予測すらも民衆を支配するための道具へと変えていったのかを。

　サラは、涙ながらに研究施設での非人道的な実験の日々を告白した。
リュウガが、人の魂をただの「素材」としか見ていない、その冷徹な本性を。

　ジンとノクスは、帝国暗殺部隊『チェックメイト』の恐るべき実態を明かした。
仲間同士ですら互いの情報を知らされず、ただリュウガへの忠誠心だけを試される、狂信的な集団の姿を。

　一つひとつの物語が、俺たちの絆をより強く、より確かなものへと変えていく。
俺たちはもう、ただの寄せ集めのチームではない。
互いの痛みを分かち合い、同じ敵を見据える、本当の仲間なのだ。

◇　◇　◇

　旅を始めて、二週間が過ぎた頃。
俺たちは、ついに帝国の国境線にたどり着いた。

　目の前に、巨大な城壁に囲まれた街が見える。
自由都市連合との交易で栄えた、活気ある街のはずだった。

　だが、俺たちの目に映ったのは、異様な光景だった。
街は、不気味なほどの静寂に包まれている。

　人々は歩いている。
だが、その動きはあまりにも規則的で、まるで操り人形のようだ。
市場には品物が並んでいるが、そこに会話も笑顔もない。

　ただ、決められた作業を、決められた手順でこなすだけの魂のない人形たちがいるだけ。

「……ひどい……」
リラが、か細い声で呟つぶやいた。

「街全体が、リュウガの《絶対王の勅令アブソリュート・オーダー》に……」

　そうだ。
この街は、リュウガの《精神支配》によって完全に心を奪われている。
彼の創り上げた、偽りの平和の最前線。

　俺は、仲間たちの顔を見渡した。
その誰もが、固い決意の表情を浮かべている。

「ここが、俺たちの最初の戦場だ」
俺は、静かに宣言した。

「だが、俺たちは破壊者じゃない。
武力で、この街を制圧するつもりはない」

　俺は、後方に控える二人の女性へと視線を移した。

「俺たちがやるべきことは、ただ一つ。
この街に囚とらわれた、人々の心を『解放』することだ」

　俺の言葉に、エリアーナとリラが力強く頷うなずく。

　俺たちの、最初の解放作戦。
それは、剣ではなく歌と記憶で、人の魂を取り戻すという、あまりにも無謀で、俺たち《アケボシ》にしかできない戦いの始まりだった。