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第17章:解放戦線と偽りの英雄
第115話:夜明けの一番星
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「……我々を、あの長い悪夢から救ってくださった、救世主様……ですかな……?」
果物屋の店主が絞り出した、震える声。
それが、合図だった。
一人、また一人と、人々が俺たちの前にひざまずいていく。
その瞳に宿るのは、俺たちに対する絶対的な感謝と、そして信仰にも似た光。
朝の光が、彼らの涙に濡れた頬を照らし、まるで宝石のようにきらめいていた。
俺たちの戦いは、まだ始まったばかりだ。
だが、俺たちは確かに手に入れたのだ。
帝国の心臓部に打ち込む、最初の楔を。
俺たちの、最初の解放区を。
◇ ◇ ◇
時計塔のバルコニーでは、エリアーナが静かにその光景を見下ろしていた。
その瞳からは、大粒の涙がとめどなく溢れ出している。
彼女の歌声が、この奇跡を起こしたのだ。
彼女がずっと信じてきた、歌の力が人の心を救うという物語が、今、現実になった。
「……よかった……本当によかった……」
リラもまた、俺の隣で泣きじゃくっていた。
彼女の力が、人々の失われた記憶を取り戻させた。
愛する者を救いたいという彼女の願いが、この街全体の魂を救ったのだ。
「……おい、ケント」
ルナが、戸惑ったような声で俺の袖を引いた。
「……なんか、すごいことになってるぞ……。
アタシ、こういうの苦手なんだけど……」
最強の剣である彼女も、大勢の人間から向けられる純粋な感謝の念にはどう対応していいか分からないらしい。
ジンとエルゴは、何も言わなかった。
ただ、静かにこの夜明けの光景をその魂に刻み付けているようだった。
やがて、ひざまずいていた人々の中から、一人の老人がゆっくりと立ち上がった。
この街の市長であろう、威厳のある顔立ちの男だ。
彼は、俺たちの前に進み出ると、深く、深く頭を下げた。
「……お名前を、お聞かせ願えませんでしょうか。我らが救世主様」
その問いに、俺は一瞬だけためらった。
だが、すぐに覚悟を決める。
俺は、もはやただのケントではない。
「俺たちの名は、《アケボシ》」
俺は、静かに、だが力強く宣言した。
「リュウガが支配する、長い夜に終わりを告げ、本当の夜明けを連れてくる一番星だ」
《アケボシ》。
その名が、解放された人々の間でさざ波のように広がっていく。
彼らは、その名をまるで聖なる呪文のように、何度も、何度も繰り返した。
その声は、やがて一つの巨大なうねりとなり、この街の空に響き渡った。
「「「アケボシ! アケボシ! アケボシ!」」」
それは、新たな時代の幕開けを告げる、産声のようだった。
◇ ◇ ◇
熱狂が少しだけ収まった後、俺たちは市長の案内で街の庁舎へと招かれた。
解放されたばかりの街は、まだ混乱の中にあったが、その混乱は絶望ではなく喜びに満ちていた。
あちこちで、長い間忘れていた家族の名前を呼び合い、抱き合って泣いている者たちがいる。
市場では、商人たちが自らの商品を惜しげもなく人々に分け与え、即席の祝祭が始まっていた。
BGMはもちろん、エリアーナが時計塔の上で奏でる、希望に満ちた新しい歌だ。
俺が真っ先に取り組んだのは、この街に駐留していた帝国兵たちの処遇だった。
彼らもまた、リュウガの精神支配から解放され、自分たちが今まで何をしていたのか理解できずに呆然としている。
俺は、彼らの前に立った。
その瞳に宿るのは、恐怖と混乱。
「お前たちに、三つの選択肢をやろう」
俺は、静かに告げた。
「一つは、武器を捨ててこの街を去ること。
二つ目は、俺たち《アケボシ》に刃向かい、ここで死ぬこと」
その言葉に、兵士たちの顔が強張る。
「そして、三つ目だ」
俺は、続けた。
「帝国兵としての過去を捨て、一人の人間としてこの街に残り、俺たちと共に新しい秩序を創る手伝いをすることだ」
その予想外の提案に、兵士たちはどよめいた。
彼らは、処刑されることを覚悟していたのだろう。
「選ぶのは、お前たち自身だ。
俺は、リュウガのように人の心を支配したりはしない。
お前たちの物語は、お前たちが決めるんだ」
俺の言葉に、兵士たちはしばらく顔を見合わせていた。
やがて、一人の若い兵士がおずおずと剣を地面に置いた。
それが、合図だった。
一人、また一人と、兵士たちは自らの武器を捨て、俺たちの前にひざまずいた。
彼らもまた、帝国の犠牲者だったのだ。
果物屋の店主が絞り出した、震える声。
それが、合図だった。
一人、また一人と、人々が俺たちの前にひざまずいていく。
その瞳に宿るのは、俺たちに対する絶対的な感謝と、そして信仰にも似た光。
朝の光が、彼らの涙に濡れた頬を照らし、まるで宝石のようにきらめいていた。
俺たちの戦いは、まだ始まったばかりだ。
だが、俺たちは確かに手に入れたのだ。
帝国の心臓部に打ち込む、最初の楔を。
俺たちの、最初の解放区を。
◇ ◇ ◇
時計塔のバルコニーでは、エリアーナが静かにその光景を見下ろしていた。
その瞳からは、大粒の涙がとめどなく溢れ出している。
彼女の歌声が、この奇跡を起こしたのだ。
彼女がずっと信じてきた、歌の力が人の心を救うという物語が、今、現実になった。
「……よかった……本当によかった……」
リラもまた、俺の隣で泣きじゃくっていた。
彼女の力が、人々の失われた記憶を取り戻させた。
愛する者を救いたいという彼女の願いが、この街全体の魂を救ったのだ。
「……おい、ケント」
ルナが、戸惑ったような声で俺の袖を引いた。
「……なんか、すごいことになってるぞ……。
アタシ、こういうの苦手なんだけど……」
最強の剣である彼女も、大勢の人間から向けられる純粋な感謝の念にはどう対応していいか分からないらしい。
ジンとエルゴは、何も言わなかった。
ただ、静かにこの夜明けの光景をその魂に刻み付けているようだった。
やがて、ひざまずいていた人々の中から、一人の老人がゆっくりと立ち上がった。
この街の市長であろう、威厳のある顔立ちの男だ。
彼は、俺たちの前に進み出ると、深く、深く頭を下げた。
「……お名前を、お聞かせ願えませんでしょうか。我らが救世主様」
その問いに、俺は一瞬だけためらった。
だが、すぐに覚悟を決める。
俺は、もはやただのケントではない。
「俺たちの名は、《アケボシ》」
俺は、静かに、だが力強く宣言した。
「リュウガが支配する、長い夜に終わりを告げ、本当の夜明けを連れてくる一番星だ」
《アケボシ》。
その名が、解放された人々の間でさざ波のように広がっていく。
彼らは、その名をまるで聖なる呪文のように、何度も、何度も繰り返した。
その声は、やがて一つの巨大なうねりとなり、この街の空に響き渡った。
「「「アケボシ! アケボシ! アケボシ!」」」
それは、新たな時代の幕開けを告げる、産声のようだった。
◇ ◇ ◇
熱狂が少しだけ収まった後、俺たちは市長の案内で街の庁舎へと招かれた。
解放されたばかりの街は、まだ混乱の中にあったが、その混乱は絶望ではなく喜びに満ちていた。
あちこちで、長い間忘れていた家族の名前を呼び合い、抱き合って泣いている者たちがいる。
市場では、商人たちが自らの商品を惜しげもなく人々に分け与え、即席の祝祭が始まっていた。
BGMはもちろん、エリアーナが時計塔の上で奏でる、希望に満ちた新しい歌だ。
俺が真っ先に取り組んだのは、この街に駐留していた帝国兵たちの処遇だった。
彼らもまた、リュウガの精神支配から解放され、自分たちが今まで何をしていたのか理解できずに呆然としている。
俺は、彼らの前に立った。
その瞳に宿るのは、恐怖と混乱。
「お前たちに、三つの選択肢をやろう」
俺は、静かに告げた。
「一つは、武器を捨ててこの街を去ること。
二つ目は、俺たち《アケボシ》に刃向かい、ここで死ぬこと」
その言葉に、兵士たちの顔が強張る。
「そして、三つ目だ」
俺は、続けた。
「帝国兵としての過去を捨て、一人の人間としてこの街に残り、俺たちと共に新しい秩序を創る手伝いをすることだ」
その予想外の提案に、兵士たちはどよめいた。
彼らは、処刑されることを覚悟していたのだろう。
「選ぶのは、お前たち自身だ。
俺は、リュウガのように人の心を支配したりはしない。
お前たちの物語は、お前たちが決めるんだ」
俺の言葉に、兵士たちはしばらく顔を見合わせていた。
やがて、一人の若い兵士がおずおずと剣を地面に置いた。
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彼らもまた、帝国の犠牲者だったのだ。
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