異世界転生と『天賦(ギフト)』で最強になったが親友に裏切られ追放されたので、銀狼少女と『双星』として成り上がる!

月影 朔

文字の大きさ
116 / 150
第17章:解放戦線と偽りの英雄

第116話:最初の解放区

しおりを挟む
 市長室で、俺は街の代表者たちと向き合っていた。
彼らの顔には、喜びと同時に深い不安の色が浮かんでいる。

「アケボシ様……」
市長が、震える声で言った。

「我々は、あなた方のおかげで自由を取り戻すことができました。
ですが、この後どうすれば……。
帝国の、リュウガ皇帝がこの事態を黙って見過ごすはずがありません」

 その通りだ。
この解放は、リュウガに対する明確な反逆行為。
いずれ、帝国軍がこの街を再び踏みにじりに来るだろう。

「この街は、今日から《アケボシ》の最初の解放区となる」
俺は、宣言した。

「俺たちが、この街を守る。
そして、この街を拠点に、俺たちは帝国に囚われた全ての街を解放していく」

 その、あまりにも壮大な言葉に、市長たちは息を呑んだ。

「……ですが、そのようなことが、本当に……」

(……悪いが、試させてもらうぞ)

 俺は、市長の魂の物語を、その根源から観測した。
この街の未来を、この男に託していいものかどうかを、見極めるために。

(この街の指導者……その物語、観測させてもらうぞ――
物語の観測者ストーリー・ウォッチャー》!)

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
名前:アルマン市長
状態:希望、不安、街への責任感
​魂の物語:
【起源】:代々この街を守ってきた、名誉ある家系の末裔。
【絶望】:リュウガの支配下で、愛する街が魂を失っていくのを無力に見ているしかなかったこと。
【願い】:街に本当の活気を取り戻したい。民の笑顔を、この手で守りたい。
天賦ギフト
石の声を聞く者ストーン・ウィスパラー
能力概要:石造りの建造物と対話し、その状態を知ることができる。
​攻略の糸口:
【信頼】:彼の街への愛は本物。彼を信頼し、リーダーシップを任せることが、この解放区を安定させる鍵となる。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

「…………」
 情報を得た俺は、静かに目を開けた。
そして、目の前の老人に深い敬意を込めて頭を下げる。

「市長。
俺は、この街を支配するつもりはない。
あんたに、この街の未来を託したいんだ」

 俺の言葉に、市長は驚きに目を見開いた。

「俺たちは、あくまであんたたちの助っ人だ。
この街のことは、この街に住むあんたたちが決めるべきだ。
あんたの、その街を愛する物語を、俺は信じる」

 その言葉は、市長の魂に深く響いたようだった。
彼の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちる。

「……分かりました」
彼は、力強く頷いた。

「この命に代えても、この街を……我らが解放区を、守り抜いてみせましょうぞ!」

 こうして、帝国の領土内に、最初の反逆の拠点が生まれた。
それは、リュウガが創り上げた完璧なチェス盤に打ち込まれた、最初のくさび

 俺たちの、最初の勝利だった。

◇ ◇ ◇

 その夜。
街は、何年ぶりかの本当の祝祭に沸いていた。
広場には焚き火が焚かれ、人々はエリアーナの歌声に合わせて夜が更けるまで踊り明かした。

 俺たち《アケボシ》は、庁舎のバルコニーからその光景を静かに見下ろしていた。
本物の笑顔。
本物の、笑い声。
俺たちが、命がけで取り戻したかったものが、そこにはあった。

「……綺麗だな」

 ルナが、ぽつりと呟いた。
その横顔は、焚き火の光に照らされて穏やかだった。

「ああ、綺麗だ」
俺は、頷いた。

 リラは、奥の部屋でノクスの看病を続けている。
彼の容態も、この街の温かい空気に触れてか、少しだけ安定しているようだった。

 サラは、早速街の設計図を取り寄せ、この解放区をより豊かにするための改善案を練り始めている。
彼女の《万象解析オールシング・アナリシス》は、こういう時にこそ真価を発揮するのだ。

 俺は、仲間たちの顔を見渡した。
その誰もが、この束の間の平和を、自らの魂に刻み付けているようだった。

「……だが」
俺は、静かに口を開いた。

「これは、まだ始まりに過ぎない」

 俺の言葉に、仲間たちの顔が引き締まる。

「この街の夜は明けた。
だが、リュウガが支配する帝国は、まだ長い夜の中だ」
俺は、帝都があるであろう東の空を睨みつけた。

「そして、奴がこの夜明けを、黙って見過ごすはずがない」

 俺の予感は、確信に近かった。
リュウガは、必ず次の手を打ってくる。
それも、俺たちの想像を絶する、最も悪質な手で。

 俺は、仲間たちに向き直った。

「今は、この勝利を祝おう。
だが、心だけは常に戦場に置いておけ。
夜明けの星は、夜が最も深い時にこそ、最も強く輝かなければならないのだから」

 俺の言葉に、仲間たちが力強く頷いてくれる。
俺たちの最初の勝利は、次なる絶望の始まりを告げる鐘の音でもあった。

 だが、俺たちはもう何も恐れない。
俺たちの背後には、この解放区で生きる人々の、温かい物語があるのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

家族と魔法と異世界ライフ!〜お父さん、転生したら無職だったよ〜

三瀬夕
ファンタジー
「俺は加藤陽介、36歳。普通のサラリーマンだ。日本のある町で、家族5人、慎ましく暮らしている。どこにでいる一般家庭…のはずだったんだけど……ある朝、玄関を開けたら、そこは異世界だった。一体、何が起きたんだ?転生?転移?てか、タイトル何これ?誰が考えたの?」 「えー、可愛いし、いいじゃん!ぴったりじゃない?私は楽しいし」 「あなたはね、魔導師だもん。異世界満喫できるじゃん。俺の職業が何か言える?」 「………無職」 「サブタイトルで傷、えぐらないでよ」 「だって、哀愁すごかったから。それに、私のことだけだと、寂しいし…」 「あれ?理沙が考えてくれたの?」 「そうだよ、一生懸命考えました」 「ありがとな……気持ちは嬉しいんだけど、タイトルで俺のキャリア終わっちゃってる気がするんだよな」 「陽介の分まで、私が頑張るね」 「いや、絶対、“職業”を手に入れてみせる」 突然、異世界に放り込まれた加藤家。 これから先、一体、何が待ち受けているのか。 無職になっちゃったお父さんとその家族が織りなす、異世界コメディー? 愛する妻、まだ幼い子どもたち…みんなの笑顔を守れるのは俺しかいない。 ──家族は俺が、守る!

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

「元」面倒くさがりの異世界無双

空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。 「カイ=マールス」と。 よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界おっさん一人飯

SILVER・BACK(アマゴリオ)
ファンタジー
 サラリーマンのおっさんが事故に遭って異世界転生。  秀でた才能もチートもないが、出世欲もなく虚栄心もない。安全第一で冒険者として過ごし生き残る日々。  それは前世からの趣味である美味しいご飯を異世界でも食べ歩くためだった。  

推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる

ケイちゃん
ファンタジー
ゲームに熱中していた彼は、シナリオで現れたラスボスを好きになってしまう。 彼はその好意にラスボスを倒さず何度もリトライを重ねて会いに行くという狂気の推し活をしていた。 だがある日、ストーリーのエンディングが気になりラスボスを倒してしまう。 結果、ラスボスのいない平和な世界というエンドで幕を閉じ、推しのいない世界の悲しみから倒れて死んでしまう。 そんな彼が次に目を開けるとゲームの中の主人公に転生していた! 主人公となれば必ず最後にはラスボスに辿り着く、ラスボスを倒すという未来を変えて救いだす事を目的に彼は冒険者達と旅に出る。 ラスボスを倒し世界を救うという定められたストーリーをねじ曲げ、彼はラスボスを救う事が出来るのか…?

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...