異世界転生と『天賦(ギフト)』で最強になったが親友に裏切られ追放されたので、銀狼少女と『双星』として成り上がる!

月影 朔

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第17章:解放戦線と偽りの英雄

第119話:英雄の仮面

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(……まずは、お前の物語を丸裸にしてやる)

 俺たちの、心を解くための本当の戦いが、今、始まろうとしていた。

◇ ◇ ◇

 物見台から広場へと続く階段を、俺はゆっくりと、だが確かな足取りで下りていく。
俺の背後を、仲間たちが息を殺してついてくるのが分かった。

 ルナの殺気さっき、ジンの警戒、エルゴの分析、サラの知的好奇心、そしてリラとエリアーナの心配。
その全ての感情が、俺の背中を押していた。

 広場を埋め尽くした民衆が、モーゼの十戒じっかいのように左右に分かれ、俺のために道を開ける。
その瞳に宿るのは、期待きたいと不安、そして困惑こんわくの色。
彼らは、自分たちの救世主であるはずの俺たちと、帝国の英雄、そのどちらを信じるべきか決めかねていた。

 やがて俺は、広場の中央に立つ偽りの英雄、アレクシオスの前に立った。
距離は、十メートル。
お互いの呼吸が聞こえるほどの、近さ。

 白銀の鎧に身を包んだ彼は、物語の中から抜け出してきたかのように完璧だった。
その穏やかな笑みは、まるで俺がただ道を間違えただけの若者であるとでも言いたげだ。

「……愚かなことを」

 アレクシオスが、静かに口を開いた。
その声は、民衆に語りかけた時と同じ、どこまでも優しく、そしてあわれみに満ちている。

「武器を捨てて投降すれば、慈悲を与えようと言ったはずです。
なぜ、自ら破滅の道を選ぶのですかな?」

 彼の言葉は、巧みだった。
この場の全ての人間に対し、俺こそが平和を乱す元凶なのだと、改めて印象付けていく。

 だが、俺はもうその挑発には乗らない。
俺が今やるべきことは、ただ一つ。

「英雄、ね」
俺は、わざとらしく肩をすくめてみせた。

「帝国の英雄とやらに会うのは、これが初めてじゃないんでな。
どいつもこいつも、口だけは達者だった」

 俺の言葉に、アレクシオスの穏やかな笑みがわずかに強張こわばった。
俺は、さらに言葉を続ける。
彼の完璧な仮面を、一枚ずつがしていくために。

「あんたが起こした、あの奇跡。
赤ん坊の病を癒した、あの力。
……ずいぶんと、見事なもんだったな」

 俺は、一歩前に出た。

「だが、あの光には魂がこもっていなかった。
まるで、誰かから借りてきた力みたいだったぜ。
なあ、英雄アレクシオス。
その天賦ギフトは、一体誰の物語を奪って手に入れたんだ?」

 その言葉は、毒の刃となってアレクシオスの心の最も深い場所へと突き刺さったはずだ。
彼の肩が、ごくわずかに震えたのを俺は見逃さなかった。

「……何を、言っているのか分かりませんな」
彼は、かろうじて平静を装った。

「その下劣げれつ物言ものいいが、あなた方の品性を物語っている。
民衆よ、ご覧なさい!
これこそが、偽りの解放者の正体です!」

 彼は、再び民衆を味方につけようとする。
だが、俺はもう待たない。
彼の魂が、ほんの一瞬だけ揺らいだ。
その一瞬のすきこそが、俺が待ち望んでいた絶好の好機。

(その完璧な英雄の仮面の下に、どんな壊れた物語を隠している?)

(俺の魂に、その全てをさらせ――
物語の観測者ストーリー・ウォッチャー》!)

 俺の意識は、鋭い槍となってアレクシオスの魂へと突き進む。
彼の魂を覆っていた気高い光のオーラが、俺の観測をはばもうとする。

 だが、俺の言葉によって生まれた心の揺らぎが、そのオーラにほんのかすかな亀裂を生んでいた。
俺の意識は、その亀裂から彼の魂の奥深くへと、濁流のように流れ込んでいく。

そして、俺は見た。
偽りの英雄の仮面の下に隠された、あまりにも悲しく、そして気高い魂の物語を。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
名前:アレクシオス・グレイフィールド
状態:深い苦悩くのう、絶望、家族への強い愛情、任務遂行への強迫観念きょうはくかんねん
​魂の物語:
【起源】:代々帝国に仕える騎士の家系。民を愛し、正義を信じた本物の英雄だった。
【絶望】:彼の持つ天賦ギフト、《命の重みウェイト・オブ・ライフ》がリュウガに目をつけられ、妻と娘を人質に取られたこと。
【服従】:家族を救うため、リュウガの駒となり「偽りの英雄」を演じることを強いられている。
天賦ギフト
命の重みウェイト・オブ・ライフ》(休眠状態)
能力概要:術者が守りたい対象への「想い」が強いほど、防御力が増大する。誰かを守るために戦う時にのみ、その真価を発揮する。
《癒しの光》(移植された天賦ギフト
能力概要:リュウガによって、誰かから奪われた治癒の力が移植されている。
​攻略の糸口:
【精神】:彼の行動原理は全て「家族を救いたい」という愛。彼を敵として断罪するのではなく、その苦悩くのうを理解し、家族を救うという「別の道」を示すことが唯一の攻略法。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
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