126 / 150
第18章:味方から敵へ
第126話:書き換えられた物語
しおりを挟む
その言葉に、リュウガは初めて心の底から残念そうな顔をした。
「……そうか。
やはり、ケントはお前を『汚染』してしまったらしいな」
彼は、深く、深くため息をついた。
「……ならば、仕方ない。
お前のその壊れてしまった物語を、俺が直々に『修復』してやることにしよう」
その言葉と同時に、リュウガの全身から黄金色のオーラが放たれた。
それは、ジンの魂を根源から揺さぶる、絶対的な王の威圧感。
「――《絶対王の勅令》」
その声は、もはや人のものではなかった。
魂そのものを凍てつかせる、神の宣告。
「――権能解放――」
「ぐ……あ……ああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!」
ジンの口から、絶叫がほとばしった。
痛い。
だが、それは肉体的な痛みではない。
もっと根源的な、存在そのものが侵食されていくような魂の痛み。
リュウガのオーラが、冷たい金属の触手のようにジンの魂へと侵入してくる。
それは、彼の記憶の中を、物語の中を、土足で蹂躙していく。
(やめろ……!)
ジンは、必死に抵抗した。
(俺の物語に、踏み込んでくるな!)
だが、無駄だった。
リュウガの力は、あまりにも絶対的だった。
『――ケント……』
リュウガの力が、ケントとの出会いの記憶を見つけ出し、その光景を歪めていく。
ケントの「仲間になれ」という言葉が、「俺の駒になれ」という冷たい命令へとすり替わっていく。
『――ルナ……』
ルナの屈託のない笑顔が、自分を憐れむかのような侮蔑の笑みへと変わっていく。
大切な仲間たちの記憶が、次々と汚されていく。
温かい絆の物語が、冷たい裏切りの物語へと書き換えられていく。
ジンの魂が、悲鳴を上げていた。
(違う……違う、違うッ!)
(あいつらは、そんな奴らじゃない!)
彼は、最後の力を振り絞って抵抗する。
彼の魂の核。
【渇望】:自らの汚れた力を、本当に守るべき誰かのために使いたい。
その、あまりにも純粋な願いだけを、必死に守ろうとしていた。
だが、リュウガはその最後の砦すらも見逃さなかった。
『――お前の守るべきものは、ただ一つ』
リュウガの声が、神の宣告のように響き渡る。
『――お前の妹だ。
そして、その妹を守れるのは、この俺だけだ』
その言葉が、ジンの最後の抵抗を打ち砕いた。
そうだ。
結局、自分は妹一人すら守れない無力な存在なのだ。
アケボシという名の幻想に酔いしれ、最も大切なものから目を背けていただけなのだ。
彼の魂の核に、深い亀裂が入った。
その亀裂から、リュウガの力が濁流のように流れ込んでいく。
【渇望】:自らの全ての力を、皇帝リュウガ様のために使いたい。
【信条】:アケボシは、帝国と妹を脅かす絶対の悪。
【忠誠】:我が身、我が魂の全てをリュウガ様に捧げる。
ジンの物語が、完全に書き換えられていく。
彼の魂を支えていた柱が、一本、また一本と引き抜かれ、代わりにリュウガへの絶対的な忠誠という名の黒い柱が打ち込まれていく。
ブツリ、と。
ジンの心の中で、何かが完全に切れる音がした。
◇ ◇ ◇
静寂が、戻る。
リュウガは、ゆっくりとジンの魂からその力を引き抜いた。
「…………」
ジンは、ぐったりと枷に体を預けていた。
その瞳から、光が完全に消え失せている。
やがて、彼はゆっくりと顔を上げた。
その瞳に宿るのは、もうかつての仲間への温かい光ではない。
ただ、リュウガという名の神を見つめる、狂信者の光だけだった。
彼は、その場で傅くように深く、深く頭を下げた。
「……我が身、我が魂の全ては、皇帝陛下のために」
その声は、感情のない人形のように平坦だった。
「結構」
リュウガは、満足そうに微笑んだ。
「お前は、生まれ変わったのだ、ジン。
帝国の、最も鋭い刃としてな」
彼は、ジンの手足に嵌められた枷を、まるで玩具でも壊すかのようにあっさりと引きちぎった。
「さあ、行け」
リュウガは、最後の命令を下す。
それは、かつての仲間に向けた、あまりにも残酷な死の宣告。
「お前のいた『巣』へ帰るんだ。
彼らは、お前の帰りを心配しているだろう」
「そして、その偽りの絆を信じきっている愚か者たちの心臓に、お前の裏切りの刃を突き立てろ」
「―――アケボシを、殲滅せよ」
「――御意」
ジンは、何の感情も見せずに頷いた。
そして、音もなく立ち上がると闇の中へとその姿を消していった。
後に残されたのは、満足げな笑みを浮かべるリュウガと、これから始まる悲劇の予感だけだった。
味方だった男は、今、最強の敵と化した。
そして、その裏切りの刃は、もうすぐそこまで迫っていた。
「……そうか。
やはり、ケントはお前を『汚染』してしまったらしいな」
彼は、深く、深くため息をついた。
「……ならば、仕方ない。
お前のその壊れてしまった物語を、俺が直々に『修復』してやることにしよう」
その言葉と同時に、リュウガの全身から黄金色のオーラが放たれた。
それは、ジンの魂を根源から揺さぶる、絶対的な王の威圧感。
「――《絶対王の勅令》」
その声は、もはや人のものではなかった。
魂そのものを凍てつかせる、神の宣告。
「――権能解放――」
「ぐ……あ……ああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!!」
ジンの口から、絶叫がほとばしった。
痛い。
だが、それは肉体的な痛みではない。
もっと根源的な、存在そのものが侵食されていくような魂の痛み。
リュウガのオーラが、冷たい金属の触手のようにジンの魂へと侵入してくる。
それは、彼の記憶の中を、物語の中を、土足で蹂躙していく。
(やめろ……!)
ジンは、必死に抵抗した。
(俺の物語に、踏み込んでくるな!)
だが、無駄だった。
リュウガの力は、あまりにも絶対的だった。
『――ケント……』
リュウガの力が、ケントとの出会いの記憶を見つけ出し、その光景を歪めていく。
ケントの「仲間になれ」という言葉が、「俺の駒になれ」という冷たい命令へとすり替わっていく。
『――ルナ……』
ルナの屈託のない笑顔が、自分を憐れむかのような侮蔑の笑みへと変わっていく。
大切な仲間たちの記憶が、次々と汚されていく。
温かい絆の物語が、冷たい裏切りの物語へと書き換えられていく。
ジンの魂が、悲鳴を上げていた。
(違う……違う、違うッ!)
(あいつらは、そんな奴らじゃない!)
彼は、最後の力を振り絞って抵抗する。
彼の魂の核。
【渇望】:自らの汚れた力を、本当に守るべき誰かのために使いたい。
その、あまりにも純粋な願いだけを、必死に守ろうとしていた。
だが、リュウガはその最後の砦すらも見逃さなかった。
『――お前の守るべきものは、ただ一つ』
リュウガの声が、神の宣告のように響き渡る。
『――お前の妹だ。
そして、その妹を守れるのは、この俺だけだ』
その言葉が、ジンの最後の抵抗を打ち砕いた。
そうだ。
結局、自分は妹一人すら守れない無力な存在なのだ。
アケボシという名の幻想に酔いしれ、最も大切なものから目を背けていただけなのだ。
彼の魂の核に、深い亀裂が入った。
その亀裂から、リュウガの力が濁流のように流れ込んでいく。
【渇望】:自らの全ての力を、皇帝リュウガ様のために使いたい。
【信条】:アケボシは、帝国と妹を脅かす絶対の悪。
【忠誠】:我が身、我が魂の全てをリュウガ様に捧げる。
ジンの物語が、完全に書き換えられていく。
彼の魂を支えていた柱が、一本、また一本と引き抜かれ、代わりにリュウガへの絶対的な忠誠という名の黒い柱が打ち込まれていく。
ブツリ、と。
ジンの心の中で、何かが完全に切れる音がした。
◇ ◇ ◇
静寂が、戻る。
リュウガは、ゆっくりとジンの魂からその力を引き抜いた。
「…………」
ジンは、ぐったりと枷に体を預けていた。
その瞳から、光が完全に消え失せている。
やがて、彼はゆっくりと顔を上げた。
その瞳に宿るのは、もうかつての仲間への温かい光ではない。
ただ、リュウガという名の神を見つめる、狂信者の光だけだった。
彼は、その場で傅くように深く、深く頭を下げた。
「……我が身、我が魂の全ては、皇帝陛下のために」
その声は、感情のない人形のように平坦だった。
「結構」
リュウガは、満足そうに微笑んだ。
「お前は、生まれ変わったのだ、ジン。
帝国の、最も鋭い刃としてな」
彼は、ジンの手足に嵌められた枷を、まるで玩具でも壊すかのようにあっさりと引きちぎった。
「さあ、行け」
リュウガは、最後の命令を下す。
それは、かつての仲間に向けた、あまりにも残酷な死の宣告。
「お前のいた『巣』へ帰るんだ。
彼らは、お前の帰りを心配しているだろう」
「そして、その偽りの絆を信じきっている愚か者たちの心臓に、お前の裏切りの刃を突き立てろ」
「―――アケボシを、殲滅せよ」
「――御意」
ジンは、何の感情も見せずに頷いた。
そして、音もなく立ち上がると闇の中へとその姿を消していった。
後に残されたのは、満足げな笑みを浮かべるリュウガと、これから始まる悲劇の予感だけだった。
味方だった男は、今、最強の敵と化した。
そして、その裏切りの刃は、もうすぐそこまで迫っていた。
0
あなたにおすすめの小説
推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる
ケイちゃん
ファンタジー
ゲームに熱中していた彼は、シナリオで現れたラスボスを好きになってしまう。
彼はその好意にラスボスを倒さず何度もリトライを重ねて会いに行くという狂気の推し活をしていた。
だがある日、ストーリーのエンディングが気になりラスボスを倒してしまう。
結果、ラスボスのいない平和な世界というエンドで幕を閉じ、推しのいない世界の悲しみから倒れて死んでしまう。
そんな彼が次に目を開けるとゲームの中の主人公に転生していた!
主人公となれば必ず最後にはラスボスに辿り着く、ラスボスを倒すという未来を変えて救いだす事を目的に彼は冒険者達と旅に出る。
ラスボスを倒し世界を救うという定められたストーリーをねじ曲げ、彼はラスボスを救う事が出来るのか…?
異世界おっさん一人飯
SILVER・BACK(アマゴリオ)
ファンタジー
サラリーマンのおっさんが事故に遭って異世界転生。
秀でた才能もチートもないが、出世欲もなく虚栄心もない。安全第一で冒険者として過ごし生き残る日々。
それは前世からの趣味である美味しいご飯を異世界でも食べ歩くためだった。
魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです
忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?
スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜
東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。
ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。
「おい雑魚、これを持っていけ」
ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。
ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。
怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。
いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。
だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。
ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。
勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。
自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。
今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。
だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。
その時だった。
目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。
その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。
ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。
そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。
これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。
※小説家になろうにて掲載中
家族と魔法と異世界ライフ!〜お父さん、転生したら無職だったよ〜
三瀬夕
ファンタジー
「俺は加藤陽介、36歳。普通のサラリーマンだ。日本のある町で、家族5人、慎ましく暮らしている。どこにでいる一般家庭…のはずだったんだけど……ある朝、玄関を開けたら、そこは異世界だった。一体、何が起きたんだ?転生?転移?てか、タイトル何これ?誰が考えたの?」
「えー、可愛いし、いいじゃん!ぴったりじゃない?私は楽しいし」
「あなたはね、魔導師だもん。異世界満喫できるじゃん。俺の職業が何か言える?」
「………無職」
「サブタイトルで傷、えぐらないでよ」
「だって、哀愁すごかったから。それに、私のことだけだと、寂しいし…」
「あれ?理沙が考えてくれたの?」
「そうだよ、一生懸命考えました」
「ありがとな……気持ちは嬉しいんだけど、タイトルで俺のキャリア終わっちゃってる気がするんだよな」
「陽介の分まで、私が頑張るね」
「いや、絶対、“職業”を手に入れてみせる」
突然、異世界に放り込まれた加藤家。
これから先、一体、何が待ち受けているのか。
無職になっちゃったお父さんとその家族が織りなす、異世界コメディー?
愛する妻、まだ幼い子どもたち…みんなの笑顔を守れるのは俺しかいない。
──家族は俺が、守る!
鬼死回生~酒呑童子の異世界転生冒険記~
今田勝手
ファンタジー
平安時代の日本で魑魅魍魎を束ねた最強の鬼「酒呑童子」。
大江山で討伐されたその鬼は、死の間際「人に生まれ変わりたい」と願った。
目が覚めた彼が見たのは、平安京とは全く異なる世界で……。
これは、鬼が人間を目指す更生の物語である、のかもしれない。
※本作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ネオページ」でも同時連載中です。
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
「元」面倒くさがりの異世界無双
空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。
「カイ=マールス」と。
よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる