異世界転生と『天賦(ギフト)』で最強になったが親友に裏切られ追放されたので、銀狼少女と『双星』として成り上がる!

月影 朔

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第19章:模倣者の覚醒

第138話:魂への一撃

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「……ぐ……う……ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっっ!!」 

 ジンは、頭を抱えてその場にうずくまった。 

 その絶叫は、もはや人形のものではない。 
失われた自分自身を取り戻そうと、もがき苦しむ人間の魂の叫びだった。

「……ジン!」

 「ジン殿!」 
仲間たちが、思わず駆け寄ろうとする。

「――来るな!」 
俺は、それを鋭く制した。

「まだだ! 
まだ、リュウガの呪いは解けていない!」

 そうだ。 
俺がやったのは、分厚い氷の壁に、ほんのわずかなヒビを入れただけ。 

 このヒビをこじ開け、彼の魂を完全に解放するためには、さらなる一撃が必要だ。

 俺の《物語の模倣者イミテーター》の力は、一つの天賦ギフトにつき一度しか使えない。 
もう、俺は《魂の指揮者ソウル・コンダクター》を使うことはできない。

 だが、俺の魂にはまだ、仲間たちの物語が眠っている。

(……ケント……) 
俺の脳裏に、サラの静かな声が響いた。 

(……彼の魂は、今、極めて不安定な状態……。 
リュウガの精神支配は、魂の構造そのものを書き換えるプログラムのようなもの。 
そのプログラムに、あなたというイレギュラーなデータが介入したことで、致命的なバグが発生している……!)

(……ありがとう、サラ。 
あんたのその力を、借りるぜ)

 俺は、苦悶くもんの声を上げ続けるジンを、冷徹な分析の目で見据えた。 
俺の瞳に、サラと同じ知的な青い光が宿る。

 俺は、叫んだ。 
この状況を打開するための、次なる一手。 俺たち《アケボシ》の、最高の「頭脳」の物語の名を。

「―――《万象解析オールシング・アナリシス》!」

 その言葉と同時に、俺の世界から色が消えた。 

 目の前のジンも、倒れた仲間たちも、この古文書館の全てが、美しい数式とエネルギーの流れとなって俺の脳内に再構築されていく。

見える。

 ジンの魂の中で、リュウガの呪いがどのような構造で彼を縛り付けているのか。 

 そのプログラムの、致命的な欠陥がどこにあるのか。 その全てが、手に取るように。

「―――そこだ!」 
俺は、確信を持って地を蹴った。 

 狙うは、ジンの急所ではない。 
彼の魂の構造の中で、最もエネルギーの流れがよどんでいる一点。

「―――ルナ!」 
俺は、心の中で最後の仲間の名を叫んだ。

「お前の牙を、俺に貸せ!」

 俺の全身を、ルナと同じ銀色のオーラが包み込む。 
それは、仲間との絆を力に変える、最強の戦士の物語。

「―――《絆を力にソウル・リンク》!」

 俺の拳に、仲間たちの全ての想いが集束していく。 
サラの分析能力で弱点を暴き出し、ルナの突破力でそこを突く。 

 そして、その根底にあるのは、ジンを救いたいという俺たち全員の願い。

 俺たちの、絆の力。 
それが、リュウガの孤独な支配を打ち破るための、唯一の答えのはずだ。

「―――目を覚ませ、ジンッ!!」 

 俺の絶叫と共に、仲間たちの全ての物語を乗せた拳が、ジンの胸の中心へと叩き込まれた。

 それは、物理的な破壊を目的とした攻撃ではない。 彼の魂を縛り付ける、呪いの鎖を断ち切るための、魂の一撃。

 その拳が、彼の胸に届いた瞬間。 
俺の脳裏に、リュウガの嘲笑あざわらうかのような声が、響き渡った気がした。

(―――無駄だ、と)

(―――その程度で、俺の呪いが解けるものか、と)

 だが、俺はもう何も恐れない。 
俺たちの物語は、まだ始まったばかりなのだから。
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