異世界転生と『天賦(ギフト)』で最強になったが親友に裏切られ追放されたので、銀狼少女と『双星』として成り上がる!

月影 朔

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第19章:模倣者の覚醒

第140話:最後の模倣

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 俺は、最後の力を振り絞って再び地を蹴った。
ジンの懐へと、一直線に飛び込む。

 俺の瞳は、もはやただの黒ではない。
サラの知的な青い光と、ルナの獰猛どうもう琥珀色こはくいろの光が、その中で渦巻いていた。

「―――《万象解析オールシング・アナリシス》!」

 世界から、再び色が消える。

 ジンの魂の構造、リュウガが仕掛けた洗脳プログラムの全てが、美しい数式となって俺の脳内に再構築されていく。
見える。
彼の魂の中で、今まさに修復されようとしている亀裂。
そして、その修復プログラムの、致命的な欠陥。

(――そこだ!)

 俺は、確信を持ってジンの防御網をかいくぐる。
彼の動きは、まだわずかに鈍い。
魂のバグが、その完璧な予測能力にノイズを発生させているのだ。

(―――ルナ!)
俺は、心の中で最強の剣の名を叫んだ。

(お前の牙を、俺に貸せ!)

「―――《絆を力にソウル・リンク》!」

 俺の全身を、銀色のオーラが包み込む。
それは、仲間との絆を力に変える、最強の戦士の物語。

 俺は、もはやケントではない。
サラの「頭脳」と、ルナの「牙」をその身に宿した、全く新しい存在。
その動きは、ジンが持つ俺の過去の戦闘データには、どこにも存在しない。

「なっ……!?」
ジンの瞳に、再び予測不能なエラーに対する驚愕きょうがくの色が浮かんだ。

 俺の動きは、軍師としての合理的なものではない。
もっと本能的で、もっと野性的。
まるで、銀色の狼そのものが舞うかのような、予測不能な軌道。

 その動きで、俺はジンの懐深くにまで潜り込んだ。

 そして、俺の拳に仲間たちの全ての想いが、再び集束していく。
リラの悲しみ、エリアーナの祈り、エルゴの願い、アレクシオスの苦悩くのう
そして、ルナの怒り。

「―――目を覚ませ、ジンッ!!」

 俺の絶叫と共に、仲間たちの全ての物語を乗せた拳が、再びジンの胸の中心――《万象解析オールシング・アナリシス》が見つけ出した、呪いのプログラムの最も脆い一点へと叩き込まれた。

「ぐ……あああああああああああああああああああああああっっ!!」

 ジンの体が、くの字に折れ曲がる。
その口から、血ではない黒い瘴気しょうきのようなものが吐き出された。
リュウガの呪いが、悲鳴を上げている。

 ジンの瞳の中で、再び二つの光が激しくせめぎ合う。
今度は、さっきよりもずっと長く、そして激しく。

「……やめ……ろ……」
ジンの口から、二つの声が同時に聞こえた。

 人形としての、冷たい声。
そして、人間としての、苦痛に満ちた声。

「……皇帝陛下の……命令は……絶対だ……」

「……だが……ケント……お前を……仲間を……俺は……」

 彼の魂は、今まさに引き裂かれようとしていた。

 俺は、その光景をただ見ていることしかできない。
俺の《物語の模倣者イミテーター》の力は、もう限界に近かった。
一つの天賦ギフトを模倣するだけでも魂を削るのに、三つも同時に発動させたのだ。

 意識が、遠のいていく。

(……まだだ……)
俺は、必死に意識を繋ぎ止める。

(……まだ、終われない……)

 俺の攻撃は、確かに効いている。
だが、これだけでは足りない。
ただ外側から衝撃を与えるだけでは、リュウガが仕掛けた呪いの根を断ち切ることはできない。

 もっと繊細せんさいな、外科手術のような一撃が必要だ。
彼の魂の傷口に直接触れ、その呪いの構造そのものを内側から「修復」する力が。

(……修復……する……力……)

 俺の脳裏を、ある仲間の顔がよぎった。
失われた物語を、その力で取り戻すことができる、ただ一人の仲間。

(……そうだ……。
あいつの力が、必要だ……!)

 俺は、朦朧もうろうとする意識の中で最後の力を振り絞った。
この絶望的な盤面をひっくり返すための、最後の模倣イミテート

 俺は、後方で息をんで戦況を見守るリラへと、魂で叫んだ。

(――リラッ!
あんたの物語を、俺に貸せ!)

 俺の瞳に、サラの青とも、ルナの琥珀色こはくいろとも違う、優しく温かい茶色の光が宿る。
それは、壊れたものを癒し、失われたものを取り戻すための、慈愛の光。

俺は、叫んだ。
この悪夢を終わらせるための、最後の天賦ギフトの名を。

「―――《記憶の修復師メモリー・レストアラー》!」

 その言葉が、この物語の本当のクライマックスの始まりを告げる合図となった。
俺たちの、絆の力が今、奇跡を起こそうとしていた。
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