異世界転生と『天賦(ギフト)』で最強になったが親友に裏切られ追放されたので、銀狼少女と『双星』として成り上がる!

月影 朔

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第19章:模倣者の覚醒

第141話:悪魔の論理

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「―――《記憶の修復師メモリー・レストアラー》!」

 その言葉が、この物語の本当のクライマックスの始まりを告げる合図となった。
俺たちの、絆の力が今、奇跡を起こそうとしていた。

◇ ◇ ◇

 俺の絶叫に、仲間たちの魂が共鳴した。

 後方で息をんでいたリラの瞳が、信じられないものを見るかのように大きく見開かれる。
彼女の天賦ギフト、彼女だけの物語のはずの力が、今、俺の魂と完全に一つになろうとしていた。

 俺の全身を包んでいた、サラの知的な青い光とルナの獰猛どうもう琥珀色こはくいろの光が、すっとその姿を消す。
代わりにあふれ出したのは、リラの魂と同じ、どこまでも優しく温かい茶色の光だった。

 それは、破壊のための光ではない。
攻撃のための力ではない。
壊れたものを癒し、失われたものを取り戻すための、慈愛に満ちた修復の光。

「……ケント……あんた、まさか……!」
ルナが、驚愕きょうがくの声を上げる。

 俺の天賦ギフト、《物語の模倣者イミテーター》が持つ本当の可能性に、彼女も気づき始めたのだろう。

 俺は、もがき苦しむジンの前にゆっくりと膝をついた。
その瞳の中で、二つの人格が今もなお激しくせめぎ合っている。

(……もう、楽にしてやる)
俺は、心の中で静かに語りかけた。

(お前を縛り付ける、その呪いを……
俺が、完全に断ち切ってやる)

 俺は、震えるジンの額にそっと手を触れた。
記憶の修復師メモリー・レストアラー》の力が、俺の手を通してジンの魂の最も深い場所へと流れ込んでいく。

 俺の意識は、再び彼の魂の世界へと潜行した。
だが、今度は戦うためではない。
治療するためだ。
魂の外科医として、リュウガが植え付けた呪いという名の病巣を、根こそぎ切除するために。

 俺の目の前に、ジンの魂の構造が、まるで精密なタペストリーのように広がる。
そこには、彼が本来持っていたはずの美しい物語の糸――妹への愛、仲間への忠誠、正義への渇望――が複雑に織り込まれていた。

 だが、その美しいタペストリーの中心に、リュウガの呪いが黒く、醜い染みのように広がっている。
それは、ただ物語を上書きしただけではなかった。
もっと悪質で、巧妙な呪縛。

 リュウガは、ジンの魂の核となっている「妹への想い」そのものを、自らの呪いの『錨』として利用していたのだ。

『妹を守りたい』
その、あまりにも純粋で気高い願い。
その美しい物語の糸に、リュウガは黒い茨のような呪いの糸を絡みつかせている。

『妹を守りたい』
 ↓
『妹を守れるのは、皇帝陛下だけだ』
 ↓
『故に、皇帝陛下に絶対の忠誠を誓わなければならない』
 ↓
『アケボシは、その皇帝陛下に逆らう悪。つまり、妹の命を脅かす敵だ』
 ↓
『だから、アケボシを殲滅せんめつしなければならない』

 なんという、悪魔的な論理のすり替え。

 ジンの最も美しい部分を、最も醜い呪いのための楔として利用しているのだ。
これでは、ただ外側から衝撃を与えただけでは決して呪いは解けない。
下手にこの茨を断ち切ろうとすれば、ジンの妹への想いという、彼の魂の核そのものを傷つけかねない。

(……これか。
これが、リュウガの呪いの本当の正体か……)

 俺は、そのあまりの非道さに奥歯を強く噛み締めた。
だが、絶望はしない。
俺の模倣した《記憶の修復師メモリー・レストアラー》の力は、その呪いの構造を完全に解析していた。
そして、その破壊方法もまた、俺の脳裏にはっきりと見えている。

 この呪いの核となっているのは、「妹への歪められた想い」。
ならば、その歪みを正すための、もっと強く、もっと純粋な「想い」をぶつければいい。

 俺一人の力では足りない。
だが、今の俺は一人じゃない。
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