異世界転生と『天賦（ギフト）』で最強になったが親友に裏切られ追放されたので、銀狼少女と『双星』として成り上がる！

第19章：模倣者の覚醒

第144話：家族という名のギルド

　ジンは、何も言えなかった。
ただ、仲間たちの温かい物語に包まれて、子供のように声を上げて泣きじゃくるだけだった。

　やがて、俺はゆっくりと彼の前に立った。
仲間たちの輪の中心で、俺は最後の言葉を紡ぐ。

「ジン」
俺の声に、彼が涙に濡れた顔を上げた。
俺は、彼の前に静かに膝をつくと、その視線を合わせた。

「……すまなかった」
俺は、深く、深く頭を下げた。

「……え……？」
ジンが、驚きの声を上げる。

「俺の、責任だ。
俺がお前を、あの罠の中に送り込んだ。
俺の分析が、甘かった。
俺が、もっと早くリュウガの本当の狙いに気づいていれば……お前がこんな苦しみを味わうことはなかった」

　軍師として、リーダーとして。
これは、俺が背負うべき罪だ。

「だから、お前が一人で罪悪感を背負う必要はない。
お前が犯した罪は、俺たちの罪だ。
そして、お前が味わった苦しみは、俺たちの苦しみだ」

　俺は、顔を上げた。
そして、ルナやエルゴを仲間にした時と同じように、彼に手を差し伸べる。

「おかえり、ジン。
俺たちの、かけがえのない『影』」

「お前がいなければ、俺たちの光は輝けない。
もう一度、俺の背中を任せてもいいか？」

　その言葉が、ジンの魂を完全に救い出した。
彼は、嗚咽を漏らしながら、震える手で俺の手を力強く握り返した。

「……ああ……」
彼は、何度も、何度も頷いた。

「……ああ……！
もちろんだ、ケント……！」

　固く握り合った俺たちの手を中心に、仲間たちの手が次々と重ねられていく。
ルナの、エルゴの、リラの、エリアーナの、サラの、そしてアレクシオスの。
意識を取り戻したノクスもまた、リラに肩を支えられながら、おぼつかない足取りで俺たちの輪に加わった。

　八つの魂が、一つになった。
俺たち《アケボシ》の絆は、このあまりにも残酷な事件を通じて、以前よりもさらに強く、揺るぎないものとなったのだ。

　俺たちは、ただの寄せ集めのチームではない。
互いの傷を癒し、互いの罪を分かち合い、それでも共に前へと進むことを誓った、本当の「家族」になったのだ。

◇　◇　◇

　数日後。
俺たちは、芸術都市アリアを後にして、再び旅路についていた。

　ジンは、すっかり元の調子を取り戻していた。
いや、元以上かもしれない。
一度死んだ彼の魂は、仲間たちの絆によって再誕し、以前よりもずっと強く、そして優しい光を宿していた。

　旅の道中、俺たちは次の目的地について話し合っていた。
その中心にいたのは、言うまでもなく俺だ。

　だが、仲間たちが俺に向ける視線は、以前とは少しだけ違っていた。
そこに宿るのは、ただの軍師への信頼ではない。
もっと根源的な、自分たちの物語の全てを託すことができるという、絶対的な信頼。

　彼らは、見ていたのだ。
俺の《物語の模倣者イミテーター》が、仲間たちの力を束ねて奇跡を起こす瞬間を。

　俺は、もはや単なる軍師ではない。
百の物語をその身に宿し、その力を自在に組み合わせて無限の戦術を生み出すことができる、唯一無二の存在。

　俺たち《アケボシ》の、本当の意味での「司令塔」となったのだ。

　俺は、仲間たちの顔を見渡した。
その誰もが、俺の次の一手を待っている。
俺が紡ぎ出す、新たな物語の始まりを。

　俺は、不敵に笑った。
そして、高らかに宣言する。

「―――行くぞ、みんな」

「俺たちの、本当の戦場へ」

　その言葉が、リュウガが支配する帝国への、本格的な反撃の狼煙となった。
俺たちの物語は、今、最終章へと向けて大きく動き出そうとしていた。