異世界転生と『天賦(ギフト)』で最強になったが親友に裏切られ追放されたので、銀狼少女と『双星』として成り上がる!

月影 朔

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第20章:帝都への道

第148話:反逆の狼煙

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 その、あまりにも強引な物語の上書き。
だが、生まれたばかりの無垢な魂を持つ種にとって、その記憶は絶対の真実だった。

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!

 地響きが、始まった。
要塞の、内側から。

 俺の目の前で、信じられない光景が広がる。
足元の岩盤を突き破って、巨大な根がつたのように伸びていく。
壁を突き破り、天井を突き破り、無数の植物がその生命を爆発させた。

 数千年の時を一瞬で駆け抜けた植物たちは、もはやただの若葉ではない。
鋼鉄すらも砕く、巨大な大樹へと姿を変えていた。

「な、なんだこれは!?」

「要塞が、内側から……!」

 兵士たちの、悲鳴が響き渡る。
だが、もう遅い。
リュウガが創り上げた無機質な要塞は、生命そのものの、制御不能な力によって内側から食い破られていく。

 俺は、その崩壊の中心で静かに笑っていた。
そして、最後の仕上げにかかる。

「―――ルナ! アレクシオス!」
俺は、崖の上で待機していた二人の最強戦力に、最後の指示を飛ばした。

「要塞の防御結界は、もうない!
外壁の、俺が示した一点!
そこが、この要塞の唯一の『へそ』だ!」

「―――応ッ!」

「―――承知した!」

 二つの雄叫びが、響き渡る。

 ルナが、地を蹴った。
その全身には、アレクシオスから借り受けた《命の重みウェイト・オブ・ライフ》の力が、黄金色のオーラとなって渦巻いている。

 仲間を守るという、アレクシオスの気高い物語。
そして、その仲間を信じるという、ルナの揺るぎない物語。
二つの物語が、今、一つになった。

 彼女は、もはやただの剣ではない。
仲間たちの想いをその身に宿す、無敵の守護者であり、最強の破壊者。

「―――喰らいやがれぇぇぇぇぇぇっっ!!」

 ルナの渾身こんしんの一撃が、俺が示した要塞の外壁、そのたった一点へと叩き込まれた。

 ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!!

 空気を震わす、すさまじい轟音。
要塞の威容いようを誇っていた黒い巨岩きょがんが、まるで砂の城のようにガラガラと崩れ落ちていく。

 沈黙の要塞が、陥落した。
たった、八人の力によって。

◇ ◇ ◇

 俺たち《アケボシ》が『沈黙の要塞』を陥落させたというニュースは、風よりも速く帝国全土を駆け巡った。

 それは、ただの一つの勝利ではなかった。
リュウガの絶対支配は、無敵ではない。
その鉄壁の仕組みにも、穴がある。
その事実が、今まで沈黙を強いられてきた者たちの魂に、小さな、だが確かな火を灯したのだ。

 帝都から遠く離れた、北の鉱山都市。
不当な重税に苦しめられていたドワーフたちが、武器を手に蜂起した。

 西の商業都市では、帝国の不当な関税に反発した商人たちが、ギルドを挙げてストライキを開始した。

 そして、南の豊かな穀倉地帯では、リュウガの精神支配から解放された農民たちが、《アケボシ》の旗を掲げ、圧政に苦しむ近隣の村々を次々と解放していった。

 その全てが、俺の覚醒と、沈黙の要塞の陥落に呼応したかのような、同時多発的な反乱だった。

「……始まったな」
要塞の残骸の上に立ち、俺は次々と舞い込んでくる報告に静かにうなずいていた。

「ケントの覚醒に呼応し、帝国内の協力者たちが一斉に決起。
帝国は、内側から崩壊を始める」

 俺たちの物語は、もはや俺たちだけの物語ではない。
この帝国に生きる、全ての者たちの物語へと繋がり始めたのだ。

「……すごい……」
ルナが、感嘆の声を漏らす。

「アタシたちがやったことが、こんな大きな……」

「ああ。だが、これはまだ序章に過ぎない」
俺は、帝都があるであろう東の空をにらみつけた。

「リュウガが、このまま黙っているはずがない。
必ず、次の一手を打ってくる。
それも、俺たちの想像を絶する、最も悪質な手で」

 俺の予感は、確信に近かった。
この全土の蜂起は、リュウガにとって計算外の出来事だったかもしれない。
だが、あの男がこの程度のことで絶望するはずがない。

 むしろ、彼はこの混沌カオスすらも利用して、俺たちを潰しにかかるだろう。

 俺たちの、帝都への道。
それは、今、始まったばかりだ。

 そして、その先に待つのが希望か、あるいはさらなる絶望か。
それは、まだ誰にも分からなかった。
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