148 / 150
第20章:帝都への道
第148話:反逆の狼煙
しおりを挟む
その、あまりにも強引な物語の上書き。
だが、生まれたばかりの無垢な魂を持つ種にとって、その記憶は絶対の真実だった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!
地響きが、始まった。
要塞の、内側から。
俺の目の前で、信じられない光景が広がる。
足元の岩盤を突き破って、巨大な根が蔦のように伸びていく。
壁を突き破り、天井を突き破り、無数の植物がその生命を爆発させた。
数千年の時を一瞬で駆け抜けた植物たちは、もはやただの若葉ではない。
鋼鉄すらも砕く、巨大な大樹へと姿を変えていた。
「な、なんだこれは!?」
「要塞が、内側から……!」
兵士たちの、悲鳴が響き渡る。
だが、もう遅い。
リュウガが創り上げた無機質な要塞は、生命そのものの、制御不能な力によって内側から食い破られていく。
俺は、その崩壊の中心で静かに笑っていた。
そして、最後の仕上げにかかる。
「―――ルナ! アレクシオス!」
俺は、崖の上で待機していた二人の最強戦力に、最後の指示を飛ばした。
「要塞の防御結界は、もうない!
外壁の、俺が示した一点!
そこが、この要塞の唯一の『へそ』だ!」
「―――応ッ!」
「―――承知した!」
二つの雄叫びが、響き渡る。
ルナが、地を蹴った。
その全身には、アレクシオスから借り受けた《命の重み》の力が、黄金色のオーラとなって渦巻いている。
仲間を守るという、アレクシオスの気高い物語。
そして、その仲間を信じるという、ルナの揺るぎない物語。
二つの物語が、今、一つになった。
彼女は、もはやただの剣ではない。
仲間たちの想いをその身に宿す、無敵の守護者であり、最強の破壊者。
「―――喰らいやがれぇぇぇぇぇぇっっ!!」
ルナの渾身の一撃が、俺が示した要塞の外壁、そのたった一点へと叩き込まれた。
ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!!
空気を震わす、すさまじい轟音。
要塞の威容を誇っていた黒い巨岩が、まるで砂の城のようにガラガラと崩れ落ちていく。
沈黙の要塞が、陥落した。
たった、八人の力によって。
◇ ◇ ◇
俺たち《アケボシ》が『沈黙の要塞』を陥落させたというニュースは、風よりも速く帝国全土を駆け巡った。
それは、ただの一つの勝利ではなかった。
リュウガの絶対支配は、無敵ではない。
その鉄壁の仕組みにも、穴がある。
その事実が、今まで沈黙を強いられてきた者たちの魂に、小さな、だが確かな火を灯したのだ。
帝都から遠く離れた、北の鉱山都市。
不当な重税に苦しめられていたドワーフたちが、武器を手に蜂起した。
西の商業都市では、帝国の不当な関税に反発した商人たちが、ギルドを挙げてストライキを開始した。
そして、南の豊かな穀倉地帯では、リュウガの精神支配から解放された農民たちが、《アケボシ》の旗を掲げ、圧政に苦しむ近隣の村々を次々と解放していった。
その全てが、俺の覚醒と、沈黙の要塞の陥落に呼応したかのような、同時多発的な反乱だった。
「……始まったな」
要塞の残骸の上に立ち、俺は次々と舞い込んでくる報告に静かに頷いていた。
「ケントの覚醒に呼応し、帝国内の協力者たちが一斉に決起。
帝国は、内側から崩壊を始める」
俺たちの物語は、もはや俺たちだけの物語ではない。
この帝国に生きる、全ての者たちの物語へと繋がり始めたのだ。
「……すごい……」
ルナが、感嘆の声を漏らす。
「アタシたちがやったことが、こんな大きな……」
「ああ。だが、これはまだ序章に過ぎない」
俺は、帝都があるであろう東の空を睨みつけた。
「リュウガが、このまま黙っているはずがない。
必ず、次の一手を打ってくる。
それも、俺たちの想像を絶する、最も悪質な手で」
俺の予感は、確信に近かった。
この全土の蜂起は、リュウガにとって計算外の出来事だったかもしれない。
だが、あの男がこの程度のことで絶望するはずがない。
むしろ、彼はこの混沌すらも利用して、俺たちを潰しにかかるだろう。
俺たちの、帝都への道。
それは、今、始まったばかりだ。
そして、その先に待つのが希望か、あるいはさらなる絶望か。
それは、まだ誰にも分からなかった。
だが、生まれたばかりの無垢な魂を持つ種にとって、その記憶は絶対の真実だった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……!
地響きが、始まった。
要塞の、内側から。
俺の目の前で、信じられない光景が広がる。
足元の岩盤を突き破って、巨大な根が蔦のように伸びていく。
壁を突き破り、天井を突き破り、無数の植物がその生命を爆発させた。
数千年の時を一瞬で駆け抜けた植物たちは、もはやただの若葉ではない。
鋼鉄すらも砕く、巨大な大樹へと姿を変えていた。
「な、なんだこれは!?」
「要塞が、内側から……!」
兵士たちの、悲鳴が響き渡る。
だが、もう遅い。
リュウガが創り上げた無機質な要塞は、生命そのものの、制御不能な力によって内側から食い破られていく。
俺は、その崩壊の中心で静かに笑っていた。
そして、最後の仕上げにかかる。
「―――ルナ! アレクシオス!」
俺は、崖の上で待機していた二人の最強戦力に、最後の指示を飛ばした。
「要塞の防御結界は、もうない!
外壁の、俺が示した一点!
そこが、この要塞の唯一の『へそ』だ!」
「―――応ッ!」
「―――承知した!」
二つの雄叫びが、響き渡る。
ルナが、地を蹴った。
その全身には、アレクシオスから借り受けた《命の重み》の力が、黄金色のオーラとなって渦巻いている。
仲間を守るという、アレクシオスの気高い物語。
そして、その仲間を信じるという、ルナの揺るぎない物語。
二つの物語が、今、一つになった。
彼女は、もはやただの剣ではない。
仲間たちの想いをその身に宿す、無敵の守護者であり、最強の破壊者。
「―――喰らいやがれぇぇぇぇぇぇっっ!!」
ルナの渾身の一撃が、俺が示した要塞の外壁、そのたった一点へと叩き込まれた。
ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!!!
空気を震わす、すさまじい轟音。
要塞の威容を誇っていた黒い巨岩が、まるで砂の城のようにガラガラと崩れ落ちていく。
沈黙の要塞が、陥落した。
たった、八人の力によって。
◇ ◇ ◇
俺たち《アケボシ》が『沈黙の要塞』を陥落させたというニュースは、風よりも速く帝国全土を駆け巡った。
それは、ただの一つの勝利ではなかった。
リュウガの絶対支配は、無敵ではない。
その鉄壁の仕組みにも、穴がある。
その事実が、今まで沈黙を強いられてきた者たちの魂に、小さな、だが確かな火を灯したのだ。
帝都から遠く離れた、北の鉱山都市。
不当な重税に苦しめられていたドワーフたちが、武器を手に蜂起した。
西の商業都市では、帝国の不当な関税に反発した商人たちが、ギルドを挙げてストライキを開始した。
そして、南の豊かな穀倉地帯では、リュウガの精神支配から解放された農民たちが、《アケボシ》の旗を掲げ、圧政に苦しむ近隣の村々を次々と解放していった。
その全てが、俺の覚醒と、沈黙の要塞の陥落に呼応したかのような、同時多発的な反乱だった。
「……始まったな」
要塞の残骸の上に立ち、俺は次々と舞い込んでくる報告に静かに頷いていた。
「ケントの覚醒に呼応し、帝国内の協力者たちが一斉に決起。
帝国は、内側から崩壊を始める」
俺たちの物語は、もはや俺たちだけの物語ではない。
この帝国に生きる、全ての者たちの物語へと繋がり始めたのだ。
「……すごい……」
ルナが、感嘆の声を漏らす。
「アタシたちがやったことが、こんな大きな……」
「ああ。だが、これはまだ序章に過ぎない」
俺は、帝都があるであろう東の空を睨みつけた。
「リュウガが、このまま黙っているはずがない。
必ず、次の一手を打ってくる。
それも、俺たちの想像を絶する、最も悪質な手で」
俺の予感は、確信に近かった。
この全土の蜂起は、リュウガにとって計算外の出来事だったかもしれない。
だが、あの男がこの程度のことで絶望するはずがない。
むしろ、彼はこの混沌すらも利用して、俺たちを潰しにかかるだろう。
俺たちの、帝都への道。
それは、今、始まったばかりだ。
そして、その先に待つのが希望か、あるいはさらなる絶望か。
それは、まだ誰にも分からなかった。
0
あなたにおすすめの小説
スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜
東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。
ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。
「おい雑魚、これを持っていけ」
ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。
ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。
怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。
いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。
だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。
ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。
勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。
自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。
今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。
だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。
その時だった。
目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。
その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。
ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。
そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。
これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。
※小説家になろうにて掲載中
家族と魔法と異世界ライフ!〜お父さん、転生したら無職だったよ〜
三瀬夕
ファンタジー
「俺は加藤陽介、36歳。普通のサラリーマンだ。日本のある町で、家族5人、慎ましく暮らしている。どこにでいる一般家庭…のはずだったんだけど……ある朝、玄関を開けたら、そこは異世界だった。一体、何が起きたんだ?転生?転移?てか、タイトル何これ?誰が考えたの?」
「えー、可愛いし、いいじゃん!ぴったりじゃない?私は楽しいし」
「あなたはね、魔導師だもん。異世界満喫できるじゃん。俺の職業が何か言える?」
「………無職」
「サブタイトルで傷、えぐらないでよ」
「だって、哀愁すごかったから。それに、私のことだけだと、寂しいし…」
「あれ?理沙が考えてくれたの?」
「そうだよ、一生懸命考えました」
「ありがとな……気持ちは嬉しいんだけど、タイトルで俺のキャリア終わっちゃってる気がするんだよな」
「陽介の分まで、私が頑張るね」
「いや、絶対、“職業”を手に入れてみせる」
突然、異世界に放り込まれた加藤家。
これから先、一体、何が待ち受けているのか。
無職になっちゃったお父さんとその家族が織りなす、異世界コメディー?
愛する妻、まだ幼い子どもたち…みんなの笑顔を守れるのは俺しかいない。
──家族は俺が、守る!
転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚
熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。
しかし職業は最強!?
自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!?
ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。
「元」面倒くさがりの異世界無双
空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。
「カイ=マールス」と。
よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
異世界おっさん一人飯
SILVER・BACK(アマゴリオ)
ファンタジー
サラリーマンのおっさんが事故に遭って異世界転生。
秀でた才能もチートもないが、出世欲もなく虚栄心もない。安全第一で冒険者として過ごし生き残る日々。
それは前世からの趣味である美味しいご飯を異世界でも食べ歩くためだった。
推しがラスボスなので救いたい〜ゲーマーニートは勇者になる
ケイちゃん
ファンタジー
ゲームに熱中していた彼は、シナリオで現れたラスボスを好きになってしまう。
彼はその好意にラスボスを倒さず何度もリトライを重ねて会いに行くという狂気の推し活をしていた。
だがある日、ストーリーのエンディングが気になりラスボスを倒してしまう。
結果、ラスボスのいない平和な世界というエンドで幕を閉じ、推しのいない世界の悲しみから倒れて死んでしまう。
そんな彼が次に目を開けるとゲームの中の主人公に転生していた!
主人公となれば必ず最後にはラスボスに辿り着く、ラスボスを倒すという未来を変えて救いだす事を目的に彼は冒険者達と旅に出る。
ラスボスを倒し世界を救うという定められたストーリーをねじ曲げ、彼はラスボスを救う事が出来るのか…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる