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第四章:再建の道と未来へ
第四十三話:新たな廻米筋
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御目付から得た「裏の廻米筋」の情報は、稲穂屋にとって千載一遇の好機だった。
飢饉で米の流通が滞る中、公儀の役人も知り得ないような抜け道を使って、淀屋が米を仕入れていたという事実。
その空白となったルートを、今、稲穂屋が活用する時が来たのだ。
「佐助さん、お義父様、そして新助さん、女将さん」
お凛は、皆を帳場に集めた。
「御目付様から、淀屋が使っていた裏の廻米筋について、いくつかの情報をいただきました。ここを狙えば、米を仕入れることができるかもしれません」
お凛は、御目付から聞いた情報を、地図に落とし込みながら説明した。
それは、通常の主要街道ではなく、人里離れた山間部を通る道や、小さな港を経由する水路など、一見すると米の運搬には不向きに思える場所ばかりだった。
「なるほど…こんな場所を淀屋は使っておったのか。公儀の目から逃れるには、確かにうってつけの場所じゃな」
義父は、地図を睨みながら唸った。
「そやけど、こんなとこ、あんまり道もようないし、危険とちゃいますか?」
新助が、心配そうに言った。
「はい、危険は伴います。しかし、他に米を仕入れる道がない以上、ここを攻めるしかありません」
お凛は、きっぱりと言い切った。彼女の目には、再建への強い覚悟が宿っていた。
問題は、その裏の廻米筋をどうやって利用するか、そして米をいかに確保するかだ。
御目付はルートを教えただけで、具体的な取引先や米の確保までは言及しなかった。
「淀屋が失脚した今、その廻米筋も無主の状態。つまり、そこに米が流れるとしても、それを買い取る者がいないかもしれん。あるいは、別の悪党が既に目を付けているかもしれぬ」
義父は、これまでの経験から、考えられる可能性を指摘した。
「いずれにせよ、実際にその場所へ赴き、状況を確認する必要があります」
お凛は言った。
「新助さん、そして何人かの男衆に、私と共にその場所へ行ってもらえませんか?」
新助は、顔色を変えた。
「お凛さん、あんたまで行くんですか!? そんな危ない場所に!」
「はい。この米の仕入れは、稲穂屋の命運を分けるものです。私が直接状況を確認し、交渉に臨む必要があります」
お凛は、決して譲らなかった。
彼女は、算盤を手に、その場所で直接、米の量、質、そして価格を吟味しなければならないと考えていた。
新助は、しばらくお凛の真剣な目を見つめていたが、やがて頷いた。
「分かりました。お凛さん、命に変えても守らせてもらいますわ」
かくして、お凛と新助、そして数人の男衆は、米を求めて、新たな旅に出ることを決意した。彼らが向かうのは、淀屋が公儀の目を欺いて米を運び込んでいた、闇の廻米筋。
そこには、飢饉に苦しむ大坂の町を救う米が隠されているかもしれないし、あるいは、新たな危険が待ち受けているかもしれない。
旅の準備は、入念に行われた。
食料や水、そして万が一のための用心棒も兼ねた男衆たち。
彼らは皆、稲穂屋の再建と、町の民を救うというお凛の熱い思いに共鳴していた。
数日後、お凛たちは、人目を忍んで大坂を出発した。
彼らが辿る道は、これまで多くの米問屋が利用してきた賑やかな街道とは異なり、荒れた山道や、寂れた水路だった。
道中には、飢えに苦しむ人々が点々と見られ、飢饉の深刻さを改めて突きつけられた。
お凛は、道中も算盤を離さなかった。
彼女の頭の中では、入手可能な米の量、価格、そして大坂までの運搬費用など、あらゆる数字が計算され、最適な仕入れ計画が練られていた。
旅の目的は、単に米を仕入れることだけではない。それは、稲穂屋が新たな時代に生き残るための、新たな商いの形を見つける旅でもあった。
淀屋のような不正な商いではなく、真に人々を救い、社会に貢献する商いとは何か。
お凛は、算盤を弾きながら、その答えを探し続けていた。
飢饉で米の流通が滞る中、公儀の役人も知り得ないような抜け道を使って、淀屋が米を仕入れていたという事実。
その空白となったルートを、今、稲穂屋が活用する時が来たのだ。
「佐助さん、お義父様、そして新助さん、女将さん」
お凛は、皆を帳場に集めた。
「御目付様から、淀屋が使っていた裏の廻米筋について、いくつかの情報をいただきました。ここを狙えば、米を仕入れることができるかもしれません」
お凛は、御目付から聞いた情報を、地図に落とし込みながら説明した。
それは、通常の主要街道ではなく、人里離れた山間部を通る道や、小さな港を経由する水路など、一見すると米の運搬には不向きに思える場所ばかりだった。
「なるほど…こんな場所を淀屋は使っておったのか。公儀の目から逃れるには、確かにうってつけの場所じゃな」
義父は、地図を睨みながら唸った。
「そやけど、こんなとこ、あんまり道もようないし、危険とちゃいますか?」
新助が、心配そうに言った。
「はい、危険は伴います。しかし、他に米を仕入れる道がない以上、ここを攻めるしかありません」
お凛は、きっぱりと言い切った。彼女の目には、再建への強い覚悟が宿っていた。
問題は、その裏の廻米筋をどうやって利用するか、そして米をいかに確保するかだ。
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「淀屋が失脚した今、その廻米筋も無主の状態。つまり、そこに米が流れるとしても、それを買い取る者がいないかもしれん。あるいは、別の悪党が既に目を付けているかもしれぬ」
義父は、これまでの経験から、考えられる可能性を指摘した。
「いずれにせよ、実際にその場所へ赴き、状況を確認する必要があります」
お凛は言った。
「新助さん、そして何人かの男衆に、私と共にその場所へ行ってもらえませんか?」
新助は、顔色を変えた。
「お凛さん、あんたまで行くんですか!? そんな危ない場所に!」
「はい。この米の仕入れは、稲穂屋の命運を分けるものです。私が直接状況を確認し、交渉に臨む必要があります」
お凛は、決して譲らなかった。
彼女は、算盤を手に、その場所で直接、米の量、質、そして価格を吟味しなければならないと考えていた。
新助は、しばらくお凛の真剣な目を見つめていたが、やがて頷いた。
「分かりました。お凛さん、命に変えても守らせてもらいますわ」
かくして、お凛と新助、そして数人の男衆は、米を求めて、新たな旅に出ることを決意した。彼らが向かうのは、淀屋が公儀の目を欺いて米を運び込んでいた、闇の廻米筋。
そこには、飢饉に苦しむ大坂の町を救う米が隠されているかもしれないし、あるいは、新たな危険が待ち受けているかもしれない。
旅の準備は、入念に行われた。
食料や水、そして万が一のための用心棒も兼ねた男衆たち。
彼らは皆、稲穂屋の再建と、町の民を救うというお凛の熱い思いに共鳴していた。
数日後、お凛たちは、人目を忍んで大坂を出発した。
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道中には、飢えに苦しむ人々が点々と見られ、飢饉の深刻さを改めて突きつけられた。
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淀屋のような不正な商いではなく、真に人々を救い、社会に貢献する商いとは何か。
お凛は、算盤を弾きながら、その答えを探し続けていた。
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