【完結】『江戸からくり忍者衆 - 裏柳生の奇譚解決ファイル -』

月影朔

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第13章：江戸城への道

第42話：真の制御核、逆転の糸口

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　「主」が手にしていたのは、「真の制御核」と呼ばれるまばゆい光を放つ玉だった。

　それを掲げた瞬間、「禁断のからくり」は一層その脈動を強め、江戸城の地下空間を震わせる。鋼丸たちは、「主」の恐るべき野望を阻止するため、総力戦を仕掛ける。

「真の制御核」から放たれる光が、「禁断のからくり」に吸い込まれていく。同時に、からくりの全身に張り巡らされた複雑な歯車が、けたたましい音を立てて動き出した。その轟音は、まるで地下全体を飲み込むかのようだ。

「これで、全てのからくりの脈動（波動）は、この『禁断のからくり』へと集約された！もはや、誰も私の邪魔はできない！」

「主」は高らかに宣言した。彼の顔には、長年の野望が成就しようとしている興奮が浮かんでいる。

「させるか！」

　鋼丸は、迷わず「主」へと飛びかかった。からくり刀に雷の力を集中させ、光を放つ「真の制御核」を狙う。しかし、「主」の周りには、目に見えないからくりの壁が展開されており、鋼丸の攻撃は弾き返されてしまう。

「愚かな。この『禁断のからくり』は、貴様らの知るものとは次元が違う。これは、新たな世を創造するための、究極のからくりなのだ！」

「主」の声が、空間に響き渡る。その言葉に呼応するように、巨大なからくりの内部から、数体の新たなからくり兵が姿を現した。

　彼らは、人間と同じくらいの背丈を持ち、全身を鋼鉄の装甲で覆われ、鋭利なからくり剣を携えている。その瞳からは、霊力とは異なる、冷たい光が放たれていた。

「へっ、今度は量産型か！まとめてかかってこい！」

　轟は、からくり斧を振りかざし、からくり兵たちへと突進していった。彼の豪腕は、からくり兵の装甲を叩き潰すが、彼らは数を頼りに轟を取り囲み、その動きを封じようとする。

　紅は、瞬時にからくり解析器を起動させ、新たなからくり兵の構造を分析する。

「鋼丸様！彼らは霊力ではなく、周囲のからくりの脈動（波動）を吸収して動いています！この空間の『禁断のからくり』から力を得ているようです！」

　黒羽は、からくり兵たちの動きを見極め、正確無比な手裏剣を放つ。しかし、彼らは素早く、手裏剣はわずかな傷をつけるに留まる。

「奴らの狙いは、我々をここで足止めし、『禁断のからくり』の起動を完了させることだ！」

　鋼丸は、仲間たちに指示を飛ばした。彼は、霊力からくりを破壊した時と同じように、からくりの力の流れを見極めようとした。しかし、この巨大からくりの**からくりの脈動（波動）**は、あまりにも複雑で、捉えどころがない。

「主」は、余裕の表情で鋼丸たちを眺めていた。

「時間の問題だ、裏柳生。このからくりが完全に起動すれば、この江戸は、そしてこの国は、私によって新たな歴史を刻むことになるだろう！」

　彼の言葉に呼応するように、巨大なからくりのからくりの脈動（波動）は、さらに増していく。空間全体が、地震のように激しく揺れ始めた。

「このままでは、江戸が危ない！」

　紅が、悲痛な声を上げた。天井からは、さらに大きな土砂が崩れ落ち、鋼丸たちの頭上へと降り注ぐ。

　鋼丸は、焦りを感じていた。このままでは、江戸が、そして何よりも多くの人々が、この狂気の計画の犠牲になる。彼は、失われた「鋼の翼」を失った悔しさを胸に、それでも前を向いた。彼には、仲間たちがいる。彼らと共に、この危機を乗り越えなければならない。

「轟、紅、黒羽！『真の制御核』を狙うぞ！奴の持つ玉が、このからくりの心臓部だ！」
　鋼丸の指示に、仲間たちは迷うことなく頷いた。

　轟は、からくり兵たちの包囲網を力ずくで突破し、からくり斧を「主」へと振りかざした。

「邪魔だ、この化け物！」

　紅は、からくり仕掛けの閃光弾を投げ、からくり兵たちの注意をひく。その隙に、黒羽は、煙幕を張り、闇に紛れて「主」へと接近しようとする。

　鋼丸は、「主」の操るからくりの腕をかわしながら、再び「真の制御核」へと向かった。からくりの腕は、鋼丸の行く手を阻むように、執拗に攻撃を仕掛けてくる。

「主」は、鋼丸たちの動きに、わずかな焦りを見せた。

「くっ……！この期に及んで、足掻くか！」

　彼は、さらにからくりの力を高めようと、「真の制御核」を強く握りしめた。すると、玉から放たれる光が、一層まばゆく輝き、鋼丸たちの目を眩ませた。

　その光の瞬間に、鋼丸の脳裏に、太古の超からくり文明の記憶が、再び鮮明に蘇った。それは、この「禁断のからくり」が、かつてどのような目的で創造され、そして、いかにして破滅をもたらしたのか、その全貌を示す記憶だった。

　そして、その記憶の中に、このからくりを完全に止めるための、ある重要な手がかりが隠されていることを、鋼丸は感じ取った。

　「主」の狂気的な笑い声が響き渡る中、鋼丸は、仲間たちへの信頼と、古の記憶に導かれ、勝利への唯一の糸口を探し続けていた。

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