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第15章:江戸城大決戦
第49話:からくりの残滓、新たな始まり
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轟の金剛棒が唸りを上げ、黒鉄衆の残党が操る異形のからくり兵を次々と粉砕していく。
鋼丸の雷切が雷光を放ち、闇に潜む忍者を切り裂いた。紅の煙玉と黒羽の針が、敵の連携を寸断し、混乱に陥れる。裏柳生衆の連携は完璧だった。長きにわたる戦いの中で培われた絆が、彼らをより強くしていた。
激しい掃討戦の末、ついに江戸城内に残る黒鉄衆の残党は全て制圧された。異形のからくり兵も活動を停止し、城内には再び静寂が訪れる。しかし、その静寂は、戦いの爪痕をより一層際立たせていた。
崩れ落ちた瓦礫の山、黒く変色した石垣、そして空間に微かに残る異様な「からくりの脈動(波動)」。
「ようやく、終わったか……」
轟が肩で息をしながら、金剛棒を地面に突き刺した。彼の全身はからくりの残骸と埃で汚れ、疲労の色が濃かった。
「いや、まだだ。この『脈動』が残っている限り、何が起こるか分からない」
紅が周囲の空間を注意深く観察する。彼女の医術に長けた目は、からくりの脈動(波動)が、単なるエネルギーの残滓ではなく、何らかの意志を持ったかのように蠢いていることを感じ取っていた。
「テラ・ノヴァが『主』を操っていたとすれば、この脈動も彼らの何らかの計画の一部だったのかもしれない」
黒羽が情報収集で得た知識を基に推測する。彼は、城内から回収されたからくり兵の残骸の中から、いくつかの奇妙な部品を見つけていた。それは、日本の技術では作られない、異国の素材で構成されたものだった。
「この残骸から、何か手がかりが得られるかもしれない」
鋼丸は、崩壊した地下空間へと続く通路を注意深く見つめた。そこには、「禁断のからくり」が暴走し、そして停止した場所があった。全ての元凶となった場所。
「紅、黒羽。俺は地下へ向かう。この『脈動』の源を、そしてテラ・ノヴァの痕跡を完全に断ち切る」
鋼丸の言葉に、紅と黒羽は頷いた。轟もまた、無言で鋼丸の隣に立つ。
地下深くへと降りていくと、空気は一層重く、異様な波動が肌にまとわりつくようだった。崩壊した空間の中央には、かつて「禁断のからくり」が鎮座していた場所が、大きく口を開けていた。そこには、破壊された「真の制御核」の残骸が散らばり、今もなお微かに脈動していた。
鋼丸は、慎重にその残骸に近づいた。雷切から微かな雷の光が漏れ出し、周囲の闇を照らす。すると、奇妙なことに、その光に反応するかのように、残骸から放たれるからくりの脈動(波動)が、わずかに強くなるのを感じた。
「これは……」
紅が目を凝らして残骸を調べる。
「この『脈動』は、破壊されたことで消え去ったわけではない。むしろ、別の形で存在している。まるで、生命活動が停止しても、魂が残っているかのようだわ」
黒羽は、回収した異国の部品を、脈動する残骸に近づけてみた。すると、部品が微かに振動し、残骸から放たれる脈動と共鳴し始めた。
「これは、もしかしたら……新たなエネルギー源として、再利用できる可能性を秘めているのかもしれない」
黒羽の言葉に、鋼丸ははっとした。破壊するだけが、からくりの解決策ではない。古の超からくり文明の記憶の中で、彼はからくりの力が創造と破壊の両方を持ち合わせていることを知った。
「『主』は、この脈動を悪用しようとした。テラ・ノヴァも、それを狙っているのだろう。だが、もしこの力を、正しく使えれば……」
鋼丸は、脈動する残骸に手を伸ばした。雷切から放たれる雷の力が、残骸の脈動とゆっくりと融合していく。それは、破壊の力ではなく、制御し、再生させる力だった。
「……まるで、からくりの魂だわ」
紅が感嘆の声を漏らす。鋼丸の手の中で、脈動する残骸が微かに光を放ち始めた。それは、失われた古代技術の光であり、未来のからくり技術への新たな扉を開く可能性を秘めていた。
「この力は、我々が守り、正しく導かねばならない」
鋼丸の瞳に、新たな決意が宿った。黒鉄衆の脅威は去った。しかし、江戸のからくり衆としての使命は、これで終わりではなかった。
この残されたからくりの脈動(波動)は、新たな時代の始まりを告げていた。
鋼丸の雷切が雷光を放ち、闇に潜む忍者を切り裂いた。紅の煙玉と黒羽の針が、敵の連携を寸断し、混乱に陥れる。裏柳生衆の連携は完璧だった。長きにわたる戦いの中で培われた絆が、彼らをより強くしていた。
激しい掃討戦の末、ついに江戸城内に残る黒鉄衆の残党は全て制圧された。異形のからくり兵も活動を停止し、城内には再び静寂が訪れる。しかし、その静寂は、戦いの爪痕をより一層際立たせていた。
崩れ落ちた瓦礫の山、黒く変色した石垣、そして空間に微かに残る異様な「からくりの脈動(波動)」。
「ようやく、終わったか……」
轟が肩で息をしながら、金剛棒を地面に突き刺した。彼の全身はからくりの残骸と埃で汚れ、疲労の色が濃かった。
「いや、まだだ。この『脈動』が残っている限り、何が起こるか分からない」
紅が周囲の空間を注意深く観察する。彼女の医術に長けた目は、からくりの脈動(波動)が、単なるエネルギーの残滓ではなく、何らかの意志を持ったかのように蠢いていることを感じ取っていた。
「テラ・ノヴァが『主』を操っていたとすれば、この脈動も彼らの何らかの計画の一部だったのかもしれない」
黒羽が情報収集で得た知識を基に推測する。彼は、城内から回収されたからくり兵の残骸の中から、いくつかの奇妙な部品を見つけていた。それは、日本の技術では作られない、異国の素材で構成されたものだった。
「この残骸から、何か手がかりが得られるかもしれない」
鋼丸は、崩壊した地下空間へと続く通路を注意深く見つめた。そこには、「禁断のからくり」が暴走し、そして停止した場所があった。全ての元凶となった場所。
「紅、黒羽。俺は地下へ向かう。この『脈動』の源を、そしてテラ・ノヴァの痕跡を完全に断ち切る」
鋼丸の言葉に、紅と黒羽は頷いた。轟もまた、無言で鋼丸の隣に立つ。
地下深くへと降りていくと、空気は一層重く、異様な波動が肌にまとわりつくようだった。崩壊した空間の中央には、かつて「禁断のからくり」が鎮座していた場所が、大きく口を開けていた。そこには、破壊された「真の制御核」の残骸が散らばり、今もなお微かに脈動していた。
鋼丸は、慎重にその残骸に近づいた。雷切から微かな雷の光が漏れ出し、周囲の闇を照らす。すると、奇妙なことに、その光に反応するかのように、残骸から放たれるからくりの脈動(波動)が、わずかに強くなるのを感じた。
「これは……」
紅が目を凝らして残骸を調べる。
「この『脈動』は、破壊されたことで消え去ったわけではない。むしろ、別の形で存在している。まるで、生命活動が停止しても、魂が残っているかのようだわ」
黒羽は、回収した異国の部品を、脈動する残骸に近づけてみた。すると、部品が微かに振動し、残骸から放たれる脈動と共鳴し始めた。
「これは、もしかしたら……新たなエネルギー源として、再利用できる可能性を秘めているのかもしれない」
黒羽の言葉に、鋼丸ははっとした。破壊するだけが、からくりの解決策ではない。古の超からくり文明の記憶の中で、彼はからくりの力が創造と破壊の両方を持ち合わせていることを知った。
「『主』は、この脈動を悪用しようとした。テラ・ノヴァも、それを狙っているのだろう。だが、もしこの力を、正しく使えれば……」
鋼丸は、脈動する残骸に手を伸ばした。雷切から放たれる雷の力が、残骸の脈動とゆっくりと融合していく。それは、破壊の力ではなく、制御し、再生させる力だった。
「……まるで、からくりの魂だわ」
紅が感嘆の声を漏らす。鋼丸の手の中で、脈動する残骸が微かに光を放ち始めた。それは、失われた古代技術の光であり、未来のからくり技術への新たな扉を開く可能性を秘めていた。
「この力は、我々が守り、正しく導かねばならない」
鋼丸の瞳に、新たな決意が宿った。黒鉄衆の脅威は去った。しかし、江戸のからくり衆としての使命は、これで終わりではなかった。
この残されたからくりの脈動(波動)は、新たな時代の始まりを告げていた。
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