【完結】『江戸からくり忍者衆 - 裏柳生の奇譚解決ファイル -』

月影 朔

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第20章:テラ・ノヴァの野望

第66話:天空の城、からくりの飛行

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 極寒の氷山で、鋼丸たちはテラ・ノヴァの極寒からくり兵器を打ち破り、氷山の「鍵」を手に入れた。

 それは、冷気をエネルギーに変える特殊な水晶であり、極寒のからくりの脈動(波動)を制御する力を持っていた。しかし、テラ・ノヴァの追撃は続く。彼らは、鋼丸たちが「鍵」を手に入れるたびに、より強大なからくり兵器を送り込んできた。

 氷山の「鍵」を手に入れた鋼丸たちは、再びからくり船に乗り込み、次の目的地へと向かった。古文書の記述によれば、最後の「鍵」は、遥か上空に浮かぶ、伝説の「天空の城」に眠っているという。
テラ・ノヴァもその情報を掴んでおり、すでに部隊を派遣している可能性が高かった。

 数週間の航海の末、彼らの目の前には、巨大な積乱雲の塊がそびえ立っていた。その雲の遥か上空に、微かに光を放つ影が見える。それが、伝説の「天空の城」だった。

「天空の城……本当に存在したとはな」

 轟が、空を見上げながら呟いた。彼の顔には、驚きと興奮の色が浮かんでいた。

「古文書には、天空の古代からくり文明は、飛行技術と、空気の脈動(波動)を操る独自の技術を持っていたと記されているわ。そして、からくりの脈動(波動)も、上空で特別な性質を持つらしい」

 紅は、自身のからくり装束に、氷山の「鍵」を応用した冷却装置を組み込んでいた。これにより、彼女の体は高度の高い場所でも快適に保たれていた。

 黒羽は、天空の城へと向かうための新たなからくり装備を準備していた。それは、深海の『深海丸』と、氷山の『氷牙』で培った技術を融合させた、最新鋭の飛行からくりだった。

「これだ! 天空からくり『天翔(てんしょう)』だ!」

 黒羽が自慢げに差し出したのは、まるで鳥のような流線型のフォルムをした飛行からくりだった。その表面には、微かにからくりの脈動(波動)が感じられる。

「この『天翔』は、深海の『鍵』と氷山の『鍵』の力を応用することで、空気の脈動(波動)を感知し、風を操ることができる。テラ・ノヴァの飛行からくり兵に見つかりにくいはずだ」

 鋼丸たちは、『天翔』に乗り込み、積乱雲の中へと突入していった。雲の中は、雷鳴が轟き、激しい風が吹き荒れている。しかし、『天翔』の堅牢な機体はそれをものともしない。窓の外には、雷光が閃き、幻想的な光景が広がっていた。

 彼らが積乱雲を突き抜けると、そこには、信じられない光景が広がっていた。青い空と白い雲の間に、巨大な石造りの都市が浮かんでいる。それは、まさしく伝説の「天空の城」だった。無数の建物がそびえ立ち、その間を、奇妙なからくり仕掛けの飛行物体が飛び交っている。

「すごい……本当に、空に街があるなんて……」

 紅が、その光景に感嘆の声を漏らした。しかし、その美しさとは裏腹に、城の奥からは、空気の脈動(波動)に混じった、冷たく、そしてどこか傲慢な「からくりの脈動(波動)」が感じられた。

「やはり、ここか……」

 鋼丸が呟いた。彼の雷切もまた、空気の脈動に共鳴するように、微かに振動している。

 その時、天空の城から、複数の影が勢いよく飛び出してきた。それは、テラ・ノヴァの飛行からくり兵だった。彼らは、鳥のような翼を持ち、高速で空を飛び回る。その機体には、テラ・ノヴァの紋様が不気味に輝いている。

「テラ・ノヴァの奴ら、もうここまで来ているのか!」

 轟が金剛棒を構える。飛行からくり兵は、高速で『天翔』に接近し、空気の刃を放ったり、雷撃を繰り出したりと、天空の環境に適応した特殊な攻撃を繰り出してきた。その攻撃は、『天翔』の機体を揺るがし、彼らを墜落させようとする。

「この空気の刃は、からくりの装甲を切り裂く!」

 紅が、飛行からくり兵のからくりの脈動(波動)を解析し、その特性を鋼丸に伝えた。空気の脈動(波動)は、周囲の空気を凝縮させ、破壊的な力を生み出す性質を持っていた。

「くそっ、厄介な奴らだ!」

 黒羽が『天翔』を巧みに操り、飛行からくり兵の攻撃をかわしていく。空の広大な空間が、彼らの動きを制限する。

 鋼丸は、雷切に雷の力を集中させ、からくりの脈動(波動)を放った。すると、雷の力が空気の脈動(波動)を一時的に乱し、飛行からくり兵の動きを一瞬停止させた。

「今だ!」

 鋼丸の指示が飛ぶ。轟は、『天翔』のからくりアームを操作し、飛行からくり兵を叩き落とす。黒羽は、『天翔』の高速推進機能で、飛行からくり兵の群れを突破する。

 しかし、飛行からくり兵は、倒されてもすぐに天空の城から新たな個体が現れる。その数は増え続け、まるで天空の城そのものがテラ・ノヴァのからくり兵器で満たされているかのようだった。

『天翔』は、さらに天空の城の奥へと進んでいく。空気の脈動(波動)はさらに増し、機体が軋む音が聞こえてくる。しかし、彼らの決意は揺るがなかった。やがて、彼らの目の前に、幻想的な光景が広がった。

 それは、天空の城の中央にそびえ立つ、巨大な石造りの塔だった。その塔の頂からは、これまで感じたことのないほど強烈なからくりの脈動(波動)が放たれていた。

「ここだ……最後の『鍵』は、この塔に隠されている!」

 鋼丸の目に、強い光が宿った。しかし、同時に、その脈動は、砂漠の「生命のからくり」のそれとも、深海の「水圧からくり」のそれとも異なり、どこか傲慢で、全てを支配しようとするかのような性質を持っていた。

「これは……まさか、『鍵』そのものが、天空の城を動かす中枢になっているのか?」

 紅が、その脈動に驚きを隠せない。その脈動は、まるで天空の城そのものが呼吸しているかのように、規則的に、そして力強く響いていた。

『天翔』は、塔の頂へと接近するが、巨大な飛行からくり兵器がその行く手を阻む。その兵器は、天空のからくりの脈動(波動)を吸収して自らを強化し、周囲の風を操る強大な攻撃を繰り出してきた。

「天翔を固定しろ! 俺が奴を止める!」

 鋼丸は、雷切を構え、『天翔』から降り立った。彼は、飛行からくり装束を身につけ、上空の強風に耐えながら、巨大な飛行からくり兵器へと挑む。

 天空の城の上空で、鋼丸の雷切が雷光を放った。それは、天空の沈黙を打ち破り、テラ・ノヴァの野望に抗う、希望の光だった。氷山の奥に眠る「鍵」を巡る戦いが、今、始まる。

 巨大な飛行からくり兵器は、雷切から放たれる雷光を吸収しようと、その巨体から無数のからくりの触手を伸ばしてきた。

 触手は空気の脈動(波動)を凝縮させ、鋼丸めがけて圧縮された空気の弾丸を放つ。鋼丸は、高速でそれらをかわしながら、雷切の雷の力を最大限に高める。

「このからくり兵器は、空気の脈動(波動)を吸収して、無限に力を増幅できる!奴の中枢を叩かなければ、終わりがない!」

 紅が、遠隔でからくり兵器の脈動を解析し、鋼丸に助言を送る。黒羽は、小型の飛行からくりを操り、からくり兵器の周囲を飛び回り、その弱点を探す。轟は、金剛棒でからくり兵器の触手を叩き割り、鋼丸の援護に回った。

「見つけたぞ、鋼丸!奴の腹部に、空気の脈動(波動)を吸収する核がある!」

 黒羽の言葉に、鋼丸は迷わず腹部へと雷切を突き立てた。からくり兵器は、鋼丸の攻撃を阻止しようと、周囲の空気を歪ませ、強烈な衝撃波を放つ。鋼丸は、その衝撃波に耐えながら、雷切に全ての力を込めた。

「これで、終わりだ!」

 雷切から放たれる雷光が、からくり兵器の核を貫き、その巨体からからくりの脈動(波動)が荒々しく噴き出した。まるで、空が叫んだかのような轟音が響き渡り、巨大な飛行からくり兵器は、制御を失い、天空の城の彼方へと落ちていった。

 からくり兵器が崩れ落ちると同時に、天空の城から放たれていた傲慢なからくりの脈動(波動)も弱まり始めた。

 そして、塔の頂上へとたどり着いた鋼丸たちの目の前には、まばゆい光を放つ「天空の鍵」が姿を現した。それは、透き通るような青い光を放つ水晶であり、触れると微かな風を感じるような、不思議な感触を持っていた。

「これが、最後の鍵……」

 鋼丸が、その鍵を手に取る。そこから放たれるからくりの脈動(波動)は、空気そのものを操り、飛行の力を与えるものだった。それは、かつて「鋼の翼」を失った鋼丸にとって、特別な意味を持つ力だった。

 テラ・ノヴァが世界中に散らばった「鍵」を全て手に入れようとしていたのは、この「天空の鍵」を含む全ての鍵を集めることで、古代からくり文明の「からくりの真理」を解き放ち、世界を自らの意のままに再構築しようとしていたからだ。
彼らは、世界を変革する力を手に入れようと企んでいたのだ。

 鋼丸たちは、最後の「鍵」を手に入れ、テラ・ノヴァの野望の全貌を知った。

 彼らの旅は、単なる「鍵」の収集に留まらず、世界の未来をかけた戦いへと発展していた。天空の城を後にし、彼らはテラ・ノヴァとの最終決戦へと向かう。
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