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そして全能神は愉快犯となった
【175話】
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※うちの皇太子が男好き令嬢に誘惑されているんだがどうすれば良い?~護衛騎士は王太子の婚約者の笑顔が見たい~の3年後くらいの時間軸です。
ネタばれが嫌いな方は読まないのを推奨します。
近いうちにネタバレでも読めるように本編を勧めたいと思います(*- -)(*_ _)ペコリ
:::
「と、まぁそんな訳で今のところ母様と父様は仲良くパートナーとしてやっていってる訳なんだけどね…」
「まぁ母上の悪戯は何時もの事だろう?」
「悪戯ですまないレベルっぽいからこうして姉上の所に愚痴りに来てる訳ですよ?」
「あぁ、ソレはすまなかった。最近忙しかったからお前の気持ちまで考えている余裕が無かったな」
「双子の弟の気持ち蔑ろにするのはどうかなと思うよ姉上?あ~女は家庭もつと強くなるし薄情にもなるのかな?ユラさんにはそんな事させないけど」
「そう怒るなドラジュ。私も家庭を築いているが実家を蔑ろにしている訳じゃないぞ?」
「でも最近来ないじゃない」
「今は安静にしなければいけない時期なのでな」
そう言って銀髪の髪とエメラルドの瞳を持つ美女は己の腹部を擦った。
その仕草で聡いドラジュは姉のカマラがどう言う状況なのか理解した。
「僕が叔父になるとか…想像もしなかった………こんな大切な時期に本当ウチの親は揃って何をしているのやら………」
カマラがクスクスと笑う。
女らしくなったものだ。
ドラジュはカマラを兄だと思ってきた。
中性の間もカマラが男として己を認識していたからだ。
何時か頼れる兄になるのだろうと、そう思っていたのだ。
だがカマラが恋したのは男だった。
男に惹かれ、自らの性別を女へと孵化させた。
今のカマラは何処から見ても女である。
しかも絶世の美貌だ。
もともとサイヒの生き写しとまで言われていたのだ。
美女にならない訳がない。
体系はだいぶ違うのだが。
「どうりで姉上の胸が成長している訳だ。ソレイユさん頑張ったんだなぁ、と思っていた」
「まぁソレイユのせいではあるけど…それでも母上に比べると随分と小さい………」
外見はサイヒに似ているが、ルークの血も引いているのだ。
サイヒによく似ているがより優し気な顔立ちはルークの血だろう。
身長もそれほど高くない。
そして華奢だ。
女に孵化したカマラは誰も想像しなかった可憐な女性へと成長したのだ。
そして今はその胎内に鼓動を刻み始めた新たな命が宿っている。
「でももうどう見ても男には見えないよ。姉上は母様によく似た逞しい男性になると思っていたんだけどね、当てが外れた。でも今の姉上は幸せそうなことこの上ない。僕は良いと思うよ。ソレイユさんも胸に執着している訳じゃ無いんだし、胸なんて小さくても良いじゃない」
ドラジュがニヤニヤと笑う。
悪ガキのようなその笑みはドラジュが浮かべるには珍しい表情だ。
半身であるカマラの前だからこそこんな笑い方が出来るのだろう。
サイヒの胎内で一緒に育った2人。
二卵性双生児だが、一卵性の双子にも負けないだけの絆が2人にはある。
「まぁ安定期に入ったら1度帰省してよ。姉上の状態見たら母様も何をしたか白状するかもしれないし」
「でもクオンさんは全部知ってるんだろう?クオンさんに聞けば良いんじゃないのか?」
「そのクオンさんが珍しく母様の味方なんだよ。主君の父様にしたことを咎めないんだから、母様がやった事は意味がある事なんだろうけどね。
にしてももどかしい!
あんだけイチャイチャしてたのに今じゃカラッとした友情で結ばれているパートナーだよ。あれなら母様が男でも問題なさそう。
母様に粘着質な執着心たっぷりの愛情を駄々洩れさせない父様なんて気持ち悪くて見てられないよ」
「同性のパートナー?それではまるで出会った頃の母上と父上のようだな…出会った頃?成程、そう言う事か………」
「姉上は何か分かった訳?」
「女の勘と言うやつだけど、随分母上は拗らせているみたいだ。まぁしばらくすれば元に戻ると思うぞ?その時は今まで以上に口から砂糖吐く位に人前でも愛情表現があるかもしれないからドラジュはそっちの心配をしていれば良い。
父上の行動は母上でも読み切れないか…第3者の目線ならすぐに分かるものだろうになぁ。まぁ母上が愛されている自覚と覚悟が出来れば事態はすぐに収まるさ」
「そんな簡単な問題?」
「意外と簡単な問題だと思うよ」
ストレスが溜まっているのか半眼で不貞腐れていたドラジュがはぁ、と小さく溜息を吐く。
そのストレスを緩和させるようにサロンに甘い香りが漂った。
「カマラさん、カヌレを焼いたんだけど食べるよね?多めに焼いたからドラジュ君も良かったらお食べになりませんか?」
「有難うございますソレイユさん」
カマラの夫であるソレイユが気を利かせてお茶菓子を新しく用意してくれたらしい。
温かいティーポットと共にカヌレが運ばれてくる。
「何か大変そうだけど頑張って下さいねドラジュ君。カマラさんも僕も貴方の味方ですから」
新しいお茶を注ぐのはメイドに任せ、ソレイユがカマラにひざ掛けをかけてやる。
今は大切な時期だから、と。
ドラジュはそこに己の母と父の本来の姿を重ねた。
サイヒがないかをする前の2人はこのようによく2人だけの世界を作っていた。
「姉上、幸せなんですね」
「あぁ、私は幸せだ」
優しく笑うカマラを見て、ドラジュは早く母と父の関係が元に戻る事を願ったのだった。
ネタばれが嫌いな方は読まないのを推奨します。
近いうちにネタバレでも読めるように本編を勧めたいと思います(*- -)(*_ _)ペコリ
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「と、まぁそんな訳で今のところ母様と父様は仲良くパートナーとしてやっていってる訳なんだけどね…」
「まぁ母上の悪戯は何時もの事だろう?」
「悪戯ですまないレベルっぽいからこうして姉上の所に愚痴りに来てる訳ですよ?」
「あぁ、ソレはすまなかった。最近忙しかったからお前の気持ちまで考えている余裕が無かったな」
「双子の弟の気持ち蔑ろにするのはどうかなと思うよ姉上?あ~女は家庭もつと強くなるし薄情にもなるのかな?ユラさんにはそんな事させないけど」
「そう怒るなドラジュ。私も家庭を築いているが実家を蔑ろにしている訳じゃないぞ?」
「でも最近来ないじゃない」
「今は安静にしなければいけない時期なのでな」
そう言って銀髪の髪とエメラルドの瞳を持つ美女は己の腹部を擦った。
その仕草で聡いドラジュは姉のカマラがどう言う状況なのか理解した。
「僕が叔父になるとか…想像もしなかった………こんな大切な時期に本当ウチの親は揃って何をしているのやら………」
カマラがクスクスと笑う。
女らしくなったものだ。
ドラジュはカマラを兄だと思ってきた。
中性の間もカマラが男として己を認識していたからだ。
何時か頼れる兄になるのだろうと、そう思っていたのだ。
だがカマラが恋したのは男だった。
男に惹かれ、自らの性別を女へと孵化させた。
今のカマラは何処から見ても女である。
しかも絶世の美貌だ。
もともとサイヒの生き写しとまで言われていたのだ。
美女にならない訳がない。
体系はだいぶ違うのだが。
「どうりで姉上の胸が成長している訳だ。ソレイユさん頑張ったんだなぁ、と思っていた」
「まぁソレイユのせいではあるけど…それでも母上に比べると随分と小さい………」
外見はサイヒに似ているが、ルークの血も引いているのだ。
サイヒによく似ているがより優し気な顔立ちはルークの血だろう。
身長もそれほど高くない。
そして華奢だ。
女に孵化したカマラは誰も想像しなかった可憐な女性へと成長したのだ。
そして今はその胎内に鼓動を刻み始めた新たな命が宿っている。
「でももうどう見ても男には見えないよ。姉上は母様によく似た逞しい男性になると思っていたんだけどね、当てが外れた。でも今の姉上は幸せそうなことこの上ない。僕は良いと思うよ。ソレイユさんも胸に執着している訳じゃ無いんだし、胸なんて小さくても良いじゃない」
ドラジュがニヤニヤと笑う。
悪ガキのようなその笑みはドラジュが浮かべるには珍しい表情だ。
半身であるカマラの前だからこそこんな笑い方が出来るのだろう。
サイヒの胎内で一緒に育った2人。
二卵性双生児だが、一卵性の双子にも負けないだけの絆が2人にはある。
「まぁ安定期に入ったら1度帰省してよ。姉上の状態見たら母様も何をしたか白状するかもしれないし」
「でもクオンさんは全部知ってるんだろう?クオンさんに聞けば良いんじゃないのか?」
「そのクオンさんが珍しく母様の味方なんだよ。主君の父様にしたことを咎めないんだから、母様がやった事は意味がある事なんだろうけどね。
にしてももどかしい!
あんだけイチャイチャしてたのに今じゃカラッとした友情で結ばれているパートナーだよ。あれなら母様が男でも問題なさそう。
母様に粘着質な執着心たっぷりの愛情を駄々洩れさせない父様なんて気持ち悪くて見てられないよ」
「同性のパートナー?それではまるで出会った頃の母上と父上のようだな…出会った頃?成程、そう言う事か………」
「姉上は何か分かった訳?」
「女の勘と言うやつだけど、随分母上は拗らせているみたいだ。まぁしばらくすれば元に戻ると思うぞ?その時は今まで以上に口から砂糖吐く位に人前でも愛情表現があるかもしれないからドラジュはそっちの心配をしていれば良い。
父上の行動は母上でも読み切れないか…第3者の目線ならすぐに分かるものだろうになぁ。まぁ母上が愛されている自覚と覚悟が出来れば事態はすぐに収まるさ」
「そんな簡単な問題?」
「意外と簡単な問題だと思うよ」
ストレスが溜まっているのか半眼で不貞腐れていたドラジュがはぁ、と小さく溜息を吐く。
そのストレスを緩和させるようにサロンに甘い香りが漂った。
「カマラさん、カヌレを焼いたんだけど食べるよね?多めに焼いたからドラジュ君も良かったらお食べになりませんか?」
「有難うございますソレイユさん」
カマラの夫であるソレイユが気を利かせてお茶菓子を新しく用意してくれたらしい。
温かいティーポットと共にカヌレが運ばれてくる。
「何か大変そうだけど頑張って下さいねドラジュ君。カマラさんも僕も貴方の味方ですから」
新しいお茶を注ぐのはメイドに任せ、ソレイユがカマラにひざ掛けをかけてやる。
今は大切な時期だから、と。
ドラジュはそこに己の母と父の本来の姿を重ねた。
サイヒがないかをする前の2人はこのようによく2人だけの世界を作っていた。
「姉上、幸せなんですね」
「あぁ、私は幸せだ」
優しく笑うカマラを見て、ドラジュは早く母と父の関係が元に戻る事を願ったのだった。
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