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一章 本命じゃないくせに嫉妬はやめて!
2、ナンパ男
しおりを挟むその男は何故か楽しそうに周りを見回していた。
そして先程の言い方から俺を助けに来たように思えたが、俺は助けられるような覚えは全くない。
それよりもなんで今、抱き上げられているのかもわからないのだ。
「貴様!何してくれる!!」
「我らに手を出すならば、反逆者とみなすぞ!」
そう騎士達から脅されているのに、黒髪の男は赤い瞳を楽しそうに細めて笑いだしたのだ。
「くくく……君たち面白いことを言うんだね~?なんだか僕が手を出すとでも思っているみたいだ」
その言葉とともに、その男から膨大な殺気が溢れ出す。その殺気にあてられた何人かの騎士達が、バタバタと倒れていくのが見えた。
「なんなんだ、こいつ……!」
「怯むな、こいつよりもデオルライド殿下の確保が先だ!あいつは無視して囲い込め!!」
騎士達は男を無視して俺だけを標的にしたようだ。
しかし俺は抱き上げられているため、迎え撃つことも出来ない。
それなのに、この男は楽しそうに言うのだ。
「あー、なんだか面白くなってきたね!えっと君、デオルライドだっけ?」
「は?」
「デオって読んでもいい?俺のことはウルって呼んでね!」
「いや、ウル!今は呑気にそんな話をしている場合では!!」
そう咄嗟に名前を呼んでしまうほど、騎士が目前までせまっていた。
「じゃあ、先に鬼ごっこしようかな!」
「うおっ!!」
そう言うと、ウルは俺を横抱きに持ち上げたまま空高く跳躍した。
「いやいや、待ってくれないか!気になっていたのだけど、何故俺はこんな体勢なんだ?」
「あー、慣れ?ってやつだから気にしないで!あと、これ以上喋ると舌を噛んじゃうかもだよ~。気をつけてね!」
何処までも高く上がっていた俺達は、街並みが遠くまで見え始めた頃、今度は下へと落ちて行く。
「~~~~~~~!!!!」
慌てて口を閉じた俺は、声にならない声を上げて近づいてくる地面に驚いて、赤目の男の服を掴んでいた。
そして俺達は、それからというもの騎士達を翻弄した。
その結果、彼らは疲労と魔力切れで動けなくなってしまったようだ。
「デオルライド殿下、また来ます!」
そう言い残し彼らは立ち去っていったのだった。
よくわからないけど俺は助かったらしい。
とにかく今日は宿で休んで、明日の早朝にはこの町を出た方が良さそうだ。夜は魔物が活発化するため移動するには向かないので仕方がない。
それに騎士達はあの調子では、すぐに復活なんてしないだろう。
そして今、俺の泊まっている宿にウルを招き入れていた。
これでも恩人だ。正直何故助けてくれたのかわからないけど、俺はウルに頭を下げていた。
「助かった。何故助けてくれたのか全くわからないが、お礼を言わせてくれないか」
「え?お礼なんていらないよ。俺は君を探しにここまで来たんだから~」
「探しに?」
「前会った時に言ったでしょ?次会ったら手合わせしてくれないかって」
その一言に緊張が走った。
先程見たこの男の強さは異常だ。俺が敵うわけがない。
それなのに何故手合わせを申し込まれたのかが全くわからなかった。
「あー、でもそれは別に戦いだけじゃなくても良いよ~!」
ニヤリと口角を上げたウルは楽しそうに言った。
「例えば、ベッドの中とか?」
「ベッドだって、何故そんなふざけた事を言って……」
「俺はふざけてなんてないよ~。そうか、デオはそっち方面は全くの真面目君だったか~」
ウルの言っている意味がわからなくて、睨みつけてしまう。
それなのにウルは凄く嬉しそうに俺に近づいて来た。だから俺は反射的に数歩下がってしまう。
「どうして俺に近づいてくるんだ……」
「じゃあデオはなんで逃げるのかなぁ~」
「いや、それは……っ!」
そう言って目を逸らそうとした瞬間、ウルに腰を抱き寄せられていた。
「な、なんで俺は引き寄せられたんだ……!?」
混乱する俺をよそに、ウルが耳元で囁いた。
「ねえ、デオ。俺、君の顔凄くタイプなんだ~。だから、俺のものになる気はない?」
「お前のものというのはどういう事なんだ……それよりもウル、少し顔が近すぎないか?」
一応王子である俺は女性に言い寄られた事はあるが、男性でこんなに近づいてきたのは弟ぐらいだと思う。
だからだろうか、この距離に戸惑ってしまう。
それなのにこんな俺の顔を見て、ウルはニヤニヤしながら言ったのだ。
「困り顔も堪らないね。もっと困らせたくなっちゃうなぁ~。それから俺の物って言ったら、そのままの意味だよ?」
「それがわからないから聞いているんだ」
「本当にわからないんだ?その純粋な心は汚したくなるレベルだね?」
先程からウルの話に若干引きながら、いい加減腰を離して欲しくて手を掴むも、その手は全く動かない。それだけで実力の差を見せつけられてしまい、とりあえず諦める事にした。
「あはは、無駄だよ~」
「なら、早く答えてくれ」
「じゃあ、失礼して……」
そういうと、ウルの手が腰から離れる。
そして何故か今度は俺のお尻を鷲掴みした。
「なっ!何故お尻を!?」
「ふふふ~。デオを俺のものにして、ココに俺のをぶち込みたいってことだよ~」
「何をだ……というか何処にだ?」
「それでも伝わらないのは、天然なの?でも純白なところを汚すのは楽しみだなぁ~」
俺は確かに戦い以外のことは正直してこなかった。
そのせいでそれ以外の知識が薄いのはわかっている。
でもこの男が何を言ってるのかわからないのは俺のせいなのだろうか?
「じゃあ直球に言ってあげる」
「最初からそうして欲しかった」
「ふーん、デオとエッチなことしたいって言って欲しかったんだ?」
「なっ!!?」
先程までのはそういう意味だったのか?
それより男同士でエッチな事って出来るのか?
そう言う話に疎い俺は、顔が赤くなるのがわかる。
「恥ずかしそうに赤くなる姿もいい……やっぱり彼の兄だけあって顔が似ているからかな……抑えがきかなくなりそうだよ」
「え?」
驚いていたせいで俺はウルがなんと言ったのか聞きそびれてしまった。
そしてただ混乱していた俺は、先程から気になっていた事をつい聞いていた。
「えっと、とりあえず確認させてくれ……男同士でそう言う事は出来るものなのか?」
「もしかしてデオは、そういうの興味あるの?」
そういいながら、ウルは楽しそうに俺のお尻を揉んできた。でも俺はその事がとても恥ずかしかった。
何故なら今着ている服はすでに寝間着であり、そのため布が少し薄くて直に触られているよう気分だったからだ。
「な、ないない!ただ気になっただけだ。それよりもお尻を揉まないでくれ」
「だっていい筋肉ついてるから揉みたくなっちゃうし、それに凄く触り心地が良いんだよ……」
「何言ってるんだ!?」
「だから、デオにはいい事教えてあげる。男同士はね、ここを使うんだよ~」
そう言うとウルの手がお尻を開き、俺の秘部をそっと撫でた。
「っ!?」
一応服の上からだというのに、俺はくすぐったさにゾクゾクと背筋か震えてしまう。
「身体がピクッとしてやらし~ね?」
「こ、これはくすぐったくて……」
「わかってるけど、やめられないんたよねー」
ウルに力で抑えられていた俺は、「俺のものになって」「俺としようよ?」と何度もウルに言われていた。
そんなウルは俺のお尻を揉みしだき、たまに秘部を撫でては俺の反応を楽しんでいるようだった。
それはウルが飽きるまで……寝る直前まで続いた。
そのせいで次の日寝坊した俺は翌日ウルに起こされたのだった。
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