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二章
102、要求(ゼント視点)
しおりを挟む俺達は今、倉庫にいた。
それはガリアと思われる人物についていったら、何故かこの場所に案内されたからだ。
しかもこの倉庫、オークション会場に初めて来た場所と偶然同じで、俺は驚いてしまう。
そしてダンさんは一応念の為、この部屋をスキャンしたようだけど特に罠らしき物は見当たらないそうで、いきなり爆発とかはしないらしい。
そんな警戒しまくりの俺達の向かいには、ガリアがじっとこちらを見て立っていた。
でもこの男がウルさんが話していたガリアとは絶対に思えなくて、俺の中で偽ガリアという事にしたのだった。
そして先程からどちらも喋る事はなく、ただ時間だけが過ぎていた。
そんな無言に耐えれず、先に声をかけたのはダンさんの方だった。
「あー、時間の無駄だからこっちから聞くけどよ、俺に聞きたい話ってのはなんだ?」
「……失礼、少し考え事をしておりましてね。しかし、貴方はどうも回りくどいのは好きでは無いようですから単刀直入に聞く事にしましょう」
「そう思うなら早くしてくれ」
「では確認しますが、貴方はウルという男についてどれ程の事を知っているのでしょうか?」
「……は?」
突然出てきた名前が予想外で、俺とダンさんは首を傾げてしまう。
どうしてデオさんじゃなくてウルさんの情報が知りたいんだろう……全く不思議だ。
同じ事を疑問に思ったのか、ダンさんは顔をしかめながら確認していた。
「……何故ここでウルの話が出てくるんだ?」
「何故と言われましても、貴方を呼び出したのはその情報が知りたかったからですよ」
「もしかして、お前はウルと知り合いだったりするのか?」
「いいえ、直接話をした事もありませんよ。ただ私があの男を一方的に恨んでいるだけですから」
キッパリとそう言った男に驚く俺とは違い、ダンさんは何故か納得していた。
「成る程ね、アイツに恨みをもってるやつは多いからな。その中の一人がたまたまそっち側にいたって事か……」
「そんな感じで捉えて頂ければよろしいかと」
「それはわかったけどよ、何で俺に接触した?俺は今、ウルの仲間としてここにいるんだぜ。その俺がわざわざお前に情報を話す訳がねぇだろ?」
それはダンさんの言う通りだ。普通、仲間の情報を話すやつなんている訳ないのに、何故この男は俺達に接触してきたのか意味がわからない。
それなのに偽ガリアは少し考えると、説明を始めたのだ。
「そうですね。実のところ私には王宮に知り合いがいまして、貴方が何者なのか多少は存じ上げているのです」
「ああ?別にお前が俺の事を知っていようが、今はどうでもいいだろうが?」
「そうでしょうか?その知り合いの話を聞いた限り、貴方は別に彼の本当の仲間という訳では無い筈です。……寧ろ、犬猿の仲と言えるのではありませんか?」
その質問にダンさんは偽ガリアを睨みつけた。
最近の俺はようやく殺気がわかるようになってきたので、ダンさんからピリピリとした殺気を感じてビビってしまう。
それなのに男の表情はピクリとも変わらない。その姿はやはりどこか不気味だった。
「もしかして、そういう情報も出回ってたりすんのか?」
「いえ、これは私の憶測でしかありません。先程ステージ上にいるあの男を見ていたあなたの表情は、少しの嫌悪感が……いえ、寧ろあれは恨みがこもっているように見えましたから」
ダンさんがステージを見てたときって、この人いつから俺達の存在に気がついていたのだろうか……。
それもダンさんの表情からそこまで読み取れるとかさ、俺には全くわからないんだけどなー?
そう思っていると、何故かダンさんの殺気が少し緩んだ。
「その情報が出回ってないなら別にいいか……。それにしてもお前は良い観察眼をもってんじゃねぇか」
「お褒め頂き光栄です」
「確かに、昔色々あったせいでアイツを見るたびに殴ってやりてぇとは思うからな……だけど残念だがアイツの事は俺も詳しくねぇんだよ。寧ろ弱点なら俺の方が知りたいぐらいだぜ?」
そんな事を言うダンさんに驚いたのは俺だった。
確かに少し仲が悪そうだと思ってたけど、実はそんな関係だったとは知らなかったのだ。
いつか二人が本気で戦い始めたら、俺はどっちにつけばいいのだろうか……よし、そうなっても考えるのが面倒臭いから見るだけにしよう。
そう決めた俺が偽ガリアを見ると、ダンさんの答えに少しだけ納得したのか、改めて俺達の方を向いたのだ。
「ふむ、そうですか。正直この件に関しては、特に期待はしていませんでしたから別に構いません。ですが最後にひとつだけお答えください……貴方ならあの男を殺すことは出来ますか?」
「うーん、そうだなぁ……本気を出せば、かな?そう考えたらアイツの弱点なんて知らなくてもいいのかもしれねぇな~」
正直な話、できれば一生戦わないで欲しいところですけどね……。
それに今、ウルさんの弱点になりそうなのってデオさんだと思ってしまうのは俺だけですかねー?
俺が頭の中でそう結論を出している間に、偽ガリアはダンさんの答えに満足したようだった。
「成る程……。それでしたら貴方を強さの指標とする事に致しましょう」
「いや指標とされても俺ぐらいになろうと思ったら、人間やめないと無理だとおもうぜ?」
「ええ、それはわかっております。ただでさえ進化もしていない私では、まず間違いなく無理な話です。だから他の方法を試させて頂きます」
そう言って礼をした偽ガリアは、もうここには用が無いとすぐに立ち去ろうとしていた。
しかし俺達はこの男を逃すわけにはいかない。
偽物だとしても、間違いなくガリアの情報を持っている筈なのだ。
「ふーん、試すのはいいけどよ、でもそれはここでお前が逃げられればの話だけどな!」
ダンさんがそう言ったそのとき、タイミングよく倉庫の扉がバタンと開いたのだ。
「ダン、待たせたね!」
勢いよく部屋に入ってきたウルさんは、デオさんを横抱きにしていた。
そのデオさんは何故か自分の尻を手で押さえていて、とても不思議な格好だなと思ってしまう。
「二人とも来るのが遅いぜ!足止めするこっちの気にもなってくれと言いたい所だが……ここで残念なお知らせがあるぜ?」
「なんだい、その言い方?凄く聞きたくないような気がするけど……一体何があったのかな?」
「ここまで来て申し訳ないんだが、どうやらここにいるコイツはガリア本人じゃねぇみたいだぜ!!」
「「なっ!?」」
その事にウルさんとデオさんが驚きに声を上げる。
そしてダンさんが指差した先では、ガリアの姿をしているそいつがニヤリと笑っていた。
「ええ、その通りです。別に隠すつもりもありませんが、私はガリア様ではございません……せっかく皆様揃って頂きましたから、ここで私の自己紹介でもいたしましょうか」
そう言うと、男の姿は徐々に若い男から白髪の混じった初老の男性へと変わっていった。
「私の名前はセルロウでごさいます。ガリア様に使える執事と魔術師を担っておりますので、以後お見知り置きくださいますようお願いいたします」
頭を下げるその男に俺達全員が驚きと、得体の知れない物を見るような気持ち悪さに襲われて、立ち尽くしてしまったのだった。
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