2 / 6
第2章 前世の記憶と現在
しおりを挟む
前世はこの世界とは比べられないくらい、文化が進んでいた。
誰も攻撃魔力なんて持ち合わせていなかったが、科学の力でどの国でも、他国の一つや二つぶっ飛ばすくらいの爆弾を持っていた。
そして癒し魔力で手足を生やしてもらえなくても、高性能のモデルスーツを着れば、例え四肢のどこかを無くしても、日常生活は難なく過ごせた。
まあ、生やしてもらえるのなら、そっちの方がいいに決まっているが。
高度な文化と豊かな生活に恵まれていたのに、何故か人々は絶えず不安、恐怖に苛まれ、自ら生を絶つ者が多かった。
まあ、俺が死んだのは、自殺なんかじゃなく、コンビニ強盗に襲われたせいだが。
俺の国は他国と比べ治安が良かったから、当然一般庶民は防衛の為の装備なんかしていなかった。まあ、俺の場合は運が悪かったとしか言いようがない。
しかし、あの当時の俺は、中間子として姉や弟に振り回され、両親に上手く使われるお人好しだったので、人生に嫌気がさしていたのも事実。
だから俺は、それほど生きることには執着していなかったんだ。
ただ、最後に目にした、幼馴染みの泣き顔だけは心残りだが・・・・
俺は大学生だった二十歳の誕生日に、バイト先のコンビニで強盗に襲われ、三ヶ月後に意識が戻らないまま人生を終えたのだ。
✽✽✽
そして、この世界に転生したのだ。代々軍人の家柄のジェイド伯爵家の次男として。
上に兄と姉、下に弟と妹がいるまたしても中間子だった。しかも、上下ともに数が増えていた!
十歳の時、末っ子の妹が生まれた朝に、突然俺は前世の記憶を思い出し、思わず、「ゲッ!!!」と叫び、周りの顰蹙を買った。
前世を思い出した当時の俺は、中間子として、やはり面倒くさい立ち位置にいた。
とはいえ、一応貴族の子供だったので、前世のように共働きの親に代わって飯を作ることも、姉に命令されて買い物に行かされる事も、ヒッキーな弟の相手をさせられる事もなかった。
この世界では中間子として、周りの様子を伺う能力だけはそこそこあったので、まあ、要領よくとまではいかないが、今の俺はそれなりに日々をこなしている。
俺ん家、ジェイド伯爵家は、貴族社会での立ち位地は、前世でいう、中間管理職? 的なポジションだろう。
軍人といっても執務系なので、戦争が起きても前線へは行かずに済む。
我がジェイド伯爵家は、何故か代々魔力持ちがあまり出ない家系なので、この地味な役職に定着したんだろう。
その代わりに、代々おつむの方はそこそこいいし、真面目で堅物が多いらしい。祖父も、父も、兄貴もそうだ。
ところがなんと現在の我が家は、その父親と兄貴以外は皆魔力持ちだ。これは今までになかった事態である。
というのも俺の母親が、例の癒しの公爵家の出だったからである。
姉と妹、そして内緒にしているが、俺もその血を引き継いでいる。
そして、弟は運悪く、父方の祖母の攻撃魔力の血を中途半端に継いでしまった。
実を言うと、こちらも周りには内緒にしているのだが、俺はそこそこ強い攻撃魔力も持っている。
ところが、弟が持っている攻撃魔力は微々たるもので、戦場において役に立つレベルじゃない。
せいぜいその場しのぎが出来る程度だ。だからそんな力で驕ってしまったら、却って危険だから、いっそない方がましだ。
それなのに弟は、一家の中で唯一攻撃魔力を使えると、鼻高々で偉そうにしている。
家族に白い目で見られても、自分は妬まれているんだと思って、むしろ、家族を憐れんでいる。
こういう空気が読めないだけじゃなく、身の程知らずの奴って、ホントどうしようもない。いつの世でもこういう人間いるよなあ。
とにかく俺はこの弟のせいで、幼い頃から散々な目に合わされているのだ。
まあ、そうは言っても自分の弟だから、かわいいとは思っている。しかしだ!
今俺は、目の前にいる弟を見て唖然として立ち尽くしている。
皇太子殿下と公爵令嬢の破滅フラグ……それを立てようとしている面子の中に、俺の姉と弟が含まれているのだ。敵同士として。
ホント参るよなあ。
俺の兄貴は、皇太子殿下の幼馴染みで同級生だ。そして側近の一人なのだが、とにかく生真面目で堅い軍人気質なので、まるっきり出世欲がなく、どこの派閥にも属していない。
人畜無害な兄の弟だということもあって、俺も皇太子殿下や弟殿下とも顔馴染みだ。弟キャラポジションでとても可愛がられている。
だから今までは、勢力争いには無縁の立場で、俺はいつ何処においても、ただ静観していたのだ。
それなのに、こんな婚約破棄フラグが立ちそうな切羽詰まったこの状態に、どうして俺は居合わせてしまったのだろうか。
頭痛がしてきた。
よりにもよって姉と弟が、敵対する立ち位置で反目し合っているのだから、逃げるに逃げられないではないか!
俺は苦境に立たされた。
ところがである。
突如、このところずっと抑えていた中間子としての俺のお節介の血が、またもやムズムズと湧き上がってしまった。
本当に失敗した。勝手に体が動いてしまった!
あとちょっとうまくやれば、事態は改善される!
あとちょっとだけ、冷静になって人の話を聞けば、誤解が解ける!
あとちょっとだけ、なんて思ってしまったのが運の尽きだった!
誰も攻撃魔力なんて持ち合わせていなかったが、科学の力でどの国でも、他国の一つや二つぶっ飛ばすくらいの爆弾を持っていた。
そして癒し魔力で手足を生やしてもらえなくても、高性能のモデルスーツを着れば、例え四肢のどこかを無くしても、日常生活は難なく過ごせた。
まあ、生やしてもらえるのなら、そっちの方がいいに決まっているが。
高度な文化と豊かな生活に恵まれていたのに、何故か人々は絶えず不安、恐怖に苛まれ、自ら生を絶つ者が多かった。
まあ、俺が死んだのは、自殺なんかじゃなく、コンビニ強盗に襲われたせいだが。
俺の国は他国と比べ治安が良かったから、当然一般庶民は防衛の為の装備なんかしていなかった。まあ、俺の場合は運が悪かったとしか言いようがない。
しかし、あの当時の俺は、中間子として姉や弟に振り回され、両親に上手く使われるお人好しだったので、人生に嫌気がさしていたのも事実。
だから俺は、それほど生きることには執着していなかったんだ。
ただ、最後に目にした、幼馴染みの泣き顔だけは心残りだが・・・・
俺は大学生だった二十歳の誕生日に、バイト先のコンビニで強盗に襲われ、三ヶ月後に意識が戻らないまま人生を終えたのだ。
✽✽✽
そして、この世界に転生したのだ。代々軍人の家柄のジェイド伯爵家の次男として。
上に兄と姉、下に弟と妹がいるまたしても中間子だった。しかも、上下ともに数が増えていた!
十歳の時、末っ子の妹が生まれた朝に、突然俺は前世の記憶を思い出し、思わず、「ゲッ!!!」と叫び、周りの顰蹙を買った。
前世を思い出した当時の俺は、中間子として、やはり面倒くさい立ち位置にいた。
とはいえ、一応貴族の子供だったので、前世のように共働きの親に代わって飯を作ることも、姉に命令されて買い物に行かされる事も、ヒッキーな弟の相手をさせられる事もなかった。
この世界では中間子として、周りの様子を伺う能力だけはそこそこあったので、まあ、要領よくとまではいかないが、今の俺はそれなりに日々をこなしている。
俺ん家、ジェイド伯爵家は、貴族社会での立ち位地は、前世でいう、中間管理職? 的なポジションだろう。
軍人といっても執務系なので、戦争が起きても前線へは行かずに済む。
我がジェイド伯爵家は、何故か代々魔力持ちがあまり出ない家系なので、この地味な役職に定着したんだろう。
その代わりに、代々おつむの方はそこそこいいし、真面目で堅物が多いらしい。祖父も、父も、兄貴もそうだ。
ところがなんと現在の我が家は、その父親と兄貴以外は皆魔力持ちだ。これは今までになかった事態である。
というのも俺の母親が、例の癒しの公爵家の出だったからである。
姉と妹、そして内緒にしているが、俺もその血を引き継いでいる。
そして、弟は運悪く、父方の祖母の攻撃魔力の血を中途半端に継いでしまった。
実を言うと、こちらも周りには内緒にしているのだが、俺はそこそこ強い攻撃魔力も持っている。
ところが、弟が持っている攻撃魔力は微々たるもので、戦場において役に立つレベルじゃない。
せいぜいその場しのぎが出来る程度だ。だからそんな力で驕ってしまったら、却って危険だから、いっそない方がましだ。
それなのに弟は、一家の中で唯一攻撃魔力を使えると、鼻高々で偉そうにしている。
家族に白い目で見られても、自分は妬まれているんだと思って、むしろ、家族を憐れんでいる。
こういう空気が読めないだけじゃなく、身の程知らずの奴って、ホントどうしようもない。いつの世でもこういう人間いるよなあ。
とにかく俺はこの弟のせいで、幼い頃から散々な目に合わされているのだ。
まあ、そうは言っても自分の弟だから、かわいいとは思っている。しかしだ!
今俺は、目の前にいる弟を見て唖然として立ち尽くしている。
皇太子殿下と公爵令嬢の破滅フラグ……それを立てようとしている面子の中に、俺の姉と弟が含まれているのだ。敵同士として。
ホント参るよなあ。
俺の兄貴は、皇太子殿下の幼馴染みで同級生だ。そして側近の一人なのだが、とにかく生真面目で堅い軍人気質なので、まるっきり出世欲がなく、どこの派閥にも属していない。
人畜無害な兄の弟だということもあって、俺も皇太子殿下や弟殿下とも顔馴染みだ。弟キャラポジションでとても可愛がられている。
だから今までは、勢力争いには無縁の立場で、俺はいつ何処においても、ただ静観していたのだ。
それなのに、こんな婚約破棄フラグが立ちそうな切羽詰まったこの状態に、どうして俺は居合わせてしまったのだろうか。
頭痛がしてきた。
よりにもよって姉と弟が、敵対する立ち位置で反目し合っているのだから、逃げるに逃げられないではないか!
俺は苦境に立たされた。
ところがである。
突如、このところずっと抑えていた中間子としての俺のお節介の血が、またもやムズムズと湧き上がってしまった。
本当に失敗した。勝手に体が動いてしまった!
あとちょっとうまくやれば、事態は改善される!
あとちょっとだけ、冷静になって人の話を聞けば、誤解が解ける!
あとちょっとだけ、なんて思ってしまったのが運の尽きだった!
0
あなたにおすすめの小説
初恋をこじらせたやさぐれメイドは、振られたはずの騎士さまに求婚されました。
石河 翠
恋愛
騎士団の寮でメイドとして働いている主人公。彼女にちょっかいをかけてくる騎士がいるものの、彼女は彼をあっさりといなしていた。それというのも、彼女は5年前に彼に振られてしまっていたからだ。ところが、彼女を振ったはずの騎士から突然求婚されてしまう。しかも彼は、「振ったつもりはなかった」のだと言い始めて……。
色気たっぷりのイケメンのくせに、大事な部分がポンコツなダメンズ騎士と、初恋をこじらせたあげくやさぐれてしまったメイドの恋物語。
*この作品のヒーローはダメンズ、ヒロインはダメンズ好きです。苦手な方はご注意ください
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
愛する旦那様が妻(わたし)の嫁ぎ先を探しています。でも、離縁なんてしてあげません。
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
【清い関係のまま結婚して十年……彼は私を別の男へと引き渡す】
幼い頃、大国の国王へ献上品として連れて来られリゼット。だが余りに幼く扱いに困った国王は末の弟のクロヴィスに下賜した。その為、王弟クロヴィスと結婚をする事になったリゼット。歳の差が9歳とあり、旦那のクロヴィスとは夫婦と言うよりは歳の離れた仲の良い兄妹の様に過ごして来た。
そんな中、結婚から10年が経ちリゼットが15歳という結婚適齢期に差し掛かると、クロヴィスはリゼットの嫁ぎ先を探し始めた。すると社交界は、その噂で持ちきりとなり必然的にリゼットの耳にも入る事となった。噂を聞いたリゼットはショックを受ける。
クロヴィスはリゼットの幸せの為だと話すが、リゼットは大好きなクロヴィスと離れたくなくて……。
【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました
雨宮羽那
恋愛
結婚して5年。リディアは悩んでいた。
夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。
ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。
どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。
そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。
すると、あら不思議。
いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。
「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」
(誰ですかあなた)
◇◇◇◇
※全3話。
※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
私は彼に選ばれなかった令嬢。なら、自分の思う通りに生きますわ
みゅー
恋愛
私の名前はアレクサンドラ・デュカス。
婚約者の座は得たのに、愛されたのは別の令嬢。社交界の噂に翻弄され、命の危険にさらされ絶望の淵で私は前世の記憶を思い出した。
これは、誰かに決められた物語。ならば私は、自分の手で運命を変える。
愛も権力も裏切りも、すべて巻き込み、私は私の道を生きてみせる。
毎日20時30分に投稿
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です
くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」
身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。
期間は卒業まで。
彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。
隠れ蓑婚約者 ~了解です。貴方が王女殿下に相応しい地位を得るまで、ご協力申し上げます~
夏笆(なつは)
恋愛
ロブレス侯爵家のフィロメナの婚約者は、魔法騎士としてその名を馳せる公爵家の三男ベルトラン・カルビノ。
ふたりの婚約が整ってすぐ、フィロメナは王女マリルーより、自身とベルトランは昔からの恋仲だと打ち明けられる。
『ベルトランはね、あたくしに相応しい爵位を得ようと必死なのよ。でも時間がかかるでしょう?だからその間、隠れ蓑としての婚約者、よろしくね』
可愛い見た目に反するフィロメナを貶める言葉に衝撃を受けるも、フィロメナはベルトランにも確認をしようとして、機先を制するように『マリルー王女の警護があるので、君と夜会に行くことは出来ない。今後についても、マリルー王女の警護を優先する』と言われてしまう。
更に『俺が同行できない夜会には、出席しないでくれ』と言われ、その後に王女マリルーより『ベルトランがごめんなさいね。夜会で貴女と遭遇してしまったら、あたくしの気持ちが落ち着かないだろうって配慮なの』と聞かされ、自由にしようと決意する。
『俺が同行出来ない夜会には、出席しないでくれと言った』
『そんなのいつもじゃない!そんなことしていたら、若さが逃げちゃうわ!』
夜会の出席を巡ってベルトランと口論になるも、フィロメナにはどうしても夜会に行きたい理由があった。
それは、ベルトランと婚約破棄をしてもひとりで生きていけるよう、靴の事業を広めること。
そんな折、フィロメナは、ベルトランから、魔法騎士の特別訓練を受けることになったと聞かされる。
期間は一年。
厳しくはあるが、訓練を修了すればベルトランは伯爵位を得ることが出来、王女との婚姻も可能となる。
つまり、その時に婚約破棄されると理解したフィロメナは、会うことも出来ないと言われた訓練中の一年で、何とか自立しようと努力していくのだが、そもそもすべてがすれ違っていた・・・・・。
この物語は、互いにひと目で恋に落ちた筈のふたりが、言葉足らずや誤解、曲解を繰り返すうちに、とんでもないすれ違いを引き起こす、魔法騎士や魔獣も出て来るファンタジーです。
あらすじの内容と実際のお話では、順序が一致しない場合があります。
小説家になろうでも、掲載しています。
Hotランキング1位、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる