4 / 6
第4章 スペシャリスト 1
しおりを挟む
いわゆる乙女系ゲームに出てくるのは、イケメン王子や、その派手な取り巻き、そして、悪役令嬢とヒロイン!
なぜか悪役令嬢の多くが婚約破棄され、投獄か、追放か、斬首。
これって酷くないか? たかが小娘がやった事で。教育的指導でもすりゃいいレベルが多い、って思うのだが。
しかも、どう考えても演技だろ! っていう、健気で儚げな、甘えた女に騙される王子や貴族の男達……。
普通、上層部の人間って、本物と偽物を鑑定できるよう、教育されてるもんじゃないの? えっ?宝物と女性を一緒にするな、モラハラだって? すまん!
でも異世界って、元の世界と価値観違いすぎるよね。一方的に婚約破棄した上に投獄するとか、モラハラ、パワハラのレベルじゃないから! 前世でそれをやったらネットで炎上、世界中から叩かれる案件だね。
ともかく、ツンとか、嫉妬とか、軽い苛めくらいで目くじらたてるなよ。
それくらい許せないくせに、人道主義やらフェミニズム気取って、ヒロイン庇ってんじゃない!と思う。
前世の俺は、姉や母親、大学やバイト先の女子連中にいいように利用され、こき使われ、正直腹立たしい思いばかりだったよ。
だから、陰でこっそりやり返したり、猫被って誑かしている女の素の姿を、こっそり狙われてる男連中に見せてやったりして、溜飲を下げてた。
だけど、いくら女の子のやっている事が陰険でムカついたとしても、王子達のように彼女らを衆人環視の中でやりこめたり、糾弾しようと思った事はない。
まあ、かつては、ネットでネチネチ匿名で攻撃する奴らがいたそうだが、俺が生きていた頃は、即、発信者が特定されて、反対にさらし者になっていたな。
あれ、これって、ざまぁシーンに似てるか? うーん。どっちも怖!!
それに俺は前世では庶民だったからわからなかっただけで、もしかしたら上級国民の間では、普通に都合の悪い奴や邪魔者に濡れ衣着せて、吊し上げをしてたのかなあ?
政治家とか、芸能界みたいに。う~ん、その辺はわからないのだが……
まあ、それはともかく、別に俺は平和主義者でも理想主義者でもない。ただのへたれだ。
前世では、血を見るのが苦手だった。採血も、鼻血も、ホラー映画でさえ見られかなかった。そして残酷な話や悲しい話も嫌いだったが、それは現世でも同じだ。
それなのに俺の家は代々軍関連だ。もし俺が魔力持ちだとわかったら、それがたとえ攻撃魔力だろうが、癒し魔力だろうが関係なく、いずれ戦場に駆り出されてしまうだろう。兄貴とは違って。
だけど俺は絶対に戦場なんかに行きたくない。だから魔力をひた隠しにしている。
そう。俺はどうしようもない臆病者なんだ。
きっと真実を知られたら、両親や兄弟、そして愛しい大切な思い人にも軽蔑されるだろう。
しかし、そんな臆病者だからこそ、できればこの国を戦火に巻き込みたくないのだ。
だからその要素になりうる火種を、今のうちにもみ消していこう。王太子殿下のパーティーの席で、突然俺はそう思ったのだ。
それに元々俺は、別につまらない優等生だからといって、皇太子やその婚約者を嫌っているわけじゃない。
二人が憎しみあって、悲惨な最後を迎えるのを望んでいるわけじゃない。
かといって、絶対に二人にハッピーエンドを迎えて欲しい、と望んでいるわけでもないのだけれど。
ただ、もし別れるのならばせめて穏便に……そう願っているだけだ。
だってそうだろう?
本人の意思無視の政略結婚なんて、義務感だけでどうにかなるって話じゃない。
前世、俺のいた国ではその昔、結婚初日にお互いに初めて顔を見た、なんていう事も実際にあったらしい。それでも、幸せに暮らしていた夫婦も結構いたという。
しかしそれは、たまたま相性がよかったとか、運が良かったという、単純な話だけでもなかったらしい。
仲人という、カップリングを仕事にしているスペシャリストがいて、その神業に近い手腕によって、男女の縁が結ばれていたらしい。
男女の性格、趣味嗜好、収入、家族構成などを徹底的に調べあげ、相性ピッタリな相手を探し出す。そして上手に両人の良さを引き出し、アピールし、互いの好感度を上げていく。
そして、婚約してからも、ちゃんと結婚式を挙げるまで、手をぬかずにフォローしまくる!
お見事!
しかし、俺が生きていた時代ではすでにその『見合い』というスタイルも大分変わっていて、コンピューターや遺伝子情報によるカップリングされていた。
しきたりや風習が変わって自由恋愛が一般的になったとしても、結局『仲人』を望む輩は減らなかった。
何故なら、自分が好きになった相手が、自分を好きになってくれる確率って、一体どれくらいあるのだろう。
そもそも、好きになる相手に巡り合う確率は?
結局、運任せの自由恋愛を望んだ結果、国内の婚姻率は低下し、人口は減少、国家は衰退へと進んでいった。
その結果、各自治体は独自に『仲人』制度を公の機関に取り込んだのだった。
なぜか悪役令嬢の多くが婚約破棄され、投獄か、追放か、斬首。
これって酷くないか? たかが小娘がやった事で。教育的指導でもすりゃいいレベルが多い、って思うのだが。
しかも、どう考えても演技だろ! っていう、健気で儚げな、甘えた女に騙される王子や貴族の男達……。
普通、上層部の人間って、本物と偽物を鑑定できるよう、教育されてるもんじゃないの? えっ?宝物と女性を一緒にするな、モラハラだって? すまん!
でも異世界って、元の世界と価値観違いすぎるよね。一方的に婚約破棄した上に投獄するとか、モラハラ、パワハラのレベルじゃないから! 前世でそれをやったらネットで炎上、世界中から叩かれる案件だね。
ともかく、ツンとか、嫉妬とか、軽い苛めくらいで目くじらたてるなよ。
それくらい許せないくせに、人道主義やらフェミニズム気取って、ヒロイン庇ってんじゃない!と思う。
前世の俺は、姉や母親、大学やバイト先の女子連中にいいように利用され、こき使われ、正直腹立たしい思いばかりだったよ。
だから、陰でこっそりやり返したり、猫被って誑かしている女の素の姿を、こっそり狙われてる男連中に見せてやったりして、溜飲を下げてた。
だけど、いくら女の子のやっている事が陰険でムカついたとしても、王子達のように彼女らを衆人環視の中でやりこめたり、糾弾しようと思った事はない。
まあ、かつては、ネットでネチネチ匿名で攻撃する奴らがいたそうだが、俺が生きていた頃は、即、発信者が特定されて、反対にさらし者になっていたな。
あれ、これって、ざまぁシーンに似てるか? うーん。どっちも怖!!
それに俺は前世では庶民だったからわからなかっただけで、もしかしたら上級国民の間では、普通に都合の悪い奴や邪魔者に濡れ衣着せて、吊し上げをしてたのかなあ?
政治家とか、芸能界みたいに。う~ん、その辺はわからないのだが……
まあ、それはともかく、別に俺は平和主義者でも理想主義者でもない。ただのへたれだ。
前世では、血を見るのが苦手だった。採血も、鼻血も、ホラー映画でさえ見られかなかった。そして残酷な話や悲しい話も嫌いだったが、それは現世でも同じだ。
それなのに俺の家は代々軍関連だ。もし俺が魔力持ちだとわかったら、それがたとえ攻撃魔力だろうが、癒し魔力だろうが関係なく、いずれ戦場に駆り出されてしまうだろう。兄貴とは違って。
だけど俺は絶対に戦場なんかに行きたくない。だから魔力をひた隠しにしている。
そう。俺はどうしようもない臆病者なんだ。
きっと真実を知られたら、両親や兄弟、そして愛しい大切な思い人にも軽蔑されるだろう。
しかし、そんな臆病者だからこそ、できればこの国を戦火に巻き込みたくないのだ。
だからその要素になりうる火種を、今のうちにもみ消していこう。王太子殿下のパーティーの席で、突然俺はそう思ったのだ。
それに元々俺は、別につまらない優等生だからといって、皇太子やその婚約者を嫌っているわけじゃない。
二人が憎しみあって、悲惨な最後を迎えるのを望んでいるわけじゃない。
かといって、絶対に二人にハッピーエンドを迎えて欲しい、と望んでいるわけでもないのだけれど。
ただ、もし別れるのならばせめて穏便に……そう願っているだけだ。
だってそうだろう?
本人の意思無視の政略結婚なんて、義務感だけでどうにかなるって話じゃない。
前世、俺のいた国ではその昔、結婚初日にお互いに初めて顔を見た、なんていう事も実際にあったらしい。それでも、幸せに暮らしていた夫婦も結構いたという。
しかしそれは、たまたま相性がよかったとか、運が良かったという、単純な話だけでもなかったらしい。
仲人という、カップリングを仕事にしているスペシャリストがいて、その神業に近い手腕によって、男女の縁が結ばれていたらしい。
男女の性格、趣味嗜好、収入、家族構成などを徹底的に調べあげ、相性ピッタリな相手を探し出す。そして上手に両人の良さを引き出し、アピールし、互いの好感度を上げていく。
そして、婚約してからも、ちゃんと結婚式を挙げるまで、手をぬかずにフォローしまくる!
お見事!
しかし、俺が生きていた時代ではすでにその『見合い』というスタイルも大分変わっていて、コンピューターや遺伝子情報によるカップリングされていた。
しきたりや風習が変わって自由恋愛が一般的になったとしても、結局『仲人』を望む輩は減らなかった。
何故なら、自分が好きになった相手が、自分を好きになってくれる確率って、一体どれくらいあるのだろう。
そもそも、好きになる相手に巡り合う確率は?
結局、運任せの自由恋愛を望んだ結果、国内の婚姻率は低下し、人口は減少、国家は衰退へと進んでいった。
その結果、各自治体は独自に『仲人』制度を公の機関に取り込んだのだった。
0
あなたにおすすめの小説
初恋をこじらせたやさぐれメイドは、振られたはずの騎士さまに求婚されました。
石河 翠
恋愛
騎士団の寮でメイドとして働いている主人公。彼女にちょっかいをかけてくる騎士がいるものの、彼女は彼をあっさりといなしていた。それというのも、彼女は5年前に彼に振られてしまっていたからだ。ところが、彼女を振ったはずの騎士から突然求婚されてしまう。しかも彼は、「振ったつもりはなかった」のだと言い始めて……。
色気たっぷりのイケメンのくせに、大事な部分がポンコツなダメンズ騎士と、初恋をこじらせたあげくやさぐれてしまったメイドの恋物語。
*この作品のヒーローはダメンズ、ヒロインはダメンズ好きです。苦手な方はご注意ください
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
愛する旦那様が妻(わたし)の嫁ぎ先を探しています。でも、離縁なんてしてあげません。
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
【清い関係のまま結婚して十年……彼は私を別の男へと引き渡す】
幼い頃、大国の国王へ献上品として連れて来られリゼット。だが余りに幼く扱いに困った国王は末の弟のクロヴィスに下賜した。その為、王弟クロヴィスと結婚をする事になったリゼット。歳の差が9歳とあり、旦那のクロヴィスとは夫婦と言うよりは歳の離れた仲の良い兄妹の様に過ごして来た。
そんな中、結婚から10年が経ちリゼットが15歳という結婚適齢期に差し掛かると、クロヴィスはリゼットの嫁ぎ先を探し始めた。すると社交界は、その噂で持ちきりとなり必然的にリゼットの耳にも入る事となった。噂を聞いたリゼットはショックを受ける。
クロヴィスはリゼットの幸せの為だと話すが、リゼットは大好きなクロヴィスと離れたくなくて……。
【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました
雨宮羽那
恋愛
結婚して5年。リディアは悩んでいた。
夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。
ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。
どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。
そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。
すると、あら不思議。
いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。
「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」
(誰ですかあなた)
◇◇◇◇
※全3話。
※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜
【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです
大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。
「俺は子どもみたいな女は好きではない」
ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。
ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。
ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。
何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!?
貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。
私は彼に選ばれなかった令嬢。なら、自分の思う通りに生きますわ
みゅー
恋愛
私の名前はアレクサンドラ・デュカス。
婚約者の座は得たのに、愛されたのは別の令嬢。社交界の噂に翻弄され、命の危険にさらされ絶望の淵で私は前世の記憶を思い出した。
これは、誰かに決められた物語。ならば私は、自分の手で運命を変える。
愛も権力も裏切りも、すべて巻き込み、私は私の道を生きてみせる。
毎日20時30分に投稿
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です
くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」
身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。
期間は卒業まで。
彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。
隠れ蓑婚約者 ~了解です。貴方が王女殿下に相応しい地位を得るまで、ご協力申し上げます~
夏笆(なつは)
恋愛
ロブレス侯爵家のフィロメナの婚約者は、魔法騎士としてその名を馳せる公爵家の三男ベルトラン・カルビノ。
ふたりの婚約が整ってすぐ、フィロメナは王女マリルーより、自身とベルトランは昔からの恋仲だと打ち明けられる。
『ベルトランはね、あたくしに相応しい爵位を得ようと必死なのよ。でも時間がかかるでしょう?だからその間、隠れ蓑としての婚約者、よろしくね』
可愛い見た目に反するフィロメナを貶める言葉に衝撃を受けるも、フィロメナはベルトランにも確認をしようとして、機先を制するように『マリルー王女の警護があるので、君と夜会に行くことは出来ない。今後についても、マリルー王女の警護を優先する』と言われてしまう。
更に『俺が同行できない夜会には、出席しないでくれ』と言われ、その後に王女マリルーより『ベルトランがごめんなさいね。夜会で貴女と遭遇してしまったら、あたくしの気持ちが落ち着かないだろうって配慮なの』と聞かされ、自由にしようと決意する。
『俺が同行出来ない夜会には、出席しないでくれと言った』
『そんなのいつもじゃない!そんなことしていたら、若さが逃げちゃうわ!』
夜会の出席を巡ってベルトランと口論になるも、フィロメナにはどうしても夜会に行きたい理由があった。
それは、ベルトランと婚約破棄をしてもひとりで生きていけるよう、靴の事業を広めること。
そんな折、フィロメナは、ベルトランから、魔法騎士の特別訓練を受けることになったと聞かされる。
期間は一年。
厳しくはあるが、訓練を修了すればベルトランは伯爵位を得ることが出来、王女との婚姻も可能となる。
つまり、その時に婚約破棄されると理解したフィロメナは、会うことも出来ないと言われた訓練中の一年で、何とか自立しようと努力していくのだが、そもそもすべてがすれ違っていた・・・・・。
この物語は、互いにひと目で恋に落ちた筈のふたりが、言葉足らずや誤解、曲解を繰り返すうちに、とんでもないすれ違いを引き起こす、魔法騎士や魔獣も出て来るファンタジーです。
あらすじの内容と実際のお話では、順序が一致しない場合があります。
小説家になろうでも、掲載しています。
Hotランキング1位、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる