四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜

最上 虎々

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終章 ガラテヤの騎士、ジィン

第百五十六話 神の時間

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 俺の『雀蜂すずめばち』、ガラテヤ様の『刹抜さつばつ」が、ほぼ同時にクダリ仙人を貫く。

「こ、けぁぁ……」

 血を吹き出しながら、爆発するように散るクダリ仙人だったが、不思議なことに手応えが無い。

「……まだ、のようね」

「みたいですね」

「いやー、ビックリしたヨ。まさか話してる途中で攻撃されるなんて。落ち着いて落ち着いて」

 案の定、クダリ仙人の声が聞こえたかと思うと、家の庭に空間の歪みが発生した。

 その歪みは辺りの空気ごと、魔力や周辺の土などを少しずつ吸い込み、再びクダリ仙人の身体を形成。

 まるで何事も起こらなかったかのように、クダリ仙人は再び話し始めた。

「とりあえず、クダリ仙人。この世界をもう一度、動かしてもらえませんか?そうしたら、俺達だってアンタと戦わなくて良いんですよ」

「それは無理な相談だネー。この機を逃したら、もう天国の形成は不可能なんだから」

「ん……。なんで、そんな風に言えるの?未来が視えているみたいな言い方」

「私にとって『時間』とは、流れるものじゃあないからだよ」

「え……」

 刹那、クダリ仙人は眼前から姿を消してしまう。

「フンッ!」

 次に姿を見せたのは俺達の背後に、であったが、すれ違いざまにムーア先生に一撃を加えようとしたらしい。

 剣を構えて、いかにも防御の直後であるように顔を強張らせる老紳士の姿が、その一撃が如何に苛烈なものであったかを物語っていた。

「おお、まさか今のを防ぐなんてネ」

「やりますな、クダリ仙人とやら」

「それほどでも~」

「で、時間は流れるものではないっていうのは、一体何なんですか?この世界を元に戻せって交渉は決裂するにしても、説明くらいはしてくださいよ」

「まあまあ、そう焦らないで。とりあえず私は、この世界が生まれてから滅びるまでの、未来と過去の全部を観測できるってことさ。それで、今この瞬間がベストだと分かっていたから、こうして止めてるんだよ」

「どこまでも自分のため……にしか、聞こえないわね。神様の別人格って言うけど、話を聞いてみれば、シミュレーションゲームにキレているワガママ小僧にしか聞こえないわ」

 ガラテヤ様は金色の髪をかき上げ、前へ出る。

「なんだって?……ガラテヤ・モネ・ベルメリア」

「幼稚で自分勝手だと言っているのよ。神の代行者という称号が泣いているわ。それとも、神様もそんな感じなのかしら?だとしたら、大したこと無いわね」

「わ、私を前にして、ここまで本気で神を馬鹿にする人は初めてかもしれないなぁ……少なくとも、過去には存在しなかったよ」

「それはどうも。秀でた個性を持つ魅力的な女性という褒め言葉として受け取っておくわね」

 かつてない程の挑発。

「戯言が得意なようだね、君は。良いよ、その挑発に乗ってあげよう。どの道、この世界を天国にするには……君達を排除しなきゃいけないみたいだし」

「それで良いわ。教えてあげる。貴方が未来を見てしまうこと、そのものに付き纏う、重要な欠陥を!」

 消えるように迫るクダリ仙人は、瞬く間にガラテヤ様へ接近。

「口ほどにも」

「破ッ!」

「なぃぁぁぁッ!?」

 しかし彼女の顔面を潰さんと拳を握ったクダリ仙人の身体は、腹部に強い衝撃を受けたのか、またタグに後ろへと後ろへ吹き飛んでいった。
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