四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜

最上 虎々

文字の大きさ
97 / 177
第七章 もう一度

第八十八話 知らないハズのこと

しおりを挟む
 俺はロディアの前へ走り出し、二振りの刀から風車を繰り出す体勢へ入る。

「よし。ファーリちゃんのいう通り、お前を友達だと思うのはやめることにした」

「えぇ?そういうの慣れてなさそうに見えるけどね。ジィン?」

 それに合わせてロディアは身を翻し、風に闇の魔力を乗せて爆風を引き起こす。
 こちらの体勢を崩そうとしたのだろうが、しかし俺は、その程度で構えを解いてしまう程に生半可な武士であった覚えは無い。

「実際に殺されてる訳だからなぁ。努めてみるさ。はァァァ……!【風車かざぐるまふたえ】!」

 構えから繰り出されるは、通常の「風車」と比べて倍はあるだろう数の「飛ぶ斬撃」。
 一振りの刀では刃に無理をさせてしまう可能性があるため、考えすらもしなかったが……刀が両手に握られている今なら、その負荷を分散させることができると思い発明した、俺の新たな剣技である。

 刀の本数が倍なら強さも倍。
 ついでに消費魔力も倍である以上、あまり魔力を貯めることができない俺がポンポン撃つことは難しいだろう。

 しかし、隠していた力を見せたロディアを相手にしている以上は、そう魔力をケチっている場合でもない。

「うおおお、おお、おおお!?ジィン……!な、るほど、また、新しい剣技を……!」

「俺だって、お前に殺される器のままじゃあないってこと」

 勿論ハッタリである。
 なんなら半分は嘘になってしまう。

 今のは実質的に「ただの風車かざぐるま」であり、言わば「持ち歩いている弾丸の数は変わらないが、一丁だった銃が二丁になったから二丁で撃っただけ」の話なのだ。

「なら……こっちの新技も見せちゃおうかな!」

「来い!」

「いや、後ろで控えている、君のご主人様にね!」

「なっ……ガラテヤ様!警戒を!」

「【デモンセスタス・ミサイル】!」

「み、ミサイル!?」

 どうしてロディアが、この世界に存在しないハズの「ミサイル」を知っているのだろうか。

 そして、それを問い詰める間も無く、ガラテヤ様めがけて、従来のものよりも小型のデモンセスタスが数十発ほど飛んで行った。

「中々にハードね……!マーズ、手伝ってもらえる?」

「ああ、任せろ!」

「はっ!やっ!たあああああああっ!」

 ガラテヤ様は風を手に集め、衝撃波を正拳突きに乗せて放つ。

 これは「刹抜さつばつ」を使う際に本来は「余波」として発生する風を使うものであろう。
 本来の使い方とは違うものの、デモンセスタスを吹き飛ばすには十分過ぎる威力であった。

「あとは私が狩る!【オーガー・エッジ】!」

 そして、タイミングをずらして突っ込んできたデモンセスタスを、マーズさんが「オーガー・エッジ」で薙ぎ払う。

「おお。一発くらい喰らってくれても良かったのに」

「喰らってたまるものか、裏切り者め」

「まあまあ落ち着いてって。さっきまで怒りに任せて突っ込んでこようとしていたところを、ガラテヤ様に止められてたじゃないか。君の太刀筋くらいなら、簡単に読めちゃうよ?」

「き、貴様ァァァァァッ!」

 マーズさんは大剣を構え、ガラテヤ様の元を離れて全然へ飛び出す。

「待ちなさい、前線に行くのはもう少し落ち着きを……!」

「止めてくれるなッ!」

 ガラテヤ様の静止も聞かず、俺達よりも前へ出るマーズさん。

 怒りに任せて剣を振り回す止めるマーズさんを、ロディアは不敵な笑みを浮かべて迎え撃とうと杖を構える。

 射程距離もスピードも、ロディアの方が上。

 勝ち筋は薄いが、それでも怒りを爆発させるマーズさんを止める術を、俺達は持っていなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~

こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』 公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル! 書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。 旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください! ===あらすじ=== 異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。 しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。 だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに! 神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、 双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。 トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる! ※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい ※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております ※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております

異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」 その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ! 「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた! 俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!

最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます

わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。 一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します! 大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。

処理中です...